今後の被曝量の見積もり(飲食物による内部被曝)
昨日の外部被曝の見積もりに続けて、この記事では飲食物による内部被曝を考えてみます。
飲食物については、実際の飲食物の放射線量のデータを集める気力は無いので、「どのくらいの放射線量の食品なら内部被曝を年間1ミリで収められるのか」ということを、こちらのサイトの計算結果を使って考えてみました。
http://www.aist-riss.jp/main/modules/column//atsuo-kishimoto010.html 基準値の根拠を追う:放射性セシウムの暫定規制値のケース[2011/05/23]
(追記7月19日 暫定基準値がどのようにして決まったのかの説明はこちらにもあります。http://katukawa.com/?p=4467 食品の放射性物質の暫定基準値はどうやって決まったか - 勝川俊雄 公式サイト)
(追記8月21日 原子力安全委員会による食品の暫定基準値の決定方法のようだ。東電原発事故前から決めていた? http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-03-03-06 飲食物摂取制限 (09-03-03-06) - ATOMICA -)
そのサイトにある表から抜粋・合成・計算したのが下表です。
飲食物を5つの食品群に分類し、1年間、食べ続けたときに、放射性セシウムによる内部被曝が、食品群ごとに1ミリシーベルト(合計5ミリシーベルト)になる放射性物質の量を、線量限度としてあらわしたものだそうです。
食品群 | 線量限度 | (5分の1) | 摂取量 日 | 摂取量 年 | 放射能摂取量 |
---|---|---|---|---|---|
飲料水 | 89Bq/kg | (18Bq/kg) | 1.65kg | 602kg | 53,578 Bq年 |
牛乳(乳製品) | 103Bq/kg | (21Bq/kg) | 0.6kg | 219kg | 22,557 Bq年 |
野菜類 | 244Bq/kg | (49Bq/kg) | 0.6kg | 220kg | 53,680 Bq年 |
穀物 | 487Bq/kg | (98Bq/kg) | 0.3kg | 110kg | 53,570 Bq年 |
肉・卵・魚介・その他 | 292Bq/kg | (59Bq/kg) | 0.5kg | 183kg | 53,436 Bq年 |
. | . | 合計 | 3.65kg | 1334kg | 236,821 Bq年 |
注
- 牛乳(乳製品)については乳児の値です(他の食品群は成人の値)。乳児は実効線量換算係数が大きいため、放射能摂取量(Bq年)が他の食品群の半分以下になるということだと思います(良く分かっていません)。
- 牛乳(乳製品)以外の食品群が成人の線量限度となっているのは、成人は摂取量が多いため、乳幼児よりきびしい線量限度になるためだそうです(したがって乳幼児の線量限度は表よりも高くなるようです)。
- 表の線量限度の値が政府の暫定基準値の約半分になっているのは、暫定基準値の設定では、食品の半分程度は放射能汚染のない地域から供給されるという前提があるからだそうです(食料自給率40%のため?)
- ストロンチウムについても考慮したうえで、セシウムの基準値は定められているそうです。
- ヨウ素については殆ど検出されていないため考慮しないこととしました。また、政府の暫定基準値の上限の食品を食べ続けると年間17ミリシーベルトになるという話はヨウ素からの被曝が計算上、大きくなるためのようです。
食品の分類ごとに年間1ミリシーベルトですから、各数字を5で割れば、飲食物からの内部被曝の合計が年間1ミリシーベルトに収まる線量限度になります。
どの食品がどのくらいの放射線量の可能性があるかは、下記のサイトなどを参考にすればよいのではないかと思います。
http://tsukuba2011.blog60.fc2.com/blog-entry-280.html 7/10 野菜・肉類の放射性セシウム汚染状況の簡単なまとめ | 3.11東日本大震災後の日本
http://atmc.jp/food/ 全国の食品の放射能調査データ
http://yasaikensa.cloudapp.net/ 食品の放射能検査データ
実際の食品の汚染状況を考慮してみると
現状では飲料水からの放射性物質は不検出が続いています。(常総市の検出限界は6-9Bq/kg 未満、東京都健康安全研究センターの検出限界は、0.2Bq/kg 未満) http://www.city.joso.lg.jp/joso/www/02613.html 常総市ホームページ - 健やかに ひとを育み みどり豊かな まちづくり http://monitoring.tokyo-eiken.go.jp/mon_water_data.html 環境放射線測定結果 - 水道水(蛇口水)の放射能測定結果
また、牛乳(原乳)についても、不検出(1Bq/kg以下?)が続いています。http://yasaikensa.cloudapp.net/product.aspx?product=%e5%8e%9f%e4%b9%b3&category=%E4%B9%B3 原乳(乳) | 食品の放射能検査データ
穀物についても現在、出回っている米は去年、収穫されたものですし、麦も殆どが輸入品ですから、穀物からの被曝は少ない(無い?)のではないでしょうか(国産の麦からはセシウムが検出されていますから別です。また今年の新米については考慮が必要です)。
したがって、飲料水、牛乳(乳製品)、穀物からの内部被曝はあまり考える必要は無さそうです。
そうであれば、残りの2つの食品分類の線量限度を半分にして、野菜類 122 Bq/kg、肉・卵・魚介・その他 146 Bq/kg の食品であれば、1年間食べ続けても、内部被曝は年間1ミリシーベルトで収まるということになりそうです。
食品の検査データをみると100 Bq/kg を超えているものは少ないようです(一部の野菜・山菜類や、淡水魚、近海魚介類を除く)。
そうであるなら、いろんな産地のいろんな食品を満遍なく摂取してリスクを分散すれば、たまに高い放射線量の食品を食べたとしても、年間の内部被曝は1ミリシーベルトで収まるのではないでしょうか。
(逆に言うと、学校給食で何度も出るものや、農家の自家消費や家庭菜園などによって、特定の産地の特定の食品を食べ続けるのは配慮が必要ということになります)
追記7月19日
上で作成した表で放射能摂取量が236,821 Bqなら年間5ミリシーベルトに収まることになっています。
(乳児と成人が混じっていることは、とりあえず無視します)
ということは5で割った47,364 Bqなら年間1ミリシーベルト、365日で割った約 130 Bq までなら1日に飲食物から摂取しても年間1ミリシーベルトに収まるという概算もできそうです。
たとえば、暫定基準上限の500Bq/kg の肉を200グラム(0.2kg 一食分)食べたとすると 100Bq の放射性物質を摂取したことになります。
他の食品からの放射性物質を摂取しなければ線量限度に収まりそうです。逆に言うと他の食品にも放射性物質が多めに有ると1日の線量限度を超えてしまうので、数日間は低被曝ですむように注意したほうが良いということになります。
多種多様な食品を食べることが放射能面でも健康につながりそうです。
厚労省の推計
厚労省が食品からの内部被曝は年間0・1ミリ・シーベルト程度という推計をしていました。
カリウムとセシウムの内部被曝を比べるなど気になる点はありますが、(政府側の試算ということで)10倍にしたとしても年間1ミリシーベルトで収まる可能性が高そうですね。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110712/bdy11071213390001-n1.htm 【放射能漏れ】食品で平均34マイクロシーベルト被ばくか 3〜6月、厚労省推計 - MSN産経ニュース
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110712-OYT1T00909.htm 食品で内部被ばく、自然な状態の4分の1と試算 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)