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犬神工房(朝鮮妖術ノッカラノウム使用後)日記

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2016-06-04 クリストフ・コッホ『意識の探求』要約

クリストフ・コッホ『意識の探求』要約(3)コッホのモデル(前頭前野以前)

| 09:28

○コッホのモデル

前頭前野以前(略図)

先ほど説明したように、前頭前野以前には視覚系の二つの主経路と、一つの副経路があります。また、この本では嗅覚についても少し触れています(聴覚触覚味覚の記述はほぼなかったはずです)。

これを図示すると、以下のようになります。(文字が小さい? そうですね。ごめんなさい。これ以上うまくできなかったのです)


(2016/07/01 19:00現在 文字を大きくするために、図を縦にしましたが、多少文字が見やすくなった程度の改善しか得られていません。どうしようかな)


f:id:inugamikoubouathangul:20160701184552g:image


前頭前野以前(腹側視覚路)

網膜から得られた情報を基に、物体認識を可能にするのが、腹側視覚路になります。

これを図示すると、以下のようになります。

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部位を一個ずつ見ていきましょう(次の順に情報が渡されていきます)。


・網膜

目の網膜は視覚を受ける最初の部位です。ですが、ここで得られる視覚情報の在り方と、われわれが脳で処理している視覚情報は、大きくかけ離れています。盲点からは視覚が得られないので、網膜の視覚情報には本当は穴が開いているわけですが、われわれは特殊な実験をしない限り、盲点のことを意識せずにものを見ています。

つまり、網膜はNCCの一部ではありません。


外側膝状体(LGN)

視覚の主経路の入口である脳部位です。何らかの処理がされているようですが、この本ではLGNがどのような機能を果たしているのかは不明です。


・第一次視覚野(V1)

視覚の主経路で、特徴を検知することが分かっている最初の脳部位です。

V1は網膜の上に映った情報を保持し、そのままマッピングしています。これが空間認知で加工される際の素材になりますが、この時点では空間的な加工はまだです。

また、様々な角度に反応する細胞があり、静止しているものの線の角度や、運動しているものの運動の角度に強く反応します。

脳手術の際にここを直接刺激すると、何らかの視覚的なイメージが見えるという報告があったそうで、視覚的イメージの部位でもあります。

さて、ここがなければ脳は目からの視覚をほとんど受けることができないのですが、なくなっても視覚的な夢を見る分には問題がないことが分かっています。

それゆえ、コッホはV1もNCCではないと結論付けます。


・V2

ここからがこの本に書いてある腹側視覚路になります。

V2は形の知覚全般を司る脳部位です。二つの端を見せるとその間に線が感じられるとか、輪郭が強調されて見えるようになるとか、ある背景からある図が浮かび上がってくるとか、そういうことはV2がもたらす機能です。

この本では「充填 filling-in」という視覚知覚機能が紹介されていて、実際には欠けていて見えないものが、埋められて見えるようになっています。

この本で直接言われているわけではないですが、V2は形の知覚を行なう際に、充填を行なっているように見えます。


・V4

この本では色の知覚を司る脳部位とされています。

また、ここではニューロン連合の競合というものが起きます。曖昧な色があった場合、それが何色に見えるか、ということは簡単には決まりません。V4にはこういう曖昧な刺激の時に各種ニューロン神経細胞)連合が多く発火し、それが競合した結果、最終的に「結局これは何色であった」と決まります。決まらなかったものは意識には直接的には反映されません。同時に二つ三つ混ざったような曖昧なまま決まっていない意識的知覚というのはできないのです。また、この結果、ニューロン連合は意識される勝ち組ニューロン連合と、意識されないで負け組になってしまうニューロン連合に分かれます。


・下側頭葉(IT)

いよいよここで物体認識が行なわれます。また、顔認識も行われています。物体認識や顔認識を司っている脳部位は他にもあるのですが、それは図をご覧ください。

V4と違って、意識されないニューロン連合はITにおいては発見されません。ここで発火しているのは全て勝ち組ニューロン連合だけです。

ITはNCCの一部として扱われます。個人的には知覚と意識を別物として捉えていて、「ITは知覚を担当しているが、意識にはそのままでは関与していないのではないか、意識の中身を作っているということは意識そのものを作っているということとは違うのではないか」と考えてしまいます。とはいえ、ITが意識そのものを構成しているか否かは推測でしか語れません。


AIT

ITの一部で、処理としては上位にある脳部位です。顔認識の他に、さまざまな物体に共通するような抽象的な部分を抽出する部位であり、そういう意味では単なる物体認識を超えていると言えます。

ITの一部しかも上位であるため、この本では明記されていませんが、NCCの一部として扱われるべきと考えられます。


ここの情報は、大脳基底核線条体等)という、運動等を司る脳部位に送られます。

大脳基底核は後に前頭前野に接続するのですが、腹側視覚路そのものではなく、ここの運動は意識に関係ない(NCCの一部ではないとされている)ので、細かい説明は省きます。


前頭前野腹外側部

形・輪郭・色・物体など、今までの腹側視覚路が処理していた情報を全部受ける脳部位で、前頭前野にあります。

この本では明記されていませんが、物体認識が意識的知覚の主要な素材であるという趣旨からして、おそらくNCCの一部でしょう。


前頭前野以前(背側視覚路)

網膜から得られた情報を基に、空間認知を可能にするのが、背側視覚路になります。

これを図示すると、以下のようになります。

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部位を一個ずつ見ていきましょう(次の順に情報が渡されていきます)。

なお、この経路における部位は全て、NCCとは直接は関係ありません。


・網膜、外側膝状体(LGN)、第一次視覚野(V1)

前述の通りです。


MT

ここからがこの本に書いてある背側視覚路になります。

MTは、「何かが動いている」という運動の知覚を司る部位です(「それが何か」ということは司りません。それは腹側視覚路の担当です)。運動の知覚を司っている脳部位は他にもあるのですが、それは図をご覧ください。

奥行きもコードしており、これが空間認知の素材になります、

また、ここでもニューロン連合の競合が起きます。これはより上位の脳部位では解消されているはずなのですが、ちょっとこの本ではそれがどこにあるのかは書いてありません。ITとSTSという脳部位では勝ち組ニューロン連合だけが扱われるとのことですが、STSMTより上位の脳部位であるとも何とも書いてありません。困ります。


・後部頭頂葉(PP)

空間認知と、それに基づく運動制御を司る部位です。

運動制御・眼球運動などの運動にも関わっていれば、網膜ではなく手足等に紐づいた位置を司る認知地図を持っていたりもします。「数秒後にどんなことをしよう」という意図も司っているのが面白いところです。

たくさんの物の中からある一つを選ぶというある種の選択をも行っています(繰り返しますが、「それがどんな物か」ということは司りません)。


ボトムアップ注意の一つとして、空間的注意を司る部位であるLIPを含むとされています。


MTはPPの他にも、眼球運動の一種であるサッカードにおけるボトムアップ注意(この注意がサッカードに先行する)を司る前頭眼野や、自己運動に伴う視野の流れであるオプティカル・フローや動いている物体を目で追いかける追視を司るMSTに情報を送っています。が、この本ではこれらとPPの関係が定かではなく、またこれらは背側視覚路として記載されているわけではないので、細かい説明は省きます。


前頭前野背外側部

空間・動き・奥行きなど、今までの背側視覚路が処理していた情報を全部受ける脳部位で、前頭前野にあります。


前頭前野(視覚統合)

前頭前野腹外側部と、前頭前野背外側部から、それぞれ情報を受け取り統合する部位が前頭前野にあります。

これがNCCかどうか、またこの脳部位が前頭前野のどこにあるのかは明記されておらず、困ります。


・各種機能(オンライン・システム、ゾンビ・システム、非意識的な視覚運動行動)

今までは脳部位について語ってきましたが、機能についても少し触れます。


この本でいうオンライン・システムは、現時点での入力情報の処理に特化している機能です。意識にのぼらず、短期記憶=作業記憶や宣言的記憶にアクセスしないところが特徴です。

オンライン・システムは身体部位に紐づいた位置を司る認知地図を必要とし、機能の性質上、おそらくはPPを前提とするはずです。


ゾンビ・システムについても説明しなければなりません。直接に意識的な感覚が生じたり、意識的に制御することなしに、機械的な決まりきった作業を行うシステムのことです。哲学の世界でいう「意識はないが行動は普通である」ような、いわゆる「哲学的ゾンビ」のことを念頭に置いて使われている用語です。

ゾンビ・システムは現時点の情報だけを扱う(つまり、オンライン・システムを前提とする)ので、短期記憶=作業記憶を必要としません。また、意識や意識的知覚が介在していないことも先ほど述べた通りです。

意識的な視覚運動行動等は背側視覚路が司っています。


ゾンビ・システムが可能にする非意識的な視覚運動行動の中には、物体認識を必要とするものもあります。

物体認識が意識的知覚にのぼらないような症状を「失認」といいますが、失認患者にある形の「鍵」をある形の「鍵穴」に差し込むという実験をしてもらうと、適切な傾きの差し込み口に差し込むことができます。ということは、物体認識そのものは行われており、しかもそれは意識的知覚されているかどうかとは別に、背側視覚路にも送られている、ということになります(この本では二つの経路の相互作用については基本的に語られていませんが、そう解釈せざるを得ません)。意識にのぼらなくても使い道のあるような知覚は確かに存在するんですね。

意識的な視覚運動行動は、背側視覚路に位置します。今までの話をまとめると、オンライン・システム、ゾンビ・システム、非意識的な視覚運動行動は、背側視覚路のうちPP以上の脳部位が担当している、ということになります。


前頭前野以前(上丘・視床枕)

視覚に関する副経路になります。

これを図示すると、以下のようになります。

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V1以後の機能が失われている患者でも、この経路の機能が残っていれば、わずかながら視覚を基にした行動はできますが、意識的知覚を生じさせることはできません。意識的知覚を生じさせるためには、ここからの刺激だけではニューロンの発火の量と継続時間が足りないのであろう、とコッホは推測しています。


・上丘

視覚の副経路の入口である脳部位です。何らかの処理がされているようですが、この本では上丘がどのような機能を果たしているのかは不明です。


視床

覚醒ボトムアップ注意を司っている脳部位の一つです。覚醒ボトムアップ注意を司っている脳部位は他にもあるのですが、それは図をご覧ください。

特徴あるものを見た際に、自動的に注意が向く、というボトムアップ注意は視床枕が主に担っており、この他にボトムアップな空間的注意はLIPが、サッカードの際のボトムアップ注意は前頭眼野が担っています。トップダウン注意というものもありますが、これはまた後で説明します。

大きく四つの部位に別れており、三つは下側頭葉(IT)と後部頭頂葉(PP)に、一つは前頭前野眼窩前頭皮質前頭前野の一部)に情報を送っています。これによりわずかながら視覚を基にした行動ができるようになっていますが、前述の通り意識的知覚はできません。


視床

視床枕は視床に属しています。感覚記憶は、視床と、前述の下側頭葉(IT)が生み出すものです。これが後に意識的知覚の維持に関わります。


前頭前野以前(嗅覚)

コッホは嗅覚に関する経路を二つ紹介しています。

これを図示すると、以下のようになります。嗅覚特にフェロモンに関する経路は、前頭前野に直接繋がる脳部位を終端とするので、分かりやすさのために、他の前頭前野に繋がる部位と共に載せました。

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・嗅覚(汎用)

嗅覚の一つは汎用的なもので、他の感覚と共に、この本の中で前頭前野の非意識的ホムンクルスとされる部位に情報が送られます。これについては後で説明しますが、意思決定に関わる部位で、NCCからは外れます。


・嗅覚(フェロモン)、視床下部扁桃体

もう一つはフェロモンに関するもので、視床下部や、側頭葉内側部(MTL)の扁桃体に届きます。視床下部ホルモンの分泌などに関わる部位です。扁桃体は他の本ではある種の感情において重要な機能を持つ部位として挙げられますが(興味のある方は調べてみると面白いでしょう)、この本では説明がありません。


海馬

視床下部扁桃体前頭前野全般に繋がっています。他にも前頭前野に繋がっている脳部位があります。例えば、MTLの中では海馬がそうです。

海馬はさまざまな感覚モダリティ様相)の統合を行なっています。風景などの知覚から形を取り出す働きは「統覚」と呼ばれます。そういう意味では、海馬はいわゆる統覚を担っていると言っていいでしょう。


MTLは、視覚処理の階層の上部と前頭前野の両方に密接につながっています。「この位置付けの意味を考慮すると、海馬の一部のニューロン活動は直接、現在の意識の内容をコードしてる可能性が高い」とコッホは言うのですが、現実の症例はもう少し複雑なようです。

即ち、海馬がないと、新しいことを覚えられないか、昔のことを思い出せない健忘症になってしまいますが、健忘症になっても意識的知覚はあるのです。

「おそらく、海馬のその部位が失われてしばらくすると、そのほかの脳の部位が海馬の意識における役割を補うのであろう」とコッホは推測しますが、読んでいる側としてはいまいち釈然としません。

個人的にはやはり知覚と意識と意識的知覚は別のものとして捉えるべきで、海馬は知覚の方に関与しているのは間違いないが、意識には関係していないのだ、と考えたくなります。


この本の中に「MTLからITへのフィードバック」、つまり後ろから前への情報の送り返しの記述があり、ということは逆説的にITからMTLにフィードフォワードで、つまり前から後ろへ情報が送られているはずなのですが、具体的にMTLのどこが受け取っているのかは書いてありません。おそらく今までの記述では海馬がそうなのでしょうが、明記されていないので、これ以上何とも解釈のしようがありません。


・その他

前頭前野は、ITや海馬扁桃体視床下部の他に、頭頂葉(直接的にはPPのことであろうと思われるのですが、他の部位も関係しているかも知れません)や、先ほど少し述べた大脳基底核線条体等)や視床枕四つのうちの一つ、そして運動前野ともかかわりがあります。

V1などの第一次感覚野や第一次運動野とは直接の結合を持ちません。

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