梅田北ヤード開発計画にまつわる梅田貨物線と阪急新大阪線のプロジェクト5題

katamachi2007-02-26


 大阪駅の北側にある梅田貨物駅敷地において、大阪市はビッグプロジェクトを展開しています。いわゆる"梅田北ヤード再開発"。現段階では、国内最大の再開発です。
 1984年に吹田操車場が運用を停止した後、大阪市を中心に検討された構想です。大阪市内のど真ん中にある梅田駅の貨物機能を吹田に移転させ、貨物駅跡50haで再開発をしよう......というのがその趣旨。大阪市国鉄は1985年頃から計画を推進してきたのですが、操車場跡と隣接している吹田市摂津市からは迷惑施設が来ることに反対の声が出ていました。そこで、貨物駅計画を27haと半分に縮小し、残りを自治体などと協力して再開発を行うことで合意。ようやく今年度からプロジェクトが動き始めました。
この計画にあわせて、各社局の鉄道施設にも変更が加えられることになっています。
 現在、発表されているのは以下の5点。

JR関係

 梅田貨物駅の機能の約半数を吹田操車場跡の鉄建公団(旧清算事業団)用地に移転。地元では根強い反対があって、計画を縮小している。07.1.30起工、11年春完成予定。府道中央環状線と連絡する道路も敷設されることになっているが、これも反対運動で槍玉にあっている。なお、騒音防止のため、貨物の入換は可能な限り電気機関車でおこなうことになるらしい*1
[http://www.city.settsu.osaka.jp/section/065_machizukuri/suisou
梅田貨物駅の吹田操車場跡地への移転計画に関する基本協定書
吹田貨物ターミナル駅(仮称)建設事業に係る環境影響評価報告書/suisou_1.html:title=吹田操車場跡地のまちづくり]

 梅田駅が扱っている機能の残り半分は、同じ大阪市内にある両貨物駅へ移管予定。大阪貨物ターミナル駅は拡張の余地なし? 大阪外環状線(城東貨物線)と関西本線(百済駅)を結ぶ短絡線として高架線が建設されている。一方、安治川口駅の敷地はユニバーサルスタジオ建設の際にかなり縮小している。両駅とも大阪市内にしてもアクセスが不便なこともあり、荷主であるトラック事業者からの評判はあまり良くない(むかし取材したときの談話)。東海道本線から貨物列車が入ってくるにしては使いづらい場所にあり、はたしてコンテナの処理が可能かどうかは疑問。

  • 梅田貨物線(新大阪〜北梅田〜福島)の移転

 現在、東海道本線支線の梅田貨物線(「はるか」や「くろしお」も通過)は梅田駅の西側を走っているが、これを2期工事が検討されているエリアを経由させようという構想。92年ぐらいから断片的にマスコミで報道されてきたが、再開発計画の進展でようやくスタートしそうな雰囲気。大阪駅に近いところ、おそらく現在の梅田貨物駅の駅舎があるあたりに新駅を設けることになっている。位置関係からすると、下の四つ橋線の延長線の駅予定地とは別な場所になるだろう。

  • 梅田貨物線の地下化

 現在、大阪環状線に隣接している梅田〜福島〜西九条間は実質的に単線になっており、ダイヤの乱れ、増発が難しい原因になっている。これを地下線として複線化する構想。2004年頃に新聞で報道があったが、2005年の近交審では採用されず。「はるか」や「くろしお」、あるいは安治川口駅行きが増発されるだろう貨物列車、あるいは大阪外環状線新大阪駅から乗り入れてくるかもしれない電車のことを考えると建設した方がいいかもしれないが…… やっぱり費用対効果には疑問も感じる。

阪急・大阪市交関係

 現在、西梅田駅までとなっている四つ橋線を延長する構想。北ヤード開発地内に新駅を設けた上で、西梅田〜阪急十三間2.9km(900億円)に新線を敷設する。経営主体や開発方法、開業時期は未定。"埋め田"ということば語源であったことからも分かるように、梅田貨物駅のある地域は泥湿地帯で(江戸時代は墓地)あり、地盤は軟弱。その上、現在の肥後橋駅あたりから東海道本線阪神本線の下を潜るトンネルを新たに掘らねばならず、意外に工費はかかる。採算はどうなの?
朝日新聞「北ヤード新線、15年にも開業 地下鉄西梅田・十三間」、2007年02月07日http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200702060084.html

 もともと新大阪駅への連絡、京都線のパイパス路線として十三〜新大阪〜淡路間に新線を作る予定があったのだが諸般の事情で頓挫。その代わりに、上記の四つ橋線と連絡し、十三〜新大阪間を復活させようという構想である。事業許可は現在も阪急が持っているが、進捗するか否かはかなり疑問。北貨物ヤードと新大阪駅を結ぶのは梅田貨物線が担ってくれるし、四つ橋線や阪急線と新大阪駅を結ぶ構想にプライオリティーがあるのかも疑問。採算面を度外視してやるほどのことでもないし、十三駅の高架化の方がもっと重要だろう。

 と、鉄道系でもいろいろ企画はされているんです。まだ大阪では鉄道新線バブルは崩壊していません。この5つの鉄道プロジェクトは、またヒマができたら、もう少し詳しくまとめてみます。
 その一方で、この北ヤードの開発自体、勝算があるのか疑問も持たれている。そもそも今の大阪にオフィスビルや商業施設の需要がそこまであるのですかねえ。バブル経済に乗っていた80年代末でも、その名残が残っていた90年代でも計画は全く進まなかったのに……。いま、ATCWTC大阪ドーム今里筋線、大阪オリンピック、そして誰も知らない大阪トランスポートシステムの北港テクノポート線などなど、大阪市がここ20年ほどやってきたバカ・プロジェクトの欠陥が批判されてきているのに、まだ続けるか。そこらにもツッこみたかったのですが、病院での検査のため明日から不在なので、それはまた別の話。

*1:下で示した協定書によると、「吹田貨物駅での貨物車両入替作業は、可能な限り電気機関車で行う。なお、環境負荷を低減した新型入替用ディーゼル機関車の開発を促進し、開発後は吹田貨物駅で積極的に採用」とある。