屁理屈の詩情

朝9時起き。明け方に寝たので、まだちょっと眠い。下読みタイム。残りを全部読んでしまうつもりだったが、じっくり読む必要のある作品にぶつかり、それを読了するだけで時間となった。タンメンをつくって食べると、出かける時間を過ぎていた。東京駅で東海道線に乗り、大船へ。そこで横須賀線に乗り換えて、逗子へ。車中では鈴木則文『トラック野郎風雲録』(国書刊行会)を。ぐいぐい読ませるなあ。


逗子駅で、たけうま書房さんと待ち合わせ。バス乗り場を探し、それらしいバスに乗って運転手に「旧役場は行きますか?」と訊いたら、「行かない」という返事ならまだしも、「なにそれ?」と答え、お客さんに「旧役場って知ってる?」と投げるヒドさ。「これは行かないよ」とお客さんに教えてもらい、次のバスでも訊くが、そこでも「行かないよ、前のバスに乗りな」とぶっきらぼうな応対をされ、やっと目的のバスに乗り込む。いちおうそこでも運転手に訊いたのだが、「うん」と云われただけ(このバス会社の社員教育って……)なので、ほんとに合っているのかと不安になったころに、旧役場に到着。


お寺の境内を抜けて、隣の神社の中に目的の〈一色会館〉があった。町内会の建物らしい、木造二階建てだが、側面の「一色会館」という書体が戦前の看板建築みたいで面白い。あとで、片方の窓を開放するとそこがステージになり、向かいの階段に座って芝居を観るのだという。この建物の中で「はやま一箱古本市」が開催中なのだ。


今回は2回目。昨年春にも来たたけうまさんによれば、かなり参加店が増えている。畳の上に持参したゴザなどを広げそこに本を並べたり、棚を置いたりしている。「一箱」の概念はもはやないが、これはこれでオモシロイ。店主は近所に住んでいる人が多く、家族や犬を連れて参加している。あちこちで話がはずんでいる。不忍の一箱にも出されたという「ゆず書房」さんで、常盤新平編訳『サヴォイ・ホテルの一夜』(旺文社文庫)、笠原和夫『破滅の美学』(幻冬舎アウトロー文庫)を各200円で買う。葉山でブックサロンを営む「サウダージ・ブックス」さんに挨拶。来月取材に行くことになっている。入り口近くの「coro」はイイ本が100〜300円で、『SFムービー史』(芳賀書店シネアルバム)のカバーなしを100円で買う、また、屋号忘れた女性の箱で『世界の映画作家33 ルビッチュとワイルダーアメリカ喜劇』が100円で買えたのは嬉しい。ひと癖ある住人が多いという印象のある葉山だが、さすがに出す本も特色がある。終わりごろに来てコレだけ買えたのだから、朝から来たらもっと収穫あったかも。奥ではワインの試飲会をやっているというのも、なんとなく葉山っぽい雰囲気。2階にも4組ほど出ていたが、あがって来る人が少ないのでちょっとかわいそうだった。回っていると、神保町〈ダイバー〉の女性に声をかけられる。


ひとめぐりして、事務局のTさんに挨拶。今回は「食と酒」という特集で、それに関する本が多く出ている。参加者のエッセイを載せたパンフレットも発行している。昨年この企画を進めた用美社のOさんを紹介される。用美社といえば、『加藤一雄の小説』の刊行を予告しながら、なかなか出ないので有名(?)だ(なにしろ2007年にこんな記事がある。http://3gatsu.seesaa.net/article/67048478.html)。「まだ出ないんですか?」と訊くと、「もう手を離れました。7月には出ます」という返事だった。本体3000円も予告通りということ。こんどこそ確実そうだ。


バスに乗って新逗市駅へ。京急で黄金町。会場まで中途半端に時間があったので、前に〈横浜日劇〉のあったあたりをブラブラ。〈シネマジャック&ベティ〉が健在なのは何より。その横にあった洋食屋兼喫茶店みたいな古い店は姿を消していた。関内の〈なぎさ書房〉で『パンドラの匣』第2号(1977年)を1000円で買う。特集は「恋の研究」。何号か持っているけど、これは未所持だったはず。たけうまさんに〈まったり屋〉という古本カフェを教えてもらう。今日は時間がないので、こんど行こう。


〈試聴室〉へ。今日はかえる目のライブ。アルバム2枚は愛聴しているが、ライブはなぜか予定が合わず、今回が初めて。客は15人ほど。かえるさん(細馬宏通さん)はステージの端っこにちょこんと座り、あとの三人(宇波拓=ギター、中尾勘二=ドラム、クラリネット、木下和重=バイオリン)がそれを囲むように椅子に座る。かえるさんがつぶやくように歌うと、三人が後ろから覗きこむようにして演奏し、客はそれを遠巻きに眺める。ライブというよりは、なんだろう、飲み屋で独り言いいつつ飲むおっさんの実況中継を見ている感じ。だからと云って、アナーキーなのではなく、演奏のレベルは高く聴いていてとても心地よいというのが、かえる目の凄いところだ。というような説明ではきっと伝わっていないのが自分で判るのがもどかしいな。


かえる目は、かえるさんの鼻歌がそのまま曲になっていると云ってもいいが、曲間のかえるさんの喋りは屁理屈の上に屁理屈が重なって荷崩れを起こしたようなおかしさで、いつも無表情な中尾さんがのけぞって笑っていた。その屁理屈が歌にも反映されているのだが、それがふしぎと詩になってるんだよなあ。黄金町を歌ったという新曲の「たぬき」も、抽象的な表現ばかりなのに、なぜか、情景が目に浮かぶのだ。その辺りが、かえるさんと研究者で文筆家の細馬宏通氏の接点だという気がするのだが、それもうまく表現できない。まあ、「ツイッターにそのまま掲載できる名言」というのを、かえるさんがMCで連発していたのでそれでいいか(大半忘れてしまったけど)。


休憩挟んで2時間近くやったか。お喋りの時間が長いのも、かえる目のライブの重要な要素なのだろう。終わって、かえるさんに挨拶(首からかえるを広げたようなポシェット? がぶら下がっているのは、この生き物嫌いのぼくには苦痛だった)して、外に出る。近くに移転した〈猫企画〉に寄りたかったが、今日は休みだというので、いつもの〈第一亭〉へ。店の人たちはテレビの卓球に夢中。モツ炒め、麻婆豆腐、青菜炒めと食べ、角煮丼とラーメンを分けて食べ、満足。ホント、何でもウマイんだよなあ。この辺りにはほかにも入りたい店が多いが、ココに来るとそれだけで満足してしまうのが難と云えば難。一日付き合ってくれたたけうまさんと別れて、京急で品川へ。車中で『トラック野郎〜』を読み終える。

今日のつぶやき


02:01 ううむ、なんだか他人事のように、イイはなしだなー。RT @pippoem 【P-wave 土曜更新】5/29 "古本ざしきわらしが行く" vol.5= pippo-t.jp古書現世 篇: 第2部 店主さまの思い出ひとつ #

03:17 @taguxeicoooO 目が回るほど! それは光栄です。6月12日に京都で、この続きっぽいトークを別メンバーでやります。よろかったら。bit.ly/9GFkMh #

03:18 やっぱり素晴らしき狂信者ですよ、このひと。RT @pippoem @kawasusu なにをゆってるんですか〜! 地球上にないモードはわれわれで創り上げてゆきましょう!笑(例:古パンモードなど) #

03:29 「週刊ビジスタニュース」最終号のオバタカズユキ「ライターの事情2010」が面白い。悲惨な例をあげるだけじゃなくて、いま必要とする「場」がどんなものかを論じている。かつてほど景気イイ話にはならないにしても、『ライターの事情2010』というムックを出すべきかと。 #

03:31 ヘンな時間に目覚めてしまったので、『SPA!』の書評を書いた。この数年、完全に朝型になっていたので、夜中に書くことは珍しい。 #

04:27 ムトーにちゃんとブログを書くよう云われたので、素直に更新。26日と28日の分。bit.ly/bo43bo #

04:29 @taguxeicoooO あ、そうですか。じゃあ会場で声掛けてくださいね。最近気に入っているミニコミ、フリペの現物も持ち寄る予定なので、お楽しみに。 #

04:31 神保町シアター6月19日(土)〜7月16日(金)特集「川本三郎編 映画少年の夢」のラインナップがすごい。全然聞いたことのない作品が多いぞ。『猫が変じて虎になる』なんてタイトルも。bit.ly/ag6sgA #

04:37 @kumonoi ぼくも明日、葉山の一箱見に行きますよ。3時ごろ。逗子の古本屋ってドコですか? あるなら覗いてみたいけど。 #

04:40 フォローしている/されているが、それぞれ2000人以上いて、総ツイート数が4って、どうやったら、そんなことになるのか!? #

11:51 @kumonoi  どうも。Bは以前行ったことがありますが、イイ店です。ただ逗子駅からは遠いですね。Aは行ったことがあるような気もするけど、別の店だったかもしれない。 #

23:14 ひとりだと遠くて疲れるところだけど、一緒に来てくれてよかったです。RT @takeumabooks ナンダロウさんと、葉山一箱古本市かえる目ライブ。楽しかった面白かった! #

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