コクーン歌舞伎『桜姫』

kenboutei2005-06-25

渋谷コクーン歌舞伎、『桜姫』夜の部。
コクーン歌舞伎は大好きで、これは串田和美がしっかりと原作を読み込んで再構築しているので、歌舞伎の再発見のような新鮮な興奮を味わわせてくれるからだ。その意味では、むしろ真っ当な歌舞伎だとも思っている。今回は初めて勘三郎抜きで行われるが、作品が南北の「桜姫東文章」なので、何の心配もなく、期待して常時喧噪の渋谷に赴いた。
結論から言うと、まずまず面白かったが、これまでのコクーン歌舞伎の爆発力は感じられず、地味な印象は拭いきれない。
桜姫という、歌舞伎の中でも極めて特異で魅惑的なキャラクターを、活かしきれていなかったとも思った。
見世物小屋の設定で物語を見せるという演出コンセプトはなかなか良いと思う。特に序幕の桜姫登場のシーンなどは、小さな箱の中で薄い布幕に覆われ、まさにフリークスをこれから見せるというような感じで、ちょっとゾクッとさせられた。非人の世界を割合リアルに描いたのも興味深かった。
ただそれが、桜姫と清玄・権助の物語とはうまくシンクロしておらず、時に重々しく冗長にも感じてしまった。(そこを、エキセントリックな扇雀の長浦と、無意味でおかしい勘太郎七之助らの追い掛けっこでカバーしていたようにも受け取れた。むしろ彼らが出ている場面になるとホッとしたのも事実。)
岩淵庵室の場で、廻り舞台をうまく使って話を進めていくのは見事。一つの小屋が、見る角度を変えることで随分違った印象を与えるのが面白かった。この辺は、『三五大切』の殺しの場や、『三人吉三』のお嬢の「月も朧に・・・」の場面同様、串田演出の最たる歌舞伎的効果だと思う。
福助の桜姫、初役ではあるが、退廃的なイメージはぴったり。しかし、主役であることの重責からか、今ひとつはじけていなかったのが残念。「風鈴お姫」はもっと面白くなると思っていたのだが。(福助の気負いは、終演後のカーテンコールの表情からも感じ取れた。疲れきったような感じで、笑顔は全くなかった。)
橋之助の清玄、権助の二役は破綻がない。
勘太郎の悪五郎は、赤っ面の隈取りが見事。見ているだけで気持ち良い。二役のお十は、余計だったかも。仕どころのなかった芝のぶに当ててもよかった。
七之助の粟津七郎、精悍な顔つきに惚れ惚れ。だんだん立派になってくる。間近で見れてうれしい。
源左衛門が奮闘。
口上役のあさひ7オユキ(初めて知りました)は、ユニークな役どころ。ラストでサックスまで演奏していたが、どうせなら最初からバリバリ吹きまくってもらっても良かったのではないか。
平間の最後列で観たが、観客と舞台の近いコクーン歌舞伎を実感。舞台装置や人物の動きなど、相変わらず凝った演出をしているので、本当は何度か繰り返し観てみたいところでもあるが、もう、明日で千秋楽なのだった。再演を期待する。(もっと面白くなるはず)