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唐沢俊一検証blog

2009-06-25

サラマンダー・ウォーズ。

19:07

 『ラジオライフ』8月号の唐沢俊一の近況欄を読んで驚いてしまった。

8月16日(日)、大阪・トリイホールで行われる演芸会に出演。快楽亭ブラック坂本頼光旭堂南湖といいう(原文ママ)、知る人ぞ知る濃い面々と共演します!

 8月16日といえば夏コミ3日目でもある。…ということは、唐沢俊一は今年のコミケに出ないのだろうか。もしくは、コミケに午前中だけ出てそのまま大阪に行くとか。…ハードスケジュールだなあ。病み上がりなんだから無理しないでほしい。まあ、コミケの前にはメールでアポを取るのでなんとか都合をつけてもらえればいいんだけど。


 では本題。今回は『フィギュア王』137掲載の『唐沢俊一トンデモクロペディア』第50回「SF的風刺の元祖」を取り上げる。

 古今書かれたSF小説の最高傑作は何か、と言うと、さまざまな人がさまざまな主張を述べるに違いない。

 ある人は『幼年期の終わり』を最高傑作と言い、ある人は『われはロボット』こそ、と言って譲らないかもしれない。ニューウェーブ派であれば『結晶世界』の魅力をとき、スペース・オペラファンなら『宇宙の戦士』を挙げ、……とキリがないだろう。

 『宇宙の戦士』はスペース・オペラなのだろうか? スペース・オペラと言ったら『レンズマン』や『キャプテン・フューチャー』などを挙げるべきなのではないだろうか。

 この後、カレル・チャペック山椒魚戦争』について説明が始まる。

 チャペックは、現代SFには、“ロボット”という用語を発明し、提供したことで知られている。戯曲『R・U・R』(ロッサム万能ロボット会社)に登場させた人造人間に、彼はチェコ語で労働を意味する“ロボータ”から造語した“ロボット”という名をつけたのだが、これにはまた一説あって、ロボータではなく、同じく賦役労働を意味する“ロボチッチ”が語源だ、という説もある。どちらでもいいようなものだが、“ロボータ”でよかったような気がする。“ロボチッチ”ではちょっと語源としてありがたみがないように思えてしまうのである。

 「ロボット」の語源は、チェコ語で「強制労働」を意味する“robota”、またはスロヴァキア語で「労働者」を意味する“robotonik”から来ているとされている(ちなみに「ロボット」という呼称を考えたのはチャペックの兄のヨセフ)。“ロボチッチ”が語源という説は調べた限りでは見当たらなかったが、どこかにあるのだろうか。そもそも“ロボチッチ”ってどのように表記するのか。

 この作品はドイツロシア、そして多くの共産主義国で発売を禁止されたり、大きな削除を受けたりといった扱いをされた。いうまでもなく、山椒魚共産国家のパロディと受け取った政治指導家たちの手によるものである。終盤近くに、山椒魚のリーダーの名をかたる人間の独裁者・アンドレアス・シュルツなる人物のことが出てきて、彼は第一次大戦のときはどこかの軍で曹長を勤めていた、と書かれている。誰のことを言っているかは明白だろう。

 『山椒魚戦争』が執筆された1935年ナチスが台頭していた時期なので、チャペックがナチスヒトラーを念頭に置いて書いていたことは間違いないし、全体主義批判として読むのが妥当であろう。。…しかし、文章のアタマは「共産主義国」について書いているのに、どうして締めがヒトラーをモデルにした人物のことになっているのか。なお、『山椒魚戦争』の中でロシアが水没するシーンがあるため、ソ連時代に発行されたロシア語版『山椒魚戦争』では該当箇所が削除されている。 

 SFが、こうした現実世界の風刺になっているという設定は、『宇宙の戦士』などの作品の直接の元祖でもある。最近、そういった、この現実を二重写しにする作品が少なくなった。いま、あらためて、この74年前の作品を読むと、これがSFというものだ、という新しい感動を味わうことができる。

 「少なくなった」と言えるほど唐沢俊一が最近のSFを読んでいるのかどうか疑問。あと、唐沢は『山椒魚戦争』が書かれた年を「1936年」としているので、「74年前」だと計算が合わない。

 そもそも『山椒魚戦争』は今回のタイトルにある「SF的風刺の元祖」と言えるのだろうか。H・G・ウェルズSF小説にも風刺の要素はあるし、『山椒魚戦争』以前にも、たとえばオルダス・ハックスリー『すばらしい新世界』がある。あと、「現実世界の風刺」をもって「これがSFというものだ」とするのはSFを狭く解釈しすぎているような気がする。山本弘会長に話を聞いてみたいような。ついでに書いておくと、今回のソルボンヌK子のイラストはいつにも増して雑。

…まあ、唐沢俊一も「小説家」なんだから、「現実世界の風刺」になっているSF小説を書いてみたらいいと思うけど。ちなみに『山椒魚戦争』の英語版タイトルは“War with the Newts ”。…イモリ?

山椒魚戦争 (岩波文庫)

山椒魚戦争 (岩波文庫)

宇宙の戦士 (ハヤカワ文庫 SF (230))

宇宙の戦士 (ハヤカワ文庫 SF (230))

すばらしい新世界 (講談社文庫)

すばらしい新世界 (講談社文庫)



 

J 2009/06/25 19:28 www.chukyo-u.ac.jp/tosho/contents/culib-news/cn58.pdf

robotという語には興味深いものが込められています。チャペックはほとんど人間と見分けがつかない人造人間をめぐる作品を構想した時、兄のヨゼフにそれを話したところ、兄がrobotという名を与えたと言われます。どのように発想したのでしょうか。結果的には単純なことですが、着眼点には鋭いものがあります。チェコ語のrobotaという単語からaをとって造ったのですが、robotaという語は、「強制された労働」、「単調な骨折り仕事」という意味を持っています。さらにこの語は動詞robotiti(働く、〔単調に〕あくせく働く)に由来します。そして、それは古代教会スラブ語のrabota(奴隷の状態〔身分〕、苦役)に遡ります。興味深いことに、ドイツ語のArbeitもこれに関係があるとされています(古高ドイツ語arabeit)。

kimllakimlla 2009/06/25 19:32 本題と全く無関係ですいませんが、サンショウウオ(除オオサンショウウオ)は基本的に東アジアが分布域でして、ヨーロッパや北米にはほとんどいません。
ペットなどで流通しているヨーロッパ産のファイアサラマンダーなんてのもいますが、これは分類としてはイモリになります。
そう考えていくと、実は「イモリ戦争」の方が訳語としては正しいのかもしれません。

gurenekogureneko 2009/06/25 20:16  『山椒魚戦争』、ハヤカワSF文庫版のあとがきでは、ナチスを直接のモデルにしていると思われる作中の山椒魚問題が、後にチェコを支配した共産主義にも当て嵌めようとすれば当て嵌まるという主張が、過剰とも思える熱意で力説されています。
 本文を読まずにこのあとがきを斜め読みしてしまうと、確かに共産主義をパロディ化した作品に思えてしまうのも無理はありません。

イニイイニイ 2009/06/25 20:22 2ちゃんねる唐沢スレにkensyouhanさんの顔写真が貼られていましたね。思ったよりずっと男前なので驚きましたw
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/books/1245769597/369

774774 2009/06/25 21:27 ラジオライフの締切り前に告知だけ打ってしまったんですかね。
大阪で演芸会のあと夏コミとは随分と強行軍ですね。
それくらい執筆活動と健康管理にも力を入れてくれれば良いのですが。

藤岡真藤岡真 2009/06/25 21:48 >大阪・トリイホールで行われる演芸会に出演。

 初めての会場なので下見を兼ねて前日入り、快楽亭、坂本頼光、旭堂南湖と焼肉やで前夜祭。マッコリサワー5杯。大阪にはホッピーがないんである。

 なんてことになりそうですね。

miduchimiduchi 2009/06/25 22:04 昔ヨーロッパにいた、絶滅した大型サンショウウオ(日本のオオサンショウウオと近縁)だとキュビエが同定した化石の子孫という設定なので、正確には山椒魚でいいんじゃないでしょうか。俗な呼び方でイモリなんでしょうか。
「イモリ戦争」だと、ホリプロが舞台になりそうで、なんとなくいやです。

altnkaltnk 2009/06/26 01:19 まいどのことですがこんなあやふやな記憶だけで書かれた雑文の検証ご苦労様です。"いま、あらためて、この74年前の作品を読むと、これがSFというものだ、という新しい感動を味わうことができる。"突っ込む以前にこんな自分語りに付き合っていられません。

yonoyono 2009/06/26 02:44 共産党とナチスを混同してるんですかね?

直接対決ない可能性が出て来たんですね
…はたして偶然なんでしょうか

kokada_jnetkokada_jnet 2009/06/26 11:22 gurenekoさんが書かれていた、
>『山椒魚戦争』、ハヤカワSF文庫版のあとがきでは、ナチスを直接のモデルにしていると思われる作中の山椒魚問題が、後にチェコを支配した共産主義にも当て嵌めようとすれば当て嵌まるという主張が、過剰とも思える熱意で力説されています。
この、栗栖継による訳者あとがきは、山形浩生に強烈に批判されていましたね。なお、この山形氏による「山椒魚戦争」論は、唐沢の百倍面白いので、是非みなさん、ご一読を。
http://cruel.org/cut/cut199901.html

また、『山椒魚戦争』の影響を受けた小説としては、小松左京の『日本アパッチ族』が有名なのですが。なぜにそれを取り上げずに、『宇宙の戦士』なんでしょう。知らなかったでしょうか。

トンデモブラウトンデモブラウ 2009/06/26 11:33 まさか「国家社会主義ドイツ労働者党」というのを共産主義政党と思ったとか。
最近は、どうやら頭が悪いだけじゃなく、身体も悪いことが判明してしまって、橋下府知事ならずともガッカリすること請け合い。(いいとこ、一個もないじゃん・・・)
あぁ逆か、身体が悪いことは解ってたけど、頭の方がもっと悪かったのがバレたんだった。

エイチエイチ 2009/06/26 13:19 東国原知事を見てると、自分でなんでも分かったつもりになっている人というのは、手の施しようがないんですね。
医師の忠告も聞かない、本気で叱ってくれる友人もいない、おまけに心臓も悪いとなれば、唐沢さんに対して、本当に何も出来なくなってしまいましたよ。
このままの状態で直接対決すれば、本当にぶっ倒れてしまうんじゃないでしょうか?

kokada_jnetkokada_jnet 2009/06/26 14:03 連投すみません。
『われはロボット』をSFのベストにあげる人は、まず、ほとんどいないような。アシモフなら『ファウンデーション』(銀河帝国の興亡)シリーズのほうが、ベスト10の常連です。ハインラインでも『宇宙の戦士』より『夏への扉』のほうが圧倒的に人気があります。

こちらに「SFマガジン読者投票ベスト」のリストをあげられている方がいますが。
http://d.hatena.ne.jp/consigliere/20050720/1121821940
唐沢があげている『幼年期の終わり』『結晶世界』はまあいいとしまして。普通は他に、『火星年代記』『ソラリスの陽のもとに』などが、候補にあがるはずです。

藤岡真藤岡真 2009/06/26 14:56 >kokada_jnetさん
『われはロボット』と『宇宙の戦士』をDVDで見たのでしょうね。

粗忽亭主人粗忽亭主人 2009/06/26 15:39 「山椒魚戦争」が「SF的風刺の元祖」とは、えらく近い「元祖」ですね。そういうものならば、「ガリバー旅行記」をはじめ、もっと古いものがいくらでもあるでしょうに。
日本のものでさえ、「風流志道軒伝」なんかがありますし。

kensyouhankensyouhan 2009/06/26 21:10 コメントありがとうございます。
『博覧強記の仕事術』を入手したので次回から検証をスタートします。ちゃんと発売されてましたよw
それにしても、これはなかなか凄い本だ…。

>Jさん
「ロボット」の語源として考えられているのは主に“robota”のようですね。“robota”または“robotonik”ならわかるんですけど、「ロボチッチ」はどうなんだろう。

>kimllaさん
>miduchiさん
サンショウウオだと井伏鱒二の小説に代表されるのろくさいイメージがあるんですけど、イモリだと今でも通用するイメージがありますね。
http://davidszondy.com/ephemeral/2009/04/war-with-newts.html
ただ『山椒魚戦争』という邦題は名訳だと思います。

>gureneko さん
時代背景を考えるとナチスをモデルにしたと考えるのが妥当でしょうね。一応作中で共産党も出てくるんですけど。

>イニイさん
あー、たぶん、冬コミで唐沢のブースに行った時に撮られたんでしょうね。敵もなかなかやるなあ。
「ブラボー!おお…ブラボー!」と褒め称えたいです。

>774さん
演芸会が昼の部なのか夜の部なのかによるでしょうね。
昼ならコミケに出るのはまず不可能、夜なら午前中はコミケに出てそのまま新幹線で大阪に向かえば一応は可能、という感じですね。もしかするとコミケは1日目か2日目に出るとか。

>藤岡さん
そういえば去年の夏も大阪で逃亡事件を起こしてたんですよね。あれからいろいろありすぎて、もう既になつかしく思えています。

>altnk さん
今回は一応本にあたってはいるようです。引用もありますから。

>yonoさん
「対決」だなんて考えなくて気軽に会ってくれればいいんですけど。

>kokada_jnet さん
あー、他の人と比較するとたちまち唐沢俊一のダメさがわかってしまってどうも。
SFももっと読まなきゃなあ。

>トンデモブラウさん
なんとかいいところを探したいんですけどね。

>エイチさん
とにかく健康を第一に考えて欲しいです。

>粗忽亭主人さん
『ガリバー旅行記』や『ユートピア』をSFの元祖とする見方もありますね。

gerlinggerling 2009/06/27 01:08 人間だったら父親だけどロボットだったらロボチッチ、なんじゃないですかね

はりはり亭はりはり亭 2009/06/27 01:53 一応東欧には〜チッチ(-cic)という語尾の名前が存在するようですが...(例:クラシックの名指揮者ロヴロ・フォン・マタチッチ、同じくクラシックの古楽指揮者ルネ・クレメンチッチ、出身は旧ユーゴのあたりのはず)そのあたりのことをうろ覚えに覚えていて混同したのかもしれません。Jさんご指摘の「robotiti」はかなり深いのであるいはこちらかと。

kensyouhankensyouhan 2009/06/30 01:12 コメントありがとうございます。

>gerling さん
ロボダッチというのもありますが。

>はりはり亭さん
“robotiti”ですか。“rabota”→“robotiti”→“robota”。
それなら“rabota”が語源ということになりそうですが。