ノンフィクション作家。1963年東京都生まれ。 関西学院大学法学部法律学科卒業後、広告会社、出版社、編集事務所を経てフリー編集者兼ライターとして独立。 『絶対音感』で第4回小学館ノンフィクション大賞受賞。2007年、『星新一』で講談社ノンフィクション賞、日本SF大賞、大佛次郎賞を受賞。 また、真中瞳主演で映画化された、「ココニイルコト」のもとになったエッセイは、『なんといふ空』に収録。
証し 日本のキリスト者 作者:最相 葉月 KADOKAWA Amazon まあとにかく分厚い そして内容が人様々ではありながらつまるところいかに神を信じるに至ったかであり またその過程はあまり言語化されない部分が多いような感じで 正直読み進むのに少々難儀した 信じる人は信じるのだな そして私からはちょっと遠いところだな という感想
「たとえ失望に終わったとしても、諦念が明日を生きる力に転換することだってあるのです。」(読売新聞2023年5月18日 人生相談 最相葉月さんの回答より抜粋) 最近になって親に遊んでもらった記憶がないことに気づき、両親から愛されていなかったのかと疑問を持った30代の主婦からの相談に対し、回答者の最相葉月さんが、気持ちを整理するためにも親に手紙を書いたらどうかと提案した際に添えた言葉。 どんな状況にも当てはまる言葉で、グッときた。 精一杯の努力が報われなかったとき。 頑張った仕事が誰からも認められなかったとき。 信頼していた人から裏切られたとき。 ・・・いろんな出来事から起こる失望。 失望に沈み、…
最相葉月「星新一 一〇〇一話をつくった人」読了。 小説新潮2007年11月号掲載の最相葉月と新井素子の対談と、最相葉月の著書「仕事の手帳」に収録されている、星新一の評伝を書いたときのエピソードを綴った文章も併せて読んだ。 星新一と言えば中高生が一度は通る読書体験というイメージで、世代的に最相葉月より七歳ほど下の自分も御多分に漏れず、中学生くらいの頃に文庫本を数十冊買って読んでいた。今もそれは実家に置いてあるが、もう三十年以上読み返したことはない。 それでも、この本に出てくる星新一の文章の断片はどれも記憶していた。十代の頃の読書がいかに決定的に重要なものかが分かる。 星新一の父・星一のことや、S…
この世界に生まれてきた人は、みんな経験している胎児の時のお話。 自分がお母さんのお腹の中にいた記憶は全く残っていない。 胎児は生物の進化をすべて辿って、10か月で人間の形になって出て来ます。 最初は卵のような形をしていて、勾玉になり、ウーパールーパー!?の時期があり、 少しずつ人へと近づいていきます。 水の中でどうやって呼吸しているんだろう? ごはんを食べずにどうやって生きているの? おしっこやうんちはどうしているの? など、子どもが疑問に思うようなことを取りあげ、深い話をしてくれているところが 本書の素晴らしいところ。 私が一番驚いたのは、胎盤を通して、子どもから母親に、父親の遺伝子が移行し…
●5月某日: 雨。なっかなかの大雨。午前中、「オンラインでchit-chatブレストミーティング」主宰。6人でお話、1時間はあっというまだが手ごたえあった、よかった。話すのは大事。N事務所まで徒歩15分でパンツの膝下がプールにでも入ったかのように‥‥。『セラピスト』の読書メモ。夜ごはんは、ギョウザ、キャベツと卵スープ、サラダなど。 note.com ●5月某日: N事務所出勤、電話打ち合わせなど。帰宅後、執筆しつつ『Butter』リリースのカウントダウン! 45分に、なんかトーストにバターをトッピングするタリョラ的な牧歌的バラエティが始まってウケるw メンバーと一緒にカウントダウンして、そのま…
戦後のカウンセリング史と日本人同士のコミュニケーション特性、そしてここ30年くらいの心の病の流行と社会定義の変化まで振り返ることのできる、内容の濃いドキュメンタリーでした。 なかでも言葉と思考の関係性について話されている部分が興味深く、あとがきでこのように語られていました。 言葉によって因果関係をつなぎ、物語をつくることで人は安住する。しかし、振り回され、身動きさせなくするのもまた言葉であり、物語である ━━。 中井久夫のそんな言葉が取材中、頭を離れなかった。 それは、ノンフィクションといいながらも、自分の見立てやストーリーからはみ出るものを刈り取る行為を意図的に、あるいは無意識のうちにしてい…
でも、1001編を書き上げてからは、家族で過ごすことが多くなり、心は少し和らいだようだった。~中略~。 ある日、若い編集者が家にやってきたとき、壁に飾っていたピカソやビュッフェのリトグラフを見て驚かれたことがあった。 すると新一は、「いやあ、ほんとうの楽しみはこれなんだよ」 といって、家族のアルバムをうれしそうに見せていた。 人の書く星新一はどれも香代子の知らない顔ばかりだったが、ようやく家に戻ってきてくれたような気がした。(最相葉月『星新一 1001話をつくった人』新潮社、2007) こんばんは。上記の引用に「2007」と打ち込みながら「もう10年以上も前のことかぁ、最相葉月さんの『星新一 …
『母の最終講義』(最相葉月 著)ミシマ社 ある特殊な感覚の謎を探る『絶対音感』や、心の治療のあり方に迫る『セラピスト』、日本に暮らすキリスト者に取材し信仰とは何かを問う『証し』など、幅広い題材のノンフィクションを著してきた最相葉月さん。デビュー30周年記念として編まれたのがエッセイ集『母の最終講義』だ。 【写真】この記事の写真を見る(2枚) 最相さんが20代の頃に若年性認知症になった母が、コロナ下に亡くなった。その母の介護をめぐる章が表題となっている。 「私のノンフィクションはほとんどが書き下ろしなんです。ライターの仕事を始める前から母の介護をしていたのでそうせざるを得なかったのですが、書き下…
毎週日曜日は、この一週間( 3/11~3/17)に週刊誌や新聞などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPなどをご覧ください。 今週の書評本 *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者.編者 出版社 税込価格 書評掲載回数(②回以上を表示) ◆サンデー毎日「遠回りの読書」: 3/24 号 2 冊タイ飯、沼。 髙田胤臣 晶文社 3,520 ③パリの「敵性」日本人たち 脱出か抑留か 1940-1946 藤森晶子 岩波書店 2,420 ② ◆女性自身「今週の本」: 3/26 号 4 冊K+ICO 上田岳弘 文藝春秋 1,760 ②暇と退屈の倫…
精神医療、臨床心理学にかかわる多くの関係者を取材、自ら大学院に学び、中井久夫のクライエントとなって箱庭療法や風景構成法なども経験。河合隼雄、中井久夫という臨床心理学の泰斗の活動をはじめ、カウンセリングの歴史的な発展過程や臨床心理学、精神医療の実際と課題を詳細にレポートする労作。 人間の精神、心理は、本当に複雑で、安易な一般化を許さない。だからカウンセラーは、時間をかけてクライエントに向き合う必要があり、また、経験やクライエントとの相性が重要になる。 精神科医、カウンセラーの仕事の困難、求められる覚悟の重大性がひしひしと伝わってくる。 セラピスト(新潮文庫) 作者:最相葉月 新潮社 Amazon
キリスト教の牧師を30年近くやっているが、ぼくの話は「証し」ぽくない。難解な理屈っぽいことは語らないが、「ぼくはこう信じている」というよりは「聖書によれば、神はぼくたちにこうしてくださる」ということを中心に述べる。 具体的には、神は無条件でぼくらを愛してくださる、神はいつでもどこでもともにいてくださる、ということだ。 けれども、「神」を主語にする語りだけでなく、「ぼく」「わたし」を主語にしたメッセージも教会や信仰生活では求められる。そのお手本として、この書にある135人の証を読んでみようと思った。 一挙にではなく、少しずつ頁をめくり、一年かけて、昨日ようやく読み終えた。1100頁。 神学書には…
今日の東京株式市場で、日経平均株価が史上最高値を更新しました。終値は前日比836円(2%)高い3万9098円、バブル期の1989年12月29日につけたこれまでの最高値(3万8915円)を上回り、初めて3万9000円台にのせました。日経新聞電子版に書かれていたこの記事を、記念に書き残しておきます。とはいっても、私のような庶民には、まるで遠い世界の出来事のようです‥。 さて、昨日の続きです‥。2月16日(金)の朝日新聞一面コラム「折々のことば」は、17日に続いて最相葉月さんの「過去は過去、今は今。今日から始まる思い出だってある。」という「ことば」で、いつものように鷲田清一さんの、次のような解説があ…
一時、雷が鳴って、大地を打つように雨が降りました‥。 さて、今日は町立図書館に行って、2月11日(日)から17日(土)までの朝日新聞一面コラム「折々のことば」を、まとめ読みしてきました。行きは雨は止んでいたけれど、帰りは傘がほとんど役に立たず、ずぶ濡れになりました。(トホホ) この一週間で印象に残ったのは、三つの「ことば」でした。まず、2月15日(木)は、最相葉月さんの「何かあって責任を問われるとしたら、行ったことではなく、行くにあたってどこまで準備できていたかに対してだろう。」という「ことば」で、いつものように鷲田清一さんの、次のような解説がありました。 『戦禍や感染症に苦しむ人々の様子を知…
令和四年は全面中止となったのだから、数年来の習慣というには当たらない。当たらないがしかし、昨年のえんぶりがじつに愉しかったため(拙ブログ「岡目の一目~えんぶり復活(3)」参照)、仕事の都合で行けなくなったのには(予算も休みも組んでいたのに!)、ほとんど呆然とした。いくら身過ぎ世過ぎのためとはいえ余りに没義道な仕打ちではないか。 と歯噛みしかけて、いやいや長者山新羅神社の祭礼であるえんぶり、怨み言は神への非礼と思い返す。参上叶わぬならば遠く神戸で神を称え豊饒を祈ぎ奉るに如かず。すなわち、YouTubeで早速公開された動画を大音量で流しつつ、一人居間にて摺り、歌う。まるで「蘭陵王」における内田百閒…
今朝の新聞で目にした折々のことばに、電撃が走ったので、ご紹介する。 最相葉月さんは、デビュー30周年を迎えるノンフィクション作家だ。 『過去は過去、今は今。今日から始まる思い出だってある』 普通の文章では、「過去よりも未来よりも、大切なのは今この時」とある。 それが、「今日から始まる思い出だってある」ときた。 その理由は、この文章が、ご自身のお母さまの介護に、若年性認知症を患いだしてほぼ30年の長期間を意味する。その間、遠隔地から通い、その後近所の高齢者施設に助けてもらってきたからだ。 最後の結びに、こうある。 元気だった頃の母はもう思い出せず、「納得のいく人生」は「やりたいことを自由にできる…
「株式会社フジテレビジョン」企業公式サイトより フジテレビの公式サイトで公開された、「第533回 番組審議会議事録概要」。1月10日に「テレビと人権」というテーマで行われた審議の議事録だが、その内容の一部に波紋が広がっている。 「日本民間放送連盟」の公式サイトによると、番組審議会とは、各放送局が「放送番組の適正を図るために外部有識者の声を聴く場」として設置しているもの。役割として「放送局の諮問に応じ、放送番組の適正を図るため必要な事項を審議する」「放送局に対して意見を述べる」ことが求められ、放送局にはそれらの意見を尊重して必要な措置を講じることが必要となる。 フジテレビの審議会には、委員長に弁…
毎週日曜日は、この一週間(2/5~2/11)に週刊誌や新聞などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPなどをご覧ください。 今週の書評本 *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者.編者 出版社 税込価格 書評掲載回数(②回以上のもの) ◆サンデー毎日「遠回りの読書」: 2/18・2/25 号 2 冊ふぞろいの林檎たちV/男たちの旅路〈オートバイ〉 山田太一未発表シナリオ集 山田太一、頭木弘樹 国書刊行会 2,970 ②大きな字で書くこと/僕の一〇〇〇と一つの夜 加藤典洋 岩波現代文庫 1,474 ◆女性自身「今週の本」: 2/20・2…
「私は「負うた子に教えられ」を「大蛸に教えられ」と誤解して、どんな蛸かと思っていた時期もあった」(p.153)などというとぼけた一節もあるから、やはり「雑記」でもあるのかもしれない。あるいは、著者にとっては何かを論説しているつもりはないのかも知れない。 けれども、20世紀後半日本を代表する知識人によるこの一冊は、深い思考と教養に基づいていることが、ぼくのような浅薄な人間には、ひしひしと感じられる。 「ドッホ(doch)一つだけを取り上げても「いや、そういうこともあるかもしれないけれども、私の意見は違うし、しばしば感情的にも受け入れ難いのであって、その根拠は今から述べる」という交通標識である」(…
朝日新聞出版 最新刊行物:新書:一億三千万人のための『歎異抄』 FROM 親鸞への接近 四方田犬彦 工作舎 2018/8/24 - いもづる読書日記 萩尾望都がいる 長山靖生 光文社新書 2022年7月13日 - いもづる読書日記 書き換えられた聖書 バート・D・アーマン 著 ちくま学芸文庫 2019/06/10 - いもづる読書日記 証し 日本のキリスト者 最相葉月 KADOKAWA 2023年01月13日 - いもづる読書日記 TO 伊藤比呂美の歎異抄 :伊藤 比呂美|河出書房新社 歎異抄がここまでコンパクトな本だとは思っていなかった。誤読するなというのが無理じゃないだろうか。著者の訳文は…
2月6日(木)18時45分~ 最相葉月 佐藤ジュンコ「書いて、生きるということ」最相葉月デビュー30周年記念企画『母の最終講義』(ミシマ社)発刊記念 東京堂書店 神田神保町店6階 http://www.tokyodo-web.co.jp/blog/?p=22643 mishimasha-books.shop 母の最終講義 作者:最相葉月 ミシマ社 Amazon 仕事場のちょっと奥までよろしいですか? 作者:ジュンコ, 佐藤 ポプラ社 Amazon