明治〜昭和の日本画家。
1871年、滋賀県大津市生まれ。野村文挙、森寛斎に師事。1891年に竹内栖鳳、菊地芳文らと青年絵画懇親会を結成した。京都市立美術工芸学校、市立絵画専門学校で教鞭をとり、1917年に帝室技芸員となった。1933年没。
風景画を得意とした画家で、風景を描くためにカメラを活用した最初の画家でもある。
1921年に別荘として蘆花浅水荘(記恩寺)を琵琶湖西岸に建てた。
滋賀県立美術館で山元春挙展を観た記録。 www.shigamuseum.jp 1872年に大津県膳所中ノ庄村(現、滋賀県大津市)に生まれた山元春挙は、近代京都画壇を代表する画家のひとりです。円山四条派の伝統を踏まえながらも力強く壮大な画風を創始し、明治、大正、昭和の画壇で華々しく活躍しました。特に、当時としては珍しい、カメラを活用した取材から生み出された風景表現は、春挙芸術の真髄と言えるでしょう。生誕150年を記念する本展では、館蔵作品のほか各地の春挙の代表作を紹介し、その画業を一望します。(滋賀県立美術館ウェブサイトより) 滋賀県立美術館はリニューアル後に初めて訪問した。というか、前回は20…
明治三十一年三月父が名古屋の森村組出張所へ転勤となったので、私は下宿生活をする事となった。最初は父の知人であった六角堂前の煎豆屋の二階を、三食付き月五円五十銭で泊っていた。同級生に川端敬雄(春翠)(卒業後山元春挙先生の門下となり草笛会の同人として桜を得意としていたが惜しい事に十年位前故人となった)という私より一つ年下の友人が予備科から一緒で一番仲が良く然も金持ちの三男坊だったので遠くへ写生に行った時等は種々の費用を出しておいて呉れた。そんな仲だったので彼の家へはよく遊びにも行き御馳走にもなり時には泊ってきた事も度々あった。 私の下宿から学校迄は相当遠かったが、当時電車等の乗物が無かったので朝早…
予備科では翌々年の三月迄、横山大観先生の指導を受け、絵画本科へ進学してからは鈴木瑞彦先生に教えを受ける事となった。当時考古学、美術史は校長今泉雄作氏が担当して居られた外、富岡鉄斎、竹内棲鳳(栖鳳)菊池芳文、山元春挙等の諸先生が居られ京都画壇の錚々たる大家が揃っていた。図案科では谷口香愫先生が一学年から五学年迄を担当して居られた。又彫刻科には大村西厓先生が居られ卒業生の先輩、国安稲香君が助手を務めていた。 生徒は各科にニ、三十名位で合計ニ百名余り。服装は制服と好きして安部仲麿の様な古代の官制にあった闕腋(けってき)というもので帽子は今の裁判官が使用している物と略同じである。それに緑色の絹の組紐を…
生誕150年 池上秀畝ー高精細画人ー ■2024年3月16日〜4月21日■練馬区立美術館 わずか1ヶ月余りの会期しかないことが惜しいくらい非常に面白く充実した企画展です。 池上秀畝(1874-1944)の画業をたどる大回顧展。その後期展示(4月1日〜)にお邪魔してみましたが、前期も観ておくべきだったと後悔しています。 www.neribun.or.jp 池上秀畝の作品をまとめて観た記憶がありません。というより一枚もおそらく鑑賞したことがないかもしれません。都内では東京国立近代美術館や東京都現代美術館、皇居三の丸尚蔵館に秀畝作品が何点か収蔵されているのでコレクション展等で披露されたことはあるのか…
進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち ■2024年1月18日~4月7日■福田美術館 竹内栖鳳(1864-1942)をコアとして彼の師弟たちによる作品を福田美術館自前のコレクションを中心に紹介する企画展です。 後期(3月6日〜4月7日)展示を鑑賞してみました。 相変わらず外国人観光客で賑わっている嵐山。ただ桜シーズンの前でもあり美術館内部はいたって静かでした。 fukuda-art-museum.jp 福田美術館は江戸期から近代にかけての日本画を豊富に蔵しています。 本展ではまず栖鳳に影響を与えた師匠筋にあたる絵師・画家を紹介していますが、なんとそのスタートには栖鳳が受け継いだ円山・四条派の源流、円山…
morina0321-2.hatenablog.com 第2期の後期展示。 第1章「天皇皇后ゆかりの品々-明治・対象・昭和」。 山元春挙「琵琶湖・富士図」を有難く拝見する。ああ、水たまりの色が凄い…。 あと、村瀬玉田「波に雁図」。村瀬玉田、初めて拝見するお名前。もしや皇室御用達で、あまり市井に絵が出回ってないのだろうか。きちんとした日本画だったよ。 あと、「雍煕帖」が頁替えしてるのだけど、こちらはどなたの絵だろうか。素敵な松と鶴のおめでたい図柄だったのだが。 第2章「皇室の慶祝と宮殿を彩った丁度」。 山崎朝雲「賀茂競馬置物」。銀製の彫刻だが、騎乗した2頭の馬が駆けている図で、非常にダイナミック…
ハッピー龍イヤー!〜絵画・工芸の龍を楽しむ〜 ■2024年1月2日〜2月3日■静嘉堂文庫美術館 タイトル通り今年の干支にちなんだ静嘉堂文庫版ドラゴン・コレクション展です。 中華陶磁や堆朱をはじめ、お馴染みの作品が華やかに展開されていますが、中には鎌倉時代に描かれたという「摩尼宝珠図」といった渋い仏画などもあり、静嘉堂の奥深さが実感できる展覧会になっています。 ただ、お正月サービスなのか例の国宝曜変天目がお出ましになっているため、それなりに混雑はしていました(ゆるく日時指定予約制がとられてはいます)。 www.seikado.or.jp 巨大な屏風絵二作品が一際目立っていました。 橋本雅邦(18…
皇居三の丸尚蔵館 開館記念展 皇室のみやびー受け継ぐ美ー第2期「近代皇室を彩る技と美」 ■2024年1月4日~3月3日 昨年の11月から始まった三の丸尚蔵館リスタート記念展シリーズの第二弾です。 蒙古襲来絵詞や動植綵絵など国宝4件で一室を埋め尽くした前回展に比べると入場待行列はなく、少し混雑は緩和されたようですが、相変わらずシニア層を中心に結構賑わっていました(日時指定予約制)。 shozokan.nich.go.jp 今回展示されている作品はその大半が明治近代以降に制作され皇室にもたらされた品々です。 買い上げ品や献上品の他、明治・大正・昭和と歴代の天皇や皇族が使用していた文物など、内容は実…
コレクション展 日本画ことはじめ ■2024年1月13日〜2月18日■西宮市立大谷記念美術館 館蔵品を中心に60点あまりの作品がゆったりと陳列されています。 タイトルに「ことはじめ」とあるのは、主に若年層の鑑賞者を意識している企画だからとみられます。 無料配布されているリーフレット「鑑賞ガイド」も親しみやすく、ふりがなが丁寧に付されていました。 しかし、内容的にはむしろ渋い、十分大人向けの作品が並んでいるのではないかと感じます。 特別なテーマ性はありませんが、どことなく初春にふさわしく静かに華やいだ作品が多く楽しめました。 otanimuseum.jp 西宮市立大谷記念美術館は、よく知られてい…
morina0321-2.hatenablog.com 第2期が始まったのでこんにちは。 第2期は「近代皇室を彩る技と美」である。第2期も前後期制、伺ったのは前期。 写真はOKのものもある…というかOKのものが大部分。ありがたい…。 「第1章 天皇皇后ゆかりの品々-明治・大正・昭和」。 明治から昭和までの天皇皇后の遺愛品多め。 で、いきなり森川杜園「熊坂長範」こんにちは。こちらは昭憲皇太后が所蔵していて、御遺品として秩父宮雍仁親王が譲り受けたそうで。熊坂長範は能の題材で有名で、昭憲皇太后は能を好んでいたとのこと。いや、それにしても森川杜園…。 で、なんだかとても品良く美しい掛軸2つがあるぞ、と…
生誕150年/没後80年 千種掃雲 ■2023年12月21日~2024年3月10日■京都国立近代美術館 京近美4階のコレクション展示コーナーで、明治から昭和前期にかけて活躍した日本画家、千種掃雲(ちぐさ そううん 1873-1944)の特集が組まれています。 昨年が彼の生誕150年、今年が没後80年のアニバーサリー・イヤーにあたっていることからの企画です。 常設展の一種ですが、前期(2023年12月21日~2024年2月4日)と後期(2月6日~3月10日)に分けて70点近い作品を展示するという、このあまりメジャーとはいえない画家にしては非常に力の入ったレトロスペクティブ。 内容からみてこれは立…
開館60周年記念京都画壇の青春 ー 栖鳳、松園につづく新世代たち ■2023年10月13日〜12月10日■京都国立近代美術館 京近美、開館60周年記念特別展シリーズの第4弾です。 今年の2月、開館記念の初回企画にこの美術館がとりあげた画家は甲斐荘楠音(1894-1978)でした。 本展では、その甲斐荘とやや因縁めいた関係にあったと思われる京都画壇の寵児、土田麦僊(1887-1936)をキーパーソンとして扱っています。 単に京都近代の日本画を総花的に展開するのではなく、目まぐるしく画風を変化させた麦僊を中心に据えつつ明治末期から昭和初期における京都画壇を回顧するという、ちょっと工夫を加えた特別展…
先週は、「庭屋一如研究会」藤井講師の企画で、京都の非公開の邸宅の見学会に参加してきた。 一日目は、「對龍山荘」と「廣誠院」。 二日目は「蘆花浅水荘」を巡り歩いた。 對龍山荘は、南禅寺周辺の明治期の別荘群の中でも白眉とされる。1800坪の敷地に書院と茶室を配置し、庭園は東山を借景とし名匠・七代目小川治兵衛による作庭。 写真はいずれも日経新聞WEB版より ここは、薩摩出身の実業家・伊集院兼常が別荘として造営し、その後呉服商・市田彌一郎が現在の形に増改築したもので、現在はニトリの所有となっている。 何よりも邸宅と庭園との一体化した作品(庭屋一如)というべきで、書院からの東山を借景とし琵琶湖疎水の水を…
生誕140年 橋本関雪 KANSETSU ー入神の技・非凡の画ー ■2023年4月19日〜7月3日■白沙村荘 橋本関雪記念館 京都市内、三つの会場で展開されている橋本関雪の大回顧展。 嵐山の福田美術館&嵯峨嵐山文華館での共催展を鑑賞後、もう一つの会場である東山、銀閣寺道の白沙村荘を訪れてみました。 今回の企画では、期間中、嵐山と東山で作品を繰り回しているので、若干の違いはあるものの、前期でも後期でも、全会場を巡るとほぼ彼の主要作を鑑賞することができます。 www.hakusasonso.jp 関雪を扱う場合、避けて通れないテーマとして、アジア太平洋戦争との関わりがあります。 白沙村荘は、かつて…
前回もなかなかいい感じだった五島美術館、今回もこんにちは。 morina0321-2.hatenablog.com というか前回と一緒のタイトルなんだな…。展示室1が今回のメイン、「近代の日本画」。 あ、ちなみに部屋の真ん中のガラスケースでは「文房具-硯・墨 宇野雪村コレクション」。これも前回と一緒だなあ。 まずは部屋を囲むガラスケースから。どちらかというと大型作品が多い。 最初の展示が荒木寛畝「寿老図」。荒木寛畝って人物画も描くんだ。描かれている寿老人はなかなか素敵。 でもって下村観山のおじさん絵が並ぶ(おじさん絵言うな)。「臨済」、強い目と太い首の描き方が凄い格好いい。 寺崎広業は「寒山拾…
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202304_oosaka.html 東京ステーションギャラリーへ来るのは、2021年の「コレクター福富太郎の眼」展以来。このときにも自分にとってはあまり知らなかった甲斐荘楠音や島成園などの作家を知った。今回も自分の知らない作家名が多数ありで、いろいろと見応え、情報量が沢山ある企画展だった。 まず大阪の日本画というのが目新しい。日本画の画壇というと一般的には東京か京都となる。その京都にも近接した大阪で、ローカルな画壇が形成されていたということになる。 関東の感覚でいえば大阪、京都は東京と横浜くらいになる。でも…