大震災から10年、とある町の神社総代が賽銭(さいせん)箱に入っていた百万円に驚き、寺の和尚を訪ねる-。福島県三春町の僧侶兼作家玄侑宗久さんの短編『火男(ひょっとこ)おどり』は、こんな話から始まる。さて、そんな多額の賽銭を一体誰が? その年は新型コロナウイルス禍のため伝統祭事ダルマ市での踊りは中止に。しかし復興住宅に移り住んでいる80代の古老が一人、道端で踊りだした。町の人々に溶け込んで習った「火男おどり」だ。和尚はその様子を見て、百万円の主が、その古老だと直感する…。 「日常」に100万円の価値 玄侑さんは東日本大震災復興構想会議で、福島を追われた人々がまとまって住める新たな自治体をつくれない…