木走日記

場末の時事評論

韓国新大統領、李明博氏はただの「保守派」政治家ではないような気がする

●ひさしぶりのシャバの空気はうまいのお(苦笑

 ついに復帰であります。

 いやああ、ひさしぶりのシャバの空気はうまいのお(苦笑

 苦節一ヶ月半、いやほんと、地獄のような現場でこりゃ死んでしまうかもというほど徹夜・徹夜の日々でありましたが、人間の体とはたいしたものですな、この間で5キロも痩せましたが、なあに、メタボ木走は元気はつらつオロナミンCでございます。

 昨日、見事越年必死と思われた火の噴いたプロジェクトをなんとか完了させ、無事にシャバに復帰とあいなりました、いや、我ながら実にしぶとい、ゴキブリのような生命力であります。

 お隣韓国では「コンピューター付きブルドーザーの異名」を持つ新大統領が誕生したようですが、不肖・木走も今回の現場では「疲れ知らずのメタボ重戦車オヤジ」の称号をいただいたのでございます、ハイ(苦笑

 読者のみなさまには、長らくエントリーもままならずご報告もできずのご無礼、平にお詫びいたします、ごめんなさいでした。

 ご無礼をご容赦いただきつつ、本日よりリハビリを兼ねてエントリー再開したいと思います。

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●日本人は李明博氏のような「仕事師」が大好きである〜【産経社説】の手放しの歓迎振りはお茶目でありますね

 さて、お隣の韓国では10年続いてきた「進歩派」政権に終止符が打たれ久しぶりの「保守派」政権の誕生とあいなりました。

 今日(20日)の主要紙社説は一斉に韓国新大統領の誕生を取り上げています。

【朝日社説】韓国大統領選―東アジア連携の好機に
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
【読売社説】韓国大統領選 対北朝鮮政策はどう変わるか
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20071219ig90.htm
【毎日社説】韓国政権交代 対北で現実主義を選んだ
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20071220k0000m070168000c.html
【産経社説】韓国新大統領 成熟した内外政策を期待
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/071220/kor0712200344001-n1.htm
【日経社説】韓国のCEO型大統領にかかる期待
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20071219AS1K1900119122007.html

 各紙社説の結語部分を見てみましょう。

【朝日社説】韓国大統領選―東アジア連携の好機に

 私たちが最も期待するのは、日本との関係の改善だ。もちろん盧大統領だけの責任ではないが、現政権のもとで日韓関係はかなり冷え込んだ。安倍前政権で修復の兆しが見えたが、まだ大きな流れにはなっていない。

 福田政権は中国、韓国との近隣外交を重視し、アジア政策の仕切り直しを進めている。歴史認識などの難題はあるにせよ、韓国の政権交代を機に、日韓の連携回復に弾みをつけてもらいたい。

 盧政権時代には、米国との関係もぎくしゃくした。この修復も新大統領の課題だ。日米韓の協力を再起動し、深める。同時に、中国を含めて日中韓の連携にも積極的であってほしい。

 こうした北東アジアの地域の結びつきは韓国の利益となるばかりでなく、アジア全体の安定と繁栄に大きく貢献する。新大統領の指導力に期待する。

 ふふふ、「日米韓の協力を再起動し、深める。同時に、中国を含めて日中韓の連携にも積極的であってほしい」と、なんとも欲張りな、なんでも中国様との友好に結びつけたいお茶目な【朝日社説】であります。

【読売社説】韓国大統領選 対北朝鮮政策はどう変わるか

 李明博氏は、今後10年で、経済成長を現在の年率4〜5%から7%台に、国民1人当たりの年間所得を1万8000ドル(約200万円)から4万ドルに、経済規模を世界13位から7位に浮上させるという壮大なビジョンを打ち出した。

 日本よりも深刻な少子化問題、これから本格化する高齢化社会への対応など、内政の重要課題も山積している。

 選挙終盤に、李明博氏が投資顧問会社の株価操作事件に関与した疑惑が再浮上した。政権への信頼性に響く事態になれば、政権の安定度は揺らごう。

 日本にとって韓国とは、歴史認識をめぐる違いはあっても、地域の安全保障や自由貿易協定など、共通の課題は多い。そうした懸案について、新政権と早急に建設的な議論をすべきである。

 「李明博氏が投資顧問会社の株価操作事件に関与した疑惑」に懸念を示しつつも、「日本にとって韓国とは、歴史認識をめぐる違いはあっても、地域の安全保障や自由貿易協定など、共通の課題は多い」のであり、日本政府も「新政権と早急に建設的な議論をすべき」と期待する【読売社説】なのであります。

【毎日社説】韓国政権交代 対北で現実主義を選んだ

 鄭陣営の誤算は、「進歩」支持層の中核だった40歳代の票が相当保守へ流れたことだ。北が核実験を強行したことへの失望が響いたのだろう。

 大統領選は終わった。だが、韓国政治は不安定要因を抱えている。李氏の株価操作疑惑を究明するために、国会が特別検察官の任命を決めたからである。検察は不起訴と判断したが、特別検察官が来年2月の大統領就任までに黒の結論を下す可能性は残っている。

 それまで韓国政治が事実上の凍結状態になってしまわないか。韓国は大統領制である。国民が直接投票で選んだ次期大統領の地位がいつまでも確定しなければ国家は安定しない。次の大統領にとってだけではなく、任期満了を待つ盧大統領にも危機である。

 「進歩派」敗因を「「進歩」支持層の中核だった40歳代の票が相当保守へ流れたこと」と分析しつつ「北が核実験を強行したことへの失望が響いた」と推測しています。

 ただ「特別検察官が来年2月の大統領就任までに黒の結論を下す可能性は残っている」と指摘、「国民が直接投票で選んだ次期大統領の地位がいつまでも確定しなければ国家は安定しない」と今後の成り行きを危惧する【毎日社説】なのであります。

【産経社説】韓国新大統領 成熟した内外政策を期待

 日本では韓流ブームなどで韓国に対する親近感が広がっている。韓国でも日本への旅行者が年間250万人に達するなど、若い世代を中心に日本ブームが起きている。その結果、韓国では政治・外交・メディアと一般国民の間で対日感情にギャップが目立つ。

 李明博・新大統領は「経済大統領」を看板に、実利主義者としていつも過去より現在、未来を考えてきたという。韓国が置かれた国際環境上の実利として「韓米日関係の強化」も主張している。そうした観点から日韓関係をぜひ修復していただきたい。

 日本人は李明博氏のような「仕事師」が大好きである。

 「日本では韓流ブーム」、韓国でも「若い世代を中心に日本ブーム」と、民間レベルでは良好な関係なのに「韓国では政治・外交・メディアと一般国民の間で対日感情にギャップが目立つ」としています。

 しかしなあ、10年振りの韓国「保守派」政権に「保守派」【産経社説】の手放しの歓迎振りはお茶目でありますね、結びの一文「日本人は李明博氏のような「仕事師」が大好きである」って、主語は「日本人」ていうよりも「産経新聞」に変えた方がいいのじゃないでしょうか(苦笑

【日経社説】韓国のCEO型大統領にかかる期待

 日本をはじめ国際社会が新大統領に注目しているのは北朝鮮政策だ。金大中政権は金泳三前政権とは対照的に「包容(太陽)政策」を打ち出し、北朝鮮に柔軟な姿勢に転じた。盧武鉉政権も「太陽政策」を踏襲して融和的対応を続けたが、10年間で核問題に大きな進展はなかった。

 北朝鮮に全面核廃棄を迫るには日米韓の結束が欠かせない。盧武鉉政権時代にギクシャクした対日、対米関係の改善も新大統領の課題だ。

 李明博氏は大阪に生まれたといわれ、選挙中、対日政策について「未来志向的にうまくいくだろう」との見解を示した。04年11月から中断している日韓の自由貿易協定(FTA)交渉の再開を含め、両国の関係強化に動くよう期待したい。

 さすが、経済のプロを自認する【日経社説】であります、「CEO型大統領」ですか、「北朝鮮に全面核廃棄を迫るには日米韓の結束が欠かせない」のだから「ギクシャクした対日、対米関係の改善も新大統領の課題」と指摘しつつ、「04年11月から中断している日韓の自由貿易協定(FTA)交渉の再開を含め、両国の関係強化に動くよう期待したい」と日韓自由貿易協定(FTA)交渉の再開を期待して社説を結んでおります。

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 ご覧のとおり、日本の各紙とも概ね李明博(イミョンバク)新大統領の誕生を歓迎しておるようですが、不肖・木走も反日・反米発言が目立った狭量な「進歩派」盧武鉉ノムヒョン)現大統領よりはちっとはましという意味では李明博新大統領には期待したいですね。

 ただ、聞くところによれば彼は日本の大阪生まれながら学生時代には反日デモに参加して逮捕されている経歴の持ち主でもあるそうですから、そうそう親日的政策に舵を取ることは期待できないとも思います。

 まあ普通の感覚の現実的外交政策をしていただければ少なくとも今の盧武鉉大統領よりは両国関係もまともになるのかなと、消極的期待をいたしましょう。

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●「韓民族独立の父」安昌浩(アン・チャンホ)を尊敬している韓国新大統領

 さて朝鮮日報の以下の記事に李明博氏の人物紹介が詳しく載っております。

大統領選:李明博ってどんな人?(1/4)
http://www.chosunonline.com/article/20070624000015
大統領選:李明博ってどんな人?(2/4)
http://www.chosunonline.com/article/20070624000017
大統領選:李明博ってどんな人?(3/4)
http://www.chosunonline.com/article/20070624000018
大統領選:李明博ってどんな人?(4/4)
http://www.chosunonline.com/article/20070624000019

 うーむ、日本で生まれた後「4歳だった1945年に家族で日本から帰国したが、船が沈んで持っていた財産も海に消えた。裸一貫からの再スタートだった」そうでありまして、「小学校に通っていた時に韓国戦争(朝鮮戦争)が起こり、米軍の爆撃ですぐ上の姉と弟を目の前で失った。一つの部屋で5人の家族が生活し、一日のうち2食は酒かすだけだった。そのため学校では酒臭いといじめられていた」とは、なかなかの苦労人なのでありますね。

 その後苦労しながら夜学に通い名門の高麗大学進学を果たすわけでありますが、大学卒業後35才の若さで現代建設社長に抜擢されるのでありますが、これはなかなか楽しみな人材が韓国大統領になるのであります。

 若くして当時の軍事政権と対峙し逮捕された経験も持ちながら、韓国屈指のたたき上げの経済人として現実主義者と行動力を売りにする「保守派」李明博氏なのであります。

 それはともかく、記事によれば、

好きな歌手:チョー・ヨンピルBoA、Rain

 と、お年の割りに好きな歌手がBoAだなんてお茶目な面もおありのようですが、私が特に興味深かったのは次のところ。

尊敬する人物:安昌浩、ガンジー

 尊敬する人物が、安昌浩(アン・チャンホ)にガンジーですか、「保守派」と言われているわりには、やはり苦労人にして若かりし頃に時の軍事政権と対立した経験の持ち主でありますね、安昌浩もガンジー独立運動家ながら徹底した非暴力・平和主義を貫き、テロによる武力行使等には一貫して反対し続けたことは有名な話であります。

安昌浩

安昌浩(アン・チャンホ、1878年11月9日-1938年3月10日)は、日本の植民地支配からの解放を目指す活動をしていた、朝鮮の独立運動家である。現在大韓民国においては「韓民族独立の父」として顕彰されている。号は「島山」(ドサン、도산)であり、ソウルに鳥山公園と島山・安昌浩記念館が作られている。

アメリカ・カリフォルニア州にある銅像朝鮮平安南道に生まれ、大韓帝国における愛国啓蒙運動に従事したあと渡米したが、1905年に日韓保護条約が締結されたことを知り帰国した。その後新民会を組織して民衆運動を行うかたわら、平壌に大成学校を設立するなど各地に学校を作って民族教育に従事した。

中国経由で再びアメリカに亡命し、興士団(フンサダン)を組織した。1919年には亡命朝鮮人によって中華民国上海で設立された大韓民国臨時政府に参加し内務総長を務め、朝鮮独立運動を行う。しかし、地域派閥や党派の争いが絶えず、畿湖(京畿道と忠清道)出身でも両班でもなかったため、臨時政府内の主流とはなれず、彼の意見に耳を傾けるものは殆どおらず、1921年に内務総長を辞任した。

その後は満州に渡り、独立運動の根拠地としての理想村を計画したが、1931年に満州事変が勃発したことにより頓挫。さらに、上海事変で日華間が軍事衝突をしていた1932年4月29日に、上海の虹口公園で日本人要人が死傷した上海天長節爆弾事件の関与したという容疑で(テロには断固として反対の立場だったにも関わらず、首謀者である金九の直属の上司としてその責任を問われたと考えられている。一方では、実際に中華民国政府から犯行資金を受領するなど関与していたという説もある。)日本軍に逮捕され、朝鮮へ連行されたうえで懲役4年の実刑を宣告され服役していた。1935年に仮釈放となり隠居した。しかし1937年6月に発生した同友会事件で逮捕されたが、収監中に病状が悪化し釈放されたが、肝硬変により京城帝国大学付属病院で死亡した。

特筆すべきは、前述の通り、他の独立運動家と異なり、テロによる武力行使等には一貫して反対し続けたことにある。「自我革新・民族革新」という標語を掲げたうえで、「貴方は国を愛しているのなら、何時貴方は健全な人格になるのか。私達の中に人物がいないのは、人物になろうと決心して努力する人がいないからである。人物がいないと慨嘆するその人自身が、何故人物になろうと勉強・修養しないのか」(ソウル市内にある島山公園の記念碑の言葉より。自分のもとを訪れた独立運動家が人材不足を嘆く言葉を発したたびに、決まってこの言葉で諭したと伝えられている。)という主張のもと、朝鮮人自身が近代国家としての力を養った上で、民族の実力を以ってして日本からの独立を勝ち取るべき、というスタンスを取り続けた事である。その為に彼は、

?男女共学の私立学校「漸進学校」等3校の近代的制度を取り入れた学校を設立。
?青年団体「青年学友会」や修養団体「興士団」を設立。
?近代的制度を取り入れた株式会社を設立し、出版等の産業振興を試みる。
?「新民会」を結成し、金九、呂運亨等といった明日の韓国を担うべきリーダーの育成に努める。
?アメリカ・ロシアに韓国人連携団体を設立し、生活改善運動を推進する。
といった運動を行った。

このように、自国の力不足を憂い、形の上での独立達成ではなく、それまでの韓国には存在しなかった近代化の概念を取り入れ続けて、他国にもひけをとらない近代国家に生まれ変わることを求め続けたこと、また、「왜놈(日本野郎)」という言葉を生涯一度も発さず、「일본 사람(日本の方)」という敬称を用い、打倒の対象である日本にまで敬意を表していた高邁な人格の持ち主としても知られ、現在に至るまで日韓両国の歴史家の間でも高い評価を受けている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E6%98%8C%E6%B5%A9

 うむ、「(日本野郎)という言葉を生涯一度も発さず、(日本の方)という敬称を用い、打倒の対象である日本にまで敬意を表していた高邁な人格の持ち主」ですか、「現在に至るまで日韓両国の歴史家の間でも高い評価を受けている」のもうなずけますですね。

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 自身も経済人として韓国を世界10位近くの経済大国にまで発展させてきた自負をお持ちなのでありましょう、尊敬するガンジーや「韓民族独立の父」安昌浩(アン・チャンホ)のように、いたずらに過去の歴史にとらわれるのではなく、まず自国の力不足を自認し改善を目指していくとするならば、李明博新大統領、我が福田首相にとりなかなかの手強い、しかし現実主義者として話し合う価値のある外交相手なのかも知れません。

 韓国新大統領、李明博氏はただの「保守派」政治家ではないような気がしますです。

 とりあえず日韓関係がどう改善されるのか、少し期待して見守ることとしましょう。



(木走まさみず)