桜姫

[Review]
はじめてのコクーン歌舞伎は勘三郎不在でチャレンジ中の、この作品。

コクーン歌舞伎ファンには勘三郎不在を心配され、ディープな歌舞伎ファンには作品の新しい演出を心配された本作は、まだ公演の半分も終えていないがすでに相当の話題作と評価してよい。

主役桜姫は中村福助。相手役にその弟橋之助が桜姫をめぐる対照的な二役に挑戦。ストーリーは夜娼にまで身を落としつつも思うがままに生き抜く桜姫の数奇な運命を描く。最後にいきつく果てにまた目を見張る。

もうひとつの注目は、演出の串田和美による見世物小屋を模した舞台美術。冒頭の赤い台にすわってやりとりする様は、まさに見せ物。

なかでもひとり、台にちょこんと収まっている、鮮やかな衣をまとった桜姫の人形のようなかわいらしさは強い印象を与える。

また開演前からの小さな演技も小屋演出として見逃せない。

さらにはもはや舞台にとどまらず、シアターコクーン入り口でチケットをもぎってもらったところから、人形焼や手ぬぐいなど心踊る小道具たちが歌舞伎を盛り上げてくれる。

さて、話は進行役が、ときにはいきおい余って話に入りそうになりながら進めていく。

ここで従来の演出を知るかたには、やや違和感もある様子。ただ、当日肌で感じるかぎりは、みなさん新しいコクーンでの演出をたのしみにきていたよう。

橋之助のはやがわりあり、福助橋之助・勘太郎七之助の兄弟競演あり、弥十郎扇雀コンビの名（迷？）演ありで盛り沢山のぜいたくなひととき。当日券でもいかが？