文藝春秋の新刊 1999・3 「春の日」  ©大高郁子


春というのにときめかぬ落ち着き。でもやっぱり花は美しく咲き人は肌寒さをおして街へ出る。そうだよね、明るさ暖かさ騒々しさが街や人を包むのはもうすこし地熱が上がってからかな、なんて感じさす背景のシックな釉薬色が目に優しい。

  光文社文庫2008年6月チラシの紹介

光文社文庫 6月の新刊 庭で読書のチャップリン

光文社文庫のカバーが変わりました
吉田修一
ひなた

久間十義
聖ジェームズ病院

朔立木
命の終りを決めるとき

高橋三千綱
あの人が来る夜

鳴海章
バディソウル 対テロ特殊部隊

大藪春彦
非常の女豹

結城昌治
白昼堂々 結城昌治コレクション

赤川次郎 祝 著作500冊突破
三毛猫ホームズの談話室
透明な檻

平岩弓枝監修
新鷹会・傑作時代小説選 武士道歳時記

三好徹
三国志傑物伝

阿井景子
和宮お側日記

唯川恵
幸せを見つけたくて 明日に一歩踏み出すために

田中芳樹 垣野内成美 らいとすたっふ編
女王陛下のえんま帳 薬師寺涼子の怪奇事件簿ハンドブック


江戸川乱歩全集を全巻セットで
読み継がれる名著
文芸フェア 絶賛発売中
光文社 古典新訳文庫新刊 
光文社文庫 7月刊 予告
内田康夫のミステリアス・ワールド ミステリー文学資料館
《新・本格推理》「特別編」原稿募集


光文社文庫新刊案内チラシ08年5月は《こちら》にあります

 幻冬舎文庫 2008年6月チラシの紹介


時代小説作家、知らない人が多い。幻冬舎で囲い込んでいるのか、それとも他の中小文庫での常連さんなのかな。チラシ自体は前回と同じでつまらない。漫画も同じくらい詰まらんがどういうことだ。4月に続いて新刊チラシだが(5月はみなかったと思うが断言できない)定期的に入れてくれるなら嬉しいことです。

幻冬舎文庫の新刊

旬の物 ふと食べたくなる江戸の本
すーちゃん ©益田ミリ
時代小説フェア
宇江佐真理
恋いちもんめ

澤田ふじ子
公事宿事件書留帳十三 雨女

荒山徹
処刑御使

井出香四郎
船手奉行うたかた日記 咲残る

沖田正午
丁半小僧武吉伝 面影探し

風野真知雄
爺いとひよこの捕物帳 七十七の傷

坂岡真
ぐずろ兵衛うにゃ桜 忘れ文

鳥羽亮
剣客春秋 恋敵

葉治英哉
定年彫奉行仕置控 幕末大江戸だまし絵図

藤井邦夫
閻魔亭事件草紙 夏は陽炎

稲葉稔
糸針屋見立帖 韋駄天おんな

越後屋
蔭丸忍法帳 死闘大阪の陣

幻冬舎文庫幻冬舎アウトロー文庫
NHKプロジェクトX 制作班編
プロジェクトX挑戦者たち 3 4

テリー伊藤
ペットスナイパー 二階堂達也

西澤保彦
彼女が死んだ夜

樋口裕一
たった一分で できると思わせる話し方

光浦靖子 大久保佳代子
不細工な友情

山田深夜
千マイルブルース

田中森一
反転 闇社会の守護神と呼ばれて

館淳一
地下室の姉の七日間

水無月詩歌
蜜の鎖


すーちゃんと文庫本 益田ミリ


幻冬舎文庫新刊案内チラシ08年4月は《こちら》にあります

 幻冬舎文庫08年6月刊

すてきなひさうちみちおのイラストカバーのせいでアウトロー文庫かと間違えかけた。内容はまあ、まっとうな娯楽小説。帯に推薦文を書いている太田光氏に同意と敬意を表すなら、「お笑い北朝鮮」「…共産党」並みにクダラネー!作品でした。
精進の末みたいに冒頭で記してるけれど、二階堂が動物語を理解できる・話せるという設定は、荒っぽすぎて作品を堕している気もするが、でもまあロドリゲスやアシカのアックンの弟の独白はやっぱり必要か。そのくせ猫の亀之助は額の骨が折れたそうで、無実なのにかわいそうだ…ってそんな場所で感情移入なんかして読んでどうする。
前世紀(1999年)に刊行されたと巻末に記してあって、商売上手の幻冬舎としては無駄に寝かせていたのか売れないと踏んで放置されていたのか。小説として訴求力はほとんどないけれど構成や押さえどころなどきっちりしていて、それでもさすがのテリー伊藤の名を冠してもテレビ化とかせめてVシネマ化もできなかったのかな。

 ポプラ文庫 2008年6月チラシの紹介

きっとみつかる。ポプラ文庫 2008年6月の新刊
林真理子
秘密

角田光代×岡崎武志
古本道場

加門七海×福澤徹三×東雅夫 編
てのひら怪談 ピーケーワン怪談大賞傑作選

鬼塚忠
Little DJ 小さな恋の物語

松本修
探偵!ナイトスクープ アホの遺伝子 竜の巻 虎の巻


好評既刊
8月の刊行予定
ポプラ文庫読者プレゼント
ポプラ社の好評単行本 ポプラ社のPR誌

ポプラ文庫新刊案内創刊号は《こちら》にあります

 ポプラ文庫08年4月刊 松井今朝子 今朝子の晩ごはん

今朝子の晩ごはん (ポプラ文庫)

今朝子の晩ごはん (ポプラ文庫)

安倍晋三の「美しい国」が大嫌いと記していた著者、7月の参院選のあとの記述が早く読みたいものです…って、あれ?これってホームページの日記だったよね、じゃあ読めるわけか。

http://www.kesako.jp/

ははぁ、ホームページ、トップがこちらの連載なのね。わかりやすくてよろしい。参院選の記述は見つからず直木賞関連で満載でした。ブックマークしとこう。
毎日のダイアリーで、それも昨年の同期だから読むほうもわりと納得だったりする。政治や社会もそうだが、天候とかもね。新潟も昨年の冬は2月までぬるくて暖か。どうなることかと思っていたら3月から底冷えが続いたのを思い出しもした。今年はまた表裏日本で天候がさっぱり違うみたいだけどね。昨年同期に「そうだ、創元文庫から中村雅楽全集が出たんだったな、きれいなカバーだったな」なんて日記を見て感慨したりね。
稿料など発生しない日記がこうして本になる。もちろん加筆はしたのだろうが劇評も力を込めているのが分かり好感です。経歴から演劇・歌舞伎関係で仕事してきた人だとはわかるから芝居に関しては筆も走るんでしょうけど。演劇関係も含め著者に関してはまったくの無知。直木賞作品も読んでいません。受賞前後のあわただしさをどうまとめるのか、できれば安倍内閣沈没も同じ時系列で語ってほしい。あとがきに「…どんな騒動に巻き込まれるか、乞うご期待(苦笑)!」と締められていました。期待しよう。
晩ごはんに関しては、まあとくに熱心に読みもしなかった。恵方巻きがまずかったという記述くらいしか頭に残ってない。

2月3日恵方巻き、焼き野菜のサラダ
渋谷に用事があって出かけ、帰りに東横のれん街を通り、ちょうどお寿司が食べたかったし、モノは試しだと思ってお馴染みの店で初めて、恵方巻きを買ったが、あきらかに「25日のクリスマスケーキ状態」で堅くなっててムチャクチャまずい!やっぱりこういうものには手を出しちゃイカンのだと深く反省した次第です。
節分に恵方巻きを食べる習慣は関西発だというが、それは大阪のごく一部の話であって、京都にいたころは聞いたこともありませんでした。数年前から東京で流行りだし、今年はもうコレを食べなきゃ日本人じゃない!みたいな感じでどこもかしこも売ってる。いくら経済の活性化につながるとはいえ、こんなふうに食文化をメタメタにしちゃっていいんだろうか。大量に作られて結局は捨てられる食品の多さを想うと、その冥加の悪さが空恐ろしくなってしまう。…後略

時代物の作者、いいですね、「冥加が悪い」なんてフレーズ使わせていただこう。わたしが恵方巻きを知ったのは小林信彦の唐獅子シリーズで、30年も昔のことだが読んだだけではどんな風景なのか理解できないがでもおかしかった。新潟でも徐々に認知されてたしかに去年今年はジャスコでも予約販売してました。とはいえ、まだ流行していないものもあり新潟ではイワシの頭と柊と枝豆を家の外に括りつけておく習慣はまだないです。在京時代も気付いてはいたがどこで売ってるのか気にもしなかった。魚屋で売ってたのかな…あれもじき流行するかしら。
ほんの1日分の記述だけれど著者の師である武智鉄二のひととなりなどすらりと記していて「黒い雪」のスチル写真であれほど興奮しただけのわたし(若松孝二の「金瓶梅」や羽仁進の「初恋地獄編」のポスターでも…なんにでも興奮してた)だけれど「…武智先生ほどおかしな人を私は後にも先にも見たことがなくて、以来どんな方にお会いしても別にフツーの人に見えてしまうのである」とまで記した著者だもの、もすこしいろいろ知りたいですね。
京都祇園の生まれである著者、実家(料理屋)でのちょっとふつうと違う家族のあり方だったみたいな書き方をしていた。ま、おかしいんでしょうね。取材旅行で帰省しても自宅に泊らないとか逆に素敵だと思った。イノダコーヒー店(コーヒが正しいらしい)という固有名詞がひとことでて来て「そうか、大高郁子さんもここが好きだっていってたな」と思ったり。京都の観光地化に関しても面白い記述がありましたよ。

4月14日 キャベツとツナ缶の酒蒸し、お粥
前略…
京都はいまや街全体が巨大テーマパークと化しているが、たまに雑誌の京都特集などを見ると、あらゆる職種の店舗に相当数のニセモンが氾濫しているようで、ええっ、こんな店あったっけ?というような店がいきなり創業ン百年だったりするのがおかしい(笑)。家としては古くからあってもその商売を始めたのはほんの最近という店でも創業ン百年を名乗ったもんがちみたいで、そういうことに全然チェックがいれられないくらいいまどきは不見識な出版社も多いという事実を皆様よくご承知の上で京都旅行をなさったほうがいいと思います。

ま、つまり作家のホームページっていうのもバカにしちゃいけない、こんなにサービス精神で高カロリーな方が(他にもけっこう)おられるのでしょうという意味で、とても楽しかった一冊でした。ポプラ文庫創刊の劈頭を飾ったという歴史的な快挙を傍でにこにこ眺めております。