生徒会誌に掲載したかったテキストで揉めている元先生の話

↓生徒会誌への寄稿文不掲載、憲法に反しない 最高裁判決(朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/0928/012.html

 群馬県立富岡実業高校(富岡市)の生徒会誌に寄稿した紀行文が校長の判断で掲載されず、表現の自由や教育権を侵害されたとして、教員だった男性が、県と当時の校長に220万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(浜田邦夫裁判長)は28日、男性の主張を退けた一、二審判決を支持し、上告を退ける判決を言い渡した。

 判決は、「国は必要かつ合理的な範囲で教育内容を決定する権限を持つ」とした旭川学力テスト事件の最高裁判決などを踏まえ、校長の行為は、表現の自由や学問の自由などを保障し、検閲禁止を定めた憲法の規定に反しないと判断した。

 男性は、95年末に生徒会の顧問教員から依頼を受け、「マレーシア・シンガポールの旅」と題する紀行文を書いた。しかし、校長は、文章が特定の日本企業を非難したり、日本の戦争責任を指摘したりしている点について「一方的だ」として掲載させなかった。

 01年10月の前橋地裁高崎支部、04年2月の東京高裁の各判決は「生徒会誌への寄稿に教育的価値があるとしても、教育の自由の範囲に含まれるとはいえない」「校長の校務をつかさどる権限は生徒会活動にも及ぶ」などとし、違法性がないと判断していた。

(09/28 11:38)

これもまた右の人(「日教組のバカ教師」と先生を批判)と左の人(「言論の自由を無視する権力」と校長・裁判長を批判)で意見が分かれそうな事件です。2ちゃんねるでは例によって前者が圧倒的に多いみたいですが。
とりあえず、この件についてもう少しくわしく知ろうと思ってネット逍遥してみたら、ちゃんとその先生のためのサイトがありました。サイトでは実名が出てきているので、新聞記事の自主規制はとりあえず軽視します。
↓「赤石裁判」のWebサイト
http://www1.soeinet.or.jp/~redstone/
で、ちゃんとその「掲載されなかったテキスト」を読むことができます。インターネット時代は死ぬほど便利。
↓マレーシア・シンガポールの旅  赤石 竹夫
http://www1.soeinet.or.jp/~redstone/essay.htm
で、俺の読んだ感想なんですが、ネット右翼(プロ国民)のかたには申し訳ないんですけど、割とよくできているテキストだと思いました。紀行文とプロパガンダ部分のバランスや、抑制された怒りの感情などなど。俺的にはもう少し「関係者の証言」だけではなく「事実の検証」が欲しいところですが。特に後半になるにつれてそこらへんが気になるところでしょうか。
先生の行った旅行については、多分こちらのほうでくわしく書かれています。
↓戦後50年─東南アジアを訪問して
http://www.abenolaw.jp/07-1-izumi02sengo50nen-tounanAsiawohoumonshite(w).htm
さて、赤石先生のテキストの中で語られている「日本人のやった悪いこと」は二つあります。戦後、ARE(ASIAN RARE EARTH)という三菱化成の合弁企業がおこなった環境破壊(放射能汚染)と、戦争中の日本軍による華僑虐殺です。
どちらもあまり知られていないことですが、村の名前などをキーワードに検索してみると、こんな感じです。
↓三菱化成の公害輸出とブキメラ住民の健康被害
http://japan.nonukesasiaforum.org/japanese/japan/tokio16.htm
↓裁かれた日本の公害輸出 〜ブキメラ村住民に医療援助を〜
http://eprc.kyoto-u.ac.jp/~miz/green/g21.htm
天皇への請願
http://homepage1.nifty.com/nbach/seigan_tennou.htm
シンガポール戦と華僑粛清
http://plaza18.mbn.or.jp/~modernH/paper36.htm
ええと、まぁいろいろ調べたいことがあるのでいずれ(手抜き)。
ちなみに、群馬県立富岡実業高校のサイトはこちらです。
群馬県立富岡実業高校
http://www.edu-c.pref.gunma.jp/gakko/kou/tomijitu/
就職・進学先はこちら。
↓進路の概況
http://www.edu-c.pref.gunma.jp/gakko/kou/tomijitu/leave.html
一般企業に半分近くも就職する高校、ということで、特定企業(三菱化成。現在は三菱化学)に対し「公害を輸出している企業」的批判をしているテキストは、校長という立場的には載せにくかったのかもしれません。
校長先生と赤石先生との、他の件での確執や、現在ブラウン管はどこでどういう風に作られているのか(ひょっとしたらもう三菱化学では作っていないのかも)、とか、ネットではうまくわからないけど調べてみたいことはどんどん出てきます。
この事件に関しては、校長と元先生の二人は、オトナなんだからもう少し妥協できるような話し合いができなかったのかな、と思いました。「言論の自由」とか憲法的解釈にまでなっていくと、裁判所も大変だと思うので、たとえば企業名を伏せる程度の修正で生徒会誌にそのテキストを掲載させてあげる、みたいな。高校生ぐらいになれば、そのテキストについての判断(たとえば、どこまで本当なのか、に関する判断)ぐらいはできるんじゃないかと。