たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

かなわない希望なら、最初から抱かなければよかったの?「プリキュア5第43話」

プリキュア5はとーっても健全で、子供も大人も楽しめる健康優良アニメであります。パンツも見えないし水着もないよ。そのへんよろしく!
という感じなんですが、その制約をきっちり守っているためなのか、かえって妙にセクシーなシーンが多いのが特徴です。いや!わかっていますよ。それに劣情を抱くなんてもってのほか、少女たちの熱き思いを受け止めるべきだと。
だがしかし、時々どうにも「ピコン!」と脳みその奥が反応するもんだから困る。

鎖骨が艶かしや…。のぞみさんは体がすこぶる華奢でぜいにくも筋肉もないのが、妙に、ほら。
 
そんな回でした。
自分が考えすぎなのか、スタッフが意図的に狙っているのかは分かりません。そのへんの妄想の余地が色々楽しすぎます。
はて、今回内容については、極めて重いものになっていました。
以前、ココが「今パルミエの夢がかなったならば、自分はのぞみと別れなければいけない」と苦悩していたのを覚えているでしょうか。
叶わない夢。消えていくこの瞬間。「プリキュア5第39話」
種族のカベ。身分のカベ。住む世界のカベ。
ココがのぞみに抱いている、かけがえのない感情。夢をかなえればそれは失わざるを得ないという二律背反。ああ、希望で満ち溢れていると言うのに、目の前に広がる絶望の闇を意識しないようにするのは、とても辛い。
んじゃナツxこまカップルは大丈夫かと言うと、もちろんそんなわけはありません。立場はココxのぞカップルと同じです。ましてやこまちは、ナッツに対してかなり明確に恋愛感情を抱いているのを認めています。
恋愛なんて、一度抱いてしまったならば理性でどうこうできるものではないもの。しかしそこに、回避できない底なしの、漆黒の穴が広がっているとしたならば。
 

●「書くんじゃなかった。」●


うららが小説の進み具合を聞いてくるわけですが、そこで驚愕の事実が。
こまちの書いていた小説が、なんと恋愛小説
あれ?「海賊ハリケーン」は冒険物だったような…また別に書き始めたわけですね。
・・・なんてわかりやすい子なんだろう。いいねー、いいよー。

明らかに、モデルはナッツの様子。この子、冷静なようでかなり感情の激しい子です。それにしてもまさか、「恋愛小説」と明確に打ち出してくるとは思いませんでした。
だって、のぞみはまだココへのかけがえのない気持ちをわかりつつも把握できていませんが、こまちさんはナッツへの思いを「恋愛」と理解しているってことじゃないですか。もちろん人間の感情はライン引きできるものではないんですが、彼女がそれを恋愛なのかなと意識しはじめ、あまつさえ感情をおさえきれず小説にしてしまうあたりの激しさには驚いてしまいます。
 
しかし、はっきりと恋愛と意識するということは、同時に非常に残酷なことにもなりえます。
好きだって気づかなければ、こんなにも耐え難い気持ちにならなかったのに。

何か表現したいって気持ちでいっぱいで、抑えきれなくて。
好きなもの、好きな人ができた時に感じる、暴れ狂う感情。
このまま、ずっと時間が止まってくれればいいのに。
中学生のみならず、誰もが感じたことのある感情だと思います。しかし時間は非情なり、気がつけばそのかけがえのない気持ちを流しさってしまいます。永遠にこの瞬間の熱病が続くことは、ないのです。

こまちは文字通り自分の小説のラストで行き詰っていました。それが自分の今の状況と完全にシンクロしているのが心を締め付けます。
小説には終わりがある。物語は必ず終わる。
彼女が今、ナッツのことがとても好きでかけがえのないものとしている気持ちも同じです。その人のためにあらゆる手を尽くしたい。でもそれを尽くした時に、その人は手の届かないところへ行ってしまう。物語は、終わる。
最初から分かっていたのにね。そう、もう最初から「終わりがくるために頑張るんだ」ってわかっていたのにね。
彼女は言います。
「書くんじゃなかった」
何かを、誰かを好きになるということはとても幸せなことなんです。そのために人は生きている、と感じる人も多いでしょう。
しかしながら、好きになってしまったならば、終わりが必ずくるのです。明日かもしれないし、何十年も後かもしれない。しかし好きの度合いが高いほどに、その別れは辛く苦しいことになっていくじゃないですか。
ならいっそ、好きにならなければよかった。
 

●「終わる」と「変わる」●

こまちは、他の子以上に自分の悩みを表に出せない娘です。おそらく内に眠る感情の激しさは1、2を争うほどなのに、それを打ち明けることの出来ないのです。
そこに、かれんという存在があったのは、彼女にとっての最高の幸せです。
今回は特に、こまちを影から支える存在としてのかれんに、一際スポットライトが当たっていました。

こまちは自分の本心を明かしてはいませんが、かれんの方はこまちの気持ちは分かっているようです。だから彼女に詰め寄ることも、強烈なアドバイスをすることもありません。
ただ、彼女を受け止めます。
どうなるか私には分からない。こまちが変わればラストも変わる。
それだけをそっと言い、差し伸べるかれんの温かさ。それができるのは、彼女だけなんですよね。

こまちは自分の内なる激しい感情を、叱られたり励まされたりするよりも、見守られたり、人の頑張りを見たりすることで修正できる娘です。今までものぞみが歯を食いしばって頑張っている姿を見て奮い立たされたり、ナッツがそばにいてくれることで思いを整えてきました。
そして今は彼女のなかの、考えれば考えるほど絶望的な未来に対して、ただそっと手で触れるだけのようなかれんの言葉が必要なわけです。

最初はこまちも、自分の中の手に負えない感情をナッツに言えませんでした。これ、別にナッツが好きってことを相談できないから、ってだけじゃないと思うんです。もう自分の中で混沌としてしまって、膨らんで破裂しそうな腫れ物状態だから、それを吐き出すのが恐ろしかったのだと思います。
 
それが彼女の中の「私なんて」という言葉に変わっていきます。
私なんて何も出来ない。私なんてだめだ。
この言葉は、先ほどの「書くんじゃなかった」という後悔にもつながっていきます。私なんてダメなんだ。幸せになれないんだ。好きになんてなるんじゃなかった。
後ろ向きでもう周りが見えなくなっちゃってるんですよね。ただこの気持ちを責めることはできません。



ここで素晴らしかったのは、ナッツが確かにそばにいてやさしくしてくれるのもそうなんですが、彼女の心を本当の意味で氷解したのが、ナッツの口から出たかれんの言葉だったということなんですよ。
ナッツが好きで好きでたまらなくて、自己嫌悪に陥って。でもいつもそばにかれんがいてくれたんです。かれんはいつも、彼女のそばで見守ってくれていたのです。
それに気づいた彼女が、堰を切ったように泣き出すシーンはもう、やられました。彼女がやっと、自分の感情の扉を思い切り開いたんです。
 
感情をオープンにすることは、平気な人にはなんてことないんですが、彼女のように抑えこむタイプの子には恐怖です。特に「好き」の感情って、確かにそれを開くことで失うことも、あります。夢がどうのこうのじゃなくて、あるんです。
この作品はそれが、ナッツが夢をかなえると去る、という分かりやすい形で描かれていますが、その裏にあるのは、感情を出すことで現実から、人から拒絶される恐怖と、喪失感へのおびえだと思います。
プリキュア5は、子供向けの「夢」がテーマの作品。んじゃ「努力すれば大丈夫だよ!」「希望を持てば怖くないよ!」と言うのか?
 
言わないんです。
怖いんです。怖いよ。怖くないわけないじゃない。
人と別れるのはいやだよ。ずっとこのままなんてありえないんだよ。拒絶されることもあるし、未来を考えると絶望したくなることも、なくなるわけじゃないんだよ。
 

●今、あなたがそばにいるから。●


彼女のこの激しい恐怖感は、そのまま戦闘にも引きずられます。もう「パルミエ王国のため」って言わないで「ナッツさんを守る」になっちゃってます。冷静さ0。
「私じゃ、だめなの」とにかく自虐的、とにかく自己嫌悪。

でもね。
そこにかれんがいるんですよ。
このお互いの構図、最高じゃないですか!いつもそばにいてくれたかれんが、今もここにいるんです。
自分のために。後悔をしないために。なかなか受け入れずらい言葉ですが、そこに常に一緒にいてくれた人がいるから、後ろを向かずに前を向こうと選べるんです。
もちろん、だから希望に満ちるかとか、苦しみがなくなるかというと。それはないです。つらいです。苦しいんです。
だけど、今できることをやるしかない、後ろを振り返って後悔だけしてもどうにもならない。
 

彼女は、小説を書くことを一旦やめました。
それは自分を諦めたからではなく、自分なりの最後を向かえるための「覚悟」なんです。
歯を食いしばってがんばれ、と言わないのがこのプリキュア5の、いいところだと思います。自分が一番好きな理由です。
根性論も確かに素晴らしいんですが、夢という抽象的なものは現実にぶつかるときに、やはりひずみが生じてしまいます。それを必死に耐えることで乗り越えることができることもあるけれど、できないことだってやっぱりいっぱいあるんです。
それに対して「ダメだ」と断罪しない。ただ「もうちょっと休んでいいよ」とナッツは、この作品は語りかけてくるんです。
恋のみならず、仕事でも学業でも、人生そのものでも、いくらがんばってもかなわないビジョンに包まれる時はあります。絶望するしかないのかと思う時も、後悔せざるを得ない状況もやっぱりあります。それを耐えるのではなく、時にはゆっくり休んで、肩の力を抜いてもいいんだよ。
ただし、休む時は自分を針のむしろに横たえるんじゃなくて、椅子に座ってのんびりとね。
 

●戦いの中で、少女は育つんだ●

こまちさんの吹っ切れた後のアクションが激しすぎて、少年マンガもびっくりな今回。
みどころ色々。
 
その1

もうね!こまちが感情に身をまかせていたときに、かれんが加勢に来たときは鳥肌がたったね!
おれとお前でダブルライダーだ。って感じですよ。
プリキュアシリーズ全部そうですが、戦闘をすることで少女たちの心の絆が描かれていくのが本当に楽しい。しかもそれがどんどん激しさを増していくたびに、信頼感がにじみ出てきて、そりゃー燃えますよ。
 
その2

スーパーどすこいこまち。シールドをぶちやぶるほどの腕力を持つハデーニャさんのパンチを片手で受け止めるとか、ありえん・・・とはいえないんだよなあ、今までの流れを見ていると。結構激しくどすこいしてきましたし。
 
その3

受け流すこまち。いやもうね、これは動画見てくださいよ。吹いたよ。受け流しすぎだよ。
香港映画レベルの受け流しっぷりに、私は感激いたしました。プリキュア5すげえ。

受け流し方の図解。
なかなか通です。力の流れを←から↑へ。
 
その4

こまちの新必殺技誕生。敵の目前でバリアを展開して圧死レベルの攻撃をしかけるんですが、これがもうしゃれにならないんです。

えぐれすぎだろう。
こまち最強伝説にまた一つ、花が咲きました。
 
その5

こまちの反応に対して、ちょっと面白いのがこの二人。
りんちゃんは今回あんまり熱心に乗ってこないんですよ、終始。もしかしたらカンの鋭い彼女、色々もう気づいて、あえて触れないようにしているのかもしれません。
うららはこまちの「恥ずかしいところ」をあっけらかんという、つかみどころのなさ。天然なのか!?計算なのか!?ほんとつかめないキャラです。そこがいい。
 
その6

ブンビーさんに八つ当たりするハデーニャさん。だが今回だけは同情せざるをえません。
戦闘中の「私には後がないんだよ!」は、鬼気迫るものが・・・。
 
その7

サンクルミエール学園の図書館って、迷宮だと思います。まほら学園レベルなんじゃないかと。これを管理しているこまちさんは超人。
 
その8

次回。ハデーニャさん死亡確定フラグ。
でもテーマはミルクのお世話役の話だそうで。んー、どうからむのやら。あとハデーニャさんは本当にこれで退場するのかどうなのか。
しかし、これをみて「ブンビーさんが生き残ったなあ」と喜んでいる自分はちょっとひどいかなと思いました。でも思っちゃいますって。
 

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さあて、カレンダーをどこにはろうかと考える時期がきたヨー。
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Yes!プリキュア5 企画ミニアルバム ココ(小々田)&ナッツ(夏)

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以下過去記事
 
 
大人になったら何になりたい?「YES!プリキュア5」第一話
プリキュア5が二話目にしていきなり百合展開でした。
実力の伴わない夢は持ってはいけませんか?「YES!プリキュア5 第4話」
これからのヒロインはもりもり食う時代へ!「プリキュア5 第5話」
やけにリアル社会人な敵のお仕事。「プリキュア5第6話」
少女たちの絆は、少しずつ歩き出した。「プリキュア5第7話」
学年や身分による感覚のカベってありますか。「プリキュア5第8話」
有名なみんなと、そうでない自分と。「プリキュア5第9話」
社会の仕事は甘くない。「プリキュア5第10話」
今がんばることは、ムダじゃない!「プリキュア5第11話」
アイドル業は、その一歩から。「プリキュア5第12話」
自分のために生きる?誰かのために生きる?「プリキュア5第13話」
お金で買えるの?その価値は。「プリキュア5第14話」
少女達の友情はいつまでも。「プリキュア5第15話」
自分の視野を仲間内だけで満足してはいないか。「プリキュア5第16話」
どんな時でも、そばにいるよ。「プリキュア5第17話」
友達は、必要ですか?「プリキュア5第18話」 
心配は何のためにするの?「プリキュア5第19話」
まっすぐ進むだけが道じゃない。「プリキュア5第20話」
ミルク視線で楽しむ「プリキュア第21話」
大人としてのココの立ち位置。「プリキュア5第22話」
5人それぞれの心の闇へ。「プリキュア5第23話」
追悼・ギリンマへ。平社員の憂鬱と哀しみに敬礼
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影で支え、見守る人こそが。「プリキュア5第40話」
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