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港の人日記  このページをアンテナに追加

出版社・港の人の書籍を中心に紹介するブログです。

2016-09-20

斉藤斎藤さんの『渡辺のわたし』の〈わたし〉と〈あなた〉



お名前何とおっしゃいましたっけと言われ斉藤としては斉藤とする


もうすでにあちらこちらで話題にしていただいていますが、斉藤斎藤さんの第一歌集『渡辺のわたし』が、新装版という形で、港の人から出ました。

これまではネット注文によるオンデマンド出版という形で刊行されていて、同時代の短歌を語るときに避けては通れぬ重要な存在であることは、誰もが認める歌集でしたが、今は、そちらでは現在入手できなくなっています。

今回の新装版では、新たに歌人阿波野巧也さんの解説が収録されています。阿波野さんの解説には、こんな一節があります。

 

この歌集に通底する最も大きいテーマはやはり歌集のタイトルにあるように、〈わたし〉なのだ。〈わたし〉とは何者か。それは歌集内で何度も問われている。


別の箇所で阿波野さんも述べられているように、〈わたし〉ということだけがこの歌集のテーマではないでしょう。でも、斉藤斎藤さんが仕掛けた〈わたし〉への揺さぶりは、短歌表現の上でも、現代に生きるひとりの私にとっても、これから先ずっと、繰り返し、じわじわと、効き目を失わずにいることと思います。

ところで、ほぼ同時に、斉藤斎藤さんの第二歌集『人の道、死ぬと町』が短歌研究社から出ました。タイトルの文字が似た雰囲気になったのは、まったくの偶然です。この新作歌集、版元としてはちょっと悔しいですが、とても完成度の高い、ものすごい歌集です。オンデマンド版をすでに持っていらっしゃるかたも、新装版と、第二歌集とコンプリートするということで、ぜひともよろしくお願いします。

新装版のために書かれた、斉藤斎藤さんのあとがきから引用します。


すべては無常だ。あなたがこれを手にする本屋が、明日があるとは限らないのだ。想像してごらん、amazonのない世界を。


紀伊國屋書店新宿本店で、大々的に展開していただいています。ありがとうございます。

もちろんamazonでもお買い求めいただけます。


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2016-08-04

夏のふたつの市

梅雨のあけた先週末、東京神楽坂の出版倶楽部で「BOOK MARKET 2016」がおこなわれました。今年から新しい会場になり、参加する版元も大幅に増え、ますます賑やかな盛り上がりを見せた2日間でした。

おかげさまで、港の人のブースも人が途切れることなく、多くの皆様への手許へとたくさんの本が旅立っていきました。書店でなかなか扱っていただきにくい詩集や地味な本を手にとっていただいたり、購入していただいたり、こちらの拙い説明に、じっくりと耳を傾けてくださり、ありがたい限りです。書店にお勤めのかた、これから書店を開こうと思っているかたなどにも声をかけていただき、新しい出会いも多くありました。ありがとうございました。


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さて、この夏には、もうひとつの「市」が控えています。こちらは昨年に引き続き2年目の開催となる「本の産直夏まつり」です。小さい版元ばかりが参加する、手作り感あふれるイベントです。会場は、東京表参道山陽堂書店2階・3階のギャラリースペース、会期は8月26・27日です。どうぞカレンダーに印をつけておいてください!


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2016-06-27

「きのこ漫画」と「胞子文学」

6月も末、ジメジメもピークに達しつつある今日この頃、たっぷりの水分と高い温度に包まれて、生き物たちは日々活発に細胞を増殖させ、生命の営みを発酵させていくかのようです。そんななか、2冊の本をご紹介します。

1冊は、港の人の『胞子文学名作選』。このブログで何度もご紹介しておりますが、苔やキノコ、羊歯やカビ、海藻といった胞子でふえる生物が登場する小説や詩を集めたアンソロジーです。作品のセレクトと解説は、倉敷古書店蟲文庫の店主であり苔の研究家でもある田中美穂さん。収録した文学作品の幻想的な魅力もさることながら、目に見えぬ胞子という存在に心を寄せ、亀や猫とも親しくつきあっている田中さんの生き物観が、本のあちらこちらからひっそりと、でもはっきりと伝わってきます。刊行から約3年経ちますが、今でも高い人気を頂戴しています。

この本には、兄貴分となる本がありまして、それが『きのこ文学名作選』。こちらは、写真評論家でありながら、「きのこ文学」というジャンルの発見者にして永遠の第一人者、孤高のきのこ文学研究者としてたくさんのきのこ関係の著書をお持ちの飯沢耕太郎さんが編者です。刊行当時から大きな反響を頂いたのですが、部数限定版のため現在は品切れになっています。

その飯沢耕太郎さんが選者となった新刊が、ご紹介するもう1冊の本、『きのこ漫画名作選』です。飯沢さんは、『きのこ文学名作選』制作当時から、「きのこ漫画」の面白さ、重要性についても強調しておられたので、『きのこ漫画名作選』は念願の一冊ということになると思います。

ひと目見て、同じ出版社から出ていると思われるかもしれませんが、『きのこ漫画名作選』の出版元はPヴァインさんですので、お間違いなく。どちらも、吉岡秀典さん(セプテンバーカウボーイ)がデザインを手がけておられ、版元をまたぐ例を見ない展開となりました。きのこは、さまざまな境界を自由に行き来する存在ですから、文学と科学はもちろん、文学と漫画、あるいは、版元と版元をも、乗り越え、融合させてしまうのは当然なのかもしれません。Pヴァインの担当編集者のかたとも相談して、2社で協力し合いながら胞子を拡散していくことになりました。

みなさんも、ぜひ、2冊一緒にお楽しみください。

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2016-06-21

『ロケットの正午を待っている』トークイベント終了しました

波戸岡景太『ロケットの正午を待っている』の刊行を記念して、去る18日に、下北沢B&Bでトークイベントがおこなわれました。題して「アートテクノロジー 活版印刷、ダゲレオタイプ、ときどきロケット」。お相手は、写真家新井卓さんです。新井さんは2016年木村伊兵衛賞を受賞、昨年出版された写真集『MOMENTS』は、新井さんがずっと取り組んでおられるダゲレオタイプのシリーズ、福島広島長崎アメリカなど核のモニュメントをめぐる作品群などを収めた、たいへん美しい書物です。

今回のイベントのために、波戸岡さんが一種のレジュメとして用意してくださったのは、波戸岡さんがかかわる出版レーベルOffice Sempervivumの制作物としての「本」。『引 -in-』と題し、『ロケットの正午を待っている』と『MOMENTS』から、「記憶と悪」「兵器と肖像」などのテーマに沿った引用文が併記してあります。本文は蛇腹式、1冊ごとに色の違う表紙でくるまれた手製本です。

言うまでもなく私たちの日常はさまざまなテクノロジーに取り囲まれているわけですが、おふたりが撮影や本づくりを通して体験なさっている、いわゆるローテクとハイテクなものの振幅から見えてくるものを自由に語っておられました。トークイベントならではの、裏話や打ち明け話も多数飛び出しつつ、同世代のおふたりが、決してシニカルにはならずに、現代と未来における表現の可能性を志向しておられる姿が印象的でした。

ロケットの正午を待っている』は、弊社では在庫切れになっておりますが、大きな書店等ではまだ置いてくださっているところがあるようです。活版印刷による限定本となりますので、今のうちにぜひお求めください。今回の会場である下北沢B&Bでお買い求めくださると、当日配布された『引 -in-』が付録としてついてきます!


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2016-06-08

港の人ショーケース

東京西荻窪「shop & gallery FALL」で、港の人の本の展示と販売をおこなっています。「FALL」は、他のお店ではなかなか出合えないステーショナリーやグッズをそろえ、また、アート工芸の個展もおこなうお店。その一画を約1か月お借りして、港の人のこれまでの出版物からセレクトしたものを並べています。

「四月と十月文庫」全タイトルや、好評いただいている『かまくらパン』のほか、『目であるく、かたちをきく、さわってみる』(マーシャ・ブラウン 文と写真/谷川俊太郎 訳や『珈琲とエクレアと詩人』(橋口幸子)、『あたまの底のさびしい歌』(宮沢賢治)などのロングセラー、また、新刊ですがすでに在庫が少なくなっている『ロケットの正午を待っている』(波戸岡景太)などを、取り揃えています。

期間中『かまくらパン』をお買い上げいただいたかたには、冊子「くらしをはさむパンの話」を差し上げています。『かまくらパン』の編集過程で出会ったサンドイッチのことなどを書いた軽いエッセイです。また、毎週土曜日には、週替わりで、『かまくらパン』でご紹介したパン屋さんから5つのお店のパンを特別限定販売いたします。鎌倉のお店以外ではなかなか販売しないお店もありますので、お見逃しなく。数が限られていますので、ご希望のかたは、当日お早めのご来店をおすすめします。

書店とは違った雰囲気の空間で、本を眺め、手に取っていただくのは、とても嬉しいことです。会期は7月3日まで、お店は夜8時までオープンしていますから、お仕事のお帰りにもどうぞ。パン販売のスケジュールなど、詳しくはFALLのサイトへ。


shop & gallery FALL

JR西荻窪北口から徒歩5分。12時から20時まで。月曜・火曜はお休み。



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