7月30日〜RAMPO×Q-TA

結局池袋の渡辺文樹上映会は中止になり予定が空いてしまったので今日は一日中乱歩漫画(主にRAMPO×Q-TA COMICS)を探す旅をしてました。ゲッチュー。


でもやっぱり『天皇伝説』観られなかったのは残念でした。渡辺文樹といえば、昨年代々木で『ザザンボ』 『バリゾーゴン』 『腹腹時計』 『御巣鷹山』を観て、ひどく感銘を受けてしまった。酷評が多い映画とは思うが『バリゾーゴン』は渡辺文樹の最高傑作であると信じて疑いません。ただ傑作だから好きかといえば、それはまた別のおはなしで、僕が一番好きなのは群を抜いて『御巣鷹山』です。もうこれはストーリーテリングの構成が見事!と言う他なく(まあ、まんま『切腹』なんだが)、その静謐な盛り上がり、かっこよさに感動すら覚えます。物語の内容も素晴らしく、その真偽をめぐってスケとマジ喧嘩したことも今ではいい思い出です(それぐらい熱くなれる映画なのだ)。どうも間に合わないので昨年書いた日記をコピペしてお茶を濁します。

 2007年4月25日〜『御巣鷹山』

今日は代々木八幡区民会館で渡辺文樹監督の『御巣鷹山』を観てきました。これは日航123便事件の映画で、この事故に関しては「ウィキペディアよりわかりやすい『日航ジャンボ墜落事故』」を読んでいただくのが一番なのですが、渡辺監督は政府の圧力によって報道されなかったこの事件の真相、真実を映画の中で暴いているのでありました!なんてこった!
まあこの『御巣鷹山』、代々木八幡区民会館ではまだ二回上映が残っており、ネタバレもできないし、というか気合い入れすぎて上映二時間前から行ったため疲れてしまって書く気が全く起きないという話もなきにしもあらずなんですが、ちなみにわたくしは明日も朝も早よから行こうと思っているので、まあ渡辺文樹とその映画については後日、上映期間が終わったらまとめて書くかも知れません。
まあどうせ僕が書くことなんかテキトーなので言っちゃってもいいと思いますが…
御巣鷹山』は渡辺文樹版『切腹』だっ!!
ほんとそうなのよ。小林正樹ね。これは正直言って感心しましたね。
にしても最近観た『野性の証明』がフラッシュバックしたり、快楽亭ブラック師匠が何かの本で”渡辺文樹冬木弘道以上の理不尽大王だ!”と言っていたのを思い出しては、”なるほど!”と一人でいろいろと納得したり。
中盤からはやっと映画になってきて面白かったなぁ。この墜落事故は本当は夏に起こったんですが、映画では冬、雪山の設定になっていて、それが画により緊迫感を与え、まっこと素晴らしい映画的効果をあげていたと思います。
にしても、監督はあくまで大真面目に撮っているのだろうと思われたし、また上映前の監督の前説には”笑うなよ”との無言の圧力があったように感じられて、もうサイコーに可笑しいところ(つまりツッコミどころ)が何カ所もあって大声で笑いたかったんですが、何か会場が笑える雰囲気じゃなかったので声を押し殺して我慢してました。でも一人か二人、大声で笑った人がいて、きっと我慢できなかったんだなぁと思いました。僕は事故現場の写真を事前に見ていたので、”もしかしたら今日は吐くかも…”と思っていたんですが、渡辺監督のドアップでは吐けませんでした、ぷっ!とは吹き出しましたけれど。
最後に映画観て思ったことを言ってしまいますと、渡辺監督は自分大好き!!(『腹腹時計』が一番の目玉だと思います)
会場で×××さんと××さんに会いました。やはり皆さん来てますねー。音の環境が悪く、正直何を言ってるのか全然聞き取れないところが何カ所かあって、僕は「児玉邸」という単語しか聞き取れなかったんですけれど、”ああ!前野霜一郎!”と瞬時に思って、それを上映後に××さんと話したのでした。前野霜一郎と言えば言わずと知れた(厳密にはフリーだったらしいが)日活のニューアクションなどによく出た俳優で、特に僕などはロマポ時代のこの人が好きなんですが、稀代のレイパーぶり(曽根中生『色暦女浮世絵師』)とか今でも印象深いです。前野霜一郎については後日また。

 2007年4月26日〜『ザザンボ』

まず、なんて不気味で、怖くて、どろどろと鬱屈とした映画なんだろうと思った。大体登場人物たちはほとんどが地元の人間を集結させたズブの素人集団で(本人たちはいたってそれが普通の状態なのであろうが)気分を害するぐらいに見ているだけでキモチが悪い。明らかにカンペを読みながら台詞をしゃべっているジジイは、そのためからくる眼球の挙動不審が狂人のそれのように見えることを結果的に強調するし、もう一方の主要なジジイは終始目を下に向け無表情で話し続けるので何を考えてるのかさっぱりわからない印象があり余計不気味に怖ろしく写る(これは『御巣鷹山』の中曽根とは全く真逆の方法論だ)、ババアやこの事件の元凶となった二十歳の孫もキモチが悪い、また彼らが使う福島弁(?)が僕からすればまるで呪詛の言葉をつぶやいてるかのようにも聞こえ(現に何を言ってるのかわからないかも知れぬという配慮からか彼らの言葉には字幕がつく)、もうこの雰囲気はただごとではないなと直感するのであったが、それは渡辺文樹がうわべのウマさとは無縁の監督であることも相俟っているだろうし(映画は観客に迎合する向きが全く見受けられないので拷問に等しいと言うならば否定できない)、近親相姦を含む閉塞的で土着的な異空間の息苦しさも、僕たちの身内にざわざわした不安を抱かせる一つの原因かも知れない。画的にザザンボ(葬式)の行列の風景などは単純に見せるものがあるし、美しいとも思ったけれど、それでも田舎の怖さというものは払拭できない。
にしても素人キャスト陣の中で、唯一うまいなと思ったのは、自殺であったか他殺であったかはつまびらかにはしないが死んだ知恵遅れの少年。あと唯一監督が観客にサービス精神を発揮したと思われたのが、結構可愛い女の子のおっぱいで、背中の痣を見せればすむところをそれですませなかったのは、単に監督が見たかっただけなのかも知れないね。
にしても、やはり渡辺監督の「自分大好きぶり」は映画の中に何度も見られ、炎なめの文樹の真顔とかね、もうそろそろ来るなと『御巣鷹山』の経験からわかってしまいました。無駄に雪の斜面を文樹がごろごろと転がり落ちたシーンに、僕は”来た!”と心の中で叫びましたね。まあ監督の「自分大好きぶり」は正直『御巣鷹山』の比ではないと思うんですが、結局は社会事件を暴こうとする正義の側になってしまうんですね。そういう意味で『ザザンボ』は渡辺文樹のターニングポイントを象徴する作品なのですね、これ以前の『家庭教師』や『島国根性』は、前者は家庭教師先の中学生と、後者は家庭教師先のお母さんとデキてしまう文樹の実体験を題材した、いわば自分をさらけ出した私映画なのだが(『父母の一日』という両親のセックスを隠し撮りした映画もあるらしい)、『ザザンボ』以降は、なぜか渡辺文樹の目は突如タブーな社会事件の究明の方に向けられるようになり、社会事件を暴く文樹は自分自身を正義のヒーロー視し始め、そのヒーロー道(ヒロイズム)を邁進して行くことになるのだと(そういう英雄的行為に対する憧憬は前野霜一郎の児玉邸事件を取り上げてるところにも見られると思うし、また渡辺監督のドキュメント映画『俺の流刑地』でも同様のことを繰り返し発言していたと記憶する)、まあ明日『バリゾーゴン』と『腹腹時計』を観るつもりなんですが(特に『腹腹時計』なんかね)、そういう確信にも似た予感がいまからしています。
まあこの映画のストーリーや、この映画にまつわる松竹との確執、訴訟問題などは、他でさんざん語られていると思うので割愛するとして、最後に鈴木邦男の言葉を引用して締めたいと思います。
「右翼であろうが左翼であろうが何であろうが、信念を持った活動をやっているとどうしても自分を正義だと思ってしまいがちなんですね」

 2007年4月27日〜『罵詈雑言』 『腹腹時計』

渡辺文樹祭り最終日(あ、『御巣鷹山』は4/28もやってます)、今日は『罵詈雑言』と『腹腹時計』を観て来ましたよ。
渡辺文樹といえば、その過激な言動、パフォーマンスばかりが注目され(渡辺作品を正当に評価する人は少ないという印象が拭えない)、その唯一無二の個性、バイタリティから狂人のレッテルを貼られ、”映画界の暴走特急監督”と我々はこの渡辺文樹という男の人物像を知らず知らずのうちにインプリンティングされていると思うのだが、そのご多分に漏れず、僕が渡辺文樹ドキュメンタリー映画『俺の流刑地』(2007/村上賢司)へ行った理由は、そんな渡辺文樹を観たかったからであった。僕はこの映画に原一男が撮った奥崎謙三を密かに期待したわけであるが、その思いはこのドキュメント映画に限って言えば、見事に肩透かしを喰らった。あくまで狂人の渡辺文樹は観られなかったというだけの意味で。映画自体は悪くはなかった、このときの文樹は鈴木清順の弟である元NHKアナウンサー鈴木建二をも彷彿とさせる”気くばり”(サービス精神も含めて)の人で、世間で囁かれているほどメチャクチャではなく、そういう噂とは全く違った一面を捉えたところにこのドキュメントの意義はあったと思うし、素晴らしいことなのだけど、ただこのドキュメント、面白いか面白くないかと問われれば、まあ面白いことは面白いんだが、ただ例えば『ゆきゆきて、神軍』のような圧倒的な爆発的な面白さは正直言って、ない。そのような『俺の流刑地』に対する極私的不満を一気に解消、払拭してくれたのが今回の『罵詈雑言』であって、語弊を恐れずに言うならば、『俺の流刑地』は原一男奥崎謙三を撮っても失敗した映画であり、『罵詈雑言』は奥崎謙三奥崎謙三を撮って大成功した傑作なのであった、”ゆきゆきて、文樹”、え?わかりづらい例えだって?そんなことはもう知らん!とにかくそうと言ったらそうなんじゃい!毎度のごとく(書くのがめんどくさいので)『罵詈雑言』のストーリーや酷評等はネットに氾濫する情報の方にゆずるとして、極私的なことを言えば、今回渡辺文樹祭りで四作品を観たが、『罵詈雑言』が一番完成度が高いように見えた素晴らしい映画だと思った。この映画以降の文樹は『腹腹時計』『御巣鷹山』と、『罵詈雑言』と比べてあまりにもゆるいアクション志向(「自分大好き」志向)に走っており、もう今後『罵詈雑言』のような映画を撮ることもないだろうし、というか単純に撮れないとも思うが、それは個人的には望むところであって、好みの問題で言えば今回の上映で僕が一番好きだったのは『御巣鷹山』であり(”『切腹』のパクリやん!”とは言うまい)、今後もこの手のアクション志向で行って貰いたいと思っているものなのである。
腹腹時計』もネットの解説見れば、そのまんまなので割愛するけれど、しかし僕なりに補足すると…
”じじいアクションを撮らせたら文樹に勝る者なし!”
今回もじじいたちがヤバかった(笑)他にもいちいちツッコミ切れないほどその手のシーン多数!!にしても特に印象的だったのが、女テロリストに人質として捕らえられる子供の目が超虚ろ!泣き叫んだり全然しないの、ただ虚ろ(笑)
他にもいろいろあって、話し切れないのが残念ですが、僕は『腹腹時計』を観て、”渡辺文樹は和製スティーブン・セガールだ!”と思いましたね。いや、セガールの映画、一本も観たことないので超なんとなくですけど(テキトーやな)だって文樹、天皇が乗った電車に、爆弾積んだ電車で突っ込もうとするんだもん、ほら『暴走特急』ってな。
映画全体はゆるゆるだけど、爆弾の作り方を凄く詳細に説明しながら作るところとか、そういう捨てがたい魅力もあったりするんですけどね。にしても、『罵詈雑言』の前説では相変わらずの文樹節で熱くて、”おお!今日も許せてないなー!”なんて思ってたんですが、『腹腹時計』は自分でも出来は自覚してるんですかね、最後に観客から拍手が起こったときに浮かべた文樹の照れ笑いに、なんか”えー?!”ってなりました。
しっかし文樹ネタは全く尽きることないし、また鉄板でありますなぁ。