わたしと岡村ちゃん 第2話
14歳の私は、なんだかぶっ飛んでいました。
毎度おなじみ流浪の番組、タモリ倶楽部の空耳アワーでハガキを読まれたのも、まさにこの頃*1。
岡村ちゃんの世界に片足…いや、足の指一本だけでも踏み入れることができたのも、私がやっと“14歳”という年齢になったからだったんだと思います。
14歳は、私にとって大人への第一歩でした。
『どんなものでも君にかないやしない』
CDなのになんて長いタイトルなんだ!
いつの間にかリビングのラックに仲間入りしていたそのCDの背表紙?を見るたびに、
そう心の中でツッコミを入れていました。
(真にツッコミを受けるべきは、「青年14歳」以外まともに聴いたことがなく、このタイトルが名曲「カルアミルク」の一節だと気付いていない私なのですが。笑)
長いタイトルにばかり気を取られて気付いていなかったけれど、タイトルの続きには『岡村靖幸トリビュート』の文字が…。
当時、岡村ちゃんのことは好きでも嫌いでもなく、どちらかと言えば相変わらず苦手。
わざわざ聴く理由はどこにもなかったけれど、ただ、ジャケットの中で不敵な笑みを浮かべるお姉さんに「ねぇ、聴かないの?」と言われている気がして…。
訳もわからず聴いてみると…あれれ、岡村ちゃんが……歌ってない!!(当たり前)いわゆるトリビュートアルバムというものを初めて聴いた上に、元の曲を1曲も知らないという奇跡!がしかし、ここでさらなる奇跡が起きちゃったんです。
くるりの「どぉなっちゃってんだよ」にツボり、
朝日美穂の「だいすき」の可愛さにやられ、
栗コーダーカルテットの「友人のふり」を聴き、泣いた。
原曲である岡村ちゃんの歌は、恥ずかしながらどれも聴いたことがありませんでした。
彼の歌い方や声に苦手意識を持っていた私にとって、このアルバムはまさに救世主。
岡村ちゃん、そして彼の音楽を愛する人々の奏でる音楽を通して、
私の中での【岡村ちゃん観】が少しずつ変わり始めていました。
私のMDに、くるりの「どぉなっちゃってんだよ」
栗コーダーカルテットの「友人のふり」*2
Black Bottom Brass Band With Tarzan Boys & Girlsの「ステップUP↑」
そして、朝日さんと岡村ちゃんの「だいすき」が仲間入り。
“野蛮でノーパンで冗談に暮れる 青年14歳”と熱唱していた彼も
“君が大好き あの海辺よりも 大好き 甘いチョコよりも こんなに大事なことはそうはないよ”とやさしく歌う彼も、まぎれもなく同じ岡村ちゃん。
どんどんわかっていくようで、なんだかますますわからなくなる。
思わず好きになってしまった「青年14歳」は間違いでも例外でもなく、
そんな彼を「だいすき」になるまでの長い長い旅路のはじまりに過ぎなかったようです。
これが、ようやく岡村ちゃんに対する“第一次反抗期”を終えた頃のお話。
それから、まもなくのことでした。
彼のオフィシャルサイトが閉鎖されたのは。
父と母の悲しそうな顔を見ながら、私はどんな顔をしていいかわかりませんでした。
彼のCDを手に取ったこと、彼の曲を秘かに聴いていること、その曲が好きなこと…
全部ぜんぶ、パパやママやみんなには内緒でした。
あの日の夜、素知らぬ顔をした私は、パソコンに映る画面の紫色をただ黙って見つめていました。
16歳になったばかりの、春のことでした。