8月30日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

憲法〈34〉
次は、憲法に明文で規定されている国民の義務を列挙したものであるが、誤りはどれか。
(1)教育の義務
(2)自由・権利を濫用しない義務
(3)納税の義務
(4)憲法尊重擁護義務
(5)勤労の義務

⇒「国民の義務」に関しての出題は、頻出ではないが、時々出題されており、注意を要する。これらについては、一度整理しておけば十分対処できる問題が多い。

正解(4)

(4)誤り。
憲法99条は、国家の権力作用にかかわる天皇及びすべての公務員に対し憲法を尊重擁護すべきことを義務付けるが、国民については、憲法上明文で義務付ける規定はない
憲法尊重擁護義務は、公務員のみならずすべての国民が負うべきものであるが、憲法は、国民が主権者として定めたものであるから、それを守ることは当然であるとの前提に立って、国家の権力作用にかかわる者に憲法を守るべきことを求めたというのがその趣旨である
(1)正しい。
憲法26条2項前段は、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う」と定める
→これは、1項の「教育を受ける権利」を実質化するための義務の定めであり、したがって国民のこの義務は、形式的には国家に対するものであるが、実質的にはその保護する子女に対するものである
(2)正しい。
憲法12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」と定める
→この規定は、人権の歴史的性格とその保持のために必要な国民の責務をうたったもので、国民にとっての精神的指針であり、それ以上に何らかの具体的な法的義務を国民に課した規定であるとは解されていない
(3)正しい。
憲法30条は、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」と定める
→この義務は、国民主権国家においては、国民の納める税金によって国家の財政が維持され、国家の存立と国政の運営が可能となることから、国民の当然の義務と解されている
(5)正しい。
憲法27条1項は、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」と定める
→勤労の義務は、働く能力のある者は、自らの勤労によって社会で生活を維持すべきであるという建前を宣言するにとどまり、強制労働の可能性を認めるものではない
→勤労の能力があり、機会があるのに勤労しない者は、生活保護などを拒否されるので、必ずしも、単なる倫理的・訓示的な義務規定でもなく、その限度で法的意味をもつと解されている

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憲法 第四版

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憲法 (新法学ライブラリ)

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8月31日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

行政法〈34〉
次は、地方公務員法に定める秘密を守る義務についての記述であるが、正しいのはどれか。
(1)職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないが、退職後はその義務はない。
(2)職員が、法令による証人・鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合は、所属長の許可を受けなければならない。
(3)法令による証人・鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合における許可は、法律の特別の定めがある場合や、基本的人権を侵害するおそれのある場合のほか、拒むことができない。
(4)職員が、職務上知り得た秘密を漏らした場合は、分限処分の対象となる。
(5)職員が、職務上知り得た秘密を漏らした場合は、刑罰の適用がある。

⇒公務員の服務に関する事項としては、職務に専念する義務、法令及び上司の命令に服従する義務、秘密を守る義務などが代表的なものであるが、一般行政法の分野では出題頻度の高いところである。条文の文言がそのまま問題文として使われることが多いので、特に、地方公務員法30条〜38条は、注意すべきである。

正解(5)

(5)正しい。
→行政に対する住民の信頼と行政目的の円滑な実現を確保するため、地方公務員は守秘義務を負い、職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないと規定されている(地公法34条1項)
→この秘密を守る義務の重要性を考慮し、職員が職務上知り得た秘密を漏らした場合は、刑罰が適用され、1年以下の懲役又は3万円以下の罰金に処せられる(地公法60条2号)
(1)誤り。
→職員が職務上知り得た秘密を漏らすことによって生ずる行政に対する住民の信頼を損なう点は、在職中でも退職後でも変わらない
(2)誤り。
→職員が、法令による証人・鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合は、「任命権者」の許可を受けなければならない(地公法34条2項)のであって、所属長ではない
(3)誤り。
→任命権者の許可は、証人・鑑定人等となって証言することの重要性を考慮し、「法律に特別の定めがある場合を除く外、拒むことはできない」(地公法34条3項)と定められている
→したがって、許可を拒むことができるのは、法律に特別の定めがある場合だけである
(4)誤り。
→職員が、職務上知り得た秘密を漏らした場合は、「この法律(地公法)に違反した場合」に当たり、公務員の義務違反に対する制裁として科せられる懲戒処分の対象となる(地公法29条1項1号)
→分限処分の対象とはされていない

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行政法読本

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行政法 (LEGAL QUEST)

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