マリリン 7日間の恋


http://marilyn-7days-love.jp/
うまくまとまらなかったので箇条書きで。マリリン・モンローローレンス・オリヴィエの共演作「王子と踊子」でサード助監督を務めたコリン・クラークが撮影当時のことを記した著作の映画化作品。原作未読。


ミシェル・ウィリアムズマリリン・モンローを演じてアカデミー主演女優賞にノミネートされた作品ということで、ミシェル目当てで観た。想像していたものとずいぶん異なる内容だったこともあって、観賞直後は不思議な映画だなーと思った。その後しばらく時間がたってからは、おもしろいけれどモヤモヤするする、ノレたノレないで言えばノレなかった、という感想に。

・邦題や予告からは「スター女優と一青年の秘められた恋物語」といったものが想像されると思うのだけど、それはミスリード。そういったロマンス的な要素もあるけれど、主に描かれるのはラブストーリーじゃなく、「王子と踊子」の撮影秘話のようなもの。イギリスのオリヴィエ一座にハリウッドの売れっ子マリリン・モンローがやって来ることで、そこに生まれる"ひだ"、それをこそ描いている。マリリンが持ち込んだ、宝石のような輝きや極度の不安定やメソッド演技。そうしたものに、時に憤慨し、時にため息をつきながらも、どうにも魅せられてしまう英国演劇/映画界の面々を英国人の立場から切り取っていて、そういう意味では(実際の製作国はアメリカとイギリスの二国なのだけど)これは「イギリス映画」なのだと思う。

・そんなふうに、あらゆる人が交錯し陰影を織り成す撮影現場の実情を覗くのはおもしろい。のっけからオリヴィエがメソッド演技に嫌悪感を示す脚本読み合わせシーンなんかは不穏な空気バリバリでたいへん楽しんだ。

・しかし、主人公コリンに都合のいい話になってしまっているので、彼の成長物語としてあんまり成立していないのは気になった。結局ノレなかったのはそこが大きい。「ただ映画が好きなだけの無邪気な青年の人生にほんの一瞬映画の世界が交差する、束の間の夢の物語」で終わってよかったと思うのだけど。スクリーンの向こうのマリリンを見つめる表情に最初と最後で変化がないように、コリンはマリリンとの短い恋を経た後も彼女の「理解者」ではなく、私たちと同じ「観賞者」でしかないと思うのだけど、そのことにあまりに無自覚なので、最後に用意された「成長」がまったく腑に落ちない。

・ただ、その能天気な無自覚っぷりが彼を傍観者たらしめている(そのわりに話にズカズカ入ってきてるんだけども)わけでもあって、彼のそういうところを肯定的に受け止められるかが大きい映画だと思う。そのあたり、エディ・レッドメインはギリギリのところでイノセンスとして見せていたけど。

ミシェル・ウィリアムズは想像以上に巧みにマリリンの持つ光と影をコントロールしていて、見事ななりきりっぷり。だからこそ彼女の演技を存分に活かしてほしかったけど、思いのほか出ずっぱりってわけでもなくて、それもちょっと残念だった。