人類は衰退しました - 田中ロミオ

こざっぱりしていて,ロッテリア*1で一気に読み切ってしまったこの一冊.
人類は衰退しました (ガガガ文庫)
そう.こざっぱりとしていた,というのがその印象.ラノベってものを読んでみなくちゃ,なんて思いながらはじめて手に取ったのが「涼宮ハルヒの憂鬱」だったのだけれど,そのときに感じたような,あの甘酸っぱい感じは全くといっていいほどなかった.ちょっと意地悪な言い方をすれば(タイトル通り)枯れている印象.妖精さんとの会話だとか主人公が背の高い美少女という設定だとか,そういう面でしか,悶える*2要素がなく,むしろその印象は,ジュール・ベルヌの「海底二万海里」を読んだときのそれに近い.

一つ一つの言葉から異様な情報量*3が流れ出てくるような読書に少し疲れていた頃合いだったのもあって,やけにすっきりした気分になってしまった.表徴の帝国らしい小説でした.


あ,内容ですが.評判のごとく,とてもおもしろかったです.ライフゲームだとかテラフォーミング系のお話とか好きな人は特に.

*1:夕食.絶品チーズバーガーとね,きなこ揚げパンをね,食ってたんですよ.

*2:萌える,とはなんかちがうのだ

*3:それぞれの言葉が記号としてもつその内容

都市/建築 フィールドワーク・メソッド - 田島則行,久野紀光,納村信之

いい本でした.都市だとか建築だとかそういったものに少しでも興味を持つ人すべてにお奨めしたい.
都市/建築フィールドワーク・メソッド (10+1 Series)
都市について,何に注目し,あるいは切り捨て,その対象をいかにして観察し,記述・変換していくかという,都市を対象としたフィールドワークの方法論について述べられている一冊.全体を俯瞰し把握することのできない*1「都市」という対象をあぶり出すための方法としてフィールドワークを捉えている.
フィールドワークにおける内部性と外部性,文化人類学,レヴィ=ストロースフーコーの言説,ベンヤミンの「パサージュ論」,シカゴ学派の都市社会学,シチュアシオニストたち,レム・コールハース,都市を写真に撮るということ,伊東忠太,「悪い景観」,サウンドスケープ,今和次郎考現学,都市における自然・・・などなどなど.

個人的には,参与観察の限界だとか,都市を記述する方法の模索,といった話題が特に興味深かったように思う.必ずしも具体的な「やり方」示されているわけではなく,そういった部分はそれこそ読者ひとりひとりに委ねられている.

べつに専門家に限ったことなんかじゃなく,ふだんなんとなく街だとか建物だとかみんなの生活だとかについて気になっている人ならば,その目線に新しく面白いなにかを付け加えることができるんじゃないだろうか.

*1:たとえできたとしてもそれによって「理解」できる範囲などひどく限られている

オリエンタリズムの倫理と好事家の精神

でもって,どうやら最近は「ダメな建築」だとかそういった,アカデミズムからは評価されないものたちが逆にもてはやされる風潮にあるようです.僕もみんなも大好きな団地だってそうだ.僕にとってはどうしても愛らしいものという気持ちを捨てきれない,あの放置自転車たちだってそうだ.あのにっくき「ケンチクカ」たちの嫌うものたちが.

そうした「正当な」建築と「ダメな」建築とのジレンマを経て,いつかは揺り戻し(正当なものへの回帰)があるのかもしれない,止揚があるのかもしれない.・・・そもそもそんな二項対立なんて問題じゃないのかもしれない.・・・が,そんなことはともかく,この風潮は,僕にとっては喜ばしいことではあるはずなのです.


が,しかし.それと同時に.

こういった「ダメな建築」たちをある種のオリエンタリズムを通じて消費していないか?という不安からどうしても逃れられません.

ディレッタンティズムに陥るのが悪いだなんて言う気はありません.僕だってそういうものは大好きなのです.・・・でも,みんながみんなそれでよいとはとても思えない.そのバランス感覚を持っている人が,いったいどれだけいるのだろうか?自分自身もそれを持たなければならないはずなのだけれど,ほんとうに大丈夫なのか?なんて不安が.