米国の1800MHz帯と2100MHz帯

さて上記でさんざん米国をあほんだら、わがまま扱いしているが、実は米国には米国の事情がある。
米国では、GSM1800MHz及びW-CDMA/LTEのバンドIIIである1800MHz帯、もっと厳密には1710MHzから1880MHz(W-CDMA/LTEGSMは1850MHzまで)は、宇宙との通信、そして国防の通信に使われているのだ。
つまりNASAと米国軍のものなのだ。
なので携帯電話には使えないのだ。
高調波の問題から、900MHz帯も使えない。
同様に2100MH帯は、移動体と衛星との通信に割り当てられている。
用途が書かれていないのだが、おそらくこれも軍事用途なのだろう。

米国の携帯電話(含スマホ)とNTTドコモ(含むMVNO)の通信周波数比較

筆者がブログで掲載しているスマホが日本で使用可能か、問い合わせがあった。
NEC Terrainは一度日本で使用したことがあり、詳細はこちらにあるものの、LTE契約が必要であったことを除けば、問題なく使用できた。
LG Optimus F3Qはまだ日本で使用していないが、対応通信周波数を元に見積もってみることにする。

GSM

バンド LG Optimus F3Q NEC Terrain NTTドコモ
850MHz -
900MHz -
1800MHz -
1900MHz -

いわゆる第二世代携帯電話(2G)だ。
日本国総務省および旧電電公社ガラパゴス戦略を国策として採って、2GではPDCを採用したため、海外の携帯電話のほとんどが対応しているGSMについては全く対応していない。
そう、平成の御世に鎖国政策を採ったのだ。
これが故に、3G(W-CDMA)初期の頃にNokiaの携帯電話を日本で使うのは大変だった。
3G(W-CDMA)導入初期のころは3Gのエリアが大変狭く、さりとて2Gにハンドオーバーしようとしても、海外では当たり前のGSMNTTドコモをはじめとする日本のキャリアは対応していなかったからだ。

W-CDMA(UMTS)

バンド 代表周波数 LG Optimus F3Q NEC Terrain NTTドコモ
I 2100MHz
II 1900MHz -
IV 1700/2100MHz - -
V 850MHz -
VI 800MHz - - ○(FOMAプラス)

第三世代携帯電話(3G)、NTTドコモFOMAと呼んでいるものだ。
勝手に変な名前をつけるのは何?LTEにもXiとか勝手につけてるし、死ねばいいのに。
さてさて3G、じつは全世界では26ものバンドが使用されている。
NTTドコモは、3G導入当初、バンドIに対応した。
APACもEMEAもバンドIをサポートしたので、世界中どこででもWCDMAバンドI一本、が可能になったのだ。
通信プロトコルも一緒、周波数も一緒、つまりPDCによる鎖国の終了だ。
しかし、バンドIだけではどうしても収容数(セル内で同時に使用できる携帯電話端末の数)、帯域に問題がある。
そこでPDCを終波するにつれて、PDCでつかっていた800MHz帯=バンドVIをFOMAプラスとして、3Gに適用した。


しかし米国というあほんだらな国が、その他の国で使われているバンドIを採用しなかったのだ。
もともとこの国は2G時代に850MHz帯と1900MHz帯を、世界で唯一(といってもカナダも同罪)使っていて、GSMの相互接続性を悪くしていた国。
実際にはGSM4バンドといっても、他の国のほとんどは900MHz帯と1800MHz帯だけだったのだ。
2Gや3Gの初期は、米国は携帯電話市場でゴミみたいに小さい市場で、携帯電話界の小国、まぁ好きにすれば、で問題なかったのだ。
3Gが入ってきたときに、米国は2Gの周波数帯、850MHz帯と1900MHz帯をそのまま3Gに割り当てた。
しかも世界のほとんどの国が採用している2100MHzを採用しなかった、なんてゲスな国
この後で米国発祥のiPhoneAndroidが広まるにつれ、米国携帯電話市場が無視できない大きさになるに至って、

  • 米国の2100MHz非対応(米国以外の国は対応)
  • 850MHz/1900MHz (米国) 対 900MHz/1800MHz(米国以外の国)

のバンドの裂け目ができたのだ。
おかげで米国対応の3G携帯電話は、日本及び世界のほとんどの国の3Gの帯域と、相互接続できる帯域をほとんど持たないのだ。


しかし端末メーカは他の国でも使えるようにするためにバンドIだけはサポートしているので、NEC TerrainもLG Optimus F3Qも、バンドIのみだけれども、どうにか日本でも使用できるのだ。

LTE

バンド 代表周波数 LG Optimus F3Q NEC Terrain NTTドコモ
I 2100MHz - -
II 1900MHz - -
III 1800MHz - - ○(東名阪バンド)
IV 1700/2100MHz -
XIII 700MHz - -
XVII 700MHz - -
XIX 800MHz - -
XXI 1500MHz - -

そしてLTE
LTEは当初3.9Gと呼ばれていたのだが、またしても米国わががま合衆国、勝手にこれを4Gと呼び出し、大混乱。
しょうがないので、IMTが「HSPAもWiMAXLTEも、4Gって呼んでいいですよ」とお墨付きをつけた顛末あり(詳細はこちら)
NTTドコモPDCを終波して空いた800MHzと1500MHzをLTEに転用して帯域の確保に努めながら、バンドIと、APACやEMEAでも多く使われているバンドIIIに対応することで国際化に対応。


しかしここでも米国対その他世界中の国による、2100MHz非対応や、900MHz/1800MHz対850/1900MHzの戦いは続く。
米国は700MHz帯をLTEに割り振ることで、さらにわががま路線邁進
しかしiPhoneAndroidなどスマホは米国市場が中心に回っているため、皆(端末メーカ)も米国市場対応端末を出しているのだ。
上の表でお分かり頂ける通り、米国対応の携帯電話のLTEは、日本のNTTドコモおよびそれを利用したMVNOでは全く使い物にならないのだ。


さて、上記のようなことを書くと、んじゃiPhoneはどうなってんのよ?何でドコモでLTEも使えるの?と思われるだろう。
iPhone 6sは、バンドI(2100MHz)、II(1900MHz)、III(1800MHz)、IV(1700/2100MHz)、V(850MHz)、VII(2600MHz)、VIII(900MHz)、XII(700MHz)、XIII(700MHz)、XVII(700MHz)、XVIII(800MHz)、XIX(800MHz)、XX(800MHz)に対応している。
一台で、実質的なW-CDMA共通周波数2100MHzにも、欧州GSMを元とする900MHz/1800MHzにも、米国の1900MHz、850MHz、700MHzにも対応しているのだ。
当然これはコストに跳ね返る。
しかしiPhoneくらい売れている機種だったら、各国毎の周波数対応をした各国毎のモデルを出すよりも、モデル数を少なくした方が儲かるのだろう。