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rascal2009の日記

2017-07-18

『二都物語』

ディケンズの『二都物語』はフランス革命を舞台とした物語です。

この物語を読みながら、豊浦志朗の『硬派と宿命』と船戸与一『砂のクロニクル』の、それぞれの序文を思い出さずにはいられませんでした。

現時点での最良の政治システムとして民主主義が規定されている世界で、フランス革命の価値、その「自由・平等・友愛博愛)」の精神は絶対です。

しかし、それは歴史の大きな流れの一ピースとして捉えた場合であり、何事であれ、現場の個々人にとっては、どこまでも個人的で泥臭い出来事に過ぎません。

虐げられた人々の、その反動としての復讐劇。そこに、罪を憎んで人を憎まずという諦観はありません。殺せ、わたしたちにはそうする権利がある。

その“正義感”の嵐の中、人は気高くあることが出来るのか。

この物語が示してくれた美徳は、泥沼に咲く一輪の蓮の花の如きものかもしれません。それでも、それは救いです。

別の視点から、気がついたことを一つ。この物語は第一部と第二部で溜めに溜めて、第三部で大きな盛り上がりを見せます。この構成は、大藪春彦の『戦士の挽歌』と同じです。

ディケンズを読んで大藪春彦船戸与一と関連づける自分に苦笑いを浮かべつつ、この二人の作品を読んでいて良かったと思います。

二都物語(新潮文庫)

二都物語(新潮文庫)

2017-07-14

この夏も

微々たる金額ですが、「あしなが東日本地震津波遺児基金」と「国境なき医師団日本」に寄付をしました。

世の中には、交通事故で親をなくしたり、親が親の務めを果たすことが出来ず離れて暮らすことを余儀なくされたり、自らの責任でなく不遇な環境に置かれ、助けを必要としている子供たちがたくさんいます。

その子たちに手を差し伸べることが出来ない自らの非力に、申し訳ない気持ちでいっぱいです。上記の二つにだけ寄付をするのは差をつけて扱っているということではないのかと責められれば、うなだれるしかありません。

この行為は、わたしにとって自己満足であり、自己弁護でもあるのでしょう。生きていてごめんなさい、でも勘弁してくださいと。

でも、偽善であっても、その偽善を為しましょう。

「時の始まりから、善いおこないは往々にして悪い金のあとについてきたのだ。」とは、デニス・ルヘインの『夜に生きる』の言葉です。

わたしの差し出したお金も、きっと善い行いにつながると信じて。

2017-07-09

こんどは素直に

個人的な夏の文庫フェア。

テーマはずばり“青春”です。

人間の一生は青春・朱夏・白秋・玄冬の四つに分けられます。確かに、振り返って青春の時期が過去のものになったことを実感するときがあります。しかし、心の奥底にしまってあるだけで、消えてなくなったわけではない想いもあるはずです。

阿佐田哲也の『麻雀放浪記(青春編)』は問答無用のど真ん中。まだ何者でもない若者が、まだ何事でもない戦後の混乱期に戦う物語。

金城一紀の『フライ・ダディ・フライ』はさえないオジサンのひと夏の奮闘記。魅力的な高校生たちとともに“成長する”ビルドゥングスロマンです。

フライ,ダディ,フライ (角川文庫)

フライ,ダディ,フライ (角川文庫)

船戸与一の『虹の谷の五月』は著者には珍しい少年を主人公にした作品です。生きる力とは命そのものの持つ力。読後も爽やかで、夏にぴったりの物語です。

虹の谷の五月〈上〉 (集英社文庫)

虹の谷の五月〈上〉 (集英社文庫)

虹の谷の五月〈下〉 (集英社文庫)

虹の谷の五月〈下〉 (集英社文庫)

誉田哲也の『レイジ』は音楽小説の白眉自尊心自意識過剰。それが音楽の魔力に絡めとられて、読者もドキドキ、先が気になってページを繰る手が止まりません。

レイジ (文春文庫)

レイジ (文春文庫)

ロバート・マキャモンの『少年時代』は親と子の物語。母親と娘の結びつきは強く、父親の入り込む隙はないともいいますが、父親と息子もまた然り。

少年時代〈上〉 (文春文庫)

少年時代〈上〉 (文春文庫)

2017-07-07

ちょっと意地悪な

個人的な夏の文庫フェア。

テーマは“ちょっと意地悪な”です。入手が困難だったり、読むのが大変だったり。でも、ちょっと背伸びをする読書も良いものです。

打海文三の『されど修羅ゆく君は』と『愛と悔恨のカーニバル』は続けて読んでほしい二作です。後者の最後のヒロインのセリフに、にやりとするか、のけ反るか。

されど修羅ゆく君は (徳間文庫)

されど修羅ゆく君は (徳間文庫)

愛と悔恨のカーニバル (徳間文庫)

愛と悔恨のカーニバル (徳間文庫)

五味康祐の『柳生武芸帳』は漢文調の美しい文章が奏でる剣と謀略の物語です。

柳生武芸帳〈上〉 (文春文庫)

柳生武芸帳〈上〉 (文春文庫)

柳生武芸帳〈下〉 (文春文庫)

柳生武芸帳〈下〉 (文春文庫)

森瑤子の『女ざかりの痛み』は幼いと可愛いの区別がつかない人に。

女ざかりの痛み (集英社文庫)

女ざかりの痛み (集英社文庫)

ロバート・ニュートン・ペックの『豚の死なない日』と『続・豚の死なない日』は厳しい世の中で誠実に生きる尊さを示してくれます。スコップの握りの部分が黄金色に輝くのは何故か。

三島由紀夫の『禁色』はエアコンのスイッチを切って、蝉の声を聞きながら汗をかきながら読んでほしいです。

禁色 (新潮文庫)

禁色 (新潮文庫)

2017-06-26

バカな子ほど可愛い

今年も庭の一画に畝を作り、さつまいもの苗を植えました。ほぼ一か月が経ち、順調に育っています。

苗の数は全部で十本。そのうちの一本は色も薄く、細くて弱々しいものでした。だからといって捨ててしまうのはもったいなく、あるいは心苦しく、他のものと同じように植えました。

水やりをする際も、枯れやしないかと気にして様子を見ていました。すると、初めの頃は風が吹いたら折れてしまうのではないかというほどだったものが、茎も太くなり、しっかりと葉を広げ出したのです。

もちろん、他と比べれば成長も遅く、小さい状態です。それでも、あの苗なりに必死に大きくなろうとしている姿に胸を打たれました。水をやるときも、自然に「頑張れ〜頑張れ〜」と声をかけてしまいます。

他にもう一本。ある日、元気がないなと覗き込んだところ、畝の表面の部分で切れてしまっていました。猫かイタチが悪さをしたか、あるいは鳥か。直径が二ミリもない断面が無残に土に埋もれていました。

そのちぎれてしまった方を、その茎から少し離れた位置に挿しました。ダメ元ともいえない、ただただ悔しい気持ちからでした。それが、枯れもせずにいます。土の中にあるのはほんの数センチ。収穫出来るようなさつまいもが育つかは疑問ですが、どのような結果になっても、それを楽しみにしています。

そして、驚いたのが、土の中に残っていた方。何と、断面だったところから新しい芽が出てきたのです。本当に本当に小さい芽が二つ。何という生命力。その不屈の姿に圧倒される思いです。収穫までの残りの日数を考えれば、さつまいもが出来るかは甚だ疑問です。でも、秋までつき合うつもりです。

バカな子ほど可愛いとは、こんな気持ちでしょうか。