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rascal2009の日記

2017-02-27

まるごと描く

船戸与一は、「満州をまるごと描く」をコンセプトに“満州国演義”シリーズを書きました。

人類史をまるごと描くユバル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』を読んでいて、ずっと試されていると感じていました。この本は、読み手の内的蓄積に呼応します。何を見て、何を聞いて、何を読んで、何を考えて生きてきたか。

読むにあたって、フランス革命と聞いて思い浮かべることがある程度には、高校の世界史レベルの知識はほしいところです。

船戸与一の諸作品や、漫画なら浦沢直樹の『MASTERキートン』や岡崎二郎の『アフター0』を思い出しながら読みました。それだけでなく、本棚に並んでいる本のすべてが、この『サピエンス全史』と密接に繋がっているようにも思えます。必ず、この本のどこかに当てはまるのです。

これまで読んできた本のおかげで『サピエンス全史』を楽しく読むことが出来たなら、その逆、『サピエンス全史』を読んだ後にそれらの本を再読したなら、また楽しめるのではないかとも思えます。

この本を読んでみようと思ったきっかけは、NHKドキュメンタリー番組でした。興味深く見ましたが、同時に物足りなさも感じました。そこで手に取ったわけですが、その不満も吹き飛ばしてくれました。

また、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』を読んでいたことで、本書をよりいっそう楽しめたと思っていたところ、巻末の謝辞に名前があって驚くとともに嬉しくなりました。

内容について感想を書こうと思ったら、一章ごとに書いても追いつきません。ですので、この場では読んで良かったという感想を書くだけに止めます。

2017-02-17

自制

人類史についての本を読むとき、扱われる事象は万年単位で語られます。西暦が現在2017年。それを何回繰り返すのかと想像すると、そのスケールの大きさに目眩を覚えます。

刺激は、より刺激的になることでしか刺激たり得ません。同じように、進歩という名の変化の速度もまた、過去の10万年と今の100年が等しいかのように加速度的に上がって現在に至ります。

禍福は糾える縄の如し。

ホモ・サピエンスが他の人類を駆逐し得た“認知革命”が、過ぎたるは及ばざるが如しとばかりに逆襲してくることはないのでしょうか。『伝説巨神イデオン』で、目覚めたイデが未熟な人類に絶望し、次の生命に期待してすべてを無に帰してしまったように。

損して得取れではありませんが、中長期的な目標の達成のためには(例えば設備投資のような)短期的なマイナスも必要な過程であり、自制というものが求められると、これは強く思います。

2017-02-01

UWF再び

“あの”柳澤健UWFについて書くと聞いて、多くの人たちは「ついにUWF論の決定版が出る」と胸を躍らせたのではないでしょうか。斯く言うわたしも、その一人です。

連載中から賛否両論、思い入れがある人ほど意見を表明しますので、否の方が多かったかもしれません。著者も、あとがきで、企画が持ち上がったとき、UWFについて書くことに躊躇いがあったことを告白してます。

あれは夢でした。青春の手前、思春期の夢でした。

それを、他人が「これはこうでこうだった」と意味付けることに抵抗を覚えないわけがありません。

この本が提示する格闘技の流れは二つあります。一つは、旧UWFからシューティング(現在の修斗)を経てMMAへというもの。もう一つは、旧UWFから新生UWFを経てMMAへというもの。

前者は佐山聡の、後者は前田日明の物語です。

著者は前田日明と新生UWFに辛辣です。本書の最初と最後に登場するのは中井祐樹佐山聡のもとでシューティングを学んだ格闘家です。ここからも、前者を本流と認識していることが窺い知れます。

しかし、著者は、だからといって新生UWFを無視して論を展開することは出来ませんでした。その包含力こそプロレス

この本は、UWF論の決定版はおろか、議論の叩き台にすらなっていません。ある人は「リトマス試験紙」と評しています。

それでも、読んで良かったと思っています。あの時代に熱い想いを抱いていたなら読むべき本だと確信しています。

もう一歩、踏み込むために。

1984年のUWF

1984年のUWF

2017-01-28

彷徨う

チャートに従って歩む正しい人生などありません。その選択の結果を自らに引き受けて臨む人生において、正しいも間違っているもありません。

四十にして惑わず。嘘です。迷って結構、惑って結構。

自分に何が出来るのかも、自分が何をしたいのかもわからない。自分が何者なのか、より正確にいうなら何者になり得るのか。何ひとつ確かな手応えもなく彷徨う。

素晴らしいじゃないか。その寄り道、回り道こそ人生の糧。

青春の門 第八部 風雲篇 (講談社文庫)

青春の門 第八部 風雲篇 (講談社文庫)

2017-01-13

永続敗戦

衣食足りて礼節を知る。本当でしょうか。

諸々の条件が重なって経済が急激に成長している間は、不都合なことがあっても、そのマイナスをさら大きなプラスが覆い隠してくれます。

今日より明日が良い日になるなら、今年より来年の方が豊かになれるなら、大概のことは許せます。その不本意を飲み込んで、なおお釣りが来るのですから。

「衣食が足りる」という条件を満たして「礼節を知る」という結果が現れるなら、その条件が消滅したとき、その結果が出ないのは理の当然でしょう。

この国は今そういう状態にあるのだということを論じた本です。

ですが、わたし失望も絶望もしません。死ぬとき、笑って頷いてみせるつもりです。