ボランティアの活動報告(JMATおかやま⑥)

◎JMATおかやま⑥【4/20(水)〜4/24(日)】3名(うち、薬剤師1名)

活動拠点 石巻赤十字病院
活動内容 石巻地区周辺の避難所、救護所の救援活動

◆第1日目:4月20日(水)天気:東京―晴れ 石巻―曇り時々雨
07:35 岡山空港発→AM8:50羽田空港
 前任の薬剤師から依頼された不足している医薬品も持参
09:30 ハイヤー東北道を通り石巻に向け出発
 途中、那須高原SAにて昼食、菅生SAでトイレ休憩
15:30 石巻赤十字病院到着
先発チームはまだ活動中の時間であるため先に石巻赤十字病院2階・災害対策本部でボランティア登録を済ませ、対策本部スタッフより現状報告、活動内容など簡単な説明を受ける
石巻赤十字病院を災害対策本部として石巻市内を15のエリアに分けており、JMATおかやまはその中のエリア7で活動。1つのエリアでは5チーム程度が配属、エリア7で最大の湊小学校家庭科室で全チームが午前中診察。午後はエリアリーダーに指示され、他の避難所での診察に1チームごとで巡回とのこと
16:40 先発チームの医師・看護師・事務それぞれ個別の引継ぎ作業を行う
 現地での移動車両はハイエース。ガソリンはレギュラー。乗用車とは異なり、サイドブレーキの解除方法を申し送りされる。ガソリンスタンドは石巻でも通常営業、不足はなし
18:00 対策本部前の会議室で全体ミーティングに参加。エリアから集められた情報から感染症情報や避難所周辺での要介護者の掘り起こし、報告書の依頼など連絡事項・本部としての対策の方向性・行政からの情報などを伝達。本部への要望の聴き取り。
18:15 エリアミーティング(1F 整形外科 外来診察室前にて)
 今日のエリアでの出来事や問題点の聴き取り・連絡事項の伝達。
18:30 先行チームを見送り宿泊先である仙台市内のホテルに向けて出発
 三陸自動車道は松島大郷I.C.や鳴瀬奥松島I.C.付近での渋滞あり。災害派遣車両・ボランティアの数が増えてきて移動にかなりの時間を要した。災害派遣車両登録済みのため、高速道路は料金は無料。
20:40 仙台のホテルに到着、遅めの夕食
22:00 ホテルの自室にて薬品の整理と在庫数量の確認を行う
仙台市内は飲食店なども通常営業。コンビニは商品がない棚もあるが、おにぎり・弁当・お茶・水などの商品は問題なし。活動拠点となる石巻赤十字病院付近は震災・津波の影響は見られず。石巻赤十字病院は震災当初は救急のみの受け入れであったが、現在は通常の外来診療も再開。糖尿病でのインスリン注射などの慢性疾患治療は外来で対応可能とのこと。避難所の方には石巻赤十字病院の外来診察再開情報が行き届いておらず。

◆第2日目:4月21日(木)  天気:晴れ
06:30 仙台のホテルを出発 三陸道で朝の渋滞に巻き込まれ、予想以上に時間がかかった。三陸道は地震で道路の凸凹が多く、スピードを落とさないと体が宙に浮くほど

09:05 湊小学校到着 湊小学校ではエリアミーティングがすでに始まっていた。津波で被害を受けた体育館で始業式をしていた。ここの避難所は高齢者が多い。スリッパに履き替え、2階の家庭科室の診療所へ


09:30 診察開始

 山形県から来られた70歳台・男性のボランティアの方が釘を踏んで診療所に。傷口周囲の皮膚のデブリを行い、洗浄・処置。患者の体位維持の補助。破傷風トキソイド接種は日赤に紹介。
 医師が診察し、処方したい医薬品を選択、薬剤師がその薬が自己備蓄・湊小学校備蓄にあるかどうかの確認と代替医薬品の医師への提案、その後調剤・投薬と患者さんへの服薬指導実施。
診察終了前に救急車で患者さんが搬入。低血糖により赤十字病院に搬送
12:00 診察終了 男1 女5 合計6名診察 日赤への処方せん1枚
      不眠・めまい・風邪の患者さんを診察・投薬 
午前終了時エリア長より午後の担当場所が発表される。この日は午後も湊小学校を任されることになった。荷物は湊小学校・診療所に置いたまま昼食へ。
12時から14時間まで休憩時間。前任チームは石巻赤十字病院まで戻りトイレなどをすませ車中で昼食と聞いたが、昼も市内の渋滞あり、時間の余裕なく途中のコンビニを拠点として車中で昼食。(移動には片道40分かかる)被災地のコンビニも少しずつ営業再開。おにぎり・弁当・お茶などは手に入る。トイレも普通に使用できた。
湊小学校は自衛隊のテントの中にお風呂が設置。ガスは再開されておらず、トイレも仮設トイレ中心。小学校校舎の1階の屋根ぐらいまで津波が来た跡が壁に残っている。高さにして3m以上。1階は完全に浸かったらしい。泥まみれの机・棚が廊下の脇に積み上げられている。
14:00 診察開始 
16:00 診察終了 男3 女5 合計8名診察 日赤への処方せん3枚
      風邪・便秘・花粉症・高血圧・湿疹などの患者さんを診察
17:20 石巻赤十字病院到着
 看護師さんが記入したアセスメントシートや医師が記入した業務日誌を本部に提出。診療所で対応できなかった医薬品の記載された処方箋を石巻赤十字病院・地下1階の薬剤部に提出(日赤への処方箋―合計4枚)

★診療所での処方せん調剤と日赤への処方せん調剤依頼の違い
JMATおかやまとして医薬品を備蓄し、診療所では基本的にその備蓄医薬品を使用してカルテ調剤。大原則は自己完結。備蓄していない医薬品で湊小学校の石巻赤十字病院から供給された医薬品備蓄については自分たちが持っていなかったり、在庫が不足した場合には自由に使用可能。それらの医薬品については各県の薬剤師会から派遣された薬剤師が在庫管理や医薬品リストを作成、不足医薬品については石巻赤十字病院に発注。診療所で対応できない医薬品や慢性疾患の定期薬については日赤に処方せんを書いて引換券を患者に渡し、日赤での夕方のミーティングに帰った時に薬剤部に提出、2〜3日後に日赤薬剤部から各避難所に配達という流れ。患者は避難所生活者だけではなく、避難所周囲の住民も診療所を訪れる。

18:00 本部全体ミーティングに参加
エリア15のショートステイ・ベースの利用方法についての伝達。空きベッドがあり。インフルエンザ・嘔吐下痢症などの隔離が必要な感染症患者や入院希望の要介護者・1泊2日程度の入院患者が利用の適応。4月22日より避難所の要介護者の情報収集シート記入開始のお願いと破傷風トキソイドは赤十字病院外来での接種でとの伝達あり
エリアリーダーからは本部のヒアリングに出席、聴き取りが長引き、エリアミーティングは中止
19:00 石巻赤十字病院出発
21:15 仙台のホテルに到着

前チームなどから引き継いだ医薬品が3箱あり今回自分が持ち込んだものもあり、MS温シップの10kgダンボール合計3箱に医薬品が入っている状態。狭い診察室での調剤には向いていない。医薬品卸さんがいつも納品の時に使っているプラスティック製の折りたたみができるコンテナがあれば持ち運びに便利。多少雨が降ってもナイロンをかぶせれば何とか対応できる。5個あれば充分。その他にディスポシリンジ・ガーゼなどの医療材料のダンボールも荷台にあり。⇒早速、医師会でコンテナを準備して頂いた。


◆第3日目:4月22日(金)  天気―雨
06:15 ホテルを出発 昨日の教訓を生かし、高速は使わず一般道で石巻
08:30 湊小学校到着 家庭科室では避難所生活者代表が会議、診療所入室は9時前になってから。雨で湊小学校の校庭はドロドロ。雨の日は長靴は必携。フード付きのレインコートも必要。
09:00 エリアミーティング
09:30 診察開始 この日も釘を踏んだ患者さんあり。デブリ処置。
12:00 診察終了 男6 女4 合計10名診察 日赤への処方せん1枚
      風邪・高血圧・花粉症・不眠・膝痛などの患者さんを診察
この日は午後から稲井小学校体育館避難所の診察を任される
2時間の休憩は前日と同じでいつものコンビニへ、車中で昼食
14:00 診察開始(稲井小学校)   
16:00 診察終了 男1 女1 合計2名診察 日赤への処方せん なし
 避難所のリーダーより昼間はみな自宅に戻り片付けをするのでここには医療のニーズあまりがない。ここは海岸線ではなく避難所生活者は自宅へ戻りつつある
17:00 石巻赤十字病院到着
 アセスメントシートの記入や感染管理上のリスクアセスメントシートへの記入及び処方箋を赤十字病院の薬剤部に提出
18:00 本部全体ミーティングに参加
・次週から木曜日に心のケアチームが入る予定。
・麻疹の発生報告があり、5月の連休明けなど注意。患者が発生した場合にはエリア15のショートステイ・ベースで隔離。
・嘔吐下痢の流行の可能性あり、避難所での予防策として流水で石鹸を使用し手洗いの推奨、ポスター作製したので各避難所のトイレに順次貼っていく。
・作業の簡略化からお薬手帳への記載はしていなかったが、避難所で眠剤の重複投与あり。今後は手帳を記入していく方向。お薬手帳の在庫あります。
・小児用散剤は避難所によって様々な規格あり。日赤在庫に統一。感冒の約束処方を体重10kgごとに作成し、各避難所に準備します。
18:15 エリアミーティング
18:30 石巻赤十字病院出発 仙台へ
20:30 仙台のホテルに到着
今日午後に訪問した稲井小学校体育館の避難所は1週間まえにダンボールのパテーションで家族ごとのスペースが区切られたとのこと。家に帰る人もあり、収容人数は40人以下で半分ぐらいは空いていた。ここは比較的若い家族が生活。体育館の床にブルーシートがひかれ、その上にパテーションが置かれただけ。中にはマットレス1枚が用意されているだけ。大きな体育館のため、寒そう。灯油ストーブはあるが、果たしてこれで暖まるのか?

◆第4日目:4月23日(土)  天気―雨
06:15 ホテルを出発
08:30 湊小学校到着
09:15 診察開始
12:00 診察終了 男1 女3 合計4名診察
      口唇ヘルペス・咳・不眠・膝痛などの患者さんを診察
14:00 診察開始 午後も湊小学校での診察  
16:00 診察終了 男2 女2 合計4名診察 日赤への処方せん なし
      高血圧・風邪・便秘などの患者さんを診察
前日、他の避難所で教えてもらったとおり自宅での避難民の状態悪化が見られる。今後はボランティアなどに協力してもらい、自宅での避難者の受診喚起が必要。医療費が現在は無料になっていることもあわせて伝える必要があるように感じた
17:00 石巻赤十字病院到着
後続チームと合流し、各担当に分かれそれぞれ引き継ぎ
18:00 本部全体ミーティングに参加しその後エリアミーティング
19:30 石巻赤十字病院から羽田に向けて出発
26:30 東京羽田のホテルに到着

◆第5日目:4月24日(日)天気―晴れ
06:30 ホテルを出発 シャトルバスで羽田空港
07:50 羽田から空路、岡山へ
09:05 岡山空港到着
岡山空港にて医師会の事務局長様がお出迎え、5日間の活動報告と要望・今後の課題を話し合う
11:00 チーム解散

【感想】

今回岡山県薬剤師会を通して初めて災害派遣に参加させていただきました。医師会・薬剤師会のブログを読んでも現地の状況に不安を抱きながらの参加でした。4月の初めに岡山市薬剤師会の高木さんの声かけで会合が持たれ、それまでに行かれた先生方の体験談を聴いて多少不安が解けました。この5日間を通して現地の患者さんに何ができたかはわかりませんが、医師・看護師・薬剤師の3人のチーム医療活動として少しでも診療がスムーズにできるよう、それそれがプロ意識を持って活動し、時にはそれ以外の仕事も分かち合い、乗り越えることができたことは私にとって大きな成果となりました。また、普段の薬局業務では見ることのできない医療を目の当たりにして、チーム医療としての薬剤師業務の原点を再認識したように思います。



 「がんばろう東北」「がんばろう石巻」などのスローガンが掲げられていますが、被災地に立ってみて、仙台市内と石巻市内のギャップに驚き、市民・県民だけではどうにもならない現実を肌で感じました。この目で見た光景が津波により岩手県から千葉県の沿岸部全域に到達していることを考えると、その被害の大きさは想像もできません。最近、福島原発のことばかりが報道されますが、被災した現地では避難者が悲しみを乗り越え精一杯生きようとしていることを決して忘れてはいけません。「テレビの写真で見た光景と同じ」とよく言われますが、写真はただの切り抜き画像でしかありません。行ったものしかわからない現実がそこにはあります。今回の震災被害は日本国民全体の問題として捉えなければならないと思いました。そして、被災地域が復興するまで末長い支援の必要性を感じました。
 
ご報告ありがとうございました。
今回の「薬剤師ボランティア」に関し、有志が声をかけ合って「活動報告会」を開催してくれています。近々第2回が予定されているとのことです。実際に被災地に行くとなると、活動内容や現地での生活環境、用意するものなど、不安に感じることも多いと思います。ボランティア登録を検討しておられる方もご参加いただけるそうですので、ご希望の方は事務局までお問い合わせ下さい。

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