過去の災害に学ぶ<5> 明治三陸地震(1896)と「遠野物語」 〜 山田町船越

 1910年に出版された柳田國男遠野物語』にも、明治三陸地震についての記述があります。以下の箇所に出てきます船越村は、現在岩手県下閉伊郡山田町の一部となり、宮古市大槌町の間に位置しています。「鯨と海の科学館」もそこにあります(現在被災のため休館中)。震災後、山田町船越は、がれきの仮置き場となっています。
 ページの最後に山田町観光協会と「道の駅やまだ」の情報も掲載しましたのでご覧ください。


・『遠野物語』第九十九話

 土淵村の助役北川清という人の家は字火石(ひいし)にあり。代々の山臥にて祖父は正福院といい、学者にて著作多く、村のために尽くしたる人なり。清の弟に福二という人は海岸の田の浜へ婿に行きたるが、先年の大海嘯(おおつなみ)に遭いて妻と子を失い、生き残りたる二人の子とともに元の屋敷の地に小屋をかけて一年ばかりありき。夏の初めの月夜に便所に起き出でしが、遠く離れたるところにありて行く道も浪の打つ渚なり。霧の布(し)きたる夜なりしが、その霧の中より男女二人の者の近寄るを見れば、女はまさしく亡くなりし我が妻なり。思わずその後をつけて、遙々と船越村のほうへ行く岬の洞(ほこら)あるところまで追い行き、名を呼びたるに、振り返りてにこと笑いたり。男はとみればこれも同じ里の者にて海嘯の難に死せし者なり。自分が婿に入りし以前に互いに深く心を通わせたりと聞きし男なり。今はこの人と夫婦になりてありというに、子供は可愛くはないのかといえば女は少しく顔の色を変えて泣きたり。死したる人と物言うとは思われずして、悲しく情けなくなりたれば足元を見てありし間に、男女は再び足早にそこを立ち退きて、小浦へ行く道の山陰を巡り見えずなりたり。追いかけて見たりしがふと死したる者なりしと心づき、夜明けまで道中に立ちて考え、朝になりて帰りたり。その後久しく煩いたりといえり。

柳田國男遠野物語』(岩波文庫)より引用



 また、山田町船越のがれき処理について、今月9日に富山県岩手県の間で「災害廃棄物の広域処理の基本的枠組みに関する覚書」が交わされました。

・「災害廃棄物の広域処理の基本的枠組みに関する覚書」(2012年4月9日)
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1705/00011673/00502428.pdf

 
以下はこの覚書についての記事です。

・・・富山県石井隆一知事は9日、山田町船越のがれきの仮置き場を訪れ、破砕選別設備を視察した。その後、県庁で達増知事と会談し、住民の理解を得ることなどを条件に、がれき処理富山県内で行うとする「災害廃棄物の広域処理の基本的枠組みに関する覚書」を交わした。

 石井知事はがれきの仮置き場で持参した線量計で木質がれきの空間放射線量を測定。毎時0・04マイクロシーベルトを示し「富山県庁周辺で計測した時より低い」と述べた。

 石井知事は達増知事との会談で、住民の理解を得ることや放射性セシウム濃度が1キロ当たり100ベクレルを超えないなどを条件に処理を行うとした覚書を達増知事と交わした。

 富山県内では高岡市と二つの広域事務組合が受け入れる方向で検討。石井知事は、住民に放射能濃度などについて丁寧に説明する方針を示し「(がれきは)きちんと分別されていた。放射能濃度も平常の値で、住民の理解を深められる方向に一歩前進できたと感じている」と話す・・・

岩手日報(2012年4月10日付)より引用
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20120410_7





【仮設店舗情報】
・山田町観光協会ホームページ
http://yamada-kankou.jp/
*当HPには「山田町の今〜写真による報告〜」というページがあります。

・山田町観光協会公式ブログ「山田かきくけこ通信」
http://yamada-kankou.seesaa.net/
*山田町観光案内所は、以下の「道の駅やまだ」にあります。また「山田かきくけこ通信」では、仮設店舗で営業されていらっしゃる方々の紹介も掲載されています。

・道の駅やまだ
http://www.yamada-michinoeki.jp/
*国道45号線沿いの高台にあります。アクセスは、釜石市より国道45号線を北へ約40分、宮古市より国道45号線を南へ約40分です。

三陸山田がんばっぺ市場 〜 岩手県山田町「道の駅やまだ」のネットショップ
http://www.yamada-michinoeki.com/




【サイト内関連記事】
・過去の災害に学ぶ<4> 明治三陸地震(1896)と誘発地震
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120424

・過去の災害に学ぶ<3> 報道管制下で「隠された地震
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120410

・過去の災害に学ぶ<2> 日本付近で発生した主な被害地震 〜 1943年からは4年連続で発生
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120408

・過去の災害に学ぶ<1> 日本全国の言い伝え
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120407

・「次は何を持ってどこに逃げれば良いか考えていた」 〜 日常的な避難意識の大切さ
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120315

・「共に生きようとする気持ち」
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20120309

・亡き人の手習ひ、繪かきすさびたる見出でたるこそ、たゞその折の心地すれ
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110924

・「もしものときにも負けない子どもに」 〜 子どもを対象にした防災キャンプ
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110907

・EPZ(防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲)の再検討 <1>〜<3>
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110823

・特別なお盆 〜 「我と来て遊べや親のない雀」
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110820

・浸水リスクマップ
http://d.hatena.ne.jp/oretachinonihon-2011/20110818