ごめんね日常 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-08-27

[]「八月納涼歌舞伎第二部」

◆「東海道中膝栗毛
染五郎さんと猿之助さんで弥次さん喜多さん!いやそりゃ誰もが見たいと思う座組ですよね。猿之助さんは昨年秋からワンピース歌舞伎、染五郎さんは今春のラスベガスでの獅子王公演と、それぞれの話題ぶっ込みつつ、まさに「なんでもアリ!」

猿之助さんが参加されたことで澤瀉屋の面々が納涼歌舞伎に顔を揃えられるのがやっぱりすごく新鮮でしたね。ほんと、いろいろ…いろいろあるんだろうけど、みんなもっと混ざり合ってほしい!と無責任な観客としては思ってしまます

弥次喜多のお伊勢参りを枠組みに、物の怪屋敷やクジラに乗ってラスベガスやら天照大神やら(アレ、個人的にはトドメビジュアルでした…まじでなんでもアリだな!)、まさか歌舞伎座カジノのルーレットを見ようとは(笑)時事ネタも豊富にぶっ込んできていて、「文春(ふみはる)」が政財界スクープを狙っていたりとかなりの盛りだくさん。ただ、要素要素のテンションは高いんですけど、それぞれが有機的につながっている…とまではいかないのが残念だったかな〜。どれだけ破天荒に話が展開しても、なにかひとつのところに物語が収束する(伏線が回収される)ほうがやっぱり好みなんだよな〜。

テンション高いと言えばラスベガスの支配人に触れないわけにいかないんでしょうけども、獅童さん、もともと笑いに対する嗅覚が鋭いし、かつ貪欲でもある人だけど、こういう場を与えられると暴走ハンパない!もう観客が獅童さんしか見ていないというゾーンになっていてすごかったです。獅童さんが去ったあとでもその余韻が残ってる感じ。い舞台あらし!(笑)

お遊びの中にも猿之助さん染五郎さん揃っての毛振りが見られるという趣向もあったり、最後には弥次さん喜多さん花火と共に打ち上がって飛んでいくという宙乗りもあって、ほんとうに盛りだくさんでした。六月、七月の興行ふくめて「三ヶ月の飛び納め」と仰ってましたね。しかし、私は猿之助さんが男と手を繋いで宙を飛んでいく姿に「この構図、前にもどこかで…」とか思ったとか思わなかったとか。

◆「艶紅曙接拙」
紅翫。初めて拝見しました。成駒屋のみなさん打ち揃ってちょっとした顔見世の雰囲気。それぞれが江戸の風俗象徴するような物売りになっているのが楽しいですね。朝顔売りとか、虫売りとか、団扇売りとかももうないものなあ。勘九郎さんは裸足で踊られるので、思わず足元をじっ…と見てしまいなにやってんだろう自分と思いました。へっへっへ。

[]「八月納涼歌舞伎第三部」

◆「土蜘」
勘九郎さんの襲名でも拝見しました。演目としてはかなり好き!ただ、座席が真っ正面で、かつ私の前に背の高い男性が座られたので、センターのみほぼ見えないという…どセンの罠!松羽目物で正面の視界がやられるとやっぱりちょっと集中力欠いちゃうところがありますね。

今回の納涼、座組としては相当魅力的な顔ぶれなんですが、勘九郎さんと染五郎さんが一緒に出る演目がなかったりと大所帯ならではのジレンマもあり。猿之助さんと勘九郎さんが一緒に出るのもこの土蜘の番卒だけなんですよねえ。勘九郎さんとこの次男の哲之くんが出ていて、そうはすまいと思っていても時々ちらっ、ちらっと父の顔が出るところがなんだか微笑ましかったです(台詞のときに一緒に口が動いちゃったりね!)

橋之助さんはこの公演を最後芝翫になられるのだなあ…(しみじみ)

◆「廓噺山名屋浦里」
笑福亭鶴瓶さんの新作落語を、高座を聞いた勘九郎さんが「これは歌舞伎になる!」と思い立って走り出した企画とのこと。師匠が高座にかけたのが2015年1月だそうなので、ものすごいスピードで実現したことになります

いやー、勘九郎さんの「これは歌舞伎になる」という嗅覚に誤りなし。すばらしかったです。また勘九郎七之助兄弟がこのお話の中の二人ががっつりニンだというのもすばらしい。

江戸留守居役という大役を仰せつかった酒井宗十郎は絵に描いたような四角四面、良く言えば高潔、悪く言えばカタブツ、実直が服を着て歩いているような男。そんな彼だから、他藩留守居役との「おつきあい」、今で言えば接待ですわねえ、経費(藩のお金)でつきあいと称して芸者を上げて酒を飲み遊興に耽ることがどうしても耐えられない。そんな「清く正しく」の宗十郎は他藩の連中からはどうにも面白くない、目の上のコブ。カタブツ男をからかって嘲笑ってやろうと次の寄り合いには江戸の妻、つまり馴染みの遊女を連れてきて皆で紹介しあおうという。もちろんこのカタブツにそんな女はいないと踏んでのことだ。

宗十郎と浦里の出会いの場の鮮やかさ、ひたすら実直に、山名屋の主人に正面から事の次第を明かす宗十郎の生真面目さ、そしてその約束寄り合いの日に、果たして浦里はやってくるのかというその見せ場の作り方!こういう、言ってみれば「鼻をあかす」展開って物語王道中の王道と言えるし、そこまでの理不尽宗十郎へのいびりがひどければひどいほどあの襖パーン!の展開に胸がすくんだけど、このお話の何がいいってここからの展開なんですよ!

後日山名屋を訪れた宗十郎は、些少だけれど、と謝礼のお金を主人に渡そうとする。しかしそこに浦里があらわれ、後生からそのお金を持って帰ってくれと頼む。彼女自分の生い立ちを、廓言葉では「実がない」とお国訛りのままに語り出す。父母や故郷への思い、花魁となった今までの苦しさつらさ、そしてここまですべてが「金とともに動く人生であった」ことへの苦悩。心がはれたことはいっぺんもなかった、けれど、ひたすら真心でことを頼む宗十郎の真っ直ぐさに、ただその心意気に、心が打たれ、心が動いた。そのお金を受け取ってしまっては、それがまた金とともに動いたことになってしまう、と浦里は語る。

この場面で、浦里が宗十郎に、「おいらのことを、美しい、気高いと言ってくださった…」と語る場面があるが、もうここで私の涙腺が大決壊してダメでした。吉原一と謳われた浦里だから、だれもが美しいと彼女を讃えただろう、けれど、それだけではなく、気高く、菩薩のようなひとだと宗十郎は言ったのだった。そのことが、浦里にどれだけ響いたか。万人から美辞麗句よりも、たったひとりからの心ある言葉を支えにしたい、そのいじらしさ、切なさ。

浦里は宗十郎に恋をしたと言うけれど、恋といい、友情といい、どちらにしても、それが心の結びつきという意味で言うのなら、大して違いはないのじゃないかとおもう。少なくとも、浦里も宗十郎も、この世界で心が響き合う相手を見つけたということなのだ。

いやだからね、それでもお金を返そうとする宗十郎に、「こおの、野暮天がぁ〜〜〜!!!」と一発くらわせたい気持ちにもなりましたけど、でもたぶんあれだね、宗十郎にとっては、彼女の心根の美しさもなにもかも全部当たり前、そんなのわかってるよってことで、だからこそその心根に甘えちゃいけないと思ってるんだろうね。とはいえ、やっぱり、そこは、だまって、受け取れよぉおお!!と思いますけれども(笑)

生真面目でいつも額に汗をかいていそうな謹厳実直な勘九郎さん、よいいじめられっぷり、いたぶられっぷりでした。最後の平兵衛とのやりとりもだけど、ふっと笑いを誘う間もすごくいい。そして七之助さん、いんやもうよかった、よかった。美しさは言わずもがな、あの語りの場面で客を惹きつける力、そして客の心を鷲づかみにする力、いやー堪能しました。物語としてのカタルシスもあり、女の粋、を楽しめる芝居でもあり、新作とは思えない完成度ではないでしょうか。今後長きにわたって再演を重ねてもらいたい!と思います

2016-08-07

[]「BENT

今までいろんなキャスト、いろんな演出家で上演されていると思うんですけど、この作品を拝見するの、実は初めて。映画にもなってましたが、そちらも未見。

ベルリンで享楽的生活を送っていたマックス。彼の運命はある日一変する。ダンサー恋人と住んでいたアパートSSが踏みこみ、彼らは間一髪逃げ出す。そしてナチスドイツが、ゲイ収容所送りの対象としていることを知り、逃亡生活を送ることになる…

割と人の出入りのある1幕と、ほぼ2人芝居となる2幕の対比がすごい。ことに2幕の展開は、相当に実力のある役者さんでないと説得力をもってみせることは難しいだろうと思いました。石を上手から下手へ、そして下手から上手へと運ぶという動きだけですし、その労働をしながらの会話だけでひっぱっていかなくてはならず、そして会話だけでふたりの間の精神的な繋がりだけではなく、身体的な繋がりも表現しなくてはいけない。

切符は2枚でなきゃだめだ、と叔父差し伸べた手を断ったマックスが、実際の暴力を目の当たりにして、恋人であるルディを知り合いではないと言い続ける。ここはキツイ場面でした。けれどそこで生き延びるために人間尊厳を捨てたはずのマックスが、ホルストとの交流によっていつの間にかその尊厳を取り戻し、だからこそ、再度その尊厳が傷つけられた時には、彼はもうそれをもう一度捨て去ることはしない、という展開が切ない。

しかし、北村有起哉さんはうまいな!本当に腕が確か。マックスピンクトライアングルをつけるべきだ、という自信の信念をぶつけることはやめないけれど、同時に彼を深く愛しているという複雑さをあますところなく表現していた。1幕しか出ないキャストも多くいる中、充実した座組での観劇でした。

2016-08-05

[]「ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン」

情報解禁になったときには、松尾さんが!BL!みたいな方面での取り沙汰が多かったような記憶があって、東京公演のときには評判はうっすら聞こえてきていたけど個人的にじっくりネット感想をたどる余裕がなく、なので初日からずいぶん間を開けての観劇ではありましたが、ほとんどまっさら状態で見たような感じです。

なにかしら社会情勢にコミットしたものを書く、という欲求作家の中にあるとして、松尾さんが中東情勢に切り込んできたことはちょっと意外でした。しかし切り込んだ先が先であるゆえに、展開はどんどんヘビーになっていく。けれど、松尾さんは最後までその重さに沈まないように書ききっているのがすごい。芝居を観ながら、笑って、笑って、ずっと笑っていて、ふと気がつくと自分がとんでもないところで笑っていることに気がつく。そのぞっとするような感覚をこれでもかというほどに味わわせてくれました。

「親切をなすりつけさせてくれ」という台詞があるけど、「ふくすけ」での「俺に親切にするな」から始まる長いパンチラインを思い出したし、松尾さんのなかでこの「親切」「同情」というものへの本能的ともいうべき警戒ランプの鋭さは共通しているところだよなあと改めて思ったり。

サダヲちゃんは役者としてはかなりの剛腕という印象がありますが、今回は終始受けに回っていたのが新鮮でした。受けることで芝居を引っ張っていくのはなかなか難しいと思うけど、ちゃんと舞台を牽引していてさすが。その代わりというか、寺島しのぶさんはすんごい球をブンブン投げてましたよね…いやすごい。岡田将生くんは舞台を拝見するたびに思うけど、ほんとに滑舌がいい。声が良い。すばらしい財産だよなあ。でもって、並みいる大人計画の猛者を差し置いて、差し置いてというか、しのぶさんが投げているのが剛速球なら変化球を担っていたのは間違いなく岩井秀人さんで、いやーすばらしかったんじゃないでしょうか。なにが素晴らしいって、あの世界で最後まで重力を感じさせない佇まい!あの世界、あの台詞の中にいながらあの軽やかさ。観客のハートを鷲づかみするにも程がある!

私が拝見した日のカーテンコールで、3度目かな?出てきた時、松尾さんが岩井さんに(前に出て何か言えよ、言えよ)って無言で促してて、岩井さんそれにえっ俺?ほんとに?俺?って何回も確認してキョロキョロしながら出てきて、「あっ、今日はお暑い中本当にどうもありがとうございました、僕実は昔ひきこもってたんですけど、あっ自分の話していいんですかね?」って喋り始めたら、松尾さんらキャストがささささーっと捌けてしまって、岩井さん舞台上でポツ子にされるという現場を目撃いたしました。そのときのアタフタぶりも含めて岩井さんのキュート株ストップ高でしたよ!作/演出としても大好きだけど、こういう役者さんとしての岩井さんももっと見たいなあ!

2016-06-18

[]「コクーン歌舞伎第十五弾 四谷怪談

コクーン歌舞伎にとって四谷怪談というのはかなり縁のある演目ではないかと思います。今回は2006年「南番」「北番」で上演したバ−ジョンから一歩踏み込んで、お袖と直助権兵衛によりスポットを当てた構成

黒子を黒スーツサラリーマンが務めたのをはじめ、いろんな時代衣装を身に纏ったキャストが入り混じったり、ストップモーション演出もふくめて、かなりアバンギャルドな、串田さん色の強い演出になっていたなーと思います。しかし、あの「四谷怪談といえばこれ」、という伊右衛門浪宅の場がコアにある一幕は、どんなアバンギャルド演出があっても場面としての力がものすごくて、元の味がしっかりしてるからどんなソースでも合う!みたいな感覚を味わいました。セットを縦横無尽に動かすことで展開がスピーディになっていたところ、その縦横無尽さによって梅とお岩を物理的に対比してみせたりするところはすごく好きでした。

二幕はよりお袖と直助にスポットがあたるわけだけれど、もちろん場面場面は面白く観られるのだが、歌舞伎としての芝居とこの演出のテイストががっつりかみあっている、という感じには見られなかったのが残念なところではありました。なんというか、場面としての力が弱く、趣向の方に集中が行きがちになってしまい、物語にぐーっとのめりこむ感覚がなかなか訪れない感じ。

勘九郎さんの直助権兵衛も、出番の少ない一幕の方が鮮烈な印象を残していたのがおもしろい。せっかくなので七之助さんのお袖ともっとこう、業の深いやりとりを見たかったなという気もします。お岩と与茂七をやった扇雀さんよかったなー。笹野さんの伊藤喜兵衛、軽妙洒脱でこの座組でもっと自由舞台の上で息をしてらっしゃる感があるのがすばらしかったです。

それにしても今回のパンフキャストそれぞれの「サラリーマン日常」のショットになっていて、これリーマン好きには宝の山やで…!と思ったとか思わなかったとか。個人的なヒットは大森さんのおタバコショットです。眼福!

2016-06-06

[]「デッドプール

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見てきたーデップーちゃん!1日映画の日に公開だったのでさすがに手乗りデップーちゃんはもらいに行けませんでしたが、でもああいう入場者プレゼントうれしいよね…!Fワード炸裂、吹き替えの訳の方が容赦なくオススメと仄聞したので吹き替えで見に行ってきたよ!いやーよかった!罵倒バリエーションが豊富でかつ隙あらばという感じに差し挟んでくるので、目で見て読むより耳に入ってくるのを処理した方がしっくりくる感じ。吹き替えおすすめですよ〜〜

スーパーヒーローオリジン物語シンプルであればあるほどいいと思うんだけど、まさにその王道を行っていて、人物相関図も物語構成も非常にシンプル!でもそれをすごくうまく見せてますアクションシーンも実際のところ最初最後だけなんだけど、「第四の壁」を超えちゃうデッドプールキャラクターを生かして時系列を置き換えてるのがすごくはまってました(時系列を置き換えないと、アクションシーンまで1時間ぐらいかかっちゃう)。

どんな過酷な場面にあっても減らず口ユーモア(とお下劣)だけは忘れないウェイドのキャラクターがすごくいいし、また周りの登場人物たちの描き方もけっして重くなりすぎてないのがいいですよね。私はあの最終決戦に向かうデッドプールウィーゼルが言う、「行くべきだろうが、行きたくない。」がめっちゃ好き!!実際、行かないし!行かないのかよ!最高かよ!

「恵まれし子らの学園」のショットが出てきたり、「他のX-MEN呼ぶ予算ねーんだろ」とデッドプールが毒づいたり、プロフェッサーはマカヴォイ?スチュアート?なんて台詞があったり、ほんとエンドクレジット後のシーンまでによによによによしちゃいながら見てました。そうそう、スタン・リー御大カメオも、そこかよー!とによによした。

予算で爆発的なヒット(本家X-MENよりヒットしちゃった…)を記録、続編ももちろん決定済み。オリジンオリジンですばらしかったので、今度はさらにやらずぶったくりなデップーちゃんを拝みたいのココロよ!