ごめんね日常 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-09-22

[]「治天ノ君」劇団チョコレートケーキ

第21回読売演劇大賞において、作品賞、優秀賞、男優賞女優賞すべてで優秀賞に名前を残しており、作品選考委員特別賞を受賞した「治天ノ君」。私はこの時初めてこの劇団名を知りました。ここまでの圧倒的な評価を、例年の受賞作と比較しても小規模といっていい上演だった作品が得るというのはあまり記憶にないですし、これは是非見てみたかったと思っていたので、満を持しての再演、しかも関西公演!本当にありがとうございますと飛びつかせて頂きました。

史実を基にしながら、そこに「あったかもしれない」物語を描いていくのがこの劇団作風ひとつですが、この治天ノ君において描かれるあったかもしれない物語舞台は「天皇」という存在明治昭和に挟まれた、大正というごく短い治世だった、その大正天皇物語です。天皇臣民から畏怖され、崇められ、空であり、この国を覆う大きな器でなければならない、その理念のもとに作られた強大な国家。その「強き父」の背中を仰ぎ見る息子の物語

ルイージ・レナーリの「パードレ・ノーストロ」もまさに偉大な父を持った心弱い子どもを描いた大好きな作品ですが、あの舞台にも似た手触りを感じる舞台でした。

お恥ずかしながら、おそらくは多くの人に知られているのであろう、ここで描かれる「歴史的事実」すら、私には知らないことばかりでした。つい先頃、天皇生前譲位話題になり、それに纏わるニュースで「摂政」という言葉漏れ聞こえてきましたが、摂政なんて、もはや日本史の中の話題しかないと思っていたのに、私の生まれた時代である昭和天皇はまさにその摂政として、大正後期に公務についていたことも、私は初めて知りました。そして実のところ、明治という時代から我々はまだたった四代の天皇しか経ていないこと、そしてそれは歴史の大きな流れの中では一瞬といってもいい短さであることを考えずにはいられませんでした。

劇中で大隈重信の言う台詞が印象的です。天皇とは何か、そう問われて、かれはこう答えます。われわれは西洋の列強から我が国を守るために幕府を倒した。そのためには国民が仰ぎ見る存在必要だった。我々にとって天皇とは国民に拝ませておくための道具だった。だが、拝ませておくのはいいが、我々が拝むようになってしまったら、それは恐ろしいことになる…。

身体も、心も弱く、父の期待に存分に答えられない嘉仁(大正天皇)。だが彼は彼なりに、天皇とは、この国とは、どうあるべきかを模索し続けます。遅々たる明治天皇が嘉仁にこう告げる場面。お前の息子は、裕仁はすばらしい天皇になる、あれはすばらしい器だ、裕仁が成長するまでその座に在るのがお前の責務だ…。吉野朔実さんの連作短編いたいけな瞳」の中に、「レンタル家族」という一篇があって、そこにまさにこういった台詞があります。「俺の優秀な遺伝子はお前の息子に出るに違いない/お前の子供は優秀だ/お前の子供はきっと優秀だ/父には悪気なんかなくてそれが余計に私を傷つけた/親って残酷」。

物語大正天皇の妻であった節子(さだこ)妃のモノローグを中心に構成され、大正天皇生前崩御後が行き交いますが、崩御後のドラマの描き方の冴えが素晴らしかったなあ。侍従武官がその思い出を語る中で、身体自由が効かなくなった大正天皇が、軍艦行進曲を口ずさみながら歩行の練習をする天皇を思い起こす場面はこの舞台白眉といってよく、時代に二度殺された天皇の切なさが胸に迫りました。

大正天皇、節子妃、それぞれを演じた西尾友樹さんと松本紀保さんは文句なしの好演でした。西尾さん、難しい役を、ほんとに素晴らしい…!紀保さんのあのにじみ出る「品」が作品の色合いを支えていたなあと思います舞台作品としてのクオリティはもちろんですが、さらにそこから知的好奇心を刺激される度合いがすさまじく、私たちが知っているようで知らなかったところに光を当てる作劇はまったく見事の一語に尽きます。過剰にセンチメンタルに描かない演出もとてもよかった。いい舞台でした。

2016-09-19

[]「スーサイド・スクワッド

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「悪をもって悪を制す」、タスクフォース作戦に集められるヴィランたち。製作に入った当初からマ−ゴット・ロビー演じる「ハーレイ・クイン」のビジュアル力の高さ、その完成度に期待が集まっていて、しかもそのハーレイ・クインが追いかけているジョーカージャレッド・レトがやるという。主人公(?)デッドショットウィル・スミスという豪華な布陣。DCウニバース作品なので、バットマンフラッシュも出てくるよ!

劇中で使用される音楽が、キャラの立ちまくった楽曲ばかりで(悪魔を憐れむ歌とかSeven Nation Armyとか)、それがそれぞれのアクの強いキャラクターとも合っていてよかった。予告編クイーンもすごく印象的な使われ方してるもんねえ。

飛び切りのヴィラン軍団という触れ込みなんだけど、ヴィランぶりはずいぶんマイルドになってたかなあ。義賊とまではいかないけど、わりと「女子供非道はせず」ぐらいのテンションだったような。なのでそれを率いるリックフラッグもどこか引率の先生感あるし、しかフラッグ大佐が死んだら自分らの命も危ない(娑婆に出す代わりに首に爆弾を仕込まれていて、逃亡したら爆発、大佐が死んでも爆発)ので、みんなでフラッグ大佐囲んで守るとことかいい絵面でした。

とはいえ、こんなに魅力的な題材(正直、今年のアメコミ映画でこのSS評価も興収もぶっちぎるのではないかと思っていた)なのに、いまいちこう…抜け感がないというか…話としてブチあがる瞬間が個人的になかったのが残念です。そのー、あの決死部隊スーサイド・スクワッドが集められて(バットマンフラッシュ活躍!)タスクフォース作戦を実行に移す、までの描き方はよかったのに、実際にその部隊の出動がエンチャントレスを押さえきれなかったからによるという、しかも観客はそのことを知ってるのにデッドショット達は事の真相を知らないというね。いや結局マッチポンプかい!みたいな気持ちになってしまうし、エンチャントレスの弟も含めていきなり話が大味になるのがちと残念、という感じでした。

ハーレイジョーカーってもっと殺伐とした関係を予想してたので(裏切り裏切られそれでもつきまとう)、あんな甘い感じだったの意外でした。ジャレッド・レトジョーカーさすがにケレン味たっぷりでよかったし、マーゴット・ロビーは間違いなくこの映画で最高の輝きを放ってるし、絵になるカップルではあったけど。

DC映画マーベルに較べると絵面が強い!という印象があって、そういうところはまさにアメコミを見ているような気になれて楽しい。次はワンダーウーマンかな?クリパスティーブ・トレバー楽しみ!

2016-09-04

[]「X-MEN:アポカリプス

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やっと見た!公開からずいぶん日が経ってしまいました。今年の夏は映画1本の時間をひねり出すのもままならない!

前作「フューチャーパスト」の続編というポジションなので、あの世界線(レイヴン大統領を助けてセンチネルが生まれない世界)で話が進んでいくんだけど、ジーンやスコットやナイトクローラーらがわちゃわちゃやってるのは楽しかったし、世代交代というか、教授マグニートーではなくて若い彼らがミュータントとしての能力自覚しそれをどう使うか覚醒していくところはわくわくするところでした。しかし、レイヴンとハンクをやっているのがジェニファー・ローレンスニコラス・ホルトという、ファーストジェネレーションで登場した時より何倍も名の知られたスターを擁しているってのは強みですよねえ。だからこそのこのバトンタッチがすごくうまくいっているとも言える。

しかし、ちょっと雑なところも目についたかなあ。というかエリックはさすがに便利に使われすぎではないかと思う。どういう経緯でああいった「幸福を絵に描いたようなつましい生活」を選択したのかをすっ飛ばされているうえに、ものすごいしょうもない理由で妻子を喪い(ぼーっとした挙げ句の誤射って…)、怒りに駆られて悪に転じるも…って、そ、そりゃないよ…感が否めないッス。かつての同志が袂を分かつ、というのが三度の飯より好き(もうこれ100万回ぐらい言ってますね)な私なので、チャールズエリックのこの、愛憎半ばの関係性にはmajiでmoeしか感じられないとおもう方ですけど、チャールズと相対するならする!手を取るなら取る!でもうすこし強力な動機付けがほしい。その動機付けクイックシルバーが使われるのかなあと予想したのに、そうでもなかったし…その他にも「ストーリーラインをこうもっていきたいがため」にキャラ選択をこうしているんだなあと見えちゃうところがあって、そこは残念なところでした。

クイックシルバーピエトロ・マキシモフ)はMCUでもキャラクターとして出てきますが、X-MENでの描き方が秀逸すぎるってのはあるよなあと思う。あのテーマ曲ユーリズミックス!)に乗せたスピード無双ぶりは文句なく見ていてたのしい。父親に対する複雑さを滲ませるのもいいし、ほんとに素晴らしいキャラクター

しかし、結構ファーストジェネレーション映像が出てきてびっくりした。レイヴン帰ってきて嬉しそうなハンクのとことかよかったよな〜。チャールズセレブロでモイラを見て、ハンクに覗いたことあんの?って突っ込まれていや、ない、1回だけ、いや2回だけど大昔…とか弁解してるのもかわいかった。しかし、あれだね、チャールズというかジェームズ・マカヴォイハゲてもぞんぶんにカッコイイね。ハゲとき思わず、あっ、ここでなの?ここでなのね!?って戸惑ったけどそのあとでもかっこよい成分が喪われていなかったので感嘆しました。エリックはいちばんかっこいいのはあの鉄骨がXで突き刺さるところじゃないでしょうか、っていうかあそこもっとカタルシスあってもいい!と思うぐらい絵になるシーンだよね…!

このあと待機してるのはヒュー・ジャックマンウルヴァリンを演じるのはこれで最後ではないかと噂されているオールド・ローガン?になるのかな〜。デッドプールが大ヒットしたので、X-MENとの絡みが今後あるのか?ないのか?どうなんだ?というのも気になるところです!

2016-09-03

[]「ゴーストバスターズ

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オリジナルゴーストバスターズをちゃんと見たのかどうなのか、テレビで何度もやってるし、あのマシュマロマンのシーンとか見た覚えありまくるんだけど、実はほとんど覚えていないのであった。リブートするって話は割と前から出ていたと記憶していて、ただ紆余曲折あって(最初オリジナルメンバーでって話だったような)、メンバーを女性に総入れ替えって聞いた時は正直「そこまでしてリブートする必要あるんだろうか…」って思ったんですよね。

私が間違っていた。
むしろそこまでしたからリブートする価値のある作品になったといっても過言じゃないんじゃないでしょうか、これ。

女性4人のキャラクター造形がまず見事。よく言われていることだけど、ステレオタイプな組み分け(頭脳担当、お色気担当筋肉担当みたいな)をせず、それぞれどこか過剰でどこか欠けている描きぶりがすごくしっくりきているし、だからこそ彼女らの連帯にぐっとくる。そこにケヴィンという爽やかバカをぶっ込むことで生まれる化学反応…!

中でも(って、もう映画を見たら誰もが夢中になってしまうだろうけど)、ホルツマンを演じたケイト・マッキノンの魅力爆発ぶりたるや!衣装小道具ヘアスタイルまで、あそこまで「これしかない」という正解で積まれたようなキャラクターなかなかないと思うし、クライマックスでの二丁拳銃(ブラスター?)無双のシーン!!!んもう!!!あそこ何回でも見たい!!!「ヒーハー!」って叫びたいもんあれ!!!

受付係のケヴィンが完全に「鑑賞用」として採用される(まあ、ほぼエリンの一存なんだけど)うえに、そのケヴィン想像の斜め上をいく突き抜け爽やかバカなのもすごい。これ、男女逆転ってことで、このケヴィンが反転すればオッパイの大きい頭のゆるいおねーちゃんになるんじゃないのか、だとしたらそれは許容されるのか、男だったらいいのか、って投げかけもちょっと目にしたりしたんですけど、いやでもこれ…逆にここまで突き抜け爽やかバカなら女でも男でも同じじゃないか?というのが見た感想です。男だから女だからとかじゃなくて、あれはケヴィンって生き物だし、正直バカだし、でもちょうキュート。手作りゴーストバスターズ衣装作っちゃうくらいキュート!

そのケヴィン無双がなんとエンドロールで見られるというのもすっごい楽しかったです。近年、あんなにスタッフロール文字に目がいかないエンドロールもなかった。最高オブ最高じゃないですか。クリヘムさんは文字通り最&高のグッドルキングガイですし、マジもんのバルクアップされたナイスバディの持ち主なわけで、それであの中身!好きにならないわけないですよね…!

作品としても勿論だけど、何より音楽がそれを越えて有名で生き残り続けてて…って作品をリブートさせる時、その曲をどんどん使うかまたは最小限にとどめるかって割と判断の分かれるところだろうと思うけど(リブートとは違うけど、「クリード」は最小限にとどめて成功しているパターン)、この作品ははじめっから惜しみなくアレンジを変えたりしつつ前面に出してくるスタイルでしたね。コメディとしてぞんぶんに楽しく、チームもののワクワクさもあり、最後彼女らがささやかだけれど壮大な賛辞を送られるところもとても品があってよかった。楽しい映画でした!

2016-08-31

[]「シン・ゴジラ

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庵野監督にもゴジラにもさほど思い入れがなかったので、見に行く予定じゃなかったんですけど、初日鑑賞組の激賛ぶりに「えっそうなの?そんなに?」となり、決め手は島本和彦先生の一連のツイートでした。そこまでか!そんなに言うなら行かなくては!

いやー行ってよかった。おんんもしろかったです!!!鑑賞のタイミングがIMAXでの興行時期とちょうど重なっていて2回ともIMAXで拝見しました。1回目見た後、うおーもう一回みたい!!!と思ったんですがいろいろ!この夏は!たて込みすぎていて!約一ヶ月ぶりの鑑賞となりました。2回見ても飽きないし飽きないどころかもっと詳細を知りたくなる緻密さ!

ほんと、まず何より思ったのが「庵野さんは『細部に神は宿る』ってことを本当によくご存知だ」ってことなんですけど、あの絶対に一度には読み切れない肩書き地名銃器重機)の名称の細部に至る字幕しかり、自衛隊海上保安)の軍事場面での数字読み(ひと、まる、ひと)の徹底ぶりしかり、レク、会議、決定、事務担当者レベルの詰め、立案等々の霞ヶ関で行われる手続きという手続きが「ゴジラ出現」という事態コミットして描かれる気の遠くなるような段階の描き方しかり、リアルに「巨大不明生物が東京湾に出現したら」を徹底して描いている、それがほんっとうに凄い!

しかも、どこかの省庁やどこかの大臣を過剰に無能に描いたりしてないところがすばらしい。事態の当初では大臣レベルでの暢気さみたいなものは伺えるものの、鎌倉再上陸以降はそういった空気すら排除して役人役人のやるべきことを、事務方事務方のやるべきことをやる、という姿勢を徹底しているんですよねえ。これ、良くあるパターンでいったら、役人無能なので超法規的な民間集団が手を取って団結するぞ的な展開がありがちだろうと思うのに、あくまでもその「はみだし者集団」を省庁の中から選んでくるところも面白い。いやでも、現実的に考えてそうですよね。そりゃもともと権力の中枢に近い人で選んだ方が効果があるに決まってる。

その省庁からはみだし者を選ぶときの泉と矢口のやりとり、「首を斜めに振らない連中を集めて寄越す」「骨太を頼むよ」って台詞!思わず真似したくなる台詞だし、なんで庵野さんは役人が「骨太」って表現を多用するのを知ってるんだろうか…とか思っておかしかったです。有名になった「まずは君が落ち着け」もそうだけど、キレのある台詞が多いのも見ていて気持ちがいいところ。

巨災対のメンバーもひとりひとり魅力的だし(高橋一生くんは言わずもがなだけど、小松利昌さんが国交省から巨災対入りするメンバーになってて嬉しかった〜)、あと個人的に花森防衛大臣と財前統合幕僚長余貴美子さんと國村隼さん)はなんか燃えるものがあったなー。「ザ・ホワイトハウス」のナンシーとフィッツウォレスみたい(ものすごいわかる人の少ない喩え!)で、花森防衛大臣がわりと強硬派っぽいのもいいですよね。財前幕僚長の「礼はいりません。仕事ですから」はかっこよすぎ案件だし、自衛隊作戦本部の絵面なんか見事におっさんおっさんのかっこいいおっさん祭りで、これや!やればできるんや!日本でもこんなふうにおっさんが画面を埋め尽くす面白い映画ができるんや…!とめっちゃ興奮しました。

いや、絶対家族愛とか親子愛とか恋人が!まだあそこに!みたいなありきたりで手垢でびしゃびしゃになったセンチメンタル盛り込めっていう圧力あったんじゃないかと思うんですよ。いや邦画に限らずそうだもん。それをはねのけるって大作であればあるほどマジ並大抵じゃないと思う。それをはねのけてこれを作った庵野監督はもちろんすごいし、最終的にそれを通したプロデューサーもえらい。えらいよ。いやほんと感謝と感嘆しかないですよ。

あのヤシオリ作戦前の矢口演説は、ガンダムで言うならブライトさんの「すまんが、みんなの命をくれ」だよなあああ!!って胸熱だったし、またあのヤシオリ作戦前線に出る矢口が防護服を取らないのも、「細部に神は宿る」のあらわれだよなあと思いました。ふつーの製作者と役者なら「顔が半分隠れるのどうなんだ」とかなって顔出しでいったりすると思うよ。そういう詰めの甘さが一切ない。ヤシオリでいったん倒れたゴジラが起き上がって、あの無人在来線爆弾が投下(投下?)されるところ、あの絵面に思わず泣き笑いでしたもん。アレもう普通に「いけええええええ!!!」って言っちゃう。言っちゃうやつ。

いやもうとにかく、こんなにも見た後「誰かと語りたい!」って思った映画も久しぶりでしたし、そういう興奮が口コミも含めて広がっていくのを見ると、大勢のひとが良いというものにはやっぱりそれだけの理由があるっていう私の信条を改めて再確認する思いがいたします。いやー、ほんっとに、おもしろかった!