ごめんね日常 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-06-18

[]「コクーン歌舞伎第十五弾 四谷怪談

コクーン歌舞伎にとって四谷怪談というのはかなり縁のある演目ではないかと思います。今回は2006年「南番」「北番」で上演したバ−ジョンから一歩踏み込んで、お袖と直助権兵衛によりスポットを当てた構成

黒子を黒スーツサラリーマンが務めたのをはじめ、いろんな時代衣装を身に纏ったキャストが入り混じったり、ストップモーション演出もふくめて、かなりアバンギャルドな、串田さん色の強い演出になっていたなーと思います。しかし、あの「四谷怪談といえばこれ」、という伊右衛門浪宅の場がコアにある一幕は、どんなアバンギャルド演出があっても場面としての力がものすごくて、元の味がしっかりしてるからどんなソースでも合う!みたいな感覚を味わいました。セットを縦横無尽に動かすことで展開がスピーディになっていたところ、その縦横無尽さによって梅とお岩を物理的に対比してみせたりするところはすごく好きでした。

二幕はよりお袖と直助にスポットがあたるわけだけれど、もちろん場面場面は面白く観られるのだが、歌舞伎としての芝居とこの演出のテイストががっつりかみあっている、という感じには見られなかったのが残念なところではありました。なんというか、場面としての力が弱く、趣向の方に集中が行きがちになってしまい、物語にぐーっとのめりこむ感覚がなかなか訪れない感じ。

勘九郎さんの直助権兵衛も、出番の少ない一幕の方が鮮烈な印象を残していたのがおもしろい。せっかくなので七之助さんのお袖ともっとこう、業の深いやりとりを見たかったなという気もします。お岩と与茂七をやった扇雀さんよかったなー。笹野さんの伊藤喜兵衛、軽妙洒脱でこの座組でもっと自由舞台の上で息をしてらっしゃる感があるのがすばらしかったです。

それにしても今回のパンフキャストそれぞれの「サラリーマン日常」のショットになっていて、これリーマン好きには宝の山やで…!と思ったとか思わなかったとか。個人的なヒットは大森さんのおタバコショットです。眼福!

2016-06-06

[]「デッドプール

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見てきたーデップーちゃん!1日映画の日に公開だったのでさすがに手乗りデップーちゃんはもらいに行けませんでしたが、でもああいう入場者プレゼントうれしいよね…!Fワード炸裂、吹き替えの訳の方が容赦なくオススメと仄聞したので吹き替えで見に行ってきたよ!いやーよかった!罵倒バリエーションが豊富でかつ隙あらばという感じに差し挟んでくるので、目で見て読むより耳に入ってくるのを処理した方がしっくりくる感じ。吹き替えおすすめですよ〜〜

スーパーヒーローオリジン物語シンプルであればあるほどいいと思うんだけど、まさにその王道を行っていて、人物相関図も物語構成も非常にシンプル!でもそれをすごくうまく見せてますアクションシーンも実際のところ最初最後だけなんだけど、「第四の壁」を超えちゃうデッドプールキャラクターを生かして時系列を置き換えてるのがすごくはまってました(時系列を置き換えないと、アクションシーンまで1時間ぐらいかかっちゃう)。

どんな過酷な場面にあっても減らず口ユーモア(とお下劣)だけは忘れないウェイドのキャラクターがすごくいいし、また周りの登場人物たちの描き方もけっして重くなりすぎてないのがいいですよね。私はあの最終決戦に向かうデッドプールウィーゼルが言う、「行くべきだろうが、行きたくない。」がめっちゃ好き!!実際、行かないし!行かないのかよ!最高かよ!

「恵まれし子らの学園」のショットが出てきたり、「他のX-MEN呼ぶ予算ねーんだろ」とデッドプールが毒づいたり、プロフェッサーはマカヴォイ?スチュアート?なんて台詞があったり、ほんとエンドクレジット後のシーンまでによによによによしちゃいながら見てました。そうそう、スタン・リー御大カメオも、そこかよー!とによによした。

予算で爆発的なヒット(本家X-MENよりヒットしちゃった…)を記録、続編ももちろん決定済み。オリジンオリジンですばらしかったので、今度はさらにやらずぶったくりなデップーちゃんを拝みたいのココロよ!

2016-06-04

[]「8月の家族たち」

三姉妹ものに目がない」ケラさんが「他人戯曲演出してみたいもの」として白羽の矢を立てたのがこの作品映画は日本でも公開されていましたが、未見です。映画版ではメリル・ストリープがやった強烈な母親役を麻実れいさんが、というのでこーれは見たいなと。

翻訳物で2回の休憩を挟んでトータル3時間超、どうやったって「長ぇな」と思うところですが2幕、3幕と進むにつれてまったく時間が気にならなくなってくるのがすごい。2幕の体感なんてほんとあっという間だった。細かいシーンの積み重ねで、ことによってはぶつ切りにも見えてきそうなものなのにそういうところがまったくないのがすごい。ケラさんはほんとに会話のほんの小さなところにまで手が行き届いた演出をするよなあと思いました。

どの登場人物にも等しく悲劇といえそうなものと、業といえそうなものが降りかかるのが面白かったです。アイビー一見おとなしい、自分を殺して相手に尽くすタイプのように見えるけれど、その実「ここで母を捨てても後悔なんてしない、家族の絆なんてものに重きを置いたりしない、偶然遺伝子の配列が似通っただけの他人」と言い放つクールさがある。しかし、彼女を打ちのめすのはまさにその「遺伝子」のことであったり…。

個人的にはつらい子供時代をすごしたというヴァイオレットが、夫の失踪を知ってまず銀行の貸金庫の元に走り、その後にモーテル電話をかけたという最後に明かされる真実の強烈さが印象的です。そうやって生きてきた、そうやってしか生きてくることができなかったヴァイオレットの、これがまさに業か、という。

親族全員が顔を揃えての2幕のディナーのシーンは圧巻ですね。あそこで舞台うごき、まさに円卓のように全員の顔が見られる演出になってるのさすがだなと思いました。麻実れいさん演じるヴァイオレットの苛烈さを傲然と受け止める秋山菜津子さんのバーバラ!ハブマングースもかくや、な食うか食われるかの言葉応酬、見応えありすぎるなんてもんじゃない。あそこに飄々と割って入れる木場さんもすごい。木場さんのチャーリー最後まで息子に優しくて、それにほんと慰められましたよ…!

生瀬さんの演じたビル最初はただの気の弱い夫かと思いきや…っていう展開(でも、対話しようとする意思があるのがすごいよ)も面白かったし、さとしさんの演じたスティーブは、わー!いちばん引っかかったらあかんやつやー!と思えど、ジーンとの暗闇のささやき声でのシーンはエロさとおかしさが同居しててよかった(おっぱい見せなくてもいいから出して、っていうとこ最高じゃないですか!)

しかしほんと豪華キャストですね。冒頭、このいい声…もしかして村井さん!?と思ったらホント村井国夫さんで(キャストをよく見ずにチケット勝ってる人の典型)、なんつー贅沢な使い方…!って思いましたもの。その中にあって硬軟自在というか、王者としての風格というか、麻実れいさんの放つ存在感に改めて感じ入りましたし、それに食らいつく秋山菜津子さんの凄みにも感じ入りました。

2016-06-03

[]「太陽」イキウメ

2年前に蜷川さんの演出で「太陽2068」として上演されていましたね。イキウメの公演は初見!いやー、もちろんこの作品に限らず、演出家が変われば作品の手触りが違ってくるのは当たり前ですが、前川さんと蜷川さんは演出家としてのベクトルがまったく違うのでこ、こうも違うか−!って作品として楽しめました!

老化が極端に遅く、透徹した意識を持ち、人間の「バグ」を取り除いたかのような「ノクス」はしか太陽を浴びることができない。旧態依然人間達は骨董品、「キュリオ」と呼ばれ差別される。ある日、ひとりのキュリオが、ひとりのノクスを殺してしまう、ノクスを太陽に晒して…。

キュリオとノクス、ふたつに別れた人種をめぐる、3組の男達が物語には登場します。冒頭の克哉と彼に殺される、おそらくは友人であったノクス。ノクスになった金田とキュリオとして村にとどまった草一。新しく門番になった森繁とノクスのことが知りたい鉄彦。そして、このイキウメの、前川さんの演出する「太陽」においては、やはり金田と草一にもっとも話の力点が置かれていると感じます。草一の娘をノクスにしてしまった、その河を渡らせてしまった金田。こういう、「ポイント・オブ・ノーリターン」を抱える人間、その瞬間の一種残酷さ、そういうものを捉えるのが前川さんはほんとうにうまい。蜷川版を見た時にも、個人的にこの金田と草一のやりとりが私の中では白眉だったので、自分の中ですごく得心がいく感じがありました。

でまた、その金田をやっているのが安田さんだものね。こういう役を託される役者さんだよなあと改めて。

蜷川版のときにいいだけキャッキャウフフだった森繁と鉄彦、このイキウメ版でももちろん彼らに一種希望が託されているところはあるんですが、それはあくまでも他の2組との対比に力点が置かれているというか、この2人だけを突出した存在のようには描いていない。ラストシーンも、結がノクスとなり、そこで「何を喪ったか」を目の当たりにすることで、鉄彦がある決意をする、それを見つめて彼に微笑む森繁…で暗転。な、なるほどね〜〜〜!!!こういう寸止めですか〜〜〜!!好き!好きです!!ってなりましたもの

中村まことさんの草一よかったなあ。あと、浜田さんのなんというか、ちょっと独特の無機質な肌感というか、ノクスにぴったりだよね…!うまれつきのノクスって、この物語の設定からするとかなり希少種って感じですが、それも納得の佇まい。

前川さんのこういう、「大いなる虚構」を描く作品って他でなかなか見られないので、毎回違う世界を楽しめるのがいいですよね。次は奇ッ怪其の参、イキウメの新作は来春だそうです!

2016-05-25

[]「ズートピア

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見てからもうだいぶ時間が経ってしまったんだけど、自分の「見た」記録兼ねてるのでメモ程度に。いっやあああ面白かった!!!先に公開された全米での評価も興収もズバ抜けていたので楽しみにしていましたが、その高いハードルを軽々超えてくる出来。もう言い尽くされてるとは思いますけど、ほんっとーによくできてる!!!

舞台動物たちの楽園「ズートピア」。その世界では進化した動物たちが肉食も草食もなく共存している。野性?そんな野蛮なものあるわけないじゃないの!

「パディントン」の時にも書いたけれど、物語寓話として読む、つまりこれを深く現実社会コミットしたものとして読み解くことができるというだけでなく、ちゃんと物語として面白い!それが本当にすばらしい。もちろんこの映画のなかで描かれるように、誰もが「偏見」という二文字から自由はいられないというような、思わず自分の胸に手を当てて考えてしまテーマ提示があったりするんだけど、たとえそうでも「物語」という枠の中で楽しませる方向性最後まで見失ってない。

しかもその物語も、ニックとジュディのバディものとしての面白さ(いがみ合いからスタートしてそれぞれがそれぞれの大事な部分をぐっと押さえてしまう、ってあたり理想のバディもの展開!)、クライムサスペンスとしての面白さ(謎の事件裏社会、答えに見えていたものが答えではない、意外な黒幕…お手本かヨ!)、そしてもちろんディズニーならではの、ありえないものがありえるファンタスティックビジュアルの数々!!全方位ぬかりなさすぎてもはやおそろしい!!

ジュディが単なる朝ドラキャラ的なヒロインじゃなく、目的達成のためにはけっこう手段選ばないもんね、な逞しさがあるのもいいし、そしてなんつってもニック…!おおニック。ニック。あなたはどうしてニックなの。いやもうあれ惚れるなっつーほうが難しいんじゃない?ボゴ所長にバッジを返せってジュディが迫られるところでのニックの振るまい、あれ、惚れるなっつーほうが難しいんじゃない?(2回目)絶望挫折を冷笑と減らず口に隠して日々を乗り切っていこうとする彼の魅力がもうありとあらゆるところで爆発しまくってたよ!

しょっぱなからジュディが両親に「夢を見ることはいいことだ、努力すれば夢は叶うなんて思いさえしなければ」とあれ?これ、夢と魔法ディズニー映画ですよね?みたいなパンチラインが繰り出されるのもすごいし、なにげにラストシーンでジュディがハンドルを握りニックが助手席にいるっていうのも、さりげないけど結構革新的なんじゃないかと思うのよ。マジで完全に攻めまくってるし、それが鼻につくことなく、その世界の当たり前として提示されることのすごさだよなあ!いやもうなんかね、ラストコンサートのシーンでもうちょっとわけもわからず涙がぽろっとなってしまったもの。もはやディズニー、向かうところ敵なし!