It's Only チラシの裏 ~but I like it

つれづれなるままに書いてます。一番読まれないタイプのブログです。

Can't you see this old boy has been lonely

左と右のクエスチョン?(2):前回の補足です

前回の記事で、日本語の「右」と「左」に関し、あまりにも書き忘れが多すぎました。岡田先生にナイス補足をしていただきましたが、それも含め、ここに補足記事を上げたいと思います。


日本語ではキリスト教圏やイスラム教圏のように「右=正しい」という発想は少ないように思われます。むしろ逆のケースが目立つ。


例えば、岡田先生がコメント欄にて紹介してくださった「左大臣」と「右大臣」。
これは「左大臣」の方が上です。
岡田先生説では、天子が南面した際、太陽が昇る側に左大臣がいるから、ということで、大変説得力があります。「日いずる処」が一番、という発想でしょうか。
「東洋」を表す"orient"という語も、語源は「日の出」ですから(西洋から見て東洋は日の出の方角にあるので当然)、「日いずる処」を重んじる発想は、いかにも東洋らしい発想とも言える気がします。


あと「左うちわ」なんてのも良い意味の言葉ですよね。
#これは利き手でない左手で悠々とうちわを使って暮らす様子から、裕福なことを表す。


でも「左遷」ていうのは悪い意味じゃあないのかい?という反論は当然あるでしょう。
これは「左遷」という言葉が実はシナ語で、もともと日本語ではないからです。つまり、「左」を尊ぶ思想というのは、どうも我が国オリジナルっぽいもののようでして、前回の記事には洋の東西で左右の価値観が異なるのかも?という仮説を出しましたが、それはその後の調査で間違っていることが判明しました。シナでは「左遷」が示す如く、やっぱり欧米やイスラム圏と同じく「左=悪い」という発想のようです。


「右に出る者はない」というのは何か?と言いますと、これは前述の「左大臣」と関係がありまして、左大臣の「右」と言ったら天子なのです。だから「右に出る者」と言えばイコール天子様と。そういう理屈から出たのが、「右に出る者はない」なる慣用句です。


以上、補足いたします。

左と右のクエスチョン?(3):「右翼」って、何じゃろ?

「派遣切り」なる蛮行が我が国各社で行われ始め、連日メディアで報じられるようになりましたが、このメディアの動きに対し保守派の先生方が一斉に激しい不快感を表明中です。
今回は『SAPIO』(2月11・18合併号)に掲載された大前研一氏の主張を取り上げさせていただきますが、大見出しがこう:


「新聞、テレビの『年越し派遣村』報道が日本の雇用を危うくしている」


で、一番目の小見出しはこうです:


「実は日本は昔から終身雇用でも年功序列でもなかった」


これはずいぶんと独創性溢れる、耳慣れない御説です。


大前氏曰く、終身雇用は日本企業の強みなどとガイジンがおかしなことを言ったせいで伝説化しているが「実はそんなことをやっていた会社は日本にはない。」
終身雇用の如きものが見えていた理由は、「長きにわたって日本全体が経済成長していたから、正社員をクビにする必要がなかっただけ」であり、「歴史の偶然」だそうです。


で、「左と右」とに関わる問題はここからなんですが、大前氏曰く、我が国の雇用形態は元々今より柔軟性があって、戦後いつでも非正規労働者が存在した。そして「そのおかげで中国に対しても最後まで競争力を維持できたのである」とのこと。


これって、つまり、日本人の労働単価が安く抑えられて来たからこそ、シナに経済で負けずに来られた、ってことですよね?
逆に言えば、もし我が国が正社員による終身雇用などをやって労働者を手厚く保護していたとしたら、製品の品質ではシナに負けていた、ってことですよねぇ?(安くできたから、かろうじて勝てた、と。)


これはたまげました。
だって『SAPIO』って、小林よしのり先生が「天皇論」という皇室万歳マンガを執筆されていたり、この号ではトップ特集が「昭和天皇と私たち日本人の幸福な日々」ってんで、表紙には昭和天皇が柔和な笑みでお手をお振りあそばされているお写真が使われている、どう見ても「右翼」の雑誌ですよ?  その中に上の大前氏の論文は、どうにも私には違和感があります。完全に浮いている。


いや別に、浮いてる記事が載ってたって構いはしないのですが、しかし安価な非正規労働者なくしては我が国がシナに勝つことなど無理だったと、まるで品質ではシナに軍配がどうしても上がってしまうとでも言わんばかりの主張のどこが「右翼」なのか?
私にはどうしても理解できかねるのです。


大前氏の論文は、最後こう締めくくられています:


「このままでは日本企業は日本人を雇っていては競争に勝てなくなり、海外に出ていかざるをえなくなる。」


この脅しめいた論調は、後日ご紹介予定の各右翼雑誌でも偉い先生方がこぞって展開されています。というか、皆さんこれは耳慣れた主張ですよね?


しかしこの、「労働者の保護なんぞやったら、速攻、外国に出るぞ!?」という脅しは、はたして愛国者が口にする言葉なのでしょうか?
なんでこういう論調の方々が保守系=右翼に分類され、労働者の保護を訴える者は左翼(=非国民に近い)と呼ばれてしまうのでしょうか?
前から不思議に思って来ましたが、今回のこの「『「派遣切り」叩き』叩き」の猛攻勢を見て、いよいよ鮮明な疑問となりました。
なんか、我が国で「右翼」と呼ばれている人たちは、ただ自民党と財界とに逆らう人間を叩きたい人たちなんではないのか?と。


次回に続きます。

小林よしのり先生は天才だ

追記しておきますが、私は『SAPIO』の愛読者です。中でも小林よしのり先生のマンガは素晴らしい。


現在連載中の「天皇論」も、天皇は「皇帝」(「王」よりずっと位が高い)となっているが正しくは「祭祀王だ!」とか、鋭い指摘が笑いの中でなされています。(この「笑いの中で」というとこがまたスゴイのです。マンガとしてもクォリティが高いてことですから。)


で、この小林よしのり先生、余白の自筆コメントの中で、このように書いてくださっています:


「……それでも、『真面目に努力しても働き口がなくなる若者や母子家庭や中年』が増大しているのも間違いない。わしはワーキング・プアには同情する。」


これですよ!!
これこそが愛国者=右翼の口にすべき言説というものであります!!


小林先生は今回の作品中で新年の一般参賀に行ったお話を描き、そこで同行者がいきなり万歳を始めたためご自分もふっ切れて万歳を実行した旨、描かれています。
曰く、


「わしはついに万歳童貞を捨てた!
「また一つ大人の階段を上ったのだ!」


(笑)


私は前述のワーキングプアに関する小林先生の言説に対し、万歳童貞を捨てたいと存じます。