消費税増税と法人税減税:正直に行こうよ
経団連が15日、下記の提言をしたというのでネットは大騒ぎです:
「消費税率を2025年に19%まで引き上げる一方、社会保障給付の自然増を毎年2000億円抑制すること、法人実効税率を現行38・01%を25年には25%まで引き下げること」
(しんぶん赤旗電子版12年5月17日付)
まぁ確かに日本の法人税は単純に比較してアジア諸国よりぐんと高いです。それを下げよと言うのは経団連の立場からしたら当然のことでしょう。しかし政府のやり方は綺麗じゃない。私はむしろそっちを批判したいです。
07年7月31日付某日系新聞は、確か当時の参院選での小沢民主党躍進を受けて、お通夜のような暗い見出しを載せました:
「『消費税』に影」
記事にはこうあります:
「消費税を棚上げするという意味なのか」。(中略)財務省内で嘆きともあきらめともつかない声が上がった。
「法人税改革も遠のいたか」。経済産業省の幹部は二十九日夜、与党大敗を伝える報道を目にしながら失望の色を隠せなかった。
「消費税率引き上げと法人税減税の組み合わせは世界的な流れ」
消費税増税に真っ向から反対する小沢一郎氏なぞが率いる民主党に躍進されては、法人税減税の財源がなくなってしまう、という話です。しかし、それは間もなく起こった小沢氏の失脚で杞憂に終わります。
10年の夏に菅民主党が大敗した、これまた参院選では、マニフェストとして下の諸事項を掲げていました。全部読む必要はありません。初めと終わりをご覧ください:
◇消費税を含む税制の抜本改革
◇財政再建に向けた超党派の協議機関設置
◇基礎的財政収支の赤字幅を2015年度までに10年度の半分以下、20年度までに同収支を黒字化する財政健全化目標を設定
◇新規国債発行額を10年度の44.3兆円以下に抑制
◇20年度までに名目成長率3%、実質成長率2%の経済成長目標を設定
◇子ども手当は既に支給している1万3000円から上積み
◇法人税率引き下げ
ご覧の通り、消費税を上げて法人税を下げるというマニフェストでした。まさに、官僚が目論んでいて、一時は小沢氏によってぶっ潰されるところだった計画が、菅民主党のマニフェストにはまるっと入ったのでした。官僚らに対しては、「小沢さん失脚して本当に良かったね」の一言であります。
以降、現野田政権も菅氏の流れをくんでいます。しかし、打ち出し方が気色悪い。
「税と社会保障の一体改革」ですよ。
「今のままでは日本の社会保障、持ちませんよね?皆さん年金、欲しいでしょ?じゃあ消費税上げなきゃ。でしょう?」という論法です。そしてメディアも後押しをし、国民の大多数も、「まぁ、将来のためには仕方がないから、消費税増税はやむを得ないか」という考えになっています。ところが消費税上げる真の狙いは、実は社会保障なんかではない。言うまでもありません。大企業法人税の減税です。
これって、やり方が美しくないでしょう?
繰り返しますが、私は我が国の法人税率がアジア諸国と比較して単純に高いということは認めます。このまんまだと大企業の皆さんはアジア諸国へ家出するんでしょう。それも大いに困ることです。
でも、だったらですよ。正々堂々、「日本の法人税下げなきゃ、我が国は滅んでしまう。雇用も失われる。だから消費税を上げてそれを財源とし、法人税減税を行う必要があるんです!消費税率引き上げと法人税減税の組み合わせは世界的な流れなんです!」と訴えたら良いじゃありませんか。社会保障で目をくらますなんて卑怯過ぎますよ。