『味のなんでも小辞典』日本味と匂学会

味のなんでも小事典 (ブルーバックス)
味のなんでも小事典 (ブルーバックス)日本味と匂学会

講談社 2004-04-21
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コクと旨味の秘密 (新潮新書) 味覚と嗜好のサイエンス [京大人気講義シリーズ] 人間は脳で食べている (ちくま新書) おいしさの表現辞典 ハイブリッド・レシピ

味についての科学的な知見の啓蒙書。
味や栄養についての一般の人が持っている知識というのは多分に誤りが含まれていると見受けられる。
自分も例にもれない。
科学的な知見に基づいて基本的なところから解説してくれるので非常にわかりやすい本だと思う。
わかっていないところははっきりとわからないと書いてあるのが好感がもてる。
手を抜かない姿勢は見習いたい。
小見出しごとのタイトルは雑多な印象で興味が持たれそうなキャッチャーなタイトルが並べられているが、
実際に通して読んでみるとなかなか広範に取り扱われて、かつそれぞれが相互に干渉して理解を深めてくれる。
また基本解説として、味覚学とでもいうか味覚の知覚についてしっかりした解説があり、
とても勉強になる。
ただしこの解説はある程度の知識を前提とするので、理系の知識がない人にはすこし難しいかもしれない。
まあブルーバックスはいつもそうだが。
全体としてみればなかなかよくまとまっている本だと思う。
後ろの参考文献を機会があれば当たってみたい。

2006.2.15 記

『もしも宮中晩餐会に招かれたら』渡辺 誠

もしも宮中晩餐会に招かれたら―至高のマナー学 (角川oneテーマ21)
もしも宮中晩餐会に招かれたら―至高のマナー学 (角川oneテーマ21)
角川書店 2001-03
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僕がワイナリーをつくった理由 積みすぎた箱舟 (福音館文庫) マリス博士の奇想天外な人生 (ハヤカワ文庫 NF) 大人げない大人になれ! ダチョウ力 愛する鳥を「救世主」に変えた博士の愉快な研究生活

タイトルがそのままの内容。
宮内庁管理部大膳課主厨であった方が作者なのでかなり説得力がある。
宮中晩餐会にむけてどのような準備をしないといけないのかを順を追って説明してくれる。
食事がどのようなものを出されるか、準備はどのようにされているのかなど裏方の話も織り交ぜていて、
純粋に読み物として興味深い。
この本の中で触れているマナーのあり方は我々のようなものには縁のないことだとは思うが、
最高級のマナーとは何かを知ることは普段どの様に振る舞えば良いかのよい指針となるだろう。
マナーとプロトコルの差異に言及していて自分がこれらを混同していたことに気付かされた。
どのような人でも一度読んでみると面白いだろう。
小説を書く人、特に歴史小説やファンタジーなどで高位の方を出す人は特に参考になるから読むべきである。

2006.2.1 記

『宝石のはなし』白水晴雄・青木義和

宝石のはなし
宝石のはなし
技報堂出版 1989-08
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宝石について、自然科学をベースに解説した本。
歴史上の話、鑑定法、財産価値、工業材料としての利用、化学組成、人工宝石の作り方、贋作などなど。
非常に盛りだくさんでかなり興味深い。
質の悪い宝石をどのように処理して商品にしあげるのかなど驚きの内容である。
式などは一切出てこないので、一般の方にも読めるかもしれないが、
固体についての素養が有れば非常に興味深い示唆をいくつも感じ取れるだろう。
人工宝石を作るのは意外と簡単そうだ。
もっともコストに見合うか、品質を上げるのは難しそうだが。
この本の惜しむらくはフルカラーの写真がないことだ。
それさえ有れば完璧と言っても良い。
少しでも興味が有れば読んで損はない本だと思う。

2006.1.30 記

『敦煌』井上靖

敦煌 (新潮文庫)
敦煌 (新潮文庫)
新潮社 1965-06
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楼蘭 (新潮文庫) 天平の甍 (新潮文庫) 蒼き狼 (新潮文庫) 西域をゆく (文春文庫) 孔子 (新潮文庫)

2006.1.20 記
日芸術大賞受賞作
中国の西域(両漢や唐などの強大な帝国の時に領土になった中国西方地帯)を舞台にした歴史小説
井上靖はもともと純文学畑の人であったのだが、後に盛んに歴史小説を書く。
この作品はその代表作で純文学と大衆文学の両方の良いところを取り入れたという意味で、中間文学と呼ばれた。
描写というより説明が主の地の文が淡々と進んでいき、
主人公の目線での世界が語られる。
全編を通して乾いた文体が筋を通っていて、その旋律がこの作品のもの悲しさを引き立てていると言える。
女が死ぬ場面は激しい衝撃を憶えた。
死ぬこと自体は別にたいしたことではないが、そのタイミングと死に方が非常に鮮やか。
しかも死んだ後がこの作品の本編というのがすごいところである。
結末はだらだらとした感じではなく、ゆるゆるとランディングに見事に成功している。
あの結末から逆算してこの物語を思いついたのだとしたら、それはとても凄いことだ。
この作品はなかなか面白かった。

『とびきり哀しいスコットランド史』フランク レンウィック

とびきり哀しいスコットランド史 (ちくま文庫)
とびきり哀しいスコットランド史 (ちくま文庫)Frank Renwick

筑摩書房 1998-07
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とびきり愉快なイギリス史 (ちくま文庫) スコットランド王国史話 (中公文庫) 図説 イギリスの歴史 (ふくろうの本) スコットランド―ミステリー&ファンタジーツアー 英国王室史話〈下〉 (中公文庫)

フィオナマクラウドを読んでから気になっていたスコットランドについての本がちょうど手に入ったので読んでみた。
スコットランドという国は常に隣国の脅威にさらされてきた国で、とにかく内部抗争の激しい国だったようだ。
王は須く短命であり、ほとんどろくな人物がいない。
この本はそうしたスコットランドの暗鬱とした歴史を諧謔でくるんでしまっていて、
哀しさが直接には響かない。
本当にどろどろした部分はぼかして書いてあったりするので、
暗い気持ちのまま読み進める必要はない。
むしろ思わず笑ってしまうようなさりげないジョークが清涼剤となる。
内容はかなりわかりやすく書かれていて、各章ごとに一人の王を取り上げる、といった方法で時代が下ってくる。
満遍なく古代から滅亡までを取り上げてあり、なかなか面白い。
スコットランド史の入門と言うよりも、副読本とった感じか。
自分としてはもうすこし固い本の方がよかったかもしれない。

2006.1.17 記

『土地と日本人』司馬遼太郎

土地と日本人 対談集 (中公文庫)
土地と日本人 対談集 (中公文庫)
中央公論社 1996-10
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対談集 日本人への遺言 (朝日文庫) 古往今来 (中公文庫) 日本人と日本文化 (中公文庫) 日本の食と農 危機の本質 (シリーズ 日本の〈現代〉) 日本人の内と外―対談 (中公文庫)


対談集
石井紫郎,ぬやまひろし,野坂昭如,高橋裕,松下幸之助
司馬遼太郎の対談集はどれも面白いとは常に口にしてきたことである。
この対談集もその例に漏れない。
司馬遼太郎が唯一執着しているという土地問題についての対談をまとめたものである。
一読の感想としては、司馬遼太郎ってこんなに熱い人だったか、だった。
もっとぐっと押さえたーーもちろん彼の饒舌さは抜きにしてーー控えめな主張をする人だと思っていたが、
この本では自分の、つまり自分に非常に近い問題として土地問題を考えている様が見て取れる。
他所とは違った彼の側面を見ることが出来た。
当時の情勢を元に、土地を公有化するべきだという論を展開している。
なかなかに興味深い議論がなされており、一読の価値有り。
最後の松下幸之助との対談は、松下が司馬をかたくなに拒絶するのがなかなか見物。

2006.1.16 記

『ビジュアル博物館武器と甲冑』川成洋

武器と甲冑 (ビジュアル博物館)
武器と甲冑 (ビジュアル博物館)リリーフ・システムズ

同朋舎出版 1990-03
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目の保養に。
この本はビジュアル博物館というタイトルが示すように、
総フルカラーの写真をもとに解説してくれるというコンセプトの本。
そのコンセプトの為に、値段(3500円)のわりに薄い(64p)のが残念なところである。
ただし、本のサイズが大きく、A4版というのが救い。
内容自体はけっして悪くはない。
中世ヨーロッパや日本に偏らずに、世界のいろいろな年代を取り上げていて、その点で評価できる。
薦めるほどではないが、まあ悪くない本である。

2006.1.13 記