東大講義録 文明を解く
- 作者: 堺屋太一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/04/11
- メディア: 単行本
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[内容]
近代的視点を超えて人類の文明を観察し、その由来を正しく理解し記述する(前半)。近代工業社会が終わり、来るべき知価社会とはどんな世の中か(後半)
[感想]
なにやら豆知識的な話が多くて非常に読むのに時間がかかる。講義だから仕方ないのかもしれないが、本としては情報過多な気がする。歴史の流れから未来を予測するという類の本は今まで読んだことがないので、おもしろかった。奴隷解放のくだりとか、現在日本で働く大量の中国人、韓国人につながるものを感じた。こりゃ外国人参政権が実現する日も近いか!?規格大量生産が70年代でピークとは気付かなかった!確かに大型化も止まってるもんね・・・重厚長大産業は時代の中心ではなくなったと思うと、なんだか面白みの欠ける世の中だという気もするが、新しい価値、知価を探るという新しい時代になったのだと認識させられた。
[概要]
今日までの経済学は近代工業社会だけを対象にしている。
ピラミッド創設は自由民の自由参加、いわゆるボランティア活動だった。
墓ではない。なんの為に作ったか?⇒過剰生産をなくす、需要を創造するための公共事業である。
剰余生産がなくなれば階級は生まれない;ピラミッドは階級を生まないための政策
歴史の流れ
始代
↓土地改造技術、農業革命
古代
↓森林資源の枯渇から物不足、モノ離れ
中世
モノ不足→人口を減らす→生産力を維持するために周辺の未開な地域から移民を入れる→奴隷はやがて傭兵に、作業員になる→やがて奴隷も数が足りなくなって解放され、解放奴隷の自由民になる。
およそ民主主義を破壊しようとする者は必ず金銭汚職を言い立てる。
戦前の正義:勤勉、忠勇
戦後の正義:効率、平等、安全(自由と楽しみがない。)
→国是:経済成長、結果の平等、平和と清潔
→体制:官僚主義、業界協調、日米同盟
→文化:使い捨て、職縁社会、企業拡大
→危険な芽:怠惰と嫉妬の肯定
→知価社会への対応不能
産業革命はただ一回起こった;蒸気機関で動く大型機械の登場で起こった社会革命
この時に労働力と生産手段との分離が起こった。
フリーハンドの買い手の有利さ
世界的に資源余りの状況では、国土が狭くて資源のない国の方が有利。
世界中どこからでも一番安い資源を買うことができた。
70年代が近代工業社会のピーク
1.生産の大型化・大量化―規格大量生産
2.技術の進歩―大型化・大量化・高速化技術
3.国家の強大化―徴兵制、政府機能の拡大、「大きな政府」
4.消費の均質・大衆化―客観的価値の信奉
その後はイラン革命、ベトナム敗戦、石油危機などをきっかけに国家力、物財力は退廃を始めた。
1980年代に世界の先進国が近代工業社会から知価社会に入る、その時期に日本だけますます近代工業社会を強化する。
食糧とエネルギーは、価格弾力性が低いという意味では似ているが、結果は逆になる。
食糧が足りなくなると、最も貧しい消費者から食べられなくなる。
エネルギーが足りなくなると、最も贅沢な消費(先行投資)から脱落する。
日本での食糧安全供給には、健全な食糧の輸出生産地を確保する以外ない。
石油危機の次の年には必ず食糧危機が起こる。
石油値上がり→農薬・肥料値上がり→発展途上国では肥料が買えない→食糧危機→自然破壊
知価革命
量ではなく主観的満足を求める、主観性が登場する。
近代工業社会は規格大量生産を崇拝し、主観論を否定してきた。(マルクス、マーシャル、ケインズ然り)
原因
1.資源と環境のアンバランス
2.規格品の横行によるモノ離れ
3.コンピュータによる安価な多様化
4.主観的満足が重要に
5.経済と文化のグローバル化
知価の特性
価値は可変的、不測的、貯蔵付加
知価社会
・大企業にたいする金融もリスクが発生、生産手段や在庫の担保価値が小さくなる。
・多様な知恵の値打ちが、経済の成長と企業の利益、つまり資本蓄積の主要な源泉になる社会
・財よりも、むしろ経営者の能力や技術開発力が重要になってくる
・組織はヒエラルキーからネットワークへ
・有能で意欲的な人物(キーマン)には情報が集まり蓄積される。
好縁社会
・知価が主観である以上、主観に基づく共同体になる。
・情報共同体、消費共同体、楽しみ共同体