作文コンクール審査会

11日、小倉ロータリークラブの例会終了後、わたしはリーガロイヤルホテル小倉から小倉北区紺屋町にある毎日会館へと急ぎました。ここには北九州商工会議所が入っています。ブログ「思い出作文コンクール」に書いたように、わたしは北九州商工会議所創立50周年記念「思い出作文コンクール」の審査委員長です。その審査会が14時から開かれたのです。


北九州商工会議所が入る毎日会館

北九州商工会議所を訪れました



作文コンクールのテーマは、「50年前の北九州」です。
北九州市もわたしも、ともに50歳になりました。
北九州商工会議所は、北九州市が誕生した昭和38年9月に創立されました。
まちづくりや商工業者の発展を目指して活動している地域経済団体です。
50周年を記念して、50年前の北九州市の思い出について作文を書いてもらうコンクールを企画。広く市民の方々に、忘れられない50年前の出来事や思い出の作文を募集したところ、予想を超える多くの作品が集まりました。


北九州商工会議所の入口



作文コンクールの審査委員は、以下の通りです。
委員長  佐久間庸和サンレー 代表取締役社長)
委員  江口恵子氏(北九州市立大蔵中学校 校長)
委員  松田幸三氏(毎日新聞西部本社 報道部北九州担当部長)
委員  竹澤靖之氏(北九州商工会議所 副会頭)
委員  池田サヱ子氏(北九州商工会議所女性会 副会長)


審査会では激論が交わされました



審査会では、会頭賞の選定をめぐって5人の意見が完全に分かれ、激論が交わされました。しかし、それぞれの意見を交換するうちに見解が統一されてきて、会頭賞1点および副会頭賞5点、地区議員会長賞30点が次々に決まっていきました。
会頭賞は、わたしが選んだ作品に決定しました。
1962年に開通した若戸大橋のエピソードです。
完成したばかりの若戸大橋を祖父とともに手をつないで渡る2歳の女の子。女の子はまだよちよち歩きで、祖父は「東洋一の赤いつり橋」を見るために遠い山奥から出てきたのでした。カメラ嫌いな老人と愛想なしの女の子はむっつりした表情で写真に収まりましたが、白黒写真のため橋の色は赤くありませんでした。その1枚が最初で最後のツーショットでしたが、老人は気むずかしい顔でニコリともしない孫娘のことを「フルシチョフに似ちょる」と言ったそうです。わたしは、この「フルシチョフに似ちょる」にシビレました。



そう、50年前は米ソ冷戦時代の最中で、ケネディフルシチョフの時代だったのです。
1963年の3月10日に北九州市が誕生し、5月10日にわたしが生まれ、11月20日のダラスの暑い日にケネディ大統領が暗殺されたのです。
超大国同士による核兵器を使用した第三次世界大戦が起こるかもしれない・・・・・そんな大きな不安が世界を覆っていた時代に、世界で初めて五市が対等合併して「北九州市」が誕生したのです。その意味で、北九州市は平和のシンボルなのです。
フルシチョフに似ちょる」で、若戸大橋から地球全体へと視点は広がり、ローカルな話題は一気にグローバルになりました。本当に、素晴らしい作文だと思いました。



今回、作文の審査をしてみて思ったことが2つあります。
50年前を振り返るわけですから、どの作文にもノスタルジーが漂っていました。
そのノスタルジーの種類は、大きく分けて「誇り」と「人情」でした。
まず、50年前の北九州市は高度成長期の日本を支えていました。
世界初の五市合併、東洋一の若戸大橋八幡製鉄所はフル稼働し、人口も増加する一方でした。そんな北九州市に住んでいた人々は、みな誇りに満ちていました。



それから、50年前の北九州には貧しさも残っていました。
小学校の遠足に弁当を持ってこれない生徒もいました。そんなとき、担任の先生が自宅から弁当を作って持ってきてくれました。また、市内の各地にはバラックも残っていましたが、貧しくとも互いに助け合って暮らす人々の姿がありました。
50年前といえば、ちょうど映画「ALWAYS 三丁目の夕日」の時代です。
北九州に限らず、あの頃に日本人には「人情」というものがありました。



作文の中には、大学受験のため、折尾駅から20時間かけて東京まで列車で行った方の作品がありました。緊張と不安でいっぱいの高校生の姿を見て、「私の後輩だね」と声をかけてくれた紳士がいたそうです。学生帽に気づいたからでしたが、その紳士は駅弁を御馳走してくれたそうです。こんなホロリとさせるエピソードをたくさん読んでいると、現代日本が「無縁社会」などと呼ばれているのがウソのような気がしてきました。
かつての日本は、袖摺り合った縁をも生かす「有縁社会」だったのです!


膨大な数の作文に目を通しました


正直言って、審査委員長として膨大な数の作文に目を通すのは大変でしたが、かつての北九州市民の「誇り」と「人情」に触れて、なんだか元気をたくさん貰ったように思います。おかげさまで良い経験をさせていただきました。
わたしは、ノーベル文学賞の受賞作品を選ぶような覚悟で、審査に挑みました。
受賞された方々には、心よりお祝いを申し上げます。



なお、表彰式は以下の通りに行われます。
日時:平成25年11月1日(金)17:00(予定)
場所:リーガロイヤルホテル小倉 4階ロイヤルホール
※北九州商工会議所臨時議員総会終了後、実施。会頭賞受賞者のみ表彰。



また入賞作品は、以下のように展示されます。
(1)期間:11月6日(水)〜19日(火)
   場所:小倉井筒屋7階
(2)期間:11月27日(水)〜12月10日(火)
   場所:北九州市立八幡西図書館1階、2階



さらには、広報冊子が作成され、各部門の会頭賞、副会頭賞を掲載した冊子を作成し配布します。「北商ニュース」11月にも掲載、北九州商工会議所のHPおよびメルマガでも紹介いたします。応募して下さったすべての方々に深く御礼を申し上げます。
そして、再び北九州市民の心が「誇り」と「人情」で満たされることを願っています。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年10月12日 佐久間庸和