先月読んだ本から

先月は特にテーマを決めずに図書館本を淡々と攻略:


恋と夏 (ウィリアム・トレヴァー・コレクション)

恋と夏 (ウィリアム・トレヴァー・コレクション)

『恋と夏』:いやーこれじわじわ来るなあ。私の苦手なジャンル(恋愛小説)で派手な仕掛けは特に何もないんだけど、読み終わってなんとも切ない。出てくる人達すべてがひっそりと心の奥に苦しみを抱えて生きている。地味だけど良いです。ノーベル賞お待ちしてます。


サリーのすべて

サリーのすべて

『サリーのすべて』:表紙のエゴン・シーレの絵を見てサリーって20歳くらいなのかと思ってたら(若い頃の回想もあるけど)50代だったのであれれ?と思いました。オーストリアつながりとはいえこの絵を持ってくるのはちょっと強引。
内容は中年夫婦のミッドライフ・クライシスという感じで、つまんないかなと思っていたらこれがどうしてどうして!地味な夫とおとなしく暮らしてそれで幸せ、だったサリーが、旅行中に泥棒が押し入り家をめちゃくちゃにされたことをきっかけに、それまでの安定に疑問を持ちはじめ…と些細な事柄の積み重ねから変わっていくサリーの心情と行動が興味深い。そしてなにより、そんなサリーの行動(未遂)に対し夫が独白する終盤のまるまる一章が素晴らしいこと!これって『ユリシーズ』最終章(妻モリーの独白)を意識してるのかなあ。
アルノ・ガイガーは『老王の家』も読んでるけど小説はこれが初翻訳ということで、こういう作品が地道に日本語訳が出てくれるのは有難いですね。今後も期待。


紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

『紙の動物園』:かなり東洋思想を意識して取り入れた作風。表題作は電車の中で泣きそうになって困りましたが、しかしその感情はSF的要素から来るものではなくてもっと一般的な共感から呼び起されるものだと思いました。むしろSFファン以外の人に読んでもらいたい短編集。


流

『流』:今回巷では芥川賞ばかり騒がれてしまいましたが、直木賞受賞のこの作品も私好みの「盛り」沢山な展開で読んでてとても楽しかった。台湾を舞台にしたガルシア=マルケスっぽい小説でありながら青春小説としても面白い。これからの活躍、大いに期待してます。


ウイダーの副王

ウイダーの副王

ウィダーの副王』:解説にも書いてある通り、これもガルシア=マルケスっぽい雰囲気があるんだよね。ガボの影響力恐るべし。



失われた時を求めて 全一冊 (新潮モダン・クラシックス)

失われた時を求めて 全一冊 (新潮モダン・クラシックス)

失われた時を求めて 全一冊』:私の一番嫌いなフランス男小説(ぼくって情けないダメ男なの、でもぼくはそんな自分がかわいくてとっても好き♪)の元祖はお前かっ!喝を入れてやりたくなるくらいこういう男は嫌いなのです。いくら名作でも許せん。


ミニチュア作家

ミニチュア作家

『ミニチュア作家』:原書で読了済。今回日本語版で読み直したけど、やっぱり終わり方が納得いかないなあ。続編書くのかなあ。一応やっぱりTVドラマ化の予定はあるみたいです。


8月は早くも暑くてダレております…。