昨日もスミス君は活躍
<今日も1ポチおねがいです
一昨日、久しぶりに登場した
スミス君は昨日も大活躍でした。
…
一昨日は油煙唐墨をごりごり、
昨日は松煙和墨をしゃりしゃり、
8時間の労働基準内です(笑)
…
ここ二日で約1リットルの墨を磨りました。
ん〜違うなぁ〜
墨を磨らせました。が正しいですね。
龍仙はセットして墨を取って、
またセットするを繰り返しただけで、
指が黒くなったくらいです(笑)
…
この墨を腐らないように工夫しながら、
膠の加水分解を促進させる処理に入ります。
この墨が使えるようになるのは、
随分先になる予定です。
…
「この墨、いつのだっけ?」
くらいになると熟成完了です(笑)
…
熟成の時間は先生によって違います。
墨は時間を置くもんじゃないと
おっしゃるのも、ごもっともな話
どんな作品が作りたいのかによって、
墨の処理も変わってきます。
…
最近の墨液はよく出来ているので、
通常の濃さなら、
なんら問題なく使用に耐えますが、
龍仙が準備しているのは、
超淡墨に耐えられる用なので、
少々手間と時間がかかります。
…
で、
今日もお盆休みで家にいます。
昨日から突然に雨が襲ってくるので、
すこしお天気に注意しながら過ごします。
…
昨日書きかけの
淡墨シリーズの下書き記事でも書こうかと…
…
お盆休みに入ってから、
鎮痛剤を全く飲んでいないんですけど、
かかとに斜めに荷重をかけると、
まだ痛いですネェ…
…
放っておけば痛みも引くんですけど、
完治までには至っていない骨折に
少々飽きてきました。
…
書道教室を生業にしている龍仙は、
自分の調子加減で
歩く量も調整が出来るので、
それがよくないのかもしれませんネェ…
治りが遅いような気がします!!
…
あと一息で治りそうな気もするんですけど、
自主リハビリは根気がいります。
…
墨色(ぼくしょく)が悪い?発色が悪い?
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「墨色」です。
…
墨といえば黒ですけど、
少し薄めると、
筆と墨と紙があいまって、
真っ黒ではない色を出したります。
…
また、黒といっても、
艶のある黒とつや消しの黒、
ムラのない漆黒と斑になった黒では、
全く受ける印象は変わってしまいます。
…
淡墨作品の場合は
黒というよりはグレーなわけで、
より、色が現れやすくなります。
…
こと淡墨作品においては、
芯の強さと、
にじみの美しさ、
それは、
芯とにじみのコントラストと透明感なわけで、
現代書道においては、
漢字や前衛を問わずあらゆる分野で要求されています。
…
困ったことに、
この「透明感」という難題は、
人間の主観であることと、
どうやっても墨の粒子を使う限りは、
完全な透明にはならないということで
普通に考えて、不可能です。
…
あえて、答えがあるとすれば、
人間主観であるというところでしょうか…
…
淡墨ではない通常の書作品の場合なら、
墨がにごっているとか、
艶がないとか、
昔は墨運堂は艶がなく、
古梅園はつやつやで、
開明はテカテカで、
呉竹は??
みたいなところもありましたが、
現代においては、
そんなに簡単に切り分けも出来なくなってきています。
淡墨作品はそんな現代に生きている作品であり、
理解が安定していないのも事実です。
…
余談ですけど、
龍仙が良く使うのは祥碩堂の墨です。
鈴鹿墨のメーカーですが、
なかなか、真面目に墨を作ってます。
墨液でも筆への負担も少ないので、
愛用してます。
…
芯で透明感は出せないので、
にじみを美しくする工夫が要りますね。
立体感で透明感を醸し出す方法が最善でしょうか…
…
紙を変えて、墨の吸収量を変えてみるのも一考です。
水墨画の水の表現、なども参考にしないといけませんね。
…
ん〜やることいっぱいで、頭が煮えそうです(笑)
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D
膠(にかわ)の特性
<今日も1ポチおねがいです
墨の主原料は煤(すす)と膠(にかわ)です
香料などは微々たるモンです。
…
さて、
膠(にかわ)というと、
いわゆる接着剤で、古来より使われてきた
天然材料です。
…
膠といっても
原料はさまざまで、
魚、ウサギの皮、牛の皮(三千本)など、
いろいろですが、
要はゼラチンです。
…
ゼラチンということは、
温度が下がると、
プルプルになるわけで、
冬に磨った墨を放置しておくと、
プルプルになるのはこのためです。
…
プルプルの境界温度はというと、
濃さにもよりますが、
だいたい20℃前後です。
…
淡墨で使う場合には
温度はほとんど影響ないです。
…
もうひとつの大きな特性は、
「腐る」ということです。
腐るということは腐敗する、
すなわち雑菌が繁殖して、
ゼラチンを食べて分解して、
くっさい臭いを
大量に放出してくれると言うことです。
…
ついこの前も、
大学生の超カグワシイ作品に
ひっくり返りそうになりましたが、
一度腐ってしまうと、
薄めて淡墨にしても、
臭いが広がるだけで、
もうどうにもなりません。
…
あーちょっと違いますね。
臭いの気にならない人は、
充分使えます(笑)
ただし、龍仙の鼻では耐えられません。
…
腐る=細菌が繁殖する=臭気を放出する
ということは、
最近の繁殖を抑えてやれば良い訳で、
殺菌、滅菌、除菌などができれば
臭い問題は解決します。
…
市販されている液体膠には、
温度変化に対応するためゲル化防止剤、
細菌繁殖に対応するためいわゆる防腐剤(消毒薬)が
入っています。
膠自身も決して良いにおいではなく、
特に魚の膠などは、
エモイワレヌ香りがします(笑)
…
墨に関して言うと、
基本磨った墨の保存は効かない。
持ってせいぜい2日です。
保存しようと冷蔵庫に入れると、
墨ゼリーの出来上がり、
溶かそうと電子レンジにかけると、
口についた乾いた墨=炭素が燃えたりして、
えらい目にあいます(笑)
暖める時は、
湯煎(お湯につける)にしてくださいね。
…
ただ、先生達は口をそろえて、
[淡墨は半日以上時間を置け」と
のたまうわけで、
毎回調合ではなかなか辛いものがあります。
…
時間をおくと墨がどうなるのか?
どんな変化をするのか?
「宿墨」のところと被る内容もありますので、
簡単に解説します。
…
膠の時間的変化というと、
生物学的には細菌繁殖、
化学的には加水分解、
があげられます。
…
生物的時間変化は生ゴミと同じです(笑)
生物分解を起こしますので、
膠ではなくなり、
膠特有の粘性がどんどんなくなってきます。
…
一方、化学的変化の方はというと、
膠は水を吸収して、加水分解を起こします。
高分子がどんどん切れて低分子化する状態が
この場合の加水分解です。
…
低分子化で何が起こるのか?
それは接着力の低下です。
日本画などでは絵の具が剥がれやすくなります。
書道においては墨に潤滑性がなくなり、
筆のスベリが悪くなります。
最悪、表装の際に墨がはがれたり流れたりします。
…
加水分解の緩衝剤には
塩化マグネシウム=にがり
を使うのだそうです。
…
ただ、
低分子化によって炭素の粒子がくっつきやすくなり、
粒子の巨大化、多様化が促進されることで、
芯の強さや表情の豊かさが出ます。
…
今回のまとめ
温度:低い=ゼリー:高い=さらさら
時間:細菌の大好物=腐る=臭い=膠じゃなくなる
時間:加水分解を起こして低分子化し潤滑性がなくなり、炭素粒子が多様化する
…
淡墨記事の一覧はこちら
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D
墨が寝てる?起きてる?
<今日も1ポチおねがいです
…
今回のお題は
「墨の寝る起きる」です
…
なんじゃそりゃ?!
って感じですよね。
これは、表具やさんが時折使う表現です。
…
墨が起きてる=そのまま裏打ちしてもOK
墨が寝ている=そのまま裏打ちできない
…
これは膠が効いているかどうかを
例えた表現なんですけど、
文字の周囲の紙がよれてシワが寄っていれは、
起きていると表現し
文字の周囲がシワもなく平らな場合は、
寝ていると表現するんだそうです。
…
墨が寝ていると判断された時は、
にじみ止めの樹脂を容赦なく吹き付けてくれます(笑)
天然膠ならまだしも、
工業製品の樹脂ですから、
経年劣化の保証はありませんよ。
…
余談ですが、
書き手としては、
墨を寝かせるという表現は使いますが、
墨を立たせるという表現は使いませんネェ…
書き手が立たせるとしたら、
硯の鋒鋩でしょう。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D
絵の具を使っちゃダメ?
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「絵の具」です
…
書道に絵の具のは邪道中の邪道と
明治の昔より言われ続けていて、
今も本能的に拒否してしまう先生は多いです。
…
作品の善し悪しは人様が決めることで、
作品制作者は自分の作品を常に主張し、
新しいものを取り入れていかなければならない
ことを考えると、
龍仙的には絵の具もありです。
…
絵の具では書道から離れるのではないか
という懸念もぬぐえないので、
龍仙の場合は淡墨に顔彩を混ぜて
出来るだけビビッドに色が出ないように
工夫しています。
…
ビビッドな色使いは
高校生達のパフォーマンスにおまかせして
龍仙は龍仙ナリの作品を追い求めています。
…
また、
このように今まで邪道とされていたことを
世に問うというのは、
とかく大いなる批判を浴びます。
…
古くはミレーがそうであったように、
ピカソやダリ、岡本太郎がそうであったように、
生きている間に理解されることを
望むのならやめておいたほうがいいでしょう。
…
お題の絵の具から
すいぶん飛躍してきましたが、
書道において墨じゃない色を使うということは、
現書壇において、
それくらいのインパクトがある
ということを忘れないことです。
…
ただ、もしかすると、
そんな、業界の常識は、
世間では非常識なのかもしれません。
…
事実、前回の書道芸術院展や
長野現代書藝展で、
顔彩を混ぜた墨を使って作品制作してみましたが、
ものめずらしさからか、好評でした。
…
墨色も自由に操れないやつが、
色を使うのはもってのほかと言う声が、
聞こえてきそうですが、
墨色という緻密で複雑な世界が
うまく出来ないからこそ、
色の力を借りることも許されるのではないかと、
龍仙的な結論その一です。
…
まぁへ理屈といわれりゃそれまでなので、
作品で世に問いかけるしかないですね…
…
ということで、
今回のお題の結論は
龍仙的には墨も必ず使うという
条件付でOK、
世間的にも無条件でOK、
今の書道界ではほぼNG、
です。
…
書道においては品格も重要な要素であることを
忘れないようにしないといけないので、
最終的には黒に戻ってくるかもしれませんが、
自己作品発展の一途上であると理解するのが適切なようです。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D
芯が出ない、滲(にじ)みが出ない
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「芯と滲み」です。
…
淡墨作品を大きく左右する大事な要素ですが、
なかなか思ったコントロールが出来ないのも事実です。
…
いろんな先生に聞いても、
いろいろと違うのが実情で、
これといって完全にコントロールする方法は
未だありません。
…
そこで、
ナニが影響しているのが、
その原因というか左右するファクターを
あげてみます。
…
「芯」については
要は大きな煤の粒子が、
水と膠に乗り損ねて、
残った筆の軌道なわけで、
粒子が大きければ芯ができるんです。
墨の粒を擦り付けた感じですね。
…
では、なぜ芯が残らないのか?
墨の粒子が芯になれる大きさになっていないだけのことです。
もう一つ考えられるとしたら、
芯とにじみの濃さが全く一緒の場合です。
…
淡墨作品でも、墨液を使うと
この傾向は高くなります。
…
では、墨の粒子が大きくなるのはなぜか?
…
墨の濃さが一定しているのは、
墨の粒子が液体中に均等に分散しているからです。
均等に分散するためには、
水の分子運動と、
墨の粒子の小ささ、
膠の粘り(擬似乳化)が
うまくバランスしていないと
均等にはなりません。
…
墨液がこの世に出て
まだ半世紀も経っていないのは、
墨の均質を維持することが大変難しかったからです。
…
ここらへんの苦労話は
墨運堂のページを検索してみて下さい(笑)
…
話を戻して、
均等を維持するのが難しいということは、
放置すると、沈殿していくということです。
…
ってぇことは、
磨って放置しておけば良いということです。
これで、芯は出せる。
…
ただ、放置すると、
乾くだの、腐るだの、臭うだのと
副産物も多いので、
これについては、
宿墨のお題をご覧下さい。
…
墨の粒子が大きいと、
芯が出来るというなら、
松煙を使うか、
油煙を使うかは言うまでもありません。
粒の大きい松煙を使いましょう。
その差は、松煙は油煙の10から100倍の大きさです。
体積にすると10000倍以上の違いになります。
顔彩やポスターカラーを混ぜて使うのも
ありでしょうね…
…
書道の場合は
墨の粒子が均質でないことが、
墨色や厚みを生むので、
顔彩やポスカだけでは
立体感がなくなります。
…
他方、
「滲み」についてはどうか?
滲むためには、
墨の粒子を運ぶ入れ物と、
運ぶエネルギーが要ります。
…
運ぶ入れ物=膠
運ぶエネルギー=水の浸透力(毛細管現象)
例えて言うなら、
水は波のようなもので、
膠はサーフボードとも言えそうです。
…
サーフボードに乗れない人は、
その場に沈み、
乗れた人は、
波の行く方へどんどん遠くへ運ばれていく
…
ということで、
サーフボードはあまり大きくないようで、
小さな墨の粒子しか運びません。
…
ってぇことは、
粒子の小さい墨を膠にたくさん乗せれば、
たくさん滲むってぇこってす。
言い換えれば
たくさんの低分子膠に
粒子の小さい墨を混ぜれば、
良いってことです。
…
ちょっと待って下さい。
これって、唐墨の十八番ですよ。
ということは、唐墨の松煙墨を使えば良いってこと?
硬度の高い水を使うなら、
これもありです。
…
ただ、にじみは比較的楽に出ますが、
唐墨の松煙墨は比較的粒子が小さいので、
充分な大きさになるのをまっていると、
膠が完全分解して、
おまけに小さい墨粒子が
なくなる可能性が高いですね。
…
やはり、
芯とにじみは
別々に作って、直前に混ぜるのが
良さそうです。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D
紙は?筆は?
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「紙と筆」です
…
淡墨作品制作の場合の用具用材は
それぞれ工夫しながら、
自分のターゲットに合ったものを選ぶべきですが、
…
ここでは、
初心者向けということにして、
考えていきます。
…
まず、
紙はよく墨を吸う事、
次に
しっかり滲む事
最後に
出来るだけ丈夫な事
くらいでしょうか
…
この条件を満たす紙というと、
かなり値段の張る紙になります。
先生とよく相談して決めてください。
…
龍仙が良く使うのは
紅星牌棉料単宣二層か夾箋ですけど、
最近は高くて躊躇してしまいます。
…
国産でもそろそろ価格の見合う、
良い製品が出来そうな気もしますが…
もう少し先ですかね。
…
それにしても、
中国の物価の上がり方は尋常じゃないです。
紙業者さんも嘆いてました。
…
紙の話はこれくらいにして、
筆ですけど、
これについては、
好きにしてください(笑)
…
これがいいとか、
これじゃないとダメとか、
そんな教科書みたいなことはどこにも無いので、
先生と相談しながら、
自分で決めて使いこなすしかないです。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D
淡墨を作る最適な季節とかあるの?
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「淡墨を磨る季節」です
…
その都度、淡墨を少量作成される方と
宿墨好みの方で
結論が逆にみえるので、
それぞれに分けて考えます。
…
その都度、墨を作る方にとっては、
膠の加水分解が進みにくい水温、気温共に低い
冬が最適です。
…
膠の加水分解が進まない=滲みを保持しやすい
ということで、
作品の乾きは悪いですけど、
冬場のほうが制作には向いています。
…
一方、
宿墨が好きで芯をカリッと出したい方は、
膠の加水分解が急速に進む、
気温水温共に高い夏場が向いています。
…
宿墨については別の記事に
書いていますので、
そちらをご覧下さい。
…
宿墨がお好きな方は、
当然ながら墨を磨って
すぐに使うわけもなく、
ある程度時間を置くわけですけど、
夏といえばカビや細菌が
とても繁殖しやすい季節です。
…
加水分解促進のためとは言え、
雑菌が繁殖して、
どえりゃー臭いことにならないよう
工夫が必要です。
…
ちなみに、
冬場に濃くすると、
膠はゼリーになり、
加水分解はほぼ止まります。
…
加水分解が進むと、
ゼリーにはなりにくくなります。
…
夏に作って、
腐らせないよう保存し、
冬場にゼリーにならなければ、
スーパー宿墨の完成です。
…
万が一、腐ったら、
上澄み(膠が多く解けている部分)を吸出し、
再度水を入れて熟成させる
という、かなりマニアックな先生も
いらっしゃいました。
…
防腐処理にナニが一番いいのかは、
ただいま実験中です。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D
乾くと滲んだ外側に出る黄色いシミのようなものはナニ?
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「滲んだ先の黄色(茶色)いシミ」です
…
今回は先に正解を書きます。
主に「膠の混ぜ物」が正体です。
紙の汚れもままありますが、
紙の経年劣化による汚れは差ほどではありません。
…
具体的な物質名までは分かりませんが、
墨液を薄めると、顕著に出ます。
市販の膠液でも出ます。
ただの膠では出にくいことを差し引いて考えると、
膠の中の混ぜ物と
特定しても問題なさそうです。
…
そもそも、
墨液は淡墨で使うようには作られていないので、
膠仕様の墨液でも
酸化防止剤、防腐剤、乳化剤、保存料、ゲル化防止剤
など、各社さまざまな添加物を含んでいます。
…
このシミは、
普通に見ると、しみですけど、
光にかざして透過光でみると、
なんと、他の部分より光が良く通るんです。
…
分かりやすく言うと
油のついた紙と同じようになるんです。
さながら、かに座のリング星雲状態です。
…
って、天文に興味の無い人は余計に分かりませんね
ともかく、光にかざすと、
シミの部分が光の輪っかになるんです。
…
ということは、
淡墨作品に
添加物のたくさん入っている墨液は
基本使えないし、
混ぜられもしないという結論です。
…
そういえば、
本人的には失敗のこの輪っかシミを
まるで仏さんの後光みたい!!
と例えた方がいらっしゃいました。
…
褒めてんだか、冷やかしてんだか、
よくわかりませんけど、
意外と気になるのは確かです。
…
淡墨作品の時は
横着をせず、磨りましょう(笑)
淡墨可能の表示がある墨液でも、
用心して使いましょう。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D
水は水道水で大丈夫?
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「水」です。
どんな水でも書けるっちゃぁ書けますが、
こと淡墨作品となると、
この水が大きく影響します。
…
水のナニが影響するかというと、
硬度です。
マグネシウムとカルシウムの含有量を
硬度といっているようですが、
膠の加水分解を抑制する、
にがりは塩化マグネシウムなわけで、
マグネシウムをたくさん含んでいます。
…
ということは、
硬水を使うと、膠が長時間高分子を維持できるわけで、
墨の伸びが期待できますが、
一方で、煤の巨大化を阻むので、
芯が出にくいということになります。
…
軟水の場合はどうかというと、
磨ったそのときから、
膠の加水分解がじゃんじゃん進むわけで、
芯を作るにはもってこい!!
ですが、数時間放置すると、
にじみの部分には何もなくなります
…
結論としては
「芯は軟水で、滲みは硬水で」
コンビニで買うなら、
滲み用にエビアンかビッテル
芯用は自宅の水道(笑)
…
ちなみに、
龍仙の住む広島県の西半分は
全国有数の軟水地域です。
水道水の硬度は各自治体でも公開していますが、
こちらのサイトがオモシロいですよ。
http://softwater.jp/what/000052.html
ミネラル水についてはこちら
http://mineral-waters.net/
…
もひとつ、ちなみに
中国の水は平均硬度が300オーバーだそうです。
エビアン、ビッテル級です(笑)
日本ではせいぜい100オーバーくらいみたいです。
…
酸、アルカリに対する膠の影響については、
不明ですが、
みなさんご存知のにじみ止めに使う礬砂(ドーサ)は
膠に強い酸性の明礬(ミョウバン)を混ぜたものです。
ってぇことは、影響はあまりないということでしょうか?
…
膠はたんぱく質なので、
酸とアルカリを交互に加えると分解はするようですが、
書道をする人で
そんなことをする人はいないわけで、
今のところ、
考慮不要ということでしょうか…
…
ちなみに、
紙はアルカリに傾いています。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D
淡墨に求める理想
<今日も1ポチおねがいです
書道に手を染めてから
かれこれ30年。
淡墨作品を手がけ始めて
かれこれ15年。
…
この間、いろんな書作品を見て、
理想の淡墨作品を夢見て、
ゆっくりながら、研究してきて、
思うことは、
…
かつてない
淡墨の芯の強さとにじみの美しさ、
深遠なる立体感、飛び出す躍動感
…
そして、その先にある未知の理想は
未だ想像すら怪しい状況ですけど、
これまでの知識を整理する意味で、
あれこれ綴っていきます。
…
最終的には、
余計なものをと全て取り去って、
人の心に刺さる一作を目指してます。
…
淡墨作品は他の濃さの作品に比べて、
偶然性が高く、
その偶然性をいかに多発させるか…
偶然を安定して出すためには、
理論武装も必要なわけで、
まだまだ、研究途上ですが、
後進の参考になればと思っています
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D
水に直接磨るか、濃く磨って薄めるか
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「水の順序」です
…
大量の水にちょびっと磨るのか、
濃く磨った後で、水をかけて薄めるのか、
濃く磨った墨を、大量の水に落とすのか、
考えられるのは以上の3通りです。
…
書道をやらない人にとっては、
「そんなのどうでもいいんじゃね?」
ってところですが、
これには大きな違いが潜んでるんです。
…
墨が水中にきれいに分散してしまうと、
芯が出来ません。
一方で墨の粒子がくっつきすぎて、
大きくなりすぎると、滲みがでません。
…
さて、最初の方法
大量の水にちょびっと磨ると、
墨は磨ったはしから水中に分散し始め、
粒子がくっつく間はないです。
…
せっかくの松煙墨も台無しです。
ただし、この方法で唐墨を磨ると、
にじみの部分を作りやすいので、
使う場所を間違えなければOKです。
…
2番目の濃く磨った上から
水をジャブジャブかけて薄める
ですが、
この方法だと、最初の方法よりは
墨の粒子がくっつく時間がありますが、
墨を水で洗う感じになるので、
かけた途端に最初の方法と
さほど違いはなくなります。
…
この方法のポイントは、
濃く磨った後、少し時間を置くことです。
…
そして、最後の方法
濃く磨った墨を、水の中に落とす、
ですが、
一般的にはこの方法が良く使われます。
…
この方法は墨を落とした後、
しっかり混ぜないことも出来るし、
しっかり混ぜることも出来るし、
濃さの調整も比較的楽に出来ます。
…
また、
宿墨を使う場合は
この方法にならざるを得ません。
…
ただ、この方法は、
墨が沈殿したまま筆につくことになるので、
混ぜ方には充分注意してください。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D
松煙か?油煙か?植物性か?鉱物性か?
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「淡墨の原料」です
…
まずは松煙と油煙の違いです。
…
松煙はヤニを直焚きするので、
比較的粒子が大きく、
さまざまな大きさの煤が取れるのが特徴です。
…
一方、油煙は液体を芯焚きで
煤を取る位置にもよりますが、
松煙よりは煤の粒子が
均質で小さいのが特徴です。
…
次に植物性か鉱物性かについてです。
…
植物性の原料というと、
油やヤニが取れるものなら何でも原料になります。
種子油が多いですが、菜種、ゴマ、綿花
ヤニの代表は松やにで松煙の原料です。
鉱物性の原料は
いわゆる石油を原料としたもので、
工業製品なので、
均質化には向いています。
…
この4つは2軸のマトリックスにできます。
植物性の松煙、油煙
鉱物性の松煙に似たもの、油煙
の4種類で、
今ではさまざまな大きさの煤を
作るノウハウがあるようです。
…
さてさて、
原料が違うと何が違うのか、
製法にもよりますが、
答えは煤(すす)の粒子の大きさです。
…
淡墨作品の場合は
芯は巨大な煤
にじみは微細な煤が必要となり、
巨大と微細の中間もないと、
墨色や深みが出ません。
…
ということは、
原料は何でもいいってことです。
狙った墨の配合に近ければ、
それでいいんじゃないかと
…
そうは言っても、
植物成分のほうが、
いろんなムラがあって、
バラエティーがあって、
龍仙的には好きです。
…
ちなみに、
粒子が大きいと青く見えやすく、
粒子が小さいと赤みが増すんだそうです。
混ざると紫ですね(笑)
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D
やっぱ古墨?新しい墨はダメ?
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「墨の古さによる違い」です
…
現存する墨で形が維持できているのは、
中国が明の時代の墨で、
明墨と呼ばれ、古墨中の古墨として、
どえりゃー高値がついています。
…
バブルの頃には、
弟子が共同で先生から買い、
入賞を狙うといった、
別の道具にも使われたもんですが、
21世紀のデフレ列島にっぽんでは、
歴史的価値を見いだせはしても、
使うものではなくなってます。
…
一方で、
中国は言うまでもなく、
日本の奈良や鈴鹿などでも、
伝統工芸として作られ続けています。
…
ただ、気になるのは、
固型墨の消費量は
墨液と比較すると圧倒的に少なくなっており、
製墨業者さんには細々とでも、
生き残っていただきたいと願っています。
…
ちょっと方向がそれたので元に戻しますが、
新旧の比較をする前に
固形墨は時間と共にナニが変化していくのか
について考えます。
…
その前に日本の古い固形墨は残れなかったことを
頭の片隅において下さい。
…
固形墨は
煤(すす)と膠と香料を混ぜて練って、
中国では思いっきり叩いて、
製造します。
99%以上は煤と膠で、
量は中国では膠が多く、
日本では煤のほうが多くなってます。
…
使う膠も日本では、
高分子鎖の長いまま使い、
中国では低分子化した膠を使います。
…
これは、墨を磨るときの水が大きく係わっていますが、
詳しいことは
このシリーズの「水道水じゃダメ?」
の記事をお読みください。
…
さてさて、
ようやく時間変化についてです。
膠は加水分解という化学変化を起こして、
膠の高分子がどんどん低分子化していきます。
化学組成は変わらないのですが、
水によって同じ組成のもの
すなわち、たんぱく質の長い鎖が
次々と切られて短くなっていくんです。
…
これを書家たちは「墨が枯れる」と表現します。
固形墨においては、
空気中の水分を取り込んで、
非常にゆっくりと加水分解が進行し、
膠が低分子化していきます。
…
この間、煤の方は全くいえるほど、
変化を起こしません。
…
一度水に漬けてしまった墨が、
水についた部分だけボロボロになっているのを、
見たことがないですか?
これがまさに、加水分解が急激に進んだ証です。
…
膠はいわゆるゼラチンです。
乾燥すると非常に硬くなり、
水に漬けると、ふやけてゼリーになります。
これを繰り返すと、
鎖が短くなって、
接着力がなくなりボロボロになります。
…
新しい墨は、膠の鎖が長く、
古い墨は、膠の鎖短くなっている
といいきるのは、気が早いというものです。
…
表面は確かにそうですが、
墨の内部には
なかなか水分が届かないわけで、
ことはそう簡単ではありません。
…
面倒なことに、
唐墨と和墨では
それぞれの気候と水にあわせて、
膠の質も配合量も違うので、
古い新しいだけでは論じ切れないのです。
…
まず日本の固形墨ですが、
混合する膠は高分子のものを少なめに混ぜています。
日本の湿度による割れと、
磨る水が軟水であることに対応した結果なのですが、
保存性は悪く、せいぜい100年です。
…
今は製法も原料も進化しているので、
昔に比べると人間と同じく、
平均寿命は延びているようですが、
それでも200年は無理なようです。
…
古墨にしようと、
日本の墨をタンスにしまいこんでいる
そこの、あなた!!
生きている間に使いましょう(笑)
…
一方で中国の墨はというと、
最初から低分子化した膠を多めに混ぜて、
更に、叩きまくって、
乾燥に耐え、硬水にもすんなり溶けるよう
工夫がされています。
…
なので、和墨よりは随分硬く
保存性はよく数百年だといわれています。
…
ちなみに、世界最古の墨は
なんと、日本の正倉院にある、
新羅墨(716年製)だそうです。
少しの振動で、
ボロボロになりそうですね(笑)
…
逸れてますねぇ…
再び戻して、
和墨には古墨はない!!
ということと、
唐墨は湿度の高い日本では
急速にボロボロになる!!
…
古墨といっても、
古ければよいというものではなく、
表面は加水分解が安定し、
内部はまだ進行中というくらいの墨が、
理想的ということです。
…
増してや、
和墨に関しては古墨は
ありえないということで、
適当な時期に使ってあげるべきだということですね。
…
こと淡墨に使うとしたら、
古墨なら1本で済みますが、
勿体無くてたくさん磨れません。
…
そこで、
古墨の表面部分と
古墨の内部の墨を
別々に作って混ぜれば同じということです。
…
内部は新しい墨に近いので、
10年選手くらいのちょっと古い墨で代用し、
外部は膠が切れ切れになっているので、
宿墨を使う。
…
こうすれば擬似的に古墨が出来ます。
…
とは言え、
良い古墨の持つ、
深遠な滲みが醸し出す品格と、
沸き立つような芯の強さは、
古墨ならではといわざるを得ません。
…
もっと研究して、
近づけたいですね。
…
ちなみに、
日本の墨の悪いところは、
製造して3年はなまっちょろくて、
美しくなく、伸びが悪いことです。
…
出荷自体が1年以上2年内に
行われることを考慮すると、
すぐ使いたい時は
去年以前に製造されたものを
求めて下さい。
…
ということで、
結論ですが、
墨は古ければよいというものではない。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
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唐墨が良い?和墨が良い?
<今日も1ポチおねがいです
みなさんは
唐墨が多いですか?
和墨が多いですか?
龍仙は和墨7唐墨3くらいの割合で持ってます。
…
ただ、
何が違うのか?
墨の硬さ?(笑)
確かに唐墨はかたいですよね。
しかも割れやすい。
…
この違いは、
風土と水の違いを克服した結果の違いで、
それぞれの進化といってもいいんじゃないかと…
…
具体的には
日本は湿潤、軟水=>高分子膠のままで煤の6割程度
中国は乾燥、硬水=>低分子膠にして煤と同量以上
ということで、
そも分量が違うんです
…
唐墨の硬さは
墨を磨る水の硬度が高いため、
膠の加水分解が起こりにくいので、
墨の分散を良くするために、
最初から低分子の膠を使うようです。
さらに、
気候が乾燥しているため、
墨が水分にあたる機会が少なく、
固形墨のままで膠が加水分解しくく、
低分子膠で接着力が低くても、
割れずに長期間保存が利くというわけです。
…
一方和墨は
磨る時の水が比較的軟水の地域が多く、
特に関西はその傾向が高いようです。
関東地域は比較的硬度が高い傾向がありますが、
中国の平均に比べればほとんどそれ以下のようです。
そのため、墨を磨ると、
急速に加水分解が始まり、
粘度が下がりやすいので、
高分子を使っても然程問題なく墨が分散します。
また、高分子膠を使うことで、
湿潤な気候で固形墨の加水分解を補い、
割れにくい隅でしかも磨った時に伸びの良い
墨になっているわけです。
…
墨の違いはこれくらいにしておいて、
淡墨で使う際に
この違いがどう影響してくるのか
…
これには、
紙に墨を載せる時に
膠がどう影響するのかを理解する必要がありそうです。
…
墨の中の膠の役割は、
磨る前は固形を維持するための接着剤、
磨った後は煤の粒子を抱き込んで、
沈殿しないように乳化剤的な役割、
紙についたら、水に乗って、
煤を運ぶ役割
乾いてからは煤が紙から剥がれないように
接着する役割
と最初から最後まで、
いろんな役割があります。
…
膠が全くない煤を想像して下さい。
粉を水に混ぜて紙に載せた感じです。
にじみはなく、ムラムラで、
水だけが周囲に浸みて行きます。
乾いても、紙を叩くと
ホコリのように取れるので、
表装もままなりませんね。
…
ここで大きな問題が発生します。
「芯があって、なおかつ、美しい滲み」
芯の部分は膠が邪魔、
にじみの部分には膠が必要
相反することを実現しなければいけないということです。
…
少し話がそれてきたので、
元に戻しますが、
唐墨は低分子膠なので、
にじみの部分に効果があります。
ただ、日本の水だと、
硬度が低いので、あっという間に滲みが少なくなってきます。
…
ということで、
和墨を芯に使いつつ、
書くときに唐墨を磨って、
時間を置かず加えるのが理論的です。
…
時間が経つと、
元々低分子膠なので、
ただの炭素にどんどん近づいて、
芯のほうに回ってくれますが、
煤が比較的小さいので、
大きく成長するまでには
やはり日本の墨のほうが良いようです。
…
ただ、磨るタイミングや、
混ぜるタイミングは
使う水や気温によって変わりますので、
各自の工夫が要りますね。
…
ちなみに、
龍仙のすんでいる緑井地区の水道水は
超軟水なので、
加水分解は激しく進みますよ(笑)
…
今回の結論
和墨と唐墨は
それぞれの特性を理解して、
うまく組み合わせよう
です。
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淡墨記事の一覧はこちら
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固形墨じゃないとダメ?墨液じゃぁ無理かなぁ・・・
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「固形墨か墨液か」です。
…
まずは結論から、
いかなる事情があろうとも、
淡墨に既製品墨液は禁物です。
…
このシリーズの「黄色いシミ」
のところでも詳しく書いていますが、
膠を長期間保存するため、
墨液にはいろんな薬剤が入っています。
…
膠べースで無い墨液には、
膠の代わりにも温度変体しない、
いわゆる樹脂がたくさん入っていて、
薄めても、まるでインクのように
均等に広がってくれます。
べたーっとした、にじみになるのは
このためです。
…
しっかりと、成分表示してある墨液なら、
使えるものもあるかもしれませんけど、
成分表示=企業秘密の公開
につながるわけで、
いまだ、墨液の成分表示を見たことはないです(笑)
…
固形墨を磨った液を販売している墨液だけは、
使える可能性は大きいです。
が、かなり高いですよ(笑)
…
実は龍仙実験中の墨液の一つです。
2009年物の古墨という呉竹の墨液は
腐りもせず、
ボトルの中でいい感じの宿墨になってます。
宿墨なのに香料の香りが残ってます。
防腐方法は内緒ですけど、
意外と簡単です。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
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宿墨って何?一度、腐らせないとダメ?
<今日も1ポチおねがいです
今回のテーマは
「宿墨」です
…
聞きなれない言葉ですが、
淡墨をやる人の間ではよく使う単語の一つです。
墨のお宿ではないのであしからず。
…
さてさて、
みなさんは墨を磨って
そのまま放置したことはありませんか?
…
練成会などで使うために、
墨を多めに磨って
瓶に入れておいたことはないですか?
…
宿墨のそもそもの語源は、
硯に宿る墨=宿墨のようです。
…
乾いた硯に水を入れると、
溶け出してくる墨ような、
膠が切れた煤に似た墨の総称で
現在は使っています。
…
もっとラフに言うと、
炭素の粉に近い墨ともいえます。
…
間違って使われるのは、
宿墨=腐った墨
といった使われ方です。
…
確かに、
腐ると細菌分解で
膠が切れて別のものになるので、
宿墨+腐墨になりますが、
腐っていない宿墨もあるので、
宿墨という単語を使う際には
充分ご注意を…
…
ということで、
宿墨とは膠の高分子鎖が
加水分解でほどけて、
膠が低分子化し、
煤の粒子が相互にくっついて、
粒が大きくなった状態の墨
のことです。
…
昔は乾燥して、
硯にこびりついた墨のことだったようですが、
現在の書道界では、
こびりつかなくても、
時間を置いて作った
芯のよく出る墨のことを
宿墨という単語で表現しています。
…
かの昔は、
筆も紙も硯も墨も
全て貴重な品で、
モッタイナイ精神の副産物だった宿墨ですが、
今や、わざわざ作る時代になってます。
その製法は、
各社中の秘中の秘で、
決して、肝心なところは明かしません。
…
製法の基本は
「磨って放置!!」です(笑)
その後、まず研究すべきは
腐らせない方法、腐りにくくする方法
です。
…
腐っても、似たような表情は出しますが、
腐らなくても、
膠の加水分解が進めば、
宿墨になるわけですから、
わざわざ、あの臭気に
耐える必要もないと思います。
…
ということで、
宿墨を作るのに、
腐らせる必要はないという結論ですが、
腐ってしまった場合は仕方ないですね(笑)
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
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磨って寝かせるの?
<今日も1ポチおねがいです
…
今回のお題は
「磨って寝かせる」です
…
磨って寝かせると聞いて、
「磨ったまま放置する」
「磨った墨を入れた容器を横に寝かせる」
「硯に布団をかぶせて保温する」
「磨った墨と一緒の部屋で寝る」
…
など、龍仙の考えすぎだといえる状況まで
想像なさった方もいらっしゃるのではないかと…
放置と布団はある意味正解ですが、
横にするのと一緒に寝るのは
放置するという点では効果がありますが、
ほぼ何の効果も無いおまじないのようなものになってます(笑)
…
ということで、
寝かせる=放置したまま時間を経過させる
寝かせることを熟成とか醸成とかで
表現する先生方もいらっしゃいます。
…
ということで、
淡墨作品の芯を作るには、
寝かせるに限ります。
…
ただし、
寝かせると
にじみはどんどんなくなります。
…
ということは、
淡墨作品を作る前段階として、
前の日より前に墨を磨って放置
…
続いて
制作当日は、放置した墨とは別に、
新たに墨を磨り、
制作直前に使う分量だけ混ぜる、
両方を別の容器で混ぜる
濃度を調整する
…
てぇことは、
墨で汚れる容器というか硯が、
3枚いるってぇことです。
…
時間差を利用しないといけないのと、
汚れ物が多くなるのが難点ですけど、
いい作品を目指すならこの辺の手間は
惜しまないほうがいいです。
…
寝かせるほうの墨は、
作り置きでも構いませんし、
むしろその方が芯は強く出ますが、
くれぐれも異臭を放たないよう
注意してください。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
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やはり青墨?それとも茶墨?赤紫?
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「墨の色選択」です。
…
墨の色系統を表現するのに、
青系、赤紫系、茶系、黒系などを
良く聞きます。
…
一方で原料でも分類もありますが、
これはまだ別のお題のところに譲るとして、
ここでは色に特化します。
…
淡墨で美しいと感じるのは、
まず青系です。
青といっても、
絵の具のような真っ青ではなく、
薄いブルーグレーですね。
…
その対極にあるのが
茶系です。
薄く使うと温かみのある落ち着いた雰囲気が出せます。
…
茶と青の中間が赤紫系です。
茶と青を混ぜただけ?かというと
そうではなく、
青>赤紫>茶と粒子の大きさによって、
見える反射光が変わってくるんだそうです。
…
なんとも不思議ですが、
モルフォ蝶の様にある特定の波長を反射しないことでも、
色は見えるわけですから、
墨のような小さな粒子なら、
光の特定波長が遮られると考えるほうが
自然といえば自然です。
…
ここで、
よく勘違いしているウンチクを一つ、
青墨=松煙墨、茶墨=油煙墨
だと思っていませんか?
答えは半分正解です。
…
青墨に松煙墨が多いのは確かです。
茶墨に油煙墨が多いのも確かです。
しかし、
松煙に茶系がないかといえばそうではなく、
油煙に青墨がないかといえばそうでもありません。
…
色目は墨の粒子の大きさでほぼ決まるため、
原料=色ではないのです。
…
ここで、
淡墨作品のおすすめですが、
粒子が大きく真になりやすいことを考えると、
ここはやはり青墨です。
…
ちなみに、
最近の青墨にはほとんど藍の染料が入っています。
なので、まっさらの羊毛筆は、
きれいな青に染まってくれます(笑)
…
藍は空気に触れて
酸化して青を発色するので、
アルカリ性の水や
酸化防止剤の入った墨液などは禁物です。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
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硯の上で指で練る?
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「指で練る」です。
…
指で磨った墨をなでるように
硯の上で練るというのは、
ビジュアル的にかなりマニアックで
偉い先生がやるととてもインパクトのある
パフォーマンスになります。
…
見た目はさておき、
指で練ることの効果ですけど、
1つ目は、墨を水中に分散させて膠の加水分解を促進させる。
2つ目は、墨の粒子を細かくしてにじみを良くする。
3つ目は、手についている不純物で墨の粒子結合を促進させる。
4つ目は、指紋がなくなる(笑)
くらいでしょうか。
…
2つ目と、3つ目は相反する内容なので、
時間と共に、バランスが崩れて、
2つ目の効果がなくなると考えるのが自然です。
…
指で練るのも出来るだけ毎回硯を洗って、
毎回指で練るという作業をしないと、
効果は薄いということです。
…
なにより、
大字書など墨を大量に使う作品には
全く以って、不可能ということです。
…
小さな作品のときは、
パフォーマンスも含めて、
効果的ですが、
大きな作品に不向きなのは、
明らかです。
…
ちなみに効果の4つ目
指紋がなくなる…ですけど、
硯好きな龍仙が観硯の際、
指先で鋒鋩のカカリを観過ぎたときに、
よくある話です(笑)
…
いい硯は、手触りもそれはいいモンです。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
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硯は端渓?歙州?澄泥?
<今日も1ポチおねがいです
今回のお題は
「硯」です
…
まずは、硯の特徴から始めましょう。
端渓は知らない人はいないと思いますが、
水巌系のものから、
老坑、宋坑、麻子坑、坑仔巌など、
多種多様でそれぞれに特徴があるので、
一概にこれとはいえないところですが、
タイトルの3種類のうちでは、
鋒鋩のバランスが一番良好です。
…
鋒鋩ってナニ?という方もあろうかと思いますので、
簡単に言うと、
ヤスリに例えてヤスリの目のようなものです。
大きいとザリザリと磨れ、
小さいと細やかに磨れ、
硬いと目潰れが少なく、
柔らかいと頻繁に目立てが必要になります。
…
細かければ良いとい訳ではありません。
墨は均質におりると、
平板な線になり、
厚みが出ないのです。
…
元に戻って、
歙州硯ですが、
古い歙州は細かく鋒鋩も強く、
いい感じですけど、
最近のものは石紋がきれいなだけで、
ザリザリとおります。
…
澄泥硯については、
これまた、千差万別
手に入るお値段のものは
基本景気よくおりてくれます。
ちょっとお値段のするものは、
それなりに細かくおりてくれます。
鋒鋩はめっぽう強いですが、
土台のほうが弱かったりするので、
要注意です。
…
ただ、
ここ淡墨に特化して話をすると、
にじみの部分は端渓ないしは歙州
国産の硯は粘板岩系が多く
どちらかというと歙州硯に近いと
思ったほうが良いでしょう。
ただし、山口の赤間や長野の龍渓は
凝灰岩に近いので、端渓寄りでしょうか…
…
芯を出すためには、
ザリザリとおりてくれる
最近の歙州硯か
お手ごろな値段の澄泥硯が向いています。
中には陶器の硯でゴリゴリなさる方もいらっしゃいますが、
あまりゴリゴリでは、
表具の際に紙から墨が剥がれてしまいます(笑)
…
ここでも、
芯とにじみは別々に作ったほうが
確実だということが分かります。
…
淡墨シリーズの記事はこちらから
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藤井龍仙淡墨シリーズの目次
<今日も1ポチおねがいです
藤井龍仙淡墨シリーズの目次
…
龍仙が淡墨作品を手がけ始めて、
はや15年。
…
未だ、自分の完成形はないですけど、
今一度、初心に立ち返り、
自分が思った疑問に一つ一つ
自分で答えながら、
頭の整理をしようと思い、
若干ノウハウを盗まれることを覚悟の上で、
あえて、ブログに書き記しておこうと、
このシリーズをはじめます。
…
画像はほとんどありませんので、
創造力をフルパワーにして下さい。
…
なんとも無謀なシリーズだと思いつつ、
皆さんの工夫の余地を残しながら、
いろんな疑問にお答えする
このシリーズ。
…
果たしてうまくいきますかどうか?
乞うご期待です。
…
企業秘密的なところは各社中、
各自で研究してみて下さい。
…
あくまで、原理的な部分で、
皆さんの作品制作研究の時間短縮になれば
良いと思ってます。
…
各ページへのリンクは
こちらから
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どうぞ
リンクに出てこないお題は
まだ、書いてない記事ですので、
少しお待ちいただければと…
…
以下、目次?ですが、
どこからアップされるか分かりません。
…
その壱:淡墨製作に関すること
[淡墨]硯は端渓?歙州?澄泥?
[淡墨]硯の上で指で練る?
[淡墨]やはり青墨?それとも茶墨?赤紫?
[淡墨]磨って寝かせるの?
[淡墨]宿墨って何?一度、腐らせないとダメ?
[淡墨]固形墨じゃないとダメ?墨液じゃぁ無理かなぁ・・・
[淡墨]唐墨が良い?和墨が良い?
[淡墨]やっぱ古墨?新しい墨はダメ?
[淡墨]松煙か?油煙か?植物性か?鉱物性か?
[淡墨]薄く磨るか、濃く磨って薄めるか
…
その弐:淡墨作品制作に関すること
[淡墨]淡墨に求める理想
[淡墨]水は水道水で大丈夫?
[淡墨]乾くと滲んだ外側に出る黄色いシミのようなものはナニ?
[淡墨]淡墨を作る最適な季節とかあるの?
[淡墨]紙は?筆は?
[淡墨]芯が出ない、滲みが出ない
[淡墨]絵の具を使っちゃダメ?
…
その参:業界的ウンチク
[淡墨]墨が寝てる?起きてる?
[淡墨]膠(にかわ)の特性
[淡墨]墨色が悪い(ぼくしょく)?発色が悪い?
…
毎日書道会会友
書道芸術院展審査会員
長野県現代書藝展審査会員(同協会:広報部副部長)
中国新聞文化センター講師
粋仙会代表 藤井龍仙