粋仙会:藤井龍仙の日記

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昨日もスミス君は活躍

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一昨日、久しぶりに登場した
スミス君は昨日も大活躍でした。

一昨日は油煙唐墨をごりごり、
昨日は松煙和墨をしゃりしゃり、
8時間の労働基準内です(笑)

ここ二日で約1リットルの墨を磨りました。
ん〜違うなぁ〜
墨を磨らせました。が正しいですね。
龍仙はセットして墨を取って、
またセットするを繰り返しただけで、
指が黒くなったくらいです(笑)

この墨を腐らないように工夫しながら、
膠の加水分解を促進させる処理に入ります。
この墨が使えるようになるのは、
随分先になる予定です。

「この墨、いつのだっけ?」
くらいになると熟成完了です(笑)

熟成の時間は先生によって違います。
墨は時間を置くもんじゃないと
おっしゃるのも、ごもっともな話
どんな作品が作りたいのかによって、
墨の処理も変わってきます。

最近の墨液はよく出来ているので、
通常の濃さなら、
なんら問題なく使用に耐えますが、
龍仙が準備しているのは、
超淡墨に耐えられる用なので、
少々手間と時間がかかります。

で、
今日もお盆休みで家にいます。
昨日から突然に雨が襲ってくるので、
すこしお天気に注意しながら過ごします。

昨日書きかけの
淡墨シリーズの下書き記事でも書こうかと…

お盆休みに入ってから、
鎮痛剤を全く飲んでいないんですけど、
かかとに斜めに荷重をかけると、
まだ痛いですネェ…

放っておけば痛みも引くんですけど、
完治までには至っていない骨折に
少々飽きてきました。

道教室を生業にしている龍仙は、
自分の調子加減で
歩く量も調整が出来るので、
それがよくないのかもしれませんネェ…
治りが遅いような気がします!!

あと一息で治りそうな気もするんですけど、
自主リハビリは根気がいります。

墨色(ぼくしょく)が悪い?発色が悪い?

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今回のお題は
「墨色」です。

墨といえば黒ですけど、
少し薄めると、
筆と墨と紙があいまって、
真っ黒ではない色を出したります。

また、黒といっても、
艶のある黒とつや消しの黒、
ムラのない漆黒と斑になった黒では、
全く受ける印象は変わってしまいます。

淡墨作品の場合は
黒というよりはグレーなわけで、
より、色が現れやすくなります。

こと淡墨作品においては、
芯の強さと、
にじみの美しさ、
それは、
芯とにじみのコントラストと透明感なわけで、
現代書道においては、
漢字や前衛を問わずあらゆる分野で要求されています。

困ったことに、
この「透明感」という難題は、
人間の主観であることと、
どうやっても墨の粒子を使う限りは、
完全な透明にはならないということで
普通に考えて、不可能です。

あえて、答えがあるとすれば、
人間主観であるというところでしょうか…

淡墨ではない通常の書作品の場合なら、
墨がにごっているとか、
艶がないとか、
昔は墨運堂は艶がなく、
古梅園はつやつやで、
開明はテカテカで、
呉竹は??
みたいなところもありましたが、
現代においては、
そんなに簡単に切り分けも出来なくなってきています。
淡墨作品はそんな現代に生きている作品であり、
理解が安定していないのも事実です。

余談ですけど、
龍仙が良く使うのは祥碩堂の墨です。
鈴鹿墨のメーカーですが、
なかなか、真面目に墨を作ってます。
墨液でも筆への負担も少ないので、
愛用してます。

芯で透明感は出せないので、
にじみを美しくする工夫が要りますね。
立体感で透明感を醸し出す方法が最善でしょうか…

紙を変えて、墨の吸収量を変えてみるのも一考です。
水墨画の水の表現、なども参考にしないといけませんね。

ん〜やることいっぱいで、頭が煮えそうです(笑)

淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D

膠(にかわ)の特性

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墨の主原料は煤(すす)と膠(にかわ)です
香料などは微々たるモンです。

さて、
膠(にかわ)というと、
いわゆる接着剤で、古来より使われてきた
天然材料です。

膠といっても
原料はさまざまで、
魚、ウサギの皮、牛の皮(三千本)など、
いろいろですが、
要はゼラチンです。

ゼラチンということは、
温度が下がると、
プルプルになるわけで、
冬に磨った墨を放置しておくと、
プルプルになるのはこのためです。

プルプルの境界温度はというと、
濃さにもよりますが、
だいたい20℃前後です。

淡墨で使う場合には
温度はほとんど影響ないです。

もうひとつの大きな特性は、
「腐る」ということです。
腐るということは腐敗する、
すなわち雑菌が繁殖して、
ゼラチンを食べて分解して、
くっさい臭いを
大量に放出してくれると言うことです。

ついこの前も、
大学生の超カグワシイ作品に
ひっくり返りそうになりましたが、
一度腐ってしまうと、
薄めて淡墨にしても、
臭いが広がるだけで、
もうどうにもなりません。

あーちょっと違いますね。
臭いの気にならない人は、
充分使えます(笑)
ただし、龍仙の鼻では耐えられません。

腐る=細菌が繁殖する=臭気を放出する
ということは、
最近の繁殖を抑えてやれば良い訳で、
殺菌、滅菌、除菌などができれば
臭い問題は解決します。

市販されている液体膠には、
温度変化に対応するためゲル化防止剤、
細菌繁殖に対応するためいわゆる防腐剤(消毒薬)が
入っています。
膠自身も決して良いにおいではなく、
特に魚の膠などは、
エモイワレヌ香りがします(笑)

墨に関して言うと、
基本磨った墨の保存は効かない。
持ってせいぜい2日です。
保存しようと冷蔵庫に入れると、
墨ゼリーの出来上がり、
溶かそうと電子レンジにかけると、
口についた乾いた墨=炭素が燃えたりして、
えらい目にあいます(笑)
暖める時は、
湯煎(お湯につける)にしてくださいね。

ただ、先生達は口をそろえて、
[淡墨は半日以上時間を置け」と
のたまうわけで、
毎回調合ではなかなか辛いものがあります。

時間をおくと墨がどうなるのか?
どんな変化をするのか?
「宿墨」のところと被る内容もありますので、
簡単に解説します。

膠の時間的変化というと、
生物学的には細菌繁殖、
化学的には加水分解
があげられます。

生物的時間変化は生ゴミと同じです(笑)
生物分解を起こしますので、
膠ではなくなり、
膠特有の粘性がどんどんなくなってきます。

一方、化学的変化の方はというと、
膠は水を吸収して、加水分解を起こします。
高分子がどんどん切れて低分子化する状態が
この場合の加水分解です。

低分子化で何が起こるのか?
それは接着力の低下です。
日本画などでは絵の具が剥がれやすくなります。
書道においては墨に潤滑性がなくなり、
筆のスベリが悪くなります。
最悪、表装の際に墨がはがれたり流れたりします。

加水分解の緩衝剤には
塩化マグネシウム=にがり
を使うのだそうです。

ただ、
低分子化によって炭素の粒子がくっつきやすくなり、
粒子の巨大化、多様化が促進されることで、
芯の強さや表情の豊かさが出ます。

今回のまとめ
温度:低い=ゼリー:高い=さらさら
時間:細菌の大好物=腐る=臭い=膠じゃなくなる
時間:加水分解を起こして低分子化し潤滑性がなくなり、炭素粒子が多様化する

淡墨記事の一覧はこちら
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墨が寝てる?起きてる?

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今回のお題は
「墨の寝る起きる」です

なんじゃそりゃ?!
って感じですよね。
これは、表具やさんが時折使う表現です。

墨が起きてる=そのまま裏打ちしてもOK
墨が寝ている=そのまま裏打ちできない

これは膠が効いているかどうかを
例えた表現なんですけど、
文字の周囲の紙がよれてシワが寄っていれは、
起きていると表現し
文字の周囲がシワもなく平らな場合は、
寝ていると表現するんだそうです。

墨が寝ていると判断された時は、
にじみ止めの樹脂を容赦なく吹き付けてくれます(笑)
天然膠ならまだしも、
工業製品の樹脂ですから、
経年劣化の保証はありませんよ。

余談ですが、
書き手としては、
墨を寝かせるという表現は使いますが、
墨を立たせるという表現は使いませんネェ…
書き手が立たせるとしたら、
硯の鋒鋩でしょう。

淡墨シリーズの記事はこちらから
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絵の具を使っちゃダメ?

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今回のお題は
「絵の具」です

書道に絵の具のは邪道中の邪道と
明治の昔より言われ続けていて、
今も本能的に拒否してしまう先生は多いです。

作品の善し悪しは人様が決めることで、
作品制作者は自分の作品を常に主張し、
新しいものを取り入れていかなければならない
ことを考えると、
龍仙的には絵の具もありです。

絵の具では書道から離れるのではないか
という懸念もぬぐえないので、
龍仙の場合は淡墨に顔彩を混ぜて
出来るだけビビッドに色が出ないように
工夫しています。

ビビッドな色使いは
高校生達のパフォーマンスにおまかせして
龍仙は龍仙ナリの作品を追い求めています。

また、
このように今まで邪道とされていたことを
世に問うというのは、
とかく大いなる批判を浴びます。

古くはミレーがそうであったように、
ピカソやダリ、岡本太郎がそうであったように、
生きている間に理解されることを
望むのならやめておいたほうがいいでしょう。

お題の絵の具から
すいぶん飛躍してきましたが、
書道において墨じゃない色を使うということは、
現書壇において、
それくらいのインパクトがある
ということを忘れないことです。

ただ、もしかすると、
そんな、業界の常識は、
世間では非常識なのかもしれません。

事実、前回の書道芸術院展や
長野現代書藝展で、
顔彩を混ぜた墨を使って作品制作してみましたが、
ものめずらしさからか、好評でした。

墨色も自由に操れないやつが、
色を使うのはもってのほかと言う声が、
聞こえてきそうですが、
墨色という緻密で複雑な世界が
うまく出来ないからこそ、
色の力を借りることも許されるのではないかと、
龍仙的な結論その一です。

まぁへ理屈といわれりゃそれまでなので、
作品で世に問いかけるしかないですね…

ということで、
今回のお題の結論は
龍仙的には墨も必ず使うという
条件付でOK、
世間的にも無条件でOK、
今の書道界ではほぼNG、
です。

書道においては品格も重要な要素であることを
忘れないようにしないといけないので、
最終的には黒に戻ってくるかもしれませんが、
自己作品発展の一途上であると理解するのが適切なようです。

淡墨シリーズの記事はこちらから
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芯が出ない、滲(にじ)みが出ない

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今回のお題は
「芯と滲み」です。

淡墨作品を大きく左右する大事な要素ですが、
なかなか思ったコントロールが出来ないのも事実です。

いろんな先生に聞いても、
いろいろと違うのが実情で、
これといって完全にコントロールする方法は
未だありません。

そこで、
ナニが影響しているのが、
その原因というか左右するファクターを
あげてみます。

「芯」については
要は大きな煤の粒子が、
水と膠に乗り損ねて、
残った筆の軌道なわけで、
粒子が大きければ芯ができるんです。
墨の粒を擦り付けた感じですね。

では、なぜ芯が残らないのか?
墨の粒子が芯になれる大きさになっていないだけのことです。
もう一つ考えられるとしたら、
芯とにじみの濃さが全く一緒の場合です。

淡墨作品でも、墨液を使うと
この傾向は高くなります。

では、墨の粒子が大きくなるのはなぜか?

墨の濃さが一定しているのは、
墨の粒子が液体中に均等に分散しているからです。
均等に分散するためには、
水の分子運動と、
墨の粒子の小ささ、
膠の粘り(擬似乳化)が
うまくバランスしていないと
均等にはなりません。

墨液がこの世に出て
まだ半世紀も経っていないのは、
墨の均質を維持することが大変難しかったからです。

ここらへんの苦労話は
墨運堂のページを検索してみて下さい(笑)

話を戻して、
均等を維持するのが難しいということは、
放置すると、沈殿していくということです。

ってぇことは、
磨って放置しておけば良いということです。
これで、芯は出せる。

ただ、放置すると、
乾くだの、腐るだの、臭うだのと
副産物も多いので、
これについては、
宿墨のお題をご覧下さい。

墨の粒子が大きいと、
芯が出来るというなら、
松煙を使うか、
油煙を使うかは言うまでもありません。
粒の大きい松煙を使いましょう。
その差は、松煙は油煙の10から100倍の大きさです。
体積にすると10000倍以上の違いになります。
顔彩やポスターカラーを混ぜて使うのも
ありでしょうね…

書道の場合は
墨の粒子が均質でないことが、
墨色や厚みを生むので、
顔彩やポスカだけでは
立体感がなくなります。

他方、
「滲み」についてはどうか?
滲むためには、
墨の粒子を運ぶ入れ物と、
運ぶエネルギーが要ります。

運ぶ入れ物=膠
運ぶエネルギー=水の浸透力(毛細管現象)
例えて言うなら、
水は波のようなもので、
膠はサーフボードとも言えそうです。

サーフボードに乗れない人は、
その場に沈み、
乗れた人は、
波の行く方へどんどん遠くへ運ばれていく

ということで、
サーフボードはあまり大きくないようで、
小さな墨の粒子しか運びません。

ってぇことは、
粒子の小さい墨を膠にたくさん乗せれば、
たくさん滲むってぇこってす。
言い換えれば
たくさんの低分子膠に
粒子の小さい墨を混ぜれば、
良いってことです。

ちょっと待って下さい。
これって、唐墨の十八番ですよ。
ということは、唐墨の松煙墨を使えば良いってこと?
硬度の高い水を使うなら、
これもありです。

ただ、にじみは比較的楽に出ますが、
唐墨の松煙墨は比較的粒子が小さいので、
充分な大きさになるのをまっていると、
膠が完全分解して、
おまけに小さい墨粒子が
なくなる可能性が高いですね。

やはり、
芯とにじみは
別々に作って、直前に混ぜるのが
良さそうです。

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紙は?筆は?

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今回のお題は
「紙と筆」です

淡墨作品制作の場合の用具用材は
それぞれ工夫しながら、
自分のターゲットに合ったものを選ぶべきですが、

ここでは、
初心者向けということにして、
考えていきます。

まず、
紙はよく墨を吸う事、
次に
しっかり滲む事
最後に
出来るだけ丈夫な事
くらいでしょうか

この条件を満たす紙というと、
かなり値段の張る紙になります。
先生とよく相談して決めてください。

龍仙が良く使うのは
紅星牌棉料単宣二層か夾箋ですけど、
最近は高くて躊躇してしまいます。

国産でもそろそろ価格の見合う、
良い製品が出来そうな気もしますが…
もう少し先ですかね。

それにしても、
中国の物価の上がり方は尋常じゃないです。
紙業者さんも嘆いてました。

紙の話はこれくらいにして、
筆ですけど、
これについては、
好きにしてください(笑)

これがいいとか、
これじゃないとダメとか、
そんな教科書みたいなことはどこにも無いので、
先生と相談しながら、
自分で決めて使いこなすしかないです。

淡墨シリーズの記事はこちらから
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淡墨を作る最適な季節とかあるの?

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今回のお題は
「淡墨を磨る季節」です

その都度、淡墨を少量作成される方と
宿墨好みの方で
結論が逆にみえるので、
それぞれに分けて考えます。

その都度、墨を作る方にとっては、
膠の加水分解が進みにくい水温、気温共に低い
冬が最適です。

膠の加水分解が進まない=滲みを保持しやすい
ということで、
作品の乾きは悪いですけど、
冬場のほうが制作には向いています。

一方、
宿墨が好きで芯をカリッと出したい方は、
膠の加水分解が急速に進む、
気温水温共に高い夏場が向いています。

宿墨については別の記事に
書いていますので、
そちらをご覧下さい。

宿墨がお好きな方は、
当然ながら墨を磨って
すぐに使うわけもなく、
ある程度時間を置くわけですけど、
夏といえばカビや細菌が
とても繁殖しやすい季節です。

加水分解促進のためとは言え、
雑菌が繁殖して、
どえりゃー臭いことにならないよう
工夫が必要です。

ちなみに、
冬場に濃くすると、
膠はゼリーになり、
加水分解はほぼ止まります。

加水分解が進むと、
ゼリーにはなりにくくなります。

夏に作って、
腐らせないよう保存し、
冬場にゼリーにならなければ、
スーパー宿墨の完成です。

万が一、腐ったら、
上澄み(膠が多く解けている部分)を吸出し、
再度水を入れて熟成させる
という、かなりマニアックな先生も
いらっしゃいました。

防腐処理にナニが一番いいのかは、
ただいま実験中です。

淡墨シリーズの記事はこちらから
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乾くと滲んだ外側に出る黄色いシミのようなものはナニ?

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今回のお題は
「滲んだ先の黄色(茶色)いシミ」です

今回は先に正解を書きます。
主に「膠の混ぜ物」が正体です。
紙の汚れもままありますが、
紙の経年劣化による汚れは差ほどではありません。

具体的な物質名までは分かりませんが、
墨液を薄めると、顕著に出ます。
市販の膠液でも出ます。
ただの膠では出にくいことを差し引いて考えると、
膠の中の混ぜ物と
特定しても問題なさそうです。

そもそも、
墨液は淡墨で使うようには作られていないので、
膠仕様の墨液でも
酸化防止剤、防腐剤、乳化剤、保存料、ゲル化防止剤
など、各社さまざまな添加物を含んでいます。

このシミは、
普通に見ると、しみですけど、
光にかざして透過光でみると、
なんと、他の部分より光が良く通るんです。

分かりやすく言うと
油のついた紙と同じようになるんです。
さながら、かに座のリング星雲状態です。

って、天文に興味の無い人は余計に分かりませんね
ともかく、光にかざすと、
シミの部分が光の輪っかになるんです。

ということは、
淡墨作品に
添加物のたくさん入っている墨液は
基本使えないし、
混ぜられもしないという結論です。

そういえば、
本人的には失敗のこの輪っかシミを
まるで仏さんの後光みたい!!
と例えた方がいらっしゃいました。

褒めてんだか、冷やかしてんだか、
よくわかりませんけど、
意外と気になるのは確かです。

淡墨作品の時は
横着をせず、磨りましょう(笑)
淡墨可能の表示がある墨液でも、
用心して使いましょう。

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水は水道水で大丈夫?

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今回のお題は
「水」です。
どんな水でも書けるっちゃぁ書けますが、
こと淡墨作品となると、
この水が大きく影響します。

水のナニが影響するかというと、
硬度です。
マグネシウムとカルシウムの含有量を
硬度といっているようですが、
膠の加水分解を抑制する、
にがりは塩化マグネシウムなわけで、
マグネシウムをたくさん含んでいます。

ということは、
硬水を使うと、膠が長時間高分子を維持できるわけで、
墨の伸びが期待できますが、
一方で、煤の巨大化を阻むので、
芯が出にくいということになります。

軟水の場合はどうかというと、
磨ったそのときから、
膠の加水分解がじゃんじゃん進むわけで、
芯を作るにはもってこい!!
ですが、数時間放置すると、
にじみの部分には何もなくなります

結論としては
「芯は軟水で、滲みは硬水で」
コンビニで買うなら、
滲み用にエビアンかビッテル
芯用は自宅の水道(笑)

ちなみに、
龍仙の住む広島県の西半分は
全国有数の軟水地域です。
水道水の硬度は各自治体でも公開していますが、
こちらのサイトがオモシロいですよ。
http://softwater.jp/what/000052.html
ミネラル水についてはこちら
http://mineral-waters.net/

もひとつ、ちなみに
中国の水は平均硬度が300オーバーだそうです。
エビアン、ビッテル級です(笑)
日本ではせいぜい100オーバーくらいみたいです。

酸、アルカリに対する膠の影響については、
不明ですが、
みなさんご存知のにじみ止めに使う礬砂(ドーサ)は
膠に強い酸性の明礬(ミョウバン)を混ぜたものです。
ってぇことは、影響はあまりないということでしょうか?

膠はたんぱく質なので、
酸とアルカリを交互に加えると分解はするようですが、
書道をする人で
そんなことをする人はいないわけで、
今のところ、
考慮不要ということでしょうか…

ちなみに、
紙はアルカリに傾いています。

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淡墨に求める理想

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書道に手を染めてから
かれこれ30年。
淡墨作品を手がけ始めて
かれこれ15年。

この間、いろんな書作品を見て、
理想の淡墨作品を夢見て、
ゆっくりながら、研究してきて、
思うことは、

かつてない
淡墨の芯の強さとにじみの美しさ、
深遠なる立体感、飛び出す躍動感

そして、その先にある未知の理想は
未だ想像すら怪しい状況ですけど、
これまでの知識を整理する意味で、
あれこれ綴っていきます。

最終的には、
余計なものをと全て取り去って、
人の心に刺さる一作を目指してます。

淡墨作品は他の濃さの作品に比べて、
偶然性が高く、
その偶然性をいかに多発させるか…
偶然を安定して出すためには、
理論武装も必要なわけで、
まだまだ、研究途上ですが、
後進の参考になればと思っています

淡墨シリーズの記事はこちらから
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水に直接磨るか、濃く磨って薄めるか

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今回のお題は
「水の順序」です

大量の水にちょびっと磨るのか、
濃く磨った後で、水をかけて薄めるのか、
濃く磨った墨を、大量の水に落とすのか、
考えられるのは以上の3通りです。

書道をやらない人にとっては、
「そんなのどうでもいいんじゃね?」
ってところですが、
これには大きな違いが潜んでるんです。

墨が水中にきれいに分散してしまうと、
芯が出来ません。
一方で墨の粒子がくっつきすぎて、
大きくなりすぎると、滲みがでません。

さて、最初の方法
大量の水にちょびっと磨ると、
墨は磨ったはしから水中に分散し始め、
粒子がくっつく間はないです。

せっかくの松煙墨も台無しです。
ただし、この方法で唐墨を磨ると、
にじみの部分を作りやすいので、
使う場所を間違えなければOKです。

2番目の濃く磨った上から
水をジャブジャブかけて薄める
ですが、
この方法だと、最初の方法よりは
墨の粒子がくっつく時間がありますが、
墨を水で洗う感じになるので、
かけた途端に最初の方法と
さほど違いはなくなります。

この方法のポイントは、
濃く磨った後、少し時間を置くことです。

そして、最後の方法
濃く磨った墨を、水の中に落とす、
ですが、
一般的にはこの方法が良く使われます。

この方法は墨を落とした後、
しっかり混ぜないことも出来るし、
しっかり混ぜることも出来るし、
濃さの調整も比較的楽に出来ます。

また、
宿墨を使う場合は
この方法にならざるを得ません。

ただ、この方法は、
墨が沈殿したまま筆につくことになるので、
混ぜ方には充分注意してください。

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松煙か?油煙か?植物性か?鉱物性か?

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今回のお題は
「淡墨の原料」です

まずは松煙と油煙の違いです。

松煙はヤニを直焚きするので、
比較的粒子が大きく、
さまざまな大きさの煤が取れるのが特徴です。

一方、油煙は液体を芯焚きで
煤を取る位置にもよりますが、
松煙よりは煤の粒子が
均質で小さいのが特徴です。

次に植物性か鉱物性かについてです。

植物性の原料というと、
油やヤニが取れるものなら何でも原料になります。
種子油が多いですが、菜種、ゴマ、綿花
ヤニの代表は松やにで松煙の原料です。
鉱物性の原料は
いわゆる石油を原料としたもので、
工業製品なので、
均質化には向いています。

この4つは2軸のマトリックスにできます。
植物性の松煙、油煙
鉱物性の松煙に似たもの、油煙
の4種類で、
今ではさまざまな大きさの煤を
作るノウハウがあるようです。

さてさて、
原料が違うと何が違うのか、
製法にもよりますが、
答えは煤(すす)の粒子の大きさです。

淡墨作品の場合は
芯は巨大な煤
にじみは微細な煤が必要となり、
巨大と微細の中間もないと、
墨色や深みが出ません。

ということは、
原料は何でもいいってことです。
狙った墨の配合に近ければ、
それでいいんじゃないかと

そうは言っても、
植物成分のほうが、
いろんなムラがあって、
バラエティーがあって、
龍仙的には好きです。

ちなみに、
粒子が大きいと青く見えやすく、
粒子が小さいと赤みが増すんだそうです。
混ざると紫ですね(笑)

淡墨シリーズの記事はこちらから
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やっぱ古墨?新しい墨はダメ?

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今回のお題は
「墨の古さによる違い」です

現存する墨で形が維持できているのは、
中国が明の時代の墨で、
明墨と呼ばれ、古墨中の古墨として、
どえりゃー高値がついています。

バブルの頃には、
弟子が共同で先生から買い、
入賞を狙うといった、
別の道具にも使われたもんですが、
21世紀のデフレ列島にっぽんでは、
歴史的価値を見いだせはしても、
使うものではなくなってます。

一方で、
中国は言うまでもなく、
日本の奈良や鈴鹿などでも、
伝統工芸として作られ続けています。

ただ、気になるのは、
固型墨の消費量は
墨液と比較すると圧倒的に少なくなっており、
製墨業者さんには細々とでも、
生き残っていただきたいと願っています。

ちょっと方向がそれたので元に戻しますが、
新旧の比較をする前に
固形墨は時間と共にナニが変化していくのか
について考えます。

その前に日本の古い固形墨は残れなかったことを
頭の片隅において下さい。

固形墨は
煤(すす)と膠と香料を混ぜて練って、
中国では思いっきり叩いて、
製造します。
99%以上は煤と膠で、
量は中国では膠が多く、
日本では煤のほうが多くなってます。

使う膠も日本では、
高分子鎖の長いまま使い、
中国では低分子化した膠を使います。

これは、墨を磨るときの水が大きく係わっていますが、
詳しいことは
このシリーズの「水道水じゃダメ?」
の記事をお読みください。

さてさて、
ようやく時間変化についてです。
膠は加水分解という化学変化を起こして、
膠の高分子がどんどん低分子化していきます。
化学組成は変わらないのですが、
水によって同じ組成のもの
すなわち、たんぱく質の長い鎖が
次々と切られて短くなっていくんです。

これを書家たちは「墨が枯れる」と表現します。
固形墨においては、
空気中の水分を取り込んで、
非常にゆっくりと加水分解が進行し、
膠が低分子化していきます。

この間、煤の方は全くいえるほど、
変化を起こしません。

一度水に漬けてしまった墨が、
水についた部分だけボロボロになっているのを、
見たことがないですか?
これがまさに、加水分解が急激に進んだ証です。

膠はいわゆるゼラチンです。
乾燥すると非常に硬くなり、
水に漬けると、ふやけてゼリーになります。
これを繰り返すと、
鎖が短くなって、
接着力がなくなりボロボロになります。

新しい墨は、膠の鎖が長く、
古い墨は、膠の鎖短くなっている
といいきるのは、気が早いというものです。

表面は確かにそうですが、
墨の内部には
なかなか水分が届かないわけで、
ことはそう簡単ではありません。

面倒なことに、
唐墨と和墨では
それぞれの気候と水にあわせて、
膠の質も配合量も違うので、
古い新しいだけでは論じ切れないのです。

まず日本の固形墨ですが、
混合する膠は高分子のものを少なめに混ぜています。
日本の湿度による割れと、
磨る水が軟水であることに対応した結果なのですが、
保存性は悪く、せいぜい100年です。

今は製法も原料も進化しているので、
昔に比べると人間と同じく、
平均寿命は延びているようですが、
それでも200年は無理なようです。

古墨にしようと、
日本の墨をタンスにしまいこんでいる
そこの、あなた!!
生きている間に使いましょう(笑)

一方で中国の墨はというと、
最初から低分子化した膠を多めに混ぜて、
更に、叩きまくって、
乾燥に耐え、硬水にもすんなり溶けるよう
工夫がされています。

なので、和墨よりは随分硬く
保存性はよく数百年だといわれています。

ちなみに、世界最古の墨は
なんと、日本の正倉院にある、
新羅墨(716年製)だそうです。
少しの振動で、
ボロボロになりそうですね(笑)

逸れてますねぇ…
再び戻して、
和墨には古墨はない!!
ということと、
唐墨は湿度の高い日本では
急速にボロボロになる!!

古墨といっても、
古ければよいというものではなく、
表面は加水分解が安定し、
内部はまだ進行中というくらいの墨が、
理想的ということです。

増してや、
和墨に関しては古墨は
ありえないということで、
適当な時期に使ってあげるべきだということですね。

こと淡墨に使うとしたら、
古墨なら1本で済みますが、
勿体無くてたくさん磨れません。

そこで、
古墨の表面部分と
古墨の内部の墨を
別々に作って混ぜれば同じということです。

内部は新しい墨に近いので、
10年選手くらいのちょっと古い墨で代用し、
外部は膠が切れ切れになっているので、
宿墨を使う。

こうすれば擬似的に古墨が出来ます。

とは言え、
良い古墨の持つ、
深遠な滲みが醸し出す品格と、
沸き立つような芯の強さは、
古墨ならではといわざるを得ません。

もっと研究して、
近づけたいですね。

ちなみに、
日本の墨の悪いところは、
製造して3年はなまっちょろくて、
美しくなく、伸びが悪いことです。

出荷自体が1年以上2年内に
行われることを考慮すると、
すぐ使いたい時は
去年以前に製造されたものを
求めて下さい。

ということで、
結論ですが、
墨は古ければよいというものではない。

淡墨シリーズの記事はこちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D

唐墨が良い?和墨が良い?

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みなさんは
唐墨が多いですか?
和墨が多いですか?
龍仙は和墨7唐墨3くらいの割合で持ってます。

ただ、
何が違うのか?
墨の硬さ?(笑)
確かに唐墨はかたいですよね。
しかも割れやすい。

この違いは、
風土と水の違いを克服した結果の違いで、
それぞれの進化といってもいいんじゃないかと…

具体的には
日本は湿潤、軟水=>高分子膠のままで煤の6割程度
中国は乾燥、硬水=>低分子膠にして煤と同量以上
ということで、
そも分量が違うんです

唐墨の硬さは
墨を磨る水の硬度が高いため、
膠の加水分解が起こりにくいので、
墨の分散を良くするために、
最初から低分子の膠を使うようです。
さらに、
気候が乾燥しているため、
墨が水分にあたる機会が少なく、
固形墨のままで膠が加水分解しくく、
低分子膠で接着力が低くても、
割れずに長期間保存が利くというわけです。

一方和墨は
磨る時の水が比較的軟水の地域が多く、
特に関西はその傾向が高いようです。
関東地域は比較的硬度が高い傾向がありますが、
中国の平均に比べればほとんどそれ以下のようです。
そのため、墨を磨ると、
急速に加水分解が始まり、
粘度が下がりやすいので、
高分子を使っても然程問題なく墨が分散します。
また、高分子膠を使うことで、
湿潤な気候で固形墨の加水分解を補い、
割れにくい隅でしかも磨った時に伸びの良い
墨になっているわけです。

墨の違いはこれくらいにしておいて、
淡墨で使う際に
この違いがどう影響してくるのか

これには、
紙に墨を載せる時に
膠がどう影響するのかを理解する必要がありそうです。

墨の中の膠の役割は、
磨る前は固形を維持するための接着剤、
磨った後は煤の粒子を抱き込んで、
沈殿しないように乳化剤的な役割、
紙についたら、水に乗って、
煤を運ぶ役割
乾いてからは煤が紙から剥がれないように
接着する役割
と最初から最後まで、
いろんな役割があります。

膠が全くない煤を想像して下さい。
粉を水に混ぜて紙に載せた感じです。
にじみはなく、ムラムラで、
水だけが周囲に浸みて行きます。
乾いても、紙を叩くと
ホコリのように取れるので、
表装もままなりませんね。

ここで大きな問題が発生します。
「芯があって、なおかつ、美しい滲み」
芯の部分は膠が邪魔、
にじみの部分には膠が必要
相反することを実現しなければいけないということです。

少し話がそれてきたので、
元に戻しますが、
唐墨は低分子膠なので、
にじみの部分に効果があります。
ただ、日本の水だと、
硬度が低いので、あっという間に滲みが少なくなってきます。

ということで、
和墨を芯に使いつつ、
書くときに唐墨を磨って、
時間を置かず加えるのが理論的です。

時間が経つと、
元々低分子膠なので、
ただの炭素にどんどん近づいて、
芯のほうに回ってくれますが、
煤が比較的小さいので、
大きく成長するまでには
やはり日本の墨のほうが良いようです。

ただ、磨るタイミングや、
混ぜるタイミングは
使う水や気温によって変わりますので、
各自の工夫が要りますね。

ちなみに、
龍仙のすんでいる緑井地区の水道水は
超軟水なので、
加水分解は激しく進みますよ(笑)

今回の結論
和墨と唐墨は
それぞれの特性を理解して、
うまく組み合わせよう
です。
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淡墨記事の一覧はこちら
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D

固形墨じゃないとダメ?墨液じゃぁ無理かなぁ・・・

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今回のお題は
「固形墨か墨液か」です。

まずは結論から、
いかなる事情があろうとも、
淡墨に既製品墨液は禁物です。

このシリーズの「黄色いシミ」
のところでも詳しく書いていますが、
膠を長期間保存するため、
墨液にはいろんな薬剤が入っています。

膠べースで無い墨液には、
膠の代わりにも温度変体しない、
いわゆる樹脂がたくさん入っていて、
薄めても、まるでインクのように
均等に広がってくれます。
べたーっとした、にじみになるのは
このためです。

しっかりと、成分表示してある墨液なら、
使えるものもあるかもしれませんけど、
成分表示=企業秘密の公開
につながるわけで、
いまだ、墨液の成分表示を見たことはないです(笑)

固形墨を磨った液を販売している墨液だけは、
使える可能性は大きいです。
が、かなり高いですよ(笑)

実は龍仙実験中の墨液の一つです。
2009年物の古墨という呉竹の墨液は
腐りもせず、
ボトルの中でいい感じの宿墨になってます。
宿墨なのに香料の香りが残ってます。
防腐方法は内緒ですけど、
意外と簡単です。

淡墨シリーズの記事はこちらから
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宿墨って何?一度、腐らせないとダメ?

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今回のテーマは
「宿墨」です

聞きなれない言葉ですが、
淡墨をやる人の間ではよく使う単語の一つです。
墨のお宿ではないのであしからず。

さてさて、
みなさんは墨を磨って
そのまま放置したことはありませんか?

練成会などで使うために、
墨を多めに磨って
瓶に入れておいたことはないですか?

宿墨のそもそもの語源は、
硯に宿る墨=宿墨のようです。

乾いた硯に水を入れると、
溶け出してくる墨ような、
膠が切れた煤に似た墨の総称で
現在は使っています。

もっとラフに言うと、
炭素の粉に近い墨ともいえます。

間違って使われるのは、
宿墨=腐った墨
といった使われ方です。

確かに、
腐ると細菌分解で
膠が切れて別のものになるので、
宿墨+腐墨になりますが、
腐っていない宿墨もあるので、
宿墨という単語を使う際には
充分ご注意を…

ということで、
宿墨とは膠の高分子鎖が
加水分解でほどけて、
膠が低分子化し、
煤の粒子が相互にくっついて、
粒が大きくなった状態の墨
のことです。

昔は乾燥して、
硯にこびりついた墨のことだったようですが、
現在の書道界では、
こびりつかなくても、
時間を置いて作った
芯のよく出る墨のことを
宿墨という単語で表現しています。

かの昔は、
筆も紙も硯も墨も
全て貴重な品で、
モッタイナイ精神の副産物だった宿墨ですが、
今や、わざわざ作る時代になってます。
その製法は、
各社中の秘中の秘で、
決して、肝心なところは明かしません。

製法の基本は
「磨って放置!!」です(笑)
その後、まず研究すべきは
腐らせない方法、腐りにくくする方法
です。

腐っても、似たような表情は出しますが、
腐らなくても、
膠の加水分解が進めば、
宿墨になるわけですから、
わざわざ、あの臭気に
耐える必要もないと思います。

ということで、
宿墨を作るのに、
腐らせる必要はないという結論ですが、
腐ってしまった場合は仕方ないですね(笑)

淡墨シリーズの記事はこちらから
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磨って寝かせるの?

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今回のお題は
「磨って寝かせる」です

磨って寝かせると聞いて、
「磨ったまま放置する」
「磨った墨を入れた容器を横に寝かせる」
「硯に布団をかぶせて保温する」
「磨った墨と一緒の部屋で寝る」

など、龍仙の考えすぎだといえる状況まで
想像なさった方もいらっしゃるのではないかと…
放置と布団はある意味正解ですが、
横にするのと一緒に寝るのは
放置するという点では効果がありますが、
ほぼ何の効果も無いおまじないのようなものになってます(笑)

ということで、
寝かせる=放置したまま時間を経過させる
寝かせることを熟成とか醸成とかで
表現する先生方もいらっしゃいます。

ということで、
淡墨作品の芯を作るには、
寝かせるに限ります。

ただし、
寝かせると
にじみはどんどんなくなります。

ということは、
淡墨作品を作る前段階として、
前の日より前に墨を磨って放置

続いて
制作当日は、放置した墨とは別に、
新たに墨を磨り、
制作直前に使う分量だけ混ぜる、
両方を別の容器で混ぜる
濃度を調整する

てぇことは、
墨で汚れる容器というか硯が、
3枚いるってぇことです。

時間差を利用しないといけないのと、
汚れ物が多くなるのが難点ですけど、
いい作品を目指すならこの辺の手間は
惜しまないほうがいいです。

寝かせるほうの墨は、
作り置きでも構いませんし、
むしろその方が芯は強く出ますが、
くれぐれも異臭を放たないよう
注意してください。

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やはり青墨?それとも茶墨?赤紫?

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今回のお題は
「墨の色選択」です。

墨の色系統を表現するのに、
青系、赤紫系、茶系、黒系などを
良く聞きます。

一方で原料でも分類もありますが、
これはまだ別のお題のところに譲るとして、
ここでは色に特化します。

淡墨で美しいと感じるのは、
まず青系です。
青といっても、
絵の具のような真っ青ではなく、
薄いブルーグレーですね。

その対極にあるのが
茶系です。
薄く使うと温かみのある落ち着いた雰囲気が出せます。

茶と青の中間が赤紫系です。
茶と青を混ぜただけ?かというと
そうではなく、
青>赤紫>茶と粒子の大きさによって、
見える反射光が変わってくるんだそうです。

なんとも不思議ですが、
モルフォ蝶の様にある特定の波長を反射しないことでも、
色は見えるわけですから、
墨のような小さな粒子なら、
光の特定波長が遮られると考えるほうが
自然といえば自然です。

ここで、
よく勘違いしているウンチクを一つ、
青墨=松煙墨、茶墨=油煙墨
だと思っていませんか?
答えは半分正解です。

青墨に松煙墨が多いのは確かです。
茶墨に油煙墨が多いのも確かです。
しかし、
松煙に茶系がないかといえばそうではなく、
油煙に青墨がないかといえばそうでもありません。

色目は墨の粒子の大きさでほぼ決まるため、
原料=色ではないのです。

ここで、
淡墨作品のおすすめですが、
粒子が大きく真になりやすいことを考えると、
ここはやはり青墨です。

ちなみに、
最近の青墨にはほとんど藍の染料が入っています。
なので、まっさらの羊毛筆は、
きれいな青に染まってくれます(笑)

藍は空気に触れて
酸化して青を発色するので、
アルカリ性の水や
酸化防止剤の入った墨液などは禁物です。

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硯の上で指で練る?

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今回のお題は
「指で練る」です。

指で磨った墨をなでるように
硯の上で練るというのは、
ビジュアル的にかなりマニアックで
偉い先生がやるととてもインパクトのある
パフォーマンスになります。

見た目はさておき、
指で練ることの効果ですけど、
1つ目は、墨を水中に分散させて膠の加水分解を促進させる。
2つ目は、墨の粒子を細かくしてにじみを良くする。
3つ目は、手についている不純物で墨の粒子結合を促進させる。
4つ目は、指紋がなくなる(笑)
くらいでしょうか。

2つ目と、3つ目は相反する内容なので、
時間と共に、バランスが崩れて、
2つ目の効果がなくなると考えるのが自然です。

指で練るのも出来るだけ毎回硯を洗って、
毎回指で練るという作業をしないと、
効果は薄いということです。

なにより、
大字書など墨を大量に使う作品には
全く以って、不可能ということです。

小さな作品のときは、
パフォーマンスも含めて、
効果的ですが、
大きな作品に不向きなのは、
明らかです。

ちなみに効果の4つ目
指紋がなくなる…ですけど、
硯好きな龍仙が観硯の際、
指先で鋒鋩のカカリを観過ぎたときに、
よくある話です(笑)

いい硯は、手触りもそれはいいモンです。

淡墨シリーズの記事はこちらから
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硯は端渓?歙州?澄泥?

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今回のお題は
「硯」です

まずは、硯の特徴から始めましょう。
端渓は知らない人はいないと思いますが、
水巌系のものから、
老坑、宋坑、麻子坑、坑仔巌など、
多種多様でそれぞれに特徴があるので、
一概にこれとはいえないところですが、
タイトルの3種類のうちでは、
鋒鋩のバランスが一番良好です。

鋒鋩ってナニ?という方もあろうかと思いますので、
簡単に言うと、
ヤスリに例えてヤスリの目のようなものです。
大きいとザリザリと磨れ、
小さいと細やかに磨れ、
硬いと目潰れが少なく、
柔らかいと頻繁に目立てが必要になります。

細かければ良いとい訳ではありません。
墨は均質におりると、
平板な線になり、
厚みが出ないのです。

元に戻って、
歙州硯ですが、
古い歙州は細かく鋒鋩も強く、
いい感じですけど、
最近のものは石紋がきれいなだけで、
ザリザリとおります。

澄泥硯については、
これまた、千差万別
手に入るお値段のものは
基本景気よくおりてくれます。
ちょっとお値段のするものは、
それなりに細かくおりてくれます。
鋒鋩はめっぽう強いですが、
土台のほうが弱かったりするので、
要注意です。

ただ、
ここ淡墨に特化して話をすると、
にじみの部分は端渓ないしは歙州
国産の硯は粘板岩系が多く
どちらかというと歙州硯に近いと
思ったほうが良いでしょう。
ただし、山口の赤間や長野の龍渓は
凝灰岩に近いので、端渓寄りでしょうか…

芯を出すためには、
ザリザリとおりてくれる
最近の歙州硯か
お手ごろな値段の澄泥硯が向いています。
中には陶器の硯でゴリゴリなさる方もいらっしゃいますが、
あまりゴリゴリでは、
表具の際に紙から墨が剥がれてしまいます(笑)

ここでも、
芯とにじみは別々に作ったほうが
確実だということが分かります。

淡墨シリーズの記事はこちらから
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藤井龍仙淡墨シリーズの目次

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藤井龍仙淡墨シリーズの目次

龍仙が淡墨作品を手がけ始めて、
はや15年。

未だ、自分の完成形はないですけど、
今一度、初心に立ち返り、
自分が思った疑問に一つ一つ
自分で答えながら、
頭の整理をしようと思い、
若干ノウハウを盗まれることを覚悟の上で、
あえて、ブログに書き記しておこうと、
このシリーズをはじめます。

画像はほとんどありませんので、
創造力をフルパワーにして下さい。

なんとも無謀なシリーズだと思いつつ、
皆さんの工夫の余地を残しながら、
いろんな疑問にお答えする
このシリーズ。

果たしてうまくいきますかどうか?
乞うご期待です。

企業秘密的なところは各社中、
各自で研究してみて下さい。

あくまで、原理的な部分で、
皆さんの作品制作研究の時間短縮になれば
良いと思ってます。

各ページへのリンクは
こちらから
http://d.hatena.ne.jp/suisen-an/archive?word=%2A%5B%C3%B8%CB%CF%5D
どうぞ
リンクに出てこないお題は
まだ、書いてない記事ですので、
少しお待ちいただければと…

以下、目次?ですが、
どこからアップされるか分かりません。

その壱:淡墨製作に関すること
 [淡墨]硯は端渓?歙州?澄泥?
 [淡墨]硯の上で指で練る?
 [淡墨]やはり青墨?それとも茶墨?赤紫?
 [淡墨]磨って寝かせるの?
 [淡墨]宿墨って何?一度、腐らせないとダメ?
 [淡墨]固形墨じゃないとダメ?墨液じゃぁ無理かなぁ・・・
 [淡墨]唐墨が良い?和墨が良い?
 [淡墨]やっぱ古墨?新しい墨はダメ?
 [淡墨]松煙か?油煙か?植物性か?鉱物性か?
 [淡墨]薄く磨るか、濃く磨って薄めるか

その弐:淡墨作品制作に関すること
 [淡墨]淡墨に求める理想
 [淡墨]水は水道水で大丈夫?
 [淡墨]乾くと滲んだ外側に出る黄色いシミのようなものはナニ?
 [淡墨]淡墨を作る最適な季節とかあるの?
 [淡墨]紙は?筆は?
 [淡墨]芯が出ない、滲みが出ない
 [淡墨]絵の具を使っちゃダメ?

その参:業界的ウンチク
 [淡墨]墨が寝てる?起きてる?
 [淡墨]膠(にかわ)の特性
 [淡墨]墨色が悪い(ぼくしょく)?発色が悪い?

毎日書道会会友
書道芸術院展審査会員
長野県現代書藝展審査会員(同協会:広報部副部長)
中国新聞文化センター講師
粋仙会代表 藤井龍仙