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南禅寺と京都市動物園


上の子は小学生になっている。子供が成長していくのは基本的には嬉しいものだが、嬉しくないこともあって、それは、子供の自我が親の自我とぶつかることだ。例えば、いままで楽しく買い物に付き合ってくれたのが、今では、「おもちゃを買ってくれるなら行く」などと交換条件を付けてくる。保育園の頃ならば、私が好きなお寺についていって、亀や鯉を見ているだけで機嫌が良かったのが、いまでは「えー?寺かよー」なんて平気で言うようになった。育て方を間違えたのだろうか。動物園や水族館、遊園地などの本物のエンターテイメントを求めてくる。満足するためのハードルが上がっている。


だから、私も満足し、子供も満足するような、絶妙のところを選んで行かないと、お互いに不幸になる。結局、(わざわざお金も時間も使って)そんな休日を過ごさなくてもよかったな、なんて振り返ることになったら最悪だ。大人も楽しめて、子供も楽しめる。あるいは、大人が楽しめるところと子供も楽しめるところが近接したエリアにある。そんなスポットが京都にあった。南禅寺京都市動物園だ。この二つは近い場所に位置している。


私は南禅寺、子供は京都市動物園。両方行っても、半日もあればじゅうぶんだ。どちらも得をする。Win-Winだ。上の子を連れて土曜日に、南禅寺京都市動物園に行ってきた。


◇  ◇  ◇


京都市営地下鉄東西線を「蹴上」で降りる。ここから南禅寺まで徒歩5分。京都市動物園までも7〜8分だ。動物園で疲れすぎないように、南禅寺に向かう。子供には、南禅寺の境内を抜けないと、動物園に辿りつけないと説明しているが、既にうすうす怪しいと感じているようである。


南禅寺には、昔から、どこにも行くあてのない時によく行った。素晴らしい仏像が見られるというわけではないが、伽藍の雰囲気は素晴らしいものがある。禅寺らしく厳かな雰囲気があって、落ち着いた空気を持っている。紅葉の季節を避けると、午前中は、とても観光地とは思えないほど人影もまばらで、ゆっくり散策できる。昔から、何の目的もなく境内をぶらぶら歩いたものだった。いくつかの思い出が残っている。



山門。そういえばこんな門だった。久しぶりだった。2〜3年ぶりだろうか。昔から、ここでよく、山門の柱の写真を撮ったものだった。いまでも撮っているので、人間、年をとってもあまり進歩がないのかもしれない。



この日の降水確率は30%で、夕方から雨の予報だった。幸い雨に遭わなかった。曇りだったが、その分、暑さがましで、散策日和だった。



山門を抜け、法堂、方丈に向かう。方丈は拝観可能だ。南禅寺に来たら、絶対、庭園を見たい。拝観料はかかるが、庭を見るのと見ないのでは大違いだ。庭なんか見たくもない、という人以外は是非見て欲しい。



枯山水の方丈庭園「虎の子渡しの庭」。床に座って庭を眺める。日頃、落ち着いた生活をしていないので、こういう穏やかな時間が必要だ。



枯山水と違った趣の庭園。南禅寺方丈は様々なタイプの庭園があるので、日本庭園好きの人にはたまらないと思う。また、後述するが、境内の塔頭にも有名な庭園があるので、一つのお寺で複数の庭園巡りが可能だ。



火曜サスペンス劇場』などのロケ地としても有名な水路閣。琵琶湖疎水の分流を流すために設計・建築された明治の産業遺産のうちの一つで、現在でも疎水の水を東山北部へ運んでいる。



昔から、ここでは必ず写真を撮った。来る度にカメラが新しくなっているような気がするが、それは考えないようにしよう。



水路閣だけだと、ここがどこなのかわからない。まるでローマの遺跡みたいだ。



レンガ造りのレトロな水路閣を後にして、次の目的地に向かう。子供にとっては、自分ばかり2つも3つも好きなお寺に行ってずるいと感じたようで、「次は動物園?」、「次は動物園?」と繰り返す。方丈や水路閣塔頭は、南禅寺というテリトリーの中に含まれており、別々に数えないということを、大人の論理で説明する。



南禅寺塔頭の南禅院。南禅寺発祥の地であるが、一時荒廃した。徳川綱吉の母・桂昌院の寄進によって再興した。南禅院には、夢想疎石によって作庭された言われている、京都でもかなり古い、鎌倉時代の雰囲気を残す庭園がある。



南禅院の庭園は池に沿って散策しながら観賞する、池泉廻遊式庭園となっている。



ここでは緑色が正義。新緑の季節。光の向き、角度、明るさによって、様々な緑色に変化する。



南禅寺塔頭の天授庵の方丈庭園。紅葉の見ごろとして大変有名なところだ。



境内には池泉回遊式庭園もある。池には蓮が浮かんでいる。日光を反射して眩しい部分と、影になっている部分のコントラストが美しかった。池には鯉が泳いでいたため、退屈しかかっていた子供の気もかなり紛れたようだった。



心が洗われるような見事な庭園だった。紅葉の季節は素晴らしいが、新緑の季節もまた素晴らしかった。


南禅寺には他には金地院という塔頭もあるが、今回はパスした。今日は南禅寺だけで過ごす休日ではないのだった。そろそろ、動物園に向かわねばならない。


◇  ◇  ◇


京都市動物園は、今年リニューアルオープンした。この辺りは数えきれないくらい歩いているが、リニューアルの前は行ったことがない。以前は、外から見るかぎり、いかにも昔ながらの動物園だった。それが、一変していた。


お洒落で綺麗。高級ベビーカーが似合いそうな動物園となっている。なのに入場料は大人600円という安さ。子供に至っては、なんと中学生まで無料。嬉しすぎる。


京都市動物園の特徴は、広さが適度なことだ。動物の種類はとても多いというわけではないが、コンパクトにまとまっているので、とても見やすい。例えば大阪の天王寺動物園だと、大きな動物園なので、広いうえに、動物が点在しているので、歩くと結構疲れる。大人にとって、良い運動になるくらいだ。それに対し、京都市動物園では疲れなかった。見逃した、と思って引き返しても、簡単に戻れるレベルだ。


ただ、コンパクトにまとまっていると言っても、内容は本格的で、珍しい動物もたくさんいるし、展示のコンセプトも明快だった。天王寺動物園にもいないゴリラも、ここでは4頭もいて迫力満点だった。



園内は綺麗に整備されていて、歩いていても気持がよかった。動物を見ながら、園内のベンチに腰掛けて、紙パックのオレンジジュースを飲んだ。



キリン。大きな動物は華がある。



孔雀。丁度羽を広げてくれた。そしてゾウ。



イグアナ。



ヘビ。名前を忘れた。脱皮した皮が残っているのが生々しい。



再びキリン。


全体的に、かなり楽しい動物園だった。動物との距離も近く、アットホームな雰囲気で、とても良い動物園だった。家族連れが多く、皆が幸せそうだった。子供も初めてゴリラを見ることができて大興奮だった。


私も久しぶりの動物園で興奮した。童心に帰ったようだった。子供もお寺で完全に退屈していたかというとそうではなく、池の亀や鯉、ミズスマシを見て喜んでいた。「このお寺、好き」と言っていた。そんなわけで、Win-Winの休日は無事終わった。