それではまたどこかの町で。


 仕事でがっかりすることがあり、その気分を引き連れたまま神保町へ向かう。


 東京堂の3階へ。畠中さんが晶文社の高橋さんとお話し中。その高橋さんお手製の「SCRAP通信」をもらう。岡崎武志「雑談王」特集だ。
 書肆アクセスのDNAを色濃く残しているここではなぜか編集工房ノア本が欲しくなる。


 レジから畠中さんお手製の「三階」4号.5号を2冊もらう。4号の題字は南陀楼綾繁さん、5号は武藤良子さんだ。武藤さんのは「三階」の文字に負けないほどの大きさで自分の名前が書いてある。らしくていいな。4号より石田千さんによる「週刊千階」の連載がスタート。
 その石田千さんが参加する東京堂トークイベント「『球体』ってなに? 立花文穂と本のはなし」の折り込みチラシが入っていた。
 詳細は以下のとおり。

 
 『球体3号』刊行記念

「球体ってなに? −立花文穂と本のはなし」

立花文穂責任編集『球体』。

「『球体』は、美術、写真、ことば、…さまざまな表現をぐちやつとまるめた紙塊である。」『球体』より

文字や本を素材やテーマにしたアーティストと、アートディレクター、作家が、雑誌『球体』を中心に語り合う本の話。

立花文穂(アーティスト)×有山達也(アリヤマデザインストア代表)×石田千(作家)

立花文穂(たちばなふみお)/アーティスト。1968年広島生まれ。文字と紙、本を素材やテーマに作品を制作。

●有山達也(ありやまたつや)/アリヤマデザインストア代表。1966年埼玉生まれ。本を核としたグラフィックデザインアートディレクションを仕事としている。

石田千(いしだせん)/作家。1968年福島生まれ。東京育ち。日常のささやかな事象を独特な語り口で描写する。著書に『踏切みやげ』(平凡社)、『部屋にて』(角川書店)『しろい虹』(ベストセラーズ)、最新刊『店じまい』(白水社)9月末刊行

10月3日(金)18:00〜20:00(開場17:45)

於:東京堂書店神田本店6F

参加費:500円(要予約)

ご予約は、電話(03‐3291‐5181)またはメール(tokyodosyoten@nifty.com)にて、イベント名、お名前、お電話番号、参加人数をお知らせください。

尚、10月2日以降は、電話受付のみとなります。


有山氏が編集に携わっている北九州市リトルマガジン『雲のうえ』に掲載された立花文穂さんの写真に一発でやられてしまった僕としてはとてもそそられるトークイベントだ。しかも、石田千さん付きだしね。
 『球体』という雑誌は知らなかった。こんど買ってみよう。その他、南陀楼さんの教え子の方たちが作ったミニコミ『キクロク』創刊号も購入。


 その後、タテキンやコミガレ等いつものコースを流して日本特価書籍へ。ここで買うつもりであった新刊を入手。


 都営地下鉄線に乗り、新宿三丁目で下車。大学時代から通いなれたこの駅から紀伊国屋へ向かう地下通路が副都心線の開業でとんでもないことになっており、伊勢丹付近のあり様がひかりまぶしくて目がくらむような状態に。どちらに曲がっていいわからず戸惑いながらもなんとか道を失わずに紀伊国屋へたどりつく。もちろん、目的はわめぞの古書現世古書往来座が参加しているイベント「紀伊国屋と新宿」だ。
 5階にたどりつくと見たこのある大きな背中が。古書現世の向井さんじゃないか。声をかけたら驚かれる。どうも先日の南陀楼さんといい、ここにくると知り合いに会うんだよな。古書往来座の瀬戸さんもいる。二人でイベントの古本を補充に来たところだとのこと。
 今日のお目当てはこのイベントのために再版された図録「田辺茂一と新宿文化の担い手たち」だ。「他にもいい図録がたくさんありますよ」と向井さんに勧められて棚からこちらも抜き出す。2000年に行われた展示図録の再版だ。

  • 琥珀色の記憶〜新宿の喫茶店 〜回想の“茶房青蛾”とあの頃の新宿〜」


 お二人と別れて中央線に乗り、高円寺へ。コクテイルに向かう。今日は岡崎武志さんの「雑談王」(晶文社)出版記念のイベントがあるのだ。


 店に入るとすでに先ほどあった晶文社の高橋さんが来て「雑談王」販売の準備をしていた。ただ、このイベントに来る人たちは「雑談王」をすでに読んでいるもしくは持っている人たちが大半だろうと思われるのでほとんど売れなかったのではないか。むしろ、植草甚一生誕100年を記念したピンバッチ(見本として持ってこられたらしい)1個200円の方がたくさん売れたのではないか。僕も買おうと思ったのだが目の前でほどんど売れてしまっていた。東京堂で販売中とのことなので今度そちらで買うことにしよう。

 客はまだ高橋さんと僕だけなので混まないうちに料理を注文して腹ごしらえ。カレーコロッケ、茄子のにんにく炒め、オムレツ。その後イベント中も地鶏のから揚げ、あげ厚揚げ、秋かぶの柚子あえなどをばくばく食べる。ここの料理はみんなおいしい。とくにから揚げと厚揚げが今日のヒット。つい食べるのに夢中になって岡崎さんのトークがその瞬間は耳に入らなくなるくらい。


 イベントは立ち見がでるくらいの盛況だった。おなじみの方たちの顔も見える。魚雷さん、NEGIさん、工作舎石原さん、北条さん、ノンちゃん、ぐーるどさん、コウノさん、などなど。


 このイベントでも、『BUKU』最新号、石川県の古本屋マップ、工作舎石原さんが「新・文學入門」の青山ブックセンターでのフェア用に作った「SIBUYA Co★SHOTEN MAP」などをもらう。欲しいものが多くうれしい。


 イベントは、岡崎さんの肋骨負傷話から始まり、最近行った金沢と奈良の古本めぐり、「雑談王」装丁が決まるまでの苦労話(装丁を担当した石丸澄子さんも参加していた)などなど。2時間ほど話してひと段落つけ、その後ギターを弾きながら岡崎さんが吉田拓郎の歌を熱唱。外を通る人が誰のライブかと興味深げに店内を覗いていくのが面白い。


 店内にある振子時計が「ボーン、ボーン」と11時を告げたので会計を済ませて店を出ようとすると、ちょうど岡崎さんは「それでもいつか〜 どこかの町で 会ったなら肩を叩いてほほ笑み合おお〜」と歌っていた。それでは、またどこかの町でと駅へ向かう。


 高円寺の駅へ着いて時計を見ると10時40分を指している。あれ、店の時計は20分進んでいたのか。楽しいと時の進むのが速いなと思っていたのだが、本当に進んでいたんだとなんだかおかしくなる。


 帰りの電車では広瀬正「ツィス」を読む。これは何小説と言えばいいのだろう。シュミレーション小説かな。