劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』
私的評価★★★★★★★★★☆
(2022日本)
世界で一番危険な結婚式──
渋谷ヒカリエでとある結婚式が執り行われていた。そこには、ウェディングドレスに身を包んだ警視庁・佐藤刑事(cv湯屋敦子さん)の花嫁姿が。コナン(cv高山みなみさん)達招待客が見守る中、突然乱入してきた暴漢が襲い掛かり、守ろうとした高木刑事(cv高木渉さん)の身に危機が―!? 事態は収束し高木は無事だったが、佐藤の瞳には、3年前の連続爆破事件で、想いを寄せていた松田刑事が殉職してしまった際に見えた死神のイメージが、高木に重なって見えていた。
因縁の爆弾魔──
時を同じくして、その連続爆破事件の犯人が脱獄。果たしてこれは偶然なのか?公安警察の降谷零(安室透/cv古屋徹さん)が、同期である松田刑事を葬った因縁の相手を追い詰めるが、そこに現れた謎の仮装の人物に、首輪爆弾をつけられてしまう。
〈時間〉が動き始める──
首輪爆弾解除のために安室が潜伏している地下シェルターを訪れたコナンは、3年前に今は亡き警察学校時代の同期メンバーたちと正体不明の仮装爆弾犯「プラーミャ」と渋谷で遭遇した事件の話を聞く。やがて、捜査を進めるコナンたちを狙う不穏な影が―。
この命、あるかぎり──
失った過去と、受け継がれた現在(いま)。
〈時間〉が交錯する時、祝祭のハロウィンが、狂乱の夜行へと変貌するー!
(劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』公式サイトSTORYより引用)www.conan-movie.jp
初見は2022年5月30日、その頃はレビュー書く気力も無くて、とりあえず『シン・ウルトラマン』を毎週観るためだけに、どっかの劇場で出かけるという休日の過ごし方でした。
手帳によると、その日は『犬王』とともに3本立て続けにTOHOシネマズで観てたようです。
その頃の感想は、確か「予告編詐欺にあったようだった」というネガティブなモノで、ボクの周囲のコナンファンのみなさんを、大いに困惑させてしまってました。
その理由は、TV放送で警察学校時代の5人のエピソードをまとめて放送されてたのと、繰り返し流されてた予告スポットやYoutubeの予告編なんかを観てから、勝手に「安室さんがまさか・・・」みたいな最悪な展開を考えてしまってて、勝手な思い込みのまま劇場で観たら、なんか拍子抜けしてしまった、というような心持ちになってしまってたからなんですね。この辺は、あんまり過剰に思い入れしないように、むしろ何も知らずにフラットな精神状態で観に行った方が良かったと反省しています。
と、いうワケで、ハロウィン特別再上映を観に行った次第。
ボクの中では特別なことです。
何しろ、劇場版コナン君は、後追いでテレビサイズでしか観たことなかったのに、本作だけ、しかも2回も劇場で観覧するなんて、ホントに特別なことなんです。
なんでこんな行動取ったかは、たぶん、5月に困惑させてしまったボクの周囲のコナンファンのみなさんに対するお詫びのキモチみたいなんもあったかも知れない、いやいや、そもそもハラハラドキドキは、十分させてもらった映画なんだから、もう一度ちゃんと観直そう、ってのが大きかったかな?
今回は、久々の映画館ということもあり、けっこうフラット、むしろ映画を楽しみたいというポジティブな気持ちで観に行ったワケです。
ヤバかったです。
図らずも、冒頭の佐藤刑事・高木刑事の結婚式のくだりで、かなりグッと込み上げて来てしまいました。
あとは、なんかもう、ジェットコースターみたいに感情が揺すぶられ続け、最後の〝クロノスタシス〟が流れ始めると、緊張から解放されたせいか、ドバっと涙あふれてました。
なんか、しばらく完全休養無しに立て続けに仕事してたせいで、メンタル過敏に反応するような状態だったかも知れませんが、ともかくあらゆる場面で、登場人物の言葉、気持ちにのめり込むように観てしまってて、やっぱり劇場で観るの、至福の体験だよな~って改めて思いました。
作品は、爆弾魔と対決するため、ハラハラと緊張感に締め付けられる場面が多く、観ながら一緒に緊迫した画面の中の世界に引きずり込まれるような演出が、すごく良かったと思います。
合間合間に登場人物たちの忘れ得ぬ過去のエピソードが挿入されるのも、グッと感情が込み上げてきて、たまりませんでした。
そして、安室さんは、やっぱりカッコ良かった。
コナン君だけでなく、大人のキャラがしっかり活躍するエピソードが大好きです。
画もキレイだったけど、音だけが・・・シアターの特性でしょうか、爆音響かせると歪むし、抜けが悪くてこもるし、それだけが残念でした。
でも、トータルの満足度は高かったです。
今日、ボクの中の劇場版コナン君のベストが更新されました^^
●監督:満仲 勧 ●脚本:大倉崇裕 ●音楽:菅野祐悟 ●主題歌:BUMP OF CHICKEN「クロノスタシス」(TOY'S FACTORY) ●制作:トムス・エンタテインメントほか ●原作:青山剛昌(コミック『名探偵コナン』/小学館「少年サンデー」連載中)
8日で死んだ怪獣の12日の物語
私的評価★★★★☆☆☆☆☆☆
(2020日本)
世界は愛でつながっている
通販サイトでコロナと戦ってくれるというカプセル怪獣を買ったサトウタクミ(斎藤工さん)。毎日怪獣の成長を配信しているタクミの元には、通販で宇宙人を買ったという後輩の丸戸のん(のんさん)や、コロナの影響で無職になってしまった先輩のオカモトソウ(武井壮さん)など、色々な人から連絡がくる。日に日に怪獣は成長していくが、どうもYouTuberもえかす(穂志もえかさん)が育てる怪獣とは種類が違うようだ。怪獣に詳しい知り合いの樋口監督(樋口真嗣さん)にノウハウを聞きながら、日々怪獣を育てていくタクミ。果たしてタクミはきちんと怪獣を育てることができるのか? そして、この怪獣はコロナをやっつけてくれるのか?
(「8日で死んだ怪獣の12日の物語 劇場版」公式サイトSTORYから引用)
12daymonster8.com
2020年、新型コロナ禍の緊急事態宣言下で、息をひそめるように外出自粛=在宅を余儀なくされたクリエイターたちが、ほぼほぼリモートで制作した作品、のようである。
正直、決してエンタメ的に面白いとは言えない内容だった。
外に出られない中で、退屈しのぎに作った、と言えば言い過ぎかもしれないが、逆に言えば、不自由な中でもこんな風に想像力を膨らませて、人は遊べるんだ、ということを示しているとも言えるのか。
コロナと戦ってくれるというカプセル怪獣は、白い紙粘土細工でこしらえたようなチープな造形で、日々その姿を変えていく。
その行きついた最終形態が、アレか……確かに、身近にある小さな守護神かも知れない。
というか、昨年の最初の緊急事態宣言の頃は、さまざまな衛生用品どもが、品薄で手に入らない状況だったな。
そう思い返すと、今は不自由なく手に入るようになった。とてもありがたいこと、ありがたい存在だ。
最後に斎藤工さんが語るメッセージは、先行きがさっぱり見えない時期だったあの当時は、現場で命を張って頑張る医療従事者等の大勢の人々や、日常生活をスポイルされ失意に暮れる多くの人々に対するエールや希望の光と言えたかもしれない。
でも、1年以上経った今では、むしろ次々と現れる変異株の脅威の凄まじさに、本当に先が読めない状況になり……それでも、「ボクら一人一人が小さなヒーローになって結束し、コロナと言う巨大な怪獣を倒す日が来る」と断言できるのだろうか?……なんて風に、疑心暗鬼を募らせるばかりではなかろうか?
願わくば、コロナ禍が終息し、本作が「そう言えば、そんな作品もあったね」みたいに笑って思い返せる日が、一日も早く訪れますように。
●脚本・監督・造形:岩井俊二 ●原案:樋口真嗣 ●プロデューサー:宮川朋之、水野 昌 ●音楽:蒔田尚昊=冬木透、ikire ●主題歌:小泉今日子+ikire「連れてってファンタァジェン」
サイダーのように言葉が湧き上がる
私的評価★★★★★★★★★☆
(2021日本)
17回目の夏、地方都市⸺。
コミュニケーションが苦手で、人から話しかけられないよう、
いつもヘッドホンを着用している少年・チェリー(声:市川染五郎さん)。
彼は口に出せない気持ちを趣味の俳句に乗せていた。
矯正中の大きな前歯を隠すため、
いつもマスクをしている少女・スマイル(声:杉咲花さん)。
人気動画主の彼女は、“カワイイ”を見つけては動画を配信していた。
俳句以外では思ったことをなかなか口に出せないチェリーと、
見た目のコンプレックスをどうしても克服できないスマイルが、
ショッピングモールで出会い、やがてSNSを通じて少しずつ言葉を交わしていく。
ある日ふたりは、
バイト先で出会った老人・フジヤマ(山寺宏一さん)が失くしてしまった
想い出のレコードを探しまわる理由にふれる。
ふたりはそれを自分たちで見つけようと決意。
フジヤマの願いを叶えるため一緒にレコードを探すうちに、
チェリーとスマイルの距離は急速に縮まっていく。
だが、ある出来事をきっかけに、ふたりの想いはすれ違って⸺。
物語のクライマックス、
チェリーのまっすぐで爆発的なメッセージは心の奥深くまで届き、
あざやかな閃光となってひと夏の想い出に記憶される。
アニメ史に残る最もエモーショナルなラストシーンに、
あなたの感情が湧き上がる!
(劇場版オリジナルアニメ『サイダーのように言葉が湧き上がる』公式サイト「STORY」より引用)
cider-kotoba.jp
劇場で最初に予告編を観たのは去年の夏だった、と思う。
絵の雰囲気が好みで、俳句がモチーフになってるのも気になって、とっても観たかった作品だったのね。
絵柄で特徴的なのは、特に背景かな?
今どきのアニメは、ともすれば実写かと見紛うほどにリアルで精細な背景画に圧倒されるんだけど、ときにキャラクターの雰囲気と合ってないと感じることがあるのね。
本作の場合は、雑な例えだけど〝浮世絵〟みたいな、けっこうシンプルなタッチの背景画が、ビビッドな原色に塗り分けられてて、17歳の夏物語を描くのに相応しい雰囲気を演出していたと思う。
そういえば、雲の塗り分け方を見て、1980年代に一世を風靡した、わたせせいぞうさんの漫画(アニメ)の〝ハートカクテル〟を思い出した。作品の雰囲気はまったく違うけど、爽やかでポップな感じは似てるかな?
大貫妙子さんの劇中歌〝YAMAZAKURA〟がめっちゃエモかったなぁ^^;
久しく彼女の歌声を聴いてなかったので、懐かしさもありながら、印象的なクライマックスの映像にしっくり合ってて、胸にジーンと響いたね。彼女の歌声は、ホントにシンプルに心に沁み込んでくる。
ストーリーも、面白かった。
チェリーとスマイルの初恋物語に、フジヤマ老人の探し物である〝アナログ・レコード〟にまつわる〝謎解き〟と〝探索〟というミステリー的な要素を交えて、後半は意外なほど感動的な展開を見せてくれた。
物語中に散りばめられた、何気ない小ネタの数々の回収も見事。
そして、何よりクライマックスで、サイダーのようにほとばしる感情の爆発と盛大な打ち上げ花火のシンクロ!
あざといけど、めっちゃ感動して、涙ドバドバ溢れてもたわ~^^;
できれば、もう一回、劇場で観たいな。
※予告編
www.youtube.com
●監督・脚本・演出:イシグロキョウヘイ ●脚本:佐藤 大 ●演出:山城智恵 ●原作:フライングドッグ ●アニメーション制作:シグナル・エムディ×サブリメイション ●劇中歌:大貫妙子『YAMAZAKURA』 ●主題歌:never young beach『サイダーのように言葉が湧き上がる』
犬部!
私的評価★★★★★★☆☆☆☆
(2021日本)
生きているものはみんな助ける、犬も猫も。
それが「犬部!」
犬たちを幸せにしたい!
一つの想いを抱いた仲間たちは、それぞれの道へ⸺
ずっと心に“犬部”を抱いて。16年にわたる人と動物の心を描いた感動ドラマ
青森県十和田市に、一人の変わり者がいた。花井颯太(林遣都さん)22歳、獣医学部の大学生。子どもの頃から大の犬好きで、一人暮らしのアパートには保護動物がぎっしり。周りからは変人扱いされても、目の前の命を救いたいという一途な想いで保護活動を続けていた。ある日颯太は、心を閉ざした一匹の実験犬を救ったことから、ひとつでも多くの命を救うため、動物保護活動をサークルにすることを思いつき「犬部」を設立。颯太と同じく犬好きの同級生・柴崎涼介(中川大志さん)らが仲間となり動物まみれの青春を駆け抜け、それぞれの夢に向かって羽ばたいていった。颯太はひとつでも多くの命を救うため動物病院へ、そして柴崎は動物の不幸な処分を減らすため動物愛護センターへ⸺。
「犬部」から16年後。獣医師となっても一途に保護活動を続けていた颯太が逮捕されたという報道をうけて、開業医として、研究者として、動物愛護センター所長として、それぞれの想いで16年間動物と向き合ってきたメンバーたちが再集結するが、そこに柴崎だけがいなかった……。
北里大学獣医学部に実在したサークル「犬部」に迫ったノンフィクションを原案とし、三度の飯より動物が好きな獣医学生たちが、命を守るため青春を駆け抜けた、未来へつながる物語
(映画『犬部!』公式サイト「Story」より引用)
ある意味、ほんわかした雰囲気のチラシに完全に騙されました。
期待してたのは、佐々木倫子さんの描いた漫画〝動物のお医者さん〟みたいな、ちょっとトボけた獣医学部の学生たちの青春群像ドラマ、みたいなカンジだったんだけど、実際はコメディタッチを織り交ぜつつも、保護犬を取り巻く様々な問題を提示して見せる、なかなか重いテーマの映画でしたねぇ。
う~む……昨年からの新型コロナ禍の中で在宅時間が伸びる中、お手軽にペットを飼い始め、お手軽に手放す人たちのニュースを何度か目にしたけど、そうした犬猫の命を軽く扱ってしまう人たちに対する問題提起としては、アリかなとは思ったんだけど……いかんせん、ドラマ的な面白みがなかったです。
実際、ボク同様にチラシの雰囲気に騙されてお気軽に劇場に入り、「思ってたのと違う」と戸惑った人はけっこう居るような気がしたし、保健所の動物愛護センターで、1日ごとに檻を移され、最後は殺処分のためガス室に追いやられる犬たちの映像を見せつけられると、少しでも犬に思いを寄せる人なら、かなり胸が締め付けられると思うので、軽々しくペットを飼うことの罪深さを知らしめる多少の効果はあるようには思いました。
しかし、登場人物の描かれ方が、すごく浅い。薄っぺらい。感情移入させてもらえない。
そのせいか、重いテーマにもかかわらず、表面だけ軽くなぞって並べて見せて、駆け足で通り過ぎたような印象が残りました。
花井颯太は、学生時代から一貫して、自分が関わる『全ての犬猫の命を救う』という志を掲げて奮闘し続けていて、獣医師として開業したあとも、無償で犬猫の保護活動に関わるような超ポジティブ・シンキングな人物なので、彼を主人公として据えてしまうと、ドラマのトーンが一本調子に映ってしまうんですよね。
他方、犬部立ち上げ時の同志だった他の3人は、それぞれ違ったアプローチで動物の命を守ろうと奮闘しているんですが、例えば大学の研究室で動物用のワクチンの研究開発に長年取り組み続けるも、思うように成果がでなかったり、動物の保護を頑なに拒む獣医師の父の下で働きながら、動物の保護活動に取り組めない自身の不甲斐なさに落ち込んでいたり、それぞれが現在進行形で挫折や悩みを抱えているワケです。
特に「殺処分される犬をゼロにする」ことを志して動物愛護センターの所長にまでなった柴崎は、頑張っても頑張っても、不幸な処分を受ける犬たちが絶えることのない日々が続くことに心を痛め、ついには自ら背負った業に押しつぶされそうになってしまうのですが…。
花井を含め4人の犬部創設メンバーの中で言えば、柴崎が一番深いドラマを持っているのに、花井を主人公に据えて彼の目線でストーリーを回しているから、柴崎の情報は田中麗奈さん演じる動物愛護センター職員からの伝聞しかなくなり、ボクらはその伝聞を再現する短い映像だけで柴崎の苦悩を垣間見ることになってしまってるんです。
がぜん、柴崎の描かれ方は、短く、薄くならざるをえず、何とももったいないと感じたところ。
正直、田中麗奈さんを、あんなに唐突に登場させ、柴崎のことを花井に伝えるためだけに使うなんて、それこそもったいなかろうモンと言うことで、どうせなら、動物愛護センターの職員である田中麗奈さんが、柴崎のことを語り出すところから描き始め、そこから柴崎目線で花井を、学生時代から回想するように描いた方が、より立体感のあるドラマになったんじゃなかろうか、と思ったりしたワケです。
そうすれば、日々積み重なっていく柴崎の苦悩の深刻さは、もっと深く描け、より深く胸に突き立ってきたように思うし、花井の能天気なまでに楽観的な立ち居振る舞いとの対比も際立って、ドラマにも深みが出たんじゃないかな、なんて勝手に思ったりしました。
篠原哲雄さん、けっこう好きなんだけどな。
なんか観終わった後、スッキリしなかったんだよなぁ。
うん、肚の底に、なんか重しがたまったような、そんな不快感かな?
惜しい……。
●監督:篠原哲雄 ●脚本:山田あかね ●原案:片野ゆか(ノンフィクション『北里大学獣医学部 犬部!』/ポプラ社)
劇場編集版 かくしごと ―ひめごとはなんですか―
私的評価★★★★★★★★☆☆
(2021日本)
隠し事は、何ですか?
ちょっと下品な漫画を描いてる漫画家の後藤可久士。
一人娘の小学4年生の姫。
可久士は、何においても、愛娘・姫が最優先。
親バカ・可久士が娘・姫に知られたくないこと。
それは……
自分の仕事が『漫画家』であること。
そして……
姫の母親の行方のこと。
可久士の後悔、姫の決意。
父が娘にしていた愛と笑いの先にある“かくしごと
”その箱がひとつひとつ紐解かれていく未来には⸺。
(『劇場編集版かくしごと ―ひめごとはなんですか―』公式サイト「STORY」より引用)
kakushigoto-anime.com
BS日テレのアンコール放送を1回だけチラ見したのがきっかけで、わざわざ劇場に足を運んだ次第。
テレビアニメの編集版ということで全く期待してなかったんだけど、娘の視点で回想する手法でテレビ版のエピソードを手際よく再構成していて、全くストーリーを知らなかったボクでも凄くわかりみが良かった。
というか、父のハチャメチャなテンポで進むシチュエーション・コメディのキレの良さに、思わず昭和のギャグ漫画的な笑いを引き出されてゲラゲラ状態になったところへ、娘のド天然で心やさしいエピソードにほっこりさせられるというパターンが、小気味よく繰り返される絶妙の配合で、「期せずして大満足な映画体験をさせてもらった」というのが正直な感想。
父と娘の各エピソードももちろん、ほろっとさせられることばかりなのだが、最後に明かされた母のエピソードには、グッとこみ上げてくるものがあった。
それに被さるように流れる大瀧詠一さんの〝君は天然色〟⸺あまりにもドはまりな歌だったので、もうこの上ない爽快感を覚えた。
なんかしら、してやられた気分www
良かった。
※予告編
www.youtube.com
●監督:村野佑太 ●脚本:村野佑太、あおしまたかし ●原作:久米田康治(コミック『かくしごと』/月間少年マガジン・講談社刊) ●アニメーション制作:亜細亜堂 ●主題歌:flumpool『ちいさな日々』(A-Sketch) ●エンディング・テーマ:大滝詠一『君は天然色』(Niagara RECORDS)
星空のむこうの国
私的評価★★★★★★★☆☆☆
(2021日本)
それはなんでもない
秋の一日‥‥‥のはずだった。
相舞高校・天文部の森昭雄(鈴鹿央士さん)はトラックに轢かれる寸前のところを親友の尾崎誠(佐藤友祐さん/lol -エルオーエル-)に助けられてからもう2ヶ月ほどたつが、それ以来変な夢ばかりみるようになった。見たことのない美少女が昭雄をじっと見つめて何かを語りかけてくるような夢だった。
尾崎は夢なんかに逃げないで「リア充をめざせ!」なんて言ってくるけれど、昭雄だって別にモテないわけではない。
図書委員の賀村愛弓(伊原六花さん)は先輩の昭雄にぞっこんで、親友の今井圭子(福田愛依さん)に後押しされ一世一代の告白をしようとしていた。しかし、夢の美少女が気になってうわの空の昭雄はそんなこと意に介さず、家路へと足を向けた。すると、向かいのバスに夢の美少女を見かける。昭雄は急いでバスを降り彼女の乗るバスに向かうと、彼女もバスをおり駆け寄ってきた。そして彼女が涙をためて昭雄を抱きしめた瞬間、忽然と姿を消してしまう。
昭雄は夢か現実かわからぬまま帰宅すると、そこには自分自身の遺影があった──。
昭雄が交通事故にあって死んでしまった世界と、尾崎に助けられた世界が並行して存在し、助けられた世界の昭雄が今いる世界に来たのではないかと推測した尾崎は、パラレルワールドで昭雄を美少女に合わせることにした。
美少女の名前は坂口理沙(秋田汐梨さん)、在りし日の昭雄の恋人で、重い病気に冒されている。
理沙は、2ヶ月間ある約束を果たすために、死んだはずの昭雄をずっと呼び続けていた。その理沙の想いが、別の世界線に生きる昭雄に届いたのだ。
昭雄は、約束を果たす為に理沙を病院から連れ出す決心をする。
主治医の上田聡(川久保拓司さん)と理沙の母親・恭子(有森也実さん)は理沙の姿が見えなくなったことに気づき病院へ連れ戻そうと二人を追いかける。
理沙の病状は思った以上に深刻だった。
なにかがはじまって、なにかが終わる予感が少しだけしていた。
なんでもない秋の一日だと思っていた今日は11月11日。
33年にいちどのシリウス流星群が地球に最接近する日だった。
まっすぐに惹かれ合う昭雄と理沙は、時空を超えた約束を果たすことができるのだろうか。星が引き合わせた二人の運命やいかに──。
(映画『星空のむこうの国』公式サイト「ストーリー」より引用)
hoshizora-movie.jp
映画館のチラシのみを見て、何の予備知識もなく観に来た映画。
こっちらの地方じゃ、シネコン1館しか上映がない作品はままあるものの、1週目以外は観覧に来にくい時間帯の上映になりがちなので、たいてい見逃してしまうんだが、今回はたまたま観たい映画の最終上映日に、ちょうど空き時間がうまくハマったというワケだ。
〝なぞの転校生〟とか、〝未来からの挑戦〟とか、NHK少年ドラマシリーズのような〝昭和のジュブナイル〟を彷彿とさせる作品だなぁって思ってたら、クレジット見て納得。
小中和哉さん監督作品だったのね。
さらに、これ、小中和哉監督が22歳の1986年に、有森也実さん主演で制作した同名作品のセルフリメイクだったとは驚き!
それで有森也実さんが出演されてたんですね!
しかしまぁ、なんて小中監督らしい、ロマンティックなSFファンタジーでしょう!
クライマックス、嘘くさいCG(すまぬ。たぶんあんな派手な輝き方する流星はない^^;)で演出されたシリウス流星群を見上げながら…「違う、そうじゃない。」ここは安易にそんなオチに持ってっちゃいけない!──ボクもそう思ったよ。
心を持ってかれないように、斜に構えて観てたはずが、我知らず、いつの間にやら完全に心掴まれてたらしい。
フェードアウトからのしばしの暗転に不安を募らせ、エンドロールを待っていると……やられた!
最後に小中和哉さんらしい優しさ感じて、とっても胸が熱くなり、凄く爽快な気分で劇場を後にしたワケなのだよ。
ストーリー的には古臭いかもしれんけど、こういうのなら、嫌いじゃないな。
※予告編
www.youtube.com
※小中和哉監督作品の佳作の数々
vgaia.hatenadiary.org
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●原案・監督:小中和哉 ●原作・脚本:小林弘利 ●音楽:木住野佳子 ●主題歌:lol -エルオーエル-『2 your world』
竜とそばかすの姫【IMAX版】
私的評価★★★★★★★★☆☆
(2021日本)
50億人がすれ違う
美しくも残酷な仮想世界。
ベルの歌声は世界を変える──
自然豊かな高知の田舎に住む17歳の女子高校生・内藤鈴(すず/声:中村佳穂さん)は、幼い頃に母を事故で亡くし、父と二人暮らし。
母と一緒に歌うことが何よりも大好きだったすずは、その死をきっかけに歌うことができなくなっていた。
曲を作ることだけが生きる糧となっていたある日、親友に誘われ、全世界で50億人以上が集うインターネット上の仮想世界<U(ユー)>に参加することに。<U>では、「As(アズ)」と呼ばれる自分の分身を作り、まったく別の人生を生きることができる。歌えないはずのすずだったが、「ベル」と名付けたAsとしては自然と歌うことができた。ベルの歌は瞬く間に話題となり、歌姫として世界中の人気者になっていく。
数億のAsが集うベルの大規模コンサートの日。突如、轟音とともにベルの前に現れたのは、「竜」と呼ばれる謎の存在だった。乱暴で傲慢な竜によりコンサートは無茶苦茶に。そんな竜が抱える大きな傷の秘密を知りたいと近づくベル。一方、竜もまた、ベルの優しい歌声に少しずつ心を開いていく。
やがて世界中で巻き起こる、竜の正体探し(アンベイル)。
<U>の秩序を乱すものとして、正義を名乗るAsたちは竜を執拗に追いかけ始める。<U>と現実世界の双方で誹謗中傷があふれ、竜を二つの世界から排除しようという動きが加速する中、ベルは竜を探し出しその心を救いたいと願うが──。
現実世界の片隅に生きるすずの声は、たった一人の「誰か」に届くのか。
二つの世界がひとつになる時、奇跡が生まれる。
もうひとつの現実。もうひとりの自分。
もう、ひとりじゃない。
(『竜とそばかすの姫』公式サイト「ストーリー」より引用)
ryu-to-sobakasu-no-hime.jp
映画は体験だ──正しく、その言葉の意味を全身の感覚で体感する濃密な時間。
本業が声優じゃない人たちのセリフ回しが棒読みで、なんかジブリ映画みたい。
リアルワールドのストーリーが、何とも御都合主義的で、クライマックスなんか、随分と雑でお粗末なまとめ方に感じる(てか、お花畑満開過ぎて、危険すぎる)。
イマジナリーな仮想空間の出来事も〝何とかとBEAST〟みたいなんとか、いろいろ既視感覚えるところがある。
──まぁ、いろいろマイナスなイメージもあるにはあるんだけど……。
BELLEの登場する画面の圧倒的なビジュアル演出と、中村佳穂さんの圧倒的な歌唱にすべて持ってかれたカンジ。
気づいたら、身震いが止まらず、ほろほろと涙がこぼれてた。
何と言うか、静かに魂を揺さぶられたみたいな、うん、あれは、魂の浄化だな。そんな体験だったよ。
これは、ディテールに賛否両論があったとしても、この夏ぜひとも体験すべき映画であることは、間違いないと思ったね。
できれば、でっかいスクリーンと抜群にイイ音響設備で。
と言うことで、IMAXでの本作の体験は、何よりの〝至福の時間〟となったのだよ。
ただし、ストーリーは破綻しまくってるので、シーンによっては倫理的に許せないくらいの人もいると思うから、映画見てお話に納得感が欲しい方には、まぁ悪しからずってことで^^;
ところで、鈴は高知のどの辺りからどこの高校まで何時間かけて通学してるんでしょう? バスは9月から路線廃止になるって車内に貼り出してたし、電車にも乗ってるし、相当な遠距離通学だと思ったんだけど。自分なら、3年間通う自信無いかも^^;
※劇中歌『歌よ』/中村佳穂
www.youtube.com
●原作・脚本・監督:細田 守 ●企画・制作:スタジオ地図 ●音楽監督・音楽:岩崎太整 ●音楽:Ludvig Forssell、坂東祐大 ●メインテーマ:millennium parade × Belle 『U』(ソニー・ミュージックレーベルズ)