ひとり少子化対策

ここ数日、ネットやワイドショーを騒がせている、バンコク代理出産問題。


資産家の日本人男性(一部報道によれば光通信創業家御曹司、とのこと)が、代理出産により15人もの子どもを作っていたというんですが、どうにも意味がわからなくて、モヤモヤしています。
男性は大金持ちだから、人身売買する必要もないでしょうし、自分や父親が病気になったときの臓器ドナーを確保したい、としてもそんなに多くの子どもを作る必要はない。後継者にするにしても、人数を多くしても意味はないし、税金対策としてもそれほどメリットがあるとは思えない。
もしかして、単なる孕ませフェチなのかなぁなどと思っておりましたが、こんな情報が。


「100〜1000人の子」計画=邦人男性が代理出産で―「世界への善行」・タイ (時事通信) - Yahoo!ニュース 「100〜1000人の子」計画=邦人男性が代理出産で―「世界への善行」・タイ (時事通信) - Yahoo!ニュース

 【バンコク時事】タイを舞台にした代理出産問題で、渦中の日本人男性(24)が昨年、関係者に「100〜1000人」の子供をつくろうと計画していると話していたことが14日、分かった。これまでのタイ警察の調べで、男性は代理出産を通じて少なくとも15人の子供をもうけたとみられることが判明しているが、今後、子供の数はさらに増える可能性がある。
 タイやグルジアで生殖医療サービスを展開し、この男性にタイで代理母を仲介した「ニュー・ライフ・グローバル・ネットワーク」共同創設者のグルジア人、マリアム・ククナシビリさんが電話取材に応じた。それによると、男性に2人の代理母を紹介し、昨年、双子を含む3人の子供が生まれた。
 ところが、同時期に男性が別のクリニックでも代理出産で3人の子供をもうけようとしていたことが判明。ククナシビリさんは男性本人に会ったことはなかったが、その後も男性はククナシビリさんのスタッフに「毎年10〜15人の子供が欲しい」「100〜1000人の子供をもうける計画だ」と話し、さらに代理母を紹介するよう頼んだ。
 動機について男性は「世界のために私ができる最善のことは、たくさん子供を残すことだ」と語ったという。 

やはり、常人には理解しがたいタグイの動機があったようです。ものの本によれば、アラウィー朝モロッコの第2代スルタン、ムーレイ・イスマーイール(1645年〜1727年)は、その生涯で888人の子をもうけたといいますが、この御曹司はそれを超えてギネスにでも載りたいんでしょうか。財力では対抗できるかもしれませんが、スルタンは生身で多くの子どもをもうけたので、こういうやり方では超えたことにはならないと思いますけどね。もっと身体を張ってくれないとね。若いんだからもっと頑張れ!


それにしても、資産家が謎めいた理由で多数の子をもうける、というと『聖闘士星矢』みたいな話で、ブコメでも『星矢』を思い出した人が多いようです。

聖闘士星矢』の主人公である星矢と、仲間である青銅聖闘士たちは、孤児としてグラード財団総帥の城戸光政にひきとられ、孫娘である城戸沙織の奴隷のように扱われていました。その後、女神たる沙織を守護する聖闘士を養成するため、世界各地に派遣されて過酷な修行を課され、100人の孤児のうち10人だけが聖闘士となって帰ってくるのですが、実は100人の孤児は全員、光政の実子であり、異母兄弟だった(フェニックス一輝アンドロメダ瞬だけは母親も同じのもよう)という衝撃の事実が明かされます。この設定はさすがに当時の少年少女ファンもドン引きし、アニメ版では採用されなかったのでありました。


また、80年代の少年ジャンプ漫画では、『北斗の拳』に登場する牙一族も、「おやじ」である牙大王と、その息子たち多数という、特異な血縁によって構成された集団でした。

北斗の拳』において、ハート様やシンが登場する最初期と、北斗4兄弟が登場する全盛期に挟まれた、「GOLAN篇」「ジャッカル篇」そして「牙一族篇」はいまいち影が薄く、顧みられることも比較的少ない時期ではありますが、代名詞ともいうべき「あべし」が出てくるジャッカル篇や、レイがマミヤをパンツ一枚のヌードにする牙一族篇も、リアルタイムのファンにとっては思い出深いところであります。
北斗の拳』は、知的水準が低い悪役が登場することの多い作品でしたが、まともにしゃべれない牙一族の知能の低さは群を抜いており、今のメジャー誌ではちょっと通らないようなあうあうあー描写が連発されるあたりも、異様な迫力を生んでいます。たぶんモデルはエジンバラの伝説に登場するソニービーン一家(人里はなれた洞窟で、近親相姦を繰り返し大集団となった追剥&カニバル一家)だったんだろうなあ。牙一族に男しかいないのは、主人公に女殺しをさせないための配慮だったんだと思います。結果として、どうやってあんなにたくさんの息子を産ませたのか、わからなくなったけど。



実際にあった事件では、1987年にペンシルベニア州フィラデルフィアで逮捕された、ゲイリー・ヘイドニクという男が連想されます。

恐怖の地下室 (non‐fiction mystery)

恐怖の地下室 (non‐fiction mystery)

ヘイドニクは、金融業と宗教法人を営む裕福な男でしたが、6人もの女性を誘拐してきては自宅の地下室に監禁し、子どもを産ませて大家族を作ろうとしていました。反抗する女性には容赦ない虐待を加え、その結果2人を殺害。その遺体を解体して、別の女性に食べさせたというから恐ろしい話です。
羊たちの沈黙〈上〉 (新潮文庫)

羊たちの沈黙〈上〉 (新潮文庫)

この事件は、トマス・ハリスの『羊たちの沈黙』のモデルのひとつになりましたが、もしヘイドニクの性欲がもっと屈折していて、代理出産のビジネスがもう少し発達していたら、今回と同じような、まだ穏やかな事案にとどまっていたのかもしれないなあ。