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Traveling LIBRARIAN −旅する図書館屋 このページをアンテナに追加 RSSフィード

旅×本×図書館×??

2017-08-14 それは6年前の問いへの答えだった。

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(48) 2017/8/10 高円寺HACO 氏原茂将(創建)「〈最小公倍数〉を探るコミュニティデザイン」

2010年以来、2度目の登壇となる氏原さんからは、事前に次のような概要をもらっていました。

〈最小公倍数〉というよく分からない言葉は、最近のプロジェクトを経て、過去15年ぐらいの様々な体験をふりかえって見つけた、コミュニティデザインの仮説となるキーワードです。そんなキーワードについて、最近の3つのプロジェクトの話をしながら、その仮説を紹介したいと思っています。

  1. 太田市立美術館・図書館 基本設計ワークショップ
  2. 小金井市しごとづくり事業
  3. 釜石市情報交流センター 基本構想・基本計画

被災地から都心のベッドタウン自動車会社の城下町までいろいろですが、それぞれのまちでコミュニティで/と仕掛けてきたことを紹介しようと思います。

公共空間や公共サービスにおいて志向される、「だれもが」という主語。その主語となる最大多数のユーザが共存できることを目指した結果、実現されるものを氏原さんは「最大公約数〉の公共性」と呼びます。「あらゆるユーザを想定すること自体は悪いことではないものの、最大限の人々が共存しうる条件を追い求めるあまり、みんなのためのようであって、誰のためでもないものになってしまうことが多いのではないか」という問いが、今回の話の出発点でした。

最初に紹介されたのは、氏原さんがワークショップファシリテーターとして参画した太田市立美術館・図書館の基本設計ワークショップ。設計を担当した平田晃久さんが

この街にも日本全国に広がるいわゆる「郊外化」の問題が幅を利かせている。車中心の生活が、駅前のにぎわいを奪い、じわじわと街の持っている生命力が奪われていくような負のサイクルが進行していて、切実な危機感が人々に共有されている。歩いて楽しい街を何とかして取り戻したい、というさまざまな立場を超えた共通の思い。この建築は、そういう強い思いの坩堝(るつぼ)から生まれてくるものではないか、と感じた。

設計過程をできるだけ市民との議論の場に投げ出して、半ば混沌とした設計プロセスで案の方向性を析出させたいと思ったのには、そういう背景があった。設計者としての責任を放棄するわけではない。むしろ逆に、自分たちの考えを投げ出した多数性の場のなかで、よりよいと判断できるものをどこまで浮かび上がらせることができるか、ラディカルに試そうとしたのである。

と書くように*1、プロポーザルで示された設計プランをベースにしつつも、公募で集まった市民が参加するワークショップで、ゾーニングやスペースの区切り方などの設計要素をくみ上げていくという、一風変わった手法―これが成立するためには、色々な前提条件が必要そうですが―で基本設計が進められていったそうです。

氏原さんが紹介した、毎回アジェンダをきっちり設定したりするなどして参加者から多様な意見が出やすいようにする仕込みや、出揃った意見から様々な言葉や要素をくみ出して設計に落とし込んでいく捌き方といった、プロフェッショナルとしての経験に裏打ちされた緻密な準備や仕切りも参考になるものでした。しかしより興味深かったのは、ワークショップ参加者という顔の見える個人から出される「私」をファシリテーターが汲み取り、そして「公」につなげていくこの実践を氏原さんが、「限られた人でもいいから巻き込んでいける〈最小公倍数〉を探っていく手法」として位置づけていたことです(そして、比較的多くの人と共有できる〈最小公倍数〉は地域経済、即ちカネだよね…と2や3の話へとつながっていきました)。

この話を聞きながら私は、少し前に読んだ東島誠さんの『<つながり>の精神史』の日本史上の「公私」は、相対的な「大−小」、含み含まれる関係であって、概念として対立していないところに特色がある。」という一節を思い出していました*2東島さんのこの指摘を是とするならば、「私」を「公」につなげていくというこのアプローチは、きわめて理に適ったものだということになります。そして、そのプロセスにこそ(参加者の一人であるHisammitzuMizushimat‏さんの言葉を借りれば)「「公共」なる概念の本質が透けて見える」のかもしれません。

〈つながり〉の精神史 (講談社現代新書)

〈つながり〉の精神史 (講談社現代新書)

最後に、今回の「場」の設計についても書いておきます。

スクリーン/プロジェクタは使用しないということだったので、いつもは「コ」の字に配置する長机を真ん中に寄せてつくった大きな机の真ん中に参考となる文献を置き、それを囲むように11人分の座席を配置しました。氏原さんは「誰の目を見て話せばよいか分からなかった」と帰り道に苦笑していましたが、この座組みが濃密な議論演出する一つの要素となった気がしています。氏原さんからの話が一通り終わった後、3つくらいのカタマリに分かれての議論が同時多発的に起こったのも、この座組みならではのことだと思います。

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*1http://10plus1.jp/monthly/2017/02/issue-02.php

*2:本書では、「私」は"private"ではなく"partial"、「公」は"public"ではなく"impartial"という訳をあてています。

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2017-08-11 路上

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2016.3 Minakami, Japan.

汽車が駅から動き出した時位、それまでのことを一切後にして来たという気分がすることはない。

吉田健一「忙中の閑」

汽車旅の酒 (中公文庫)

汽車旅の酒 (中公文庫)

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2017-08-10 路上

[]#144 #144を含むブックマーク #144のブックマークコメント

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2016.10 Tsuchiura, Japan.

旅も、本も、何れもそれだけで幾らでも未来の夢が描けるものである。併しそれだから、止めて置く。凡ては老後の楽みに取って置こうと思うのである。

吉田健一「老後」

汽車旅の酒 (中公文庫)

汽車旅の酒 (中公文庫)

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2017-08-09 路上

[]#143 #143を含むブックマーク #143のブックマークコメント

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2015.10 Nara, Japan.

碌に旅行をしたことがないものだから、旅情などということを持ち出して、自分が生れる前の昔を恋しがったりすることになる。

吉田健一「超特急」

汽車旅の酒 (中公文庫)

汽車旅の酒 (中公文庫)

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2017-08-08 路上

[]#142 #142を含むブックマーク #142のブックマークコメント

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2015.10 Nara, Japan.

もの珍しかったり、目先が変わったりするのと反対で、旅をしている時、或る場所がいつ来て見ても同じであること位、嬉しいものはない。

吉田健一「人間らしい生活」

汽車旅の酒 (中公文庫)

汽車旅の酒 (中公文庫)

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2017-08-07 路上

[]#141 #141を含むブックマーク #141のブックマークコメント

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2015.10 Yamato-Saidaiji, Japan.

どうあっても間違いないことは、我々が汽車その他から降りた場所は、我々が住んでいる所ではないということである。

吉田健一「帰郷」

汽車旅の酒 (中公文庫)

汽車旅の酒 (中公文庫)

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2017-08-02 路上

[]#140 #140を含むブックマーク #140のブックマークコメント

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2016.10 Tsuchiura, Japan.

旅行をする時には、普通はどうでもいいようなことが大事であるらしい。

吉田健一道草

汽車旅の酒 (中公文庫)

汽車旅の酒 (中公文庫)

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2017-08-01 路上

[]#139 #139を含むブックマーク #139のブックマークコメント

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2016.3 Minakami, Japan.

旅行をするときは、気が付いて見たら汽車に乗っていたという風にありたいものである。

吉田健一金沢

汽車旅の酒 (中公文庫)

汽車旅の酒 (中公文庫)

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2017-06-12 「研究目線」ではなく「ビジネス目線」で

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(47) 2017/6/9 高円寺HACO 内田伸穂(ソフトバンクロボティクス)「ロボット体験・意識・ビジネス」

今回はロボットをテーマに選びました。

街で見かけても、観光客とお子様以外には見向きもされなくなっている、人型ロボット鉄腕アトムドラえもんに親しんだ私たちが期待するものは、このレベルではないはず。果たしてこれからインパクトをもたらす存在になっていくのでしょうか。  

人型ロボットが世に出たことで、人々の体験や意識の変化が進行し、様々な企業がロボットのビジネス活用を模索しています。その実情を知ることで、「人型ロボットのいる世界」が私たち自身をどんな影響をもたらしていくのか想像してみませんか。

日本IBM、デロイトトーマツコンサルティング自動車産業担当、東南アジア駐在を経て、現在ロボティクス産業を満喫している内田さんに、事業目線ロボットについて語っていただきます(図書館教育機関の事例にも言及していただきます)。

「人型ロボット」の当面の活用場面としては、人間とのコミュニケーション最適化しようとしたデバイスとして*1、人間の「代わり」というより「補助」という立ち位置で、同じことを繰り返すようなコミュニケーションが必要とされる場面で力を発揮しそう…という印象です。個人的には、図書館などのシニア層・キッズ層が一定数おとずれる公共施設や、(規制は厳しそうですが)介護施設での活用の可能性を強く感じました。今、そこかしこで見かけるPEPPER君の海外展開はこれからだそうです。生活習慣や規制などが日本と異なる各国でどのように使われ、そしてどう可能性が広がっていくのかも楽しみです。

また、ロボットに積極的に投資するソフトバンクのスタンスも興味深いです。人工知能の開発に投資するGoogleIBMMicrosoftといったIT巨人とどうつきあっていくのか、そして将来の勢力図はどうなっていくのかも楽しみです。

*1:「人型」という形状自体が面白いですね。その形状をしているだけで、人間側が勝手に様々な感情を移入してくるので。

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2017-05-26 列車内図書室

[][]「汽車中の図書室 簡単なる旅中の伴侶」 「汽車中の図書室 簡単なる旅中の伴侶」を含むブックマーク 「汽車中の図書室 簡単なる旅中の伴侶」のブックマークコメント

このネタの投稿はかなり久しぶりだが、前エントリー「和田万吉の「旅客の為めに図書館(2012/8/15)」の続きを、備忘をかねて。

最近読んだ『シベリア鉄道紀行史:アジアヨーロッパを結ぶ旅』において、1911年明治44年)6月23日の朝日新聞に掲載された「汽車中の図書室 簡単なる旅中の伴侶」という記事が紹介されていた。概要は次のとおり。

  • アメリカ横断鉄道シベリア鉄道等の欧米の長距離鉄道に設けられている図書室を参考に、鉄道院神戸新橋間の鉄道(1,2等列車)に試験的に設けることにした。
  • 喫煙室の一角に書架を設け、本を(120-130冊くらい置きたいところ)差し当たり40冊ほど置いて、乗客に提供する。車掌が管理を担当する。
  • 本は、富山房から寄贈してもらった物語、狂言紀行文、見聞集、寓話、講釈、笑談といった名著文庫で、あまり頻繁に交換する必要が無いものにした(広告的に新刊を置くこともあるが)。

この試みがどうなったのかは分からないが、日本で列車内の図書室があまり広まらなかったことを踏まえると、イマイチな結果だったのだろう。

前のエントリー紹介した坪谷善四郎の「汽車内備附図書に就ての希望」(1918年)も、もしかしたらこのときの試みを参考にしたものだったのかもしれない。

とは言え、「汽車図書室を設ける」というアイデアだけに限れば、もう少し遡ることができる。1900年明治33年)の朝日新聞に「貸出図書館設立計画」という記事があり、ここには、

という趣旨のことが書かれている。

この記事の最大のツッコミどころは「株式会社貸出図書館」という企画そのものなのだが、これについてはまた改めて。

  1. 和田万吉の「旅客の為めに図書館(2012/8/15)
  2. 『図書館雑誌』2012年8月号に「マレビト・サービス」を執筆(2012/8/14)
  3. マレビトサービス#2:西牟田靖編(2011/5/15)
  4. 同時多発的お花見ストリーム/マレビトサービス#1:石田ゆうすけ編(2011/4/7)
  5. 地域と観光に関する情報サービス研究会第三回研究会(2011/3/25)
  6. 地域と観光に関する情報サービス研究会第二回研究会(2011/2/22)
  7. 地域と観光に関する情報サービス研究会第一回研究会(2011/1/23)
  8. 地域と観光に関する情報サービス研究会(マレビトの会)発足(2011/1/11)
  9. 図書館と観光:その融合がもたらすもの(2010/12/27)
  10. Airport Library @スキポール空港(2010/9/8)
  11. 鼎談「まちづくり・観光・図書館」(2010/7/5)
  12. 観光と図書館の融合の可能性についての考察(2010/5/1)
  13. アーバンツーリズムと図書館(2009/3/24)
  14. Tokyo’s Tokyo(2009/3/4)
  15. 旅の図書館(2009/2/12)
  16. 南益行の「観光図書館論(2009/1/27)
  17. 旅人のための図書館を夢想する(2008/12/27)
  18. 蛇足 「八重山図書館考」(2008/10/10)
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