たまたま3月に本をいくつもご恵贈いただいた。すぐにすべての本について感想を書けないので、ひとまず紹介させていただく。
まずは、日経 BP の竹内さんから3冊ご恵贈いただいた。
1冊目は、ノア・スミス『ウィーブが日本を救う 日本大好きエコノミストの経済論』である。
これは早速読ませてもらった。やはり、今回書下ろしとなる第1部「ウィーブ・エコノミー」が本書の肝になる。
ここでの主張は明解である。日本は経済大国でもなんでもないのだから、途上国としてのポジションを認め、海外からの対日直接投資(FDI)、グリーンフィールド投資をどんどん呼び込む必要がある。もちろん現在の円安を活かす必要もあるし、21世紀型の開発戦略国家として成功しないといけない。
「日本が未来を失った」のをバブル経済が崩壊した1990年でなく、2008年に見る著者が正しいかは経済学に疎いワタシには判断できない。しかし、やるべき方策は一つだけでなく、やれるべきことは複数やるべきというのはその通りに違いない。
ただ、50代のワタシは本書を読んで、自分の中にある日本は経済大国という観念にいかに自分が縛られてるかを再確認もさせられた。日本の現状についてはもう十分わかっているつもりだったのに。本書で日本が目指すべきモデルはマレーシアやポーランドと言われると、そうかーと思ってしまうのだ(というか一人あたりの GDP はいずれポーランドにも抜かれるらしい)。
本書のタイトルにもある「ウィーブ」とは「日本に特別な興味と関心を抱いている人たち」を表す言葉で、もちろん本書の著者もその一人だし、日本にどれだけ文化的な優位性を持っているかを力説してくれる本書を読んでいて、エコノミストとしての著者の当然と言える日本の現状指摘にうーんとなってしまうのだから、その呪縛の恐ろしさを思ったりした。
第二部はこれは収録されるだろうと予想していた既出の文章が収録されていて、それはよい。ただ第三部「ノーベル賞から見た経済学の現在」は、上記のように経済学に未だ疎い人間にはやはりためになる読み物だけど、「ウィーブ・エコノミー」と関係ないんじゃない? とどうしても思ってしまった。
著者の文章では、少し前に「日本が移民を受け入れるようになった理由」が経済学101で訳されていて、これなど本書に収録されるのにピッタリな文章なのだけど、さすがに本書の編集に間に合わなかったのだろうな。
2冊目は、葉石かおり『なぜ酔っ払うと酒がうまいのか』である。
葉石かおり著、浅部伸一監修コンビの本を読むのは3冊目である。前2冊ともしっかりした内容であり、今回も同様に違いない。
前著はコロナ禍に書かれたのが大きく影響していたが、「飲酒は少量だろうと健康に悪い」というのがますますはっきりする中で、それでも酒を欲するというのはどういうことかについて書かれた本なのだと思う。
いずれにしろ、未だ酒飲みのワタシとしては読むべき本でしょう。
そして、3冊目は島津翔『NVIDIA(エヌビディア)大解剖』である。
今年は Nvidia 本の刊行ラッシュという予想はやはり当たるようで、訳書含め、いろいろ出るようだが、この本の場合、トップにも直撃するなど日本人記者で初の密着取材の結果書かれた本というのが一番のポイントに違いない。
これは読むのが楽しみである。ちょうどこの本から抜粋された「「俺の金を失ったら、お前を殺す」NVIDIAに出資した大物が放った一言」も公開されている。
いつもブログを読ませてもらっている斗比主閲子さんから『ふつうの会社員が投資の勉強をしてみたら資産が2億円になった話』をご恵贈いただいた。
やはり、本書の場合、書名に目を剝くよね(笑)。
「2億円」と書名で釣って、これが実は実家が極太だったとか、実はロト6で一等当たりましたとか(参考)、実はシリコンバレー在住でスタートアップが当たってストックオプションが――とかだったらブーイング必至だが、本書の著者はそういうことをしない信頼がある。
ちょうど読み始めたところで、というか第2章の「収入編」までほぼ読んだあたり。
「富裕層になる方程式」はある!(しかも、それは持続可能なお金の増やし方)と最初に宣言しているが、この著者はもってまわったところがなく、謎めかすような書き方をしないので、読んでいて気持ちいい。それに例えば資格の取得を勧めるのにしても、ちゃんと物事の順序というか戦略性を意識させるのがうまい。
最初の章は著者の(資産2億円を達成するまでの)ライフストーリーなのだけど、著者に最初の開眼をもたらしたのが『ゴミ投資家のための人生設計入門』というのに同世代性を感じた。と書くと、ワタシもこの本についてよく知ってそうなのだけど、ワタシはこの本を買わなかったんですよ――と書いたところで、この本の Amazon ページを見たところ、「この本を 2002/3/11 に購入しました。」と書かれてあって、呆然となった。
ワタシ、この本買ってたんだ……しかし、読んだ記憶が、ない。そのあたりに未だお金に縛られ、首切りに怯えるワタシと資産2億円の著者との間の差を見ることができるし、この後読むうちにその差異を痛感させられることの連続に違いないのが予想される。