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本の夢 夢の豆本

2018-06-29

第二詩集『若三日月は耳朶のほころび』

ようやく三年越しの懸案だった、文庫サイズ、第二詩集にして最後の詩集『若三日月は耳朶のほころび』が出来上がりました。カバーと表紙に艶金箔押。第一詩集ミモザの薬』からのご縁で、帯文をミナ ペルホネンの皆川明さんにいただきました。上製角背80頁。収録詩20篇。著者自装。限定500部。東京四季出版刊。定価1500円+税。送料180円。042-399-2180

少数の書店にしか置かない本ですが、ご希望の限定番号入、直接ご送付は可能です。お問い合わせは、プロフィ―ル欄をご覧下さい。

いまのところ、京都恵文社一乗寺店 075-711-5919、明大前の七月堂 03-3325-5717、神保町エスニック雑貨店オッカラン 03-6268-9898 には、7月20日頃から置いていただく予定です。恵文社のオンラインショップには、2015年刊行の「本の夢 小さな夢の本』が掲載されています。

http://www.keibunsha-books.com/shop/shopdetail.html?brandcode=000000021411&search=%CB%DC%A4%CE%CC%B4%A1%A1%BE%AE%A4%B5%A4%CA%CC%B4%A4%CE%CB%DC&sort=

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2018-06-11

薔薇のエンボスの押された豆本『ロンサール詩集』

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日本橋三越カルチャーサロンで、2018年6月24日(日)に講習予定の『ロンサール詩集』の書影です。11:00〜16:00(昼食含む)本の大きさは、縦8.5×横6.5mm。

講習費:10800円(材料費込)[お問い合わせ・お申込み ]03-3274-8595

真珠光沢の紙に薔薇エンボス+ローズピンクの背革+金のブレード。細いリボンの先に薔薇のパーツ付き。見返しも薔薇のストライプ模様。本文はフランスルネサンス期を代表する詩人ピエール・ド・ロンサール(Pierre de Ronsard)のソネットやオードに、クラシック薔薇の挿絵を添えて。本文は糸かがりです。

薔薇の品種にも、ピエール・ド・ロンサールというロゼッタ咲の花があります。

https://mitsukoshi.mistore.jp/bunka/search/?pageNo=1&itemPerPage=20&order=1&categoryId=03_030000&searchAttribute=三越カルチャーサロン&slPsblCntUmuFlg=1&sitePath=bunka

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2018-05-19 佐藤春夫の小説『西班牙犬の家』と戌年の賀状

佐藤春夫の小説『西班牙犬(スペインいぬ)の家』

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2018年戌年の賀状を、今頃アップします。

佐藤春夫の小説『西班牙犬の家』は、大正6年初出。(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)というサブタイトルが付いている。ジャック・カゾットの「悪魔の恋」をモチーフにしたという不思議な作品。 主人公は、愛犬フラテとの散歩の途中、雑木林のなかの一軒家で、黒いスパニッシュ犬と出会う。赤い表紙に配された犬は、イングリッシュセッターの賢いフラテ。本文糸かがり。赤の牛革+プリントの豚革の継表紙。犬のパーツに付いた鎖は、本の背側の溝に消えている。見返しは薄緑の木立の模様。88×62mm。2017年制作。

2017-06-01

[ガラスケースのなかの小さな本]〜装丁家・田中淑恵のアートブック


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装丁家・田中淑恵の、初期から現在までの手製のミニチュアブックからセレクトした作品を展示いたします。会期中旬に、一部展示替えがあります。

会期●2017年6月7日(水)〜7月5日(水)

場所●JR中野駅南口徒歩5分 なかのゼロホール西館1F

事務所前のガラスケースのみのささやかな展覧です。

開館時間● 9:00から22:00 

休館日●6月26日(月)

2017-03-28 17歳で自死、井亀あおい『アルゴノオト』『もと居た所』

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はらりと旧い紙片が膝に落ちた。ーー井亀あおい『アルゴノオト』ーー

読んでみたい本の覚書である。これを書いた頃はネット検索などなかったので、手に入れられぬまま、20年近く紙片を取っておいたのだろう。早速検索して本を取り寄せると、これは1977年に17歳で投身自死した少女の日記であり、遺稿集『もと居た所』(共に葦書房刊)も刊行されていた。

アルゴノオト」とは、ギリシャ神話で金羊毛を探しに行くイアソンのアルゴー船の乗組員を意味する。中学2年(1973)から1977年自死する前日まで書いていた12冊の日記のタイトルである。

井亀あおいは、1960年熊本市生まれる。父親は、毎日新聞西部本社報道部勤務。


遺稿集『もと居た所』の表題作の、視力と両足を失った少年が語る言葉。

ーー僕は覚えているよ。マルセル。ずっと以前、ここではない所に「真」があったのを。そこは、ほんとうに、今のここじゃなかった。でも確かにぼくはそこにいた。そこは、何もないよ。そうだね、夜があける時のように、向こうの方が明るくて、上の方は重々しくたれこめている。そんなところだ。まわりにひとなんて居ない。ほんとうに何もないんだよ。そしてそこに「真」があったんだ。ぼくは覚えているよ。ぼくは確かにそこにいたことがある。

すべての、多すぎるものをとり去ってしまえば、あの以前の、そうだね、「もと居た場所」があらわれるんだ。そしてそこにある「真」が見えるんだ。すべてのものを取り去ってしまえば、だよ。(中略)ほんとうの「真」は、すべてを取り去った所にあるんだ。ーーぼくら、そこに行きつけない筈はないんだよ。だって、「もと居た場所」なんだからね。すべてをとり去りさえすればいいんだよ。多すぎるもの、多すぎる人、うその空、うその地面をとり去りさえすれば。ーー

彼は空をはぎとって、「真」のあった「もと居た場所」に戻ろうとして空にひるがえったのである。

これは、九州モダンアート展で見た大津忠太郎の絵画「曙」からイメージした短篇であり、『アルゴノオト』のカバー装画としても使われている。

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この遺稿集を読んで、まずその大人びたシニカルな語り口と、膨大な読書量に支えられた的確な表現、さらに選ばれた漢字の多様性に驚く。この年代の幼さが微塵もないのである。15〜17歳でこれだけの表現と冷徹な世界観を持った少女に出会ったのは、初めてである。政治や時局についても真摯に言及している。

長編小説「無題」(タイトルが確定していない)のなかで、作家であるミリアムに、少女時代の親子ほど年の離れた隣家の厭世的な作家との、微妙な心理の綾なす交流について語らせているが、ミリアムはあおいの洗礼名であり、人物像は彼女自身の投影といっていいだろう。この年代の少女にありがちな甘たるい感傷や、ファッションや流行は一切出て来ない。見事なまでに硬派で、痛々しいほどに内省的である。

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読み耽った作家はヘッセカロッサモームジイドカフカカミュトーマス・マン作曲家シベリウス芸術家はヘンリー・ムーア、ムンクスーラキスリング……特にシベリウスには心酔していて、いくつもの賞賛の文章を記している。


ひそかに心を寄せていたとおぼしき同年代の山岡氏、年の離れた信頼できる大人としての米倉斉加年投身したあとに残されていたのは、ハンカチ、小銭入れ、持っていた本はモームの『Up at the villa』であった。

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