ナラ類の集団枯損被害のこと。
1.ナラ枯れの原因は?
1)ナラ菌(Raffaelea quercivoraラファエリア クエルシボーラ)が樹幹内で繁殖し、形成層が壊死して通水疎害を起こし枯れる。
2)ナラ菌はカシノナガキクイムシにより健全なナラ類の樹幹内に大量に運ばれる。
2.ナラ枯れの特徴は?
(1)カシノナガキクイムシとナラ菌の生息分布
1)カシノナガキクイムシは樹幹下部に集中して生息し、木屑が被害木から散乱 。
2)カシノナガキクイムシが生息する部位にナラ菌が繁殖。両者は共生関係 。
3)カシノナガキクイムシは一生のうち大部分を樹幹内で過ごす。
4)カシノナガキクイムシは1年1化で,新成虫は6月下旬に羽化:体長5mm。
5)カシノナガキクイムシは枯死木から羽化脱出後、付近の健全木に集中穿入。
(2)枯死の様態
1)ナラ類の枯死の状況は、?7月下旬から枯死が始まり、?8月中旬に枯死が目立ち、?9月上旬までにほぼ枯死が終了する。
2)山形県内で枯死する樹種は?ミズナラ>?カシワ>?コナラ>?クリで、ミズナラが枯死しやすい。
3)カシノナガキクイムシが穿入したナラ類は全てが枯死するわけではない。枯死しないコナラは樹液を排出し、カシノナガキクイムシの半数以上は死ぬ。
4)枯死木の葉は冬季間も褐色のまま残り、根元には木屑が散乱する。
(3)被害の拡大状況・菌の特性
1)日本における被害は日本海側が中心。秋田・山形・福島・新潟・富山・石川・福井・長野・岐阜・愛知・滋賀・京都・奈良・三重・和歌山・兵庫・鳥取・島根・高知・宮崎・鹿児島に被害が発生。
平成19年度、新たに山口県に発生。三重県で再発生した。
2)被害の拡大は、平均500m程度。
新たな被害個所は,被害先端地から2.9〜10.4km離れた場所にも発生している。
3)カシノナガキクイムシの飛翔能力は1km程度。
4)ナラ菌はナラ類は枯死させられるが、ブナは枯死させることができない。
(4)被害を受ける森林はどうなってしまうのか
1)被害は、ミズナラ帯を中心にミズナラの附存量の多い森林で発生し、移動。
2)被害の北進は、海岸林に単木的に生立するミズナラとカシワの枯死被害が影響。
3)ミズナラが多い林分が被害を受けやすく、上層の大きな直径の立木から枯死。
4)激害林では上層の林冠が消失し、異様な森林になる。
5)ナラ類を主とした森林は、被害林のみならず健全林でも稚樹による天然更新は難しい。
6)更新の方法としては、播種や天然更新は難しく、被害発生前の萌芽更新かブナなどの新植が効果的。
7)ナラ類の種子散布が停止→後継樹の喪失、野生獣類・昆虫等の食料供給減。
8)高木層の消失→微環境の変化→局所的な崩壊、土壌の乾燥、炭素固定能力低下。
3.防除方法
(1)ナラ枯れ防除の理念
1)万能な殺菌剤はなく、樹幹内のナラ菌そのものの殺菌はきわめて困難。
2)ナラ菌を運ぶカシノナガキクイムシも樹幹内にいて殺虫は難しい。
3)樹幹下部に多く生息するカシノナガキクイムシを大量に殺虫し、ナラ菌の拡散を抑制する。
4)樹幹内でナラ菌の繁殖を遅延させ生立木を枯死させない。
(2)ナラ枯れの防除方法(薬剤注入)
1)立ち木状態のままドリルで穿孔(径10.5mm、深さ25mm)し、NCSくん蒸剤を2ml注入する。(伐倒せず枯死立木を処理でき安全)
2)伐倒しチップ工場等へ搬出破砕処理、伐根部は、上記薬剤注入を実施する。
3)注入部位すべてのカシノナガキクイムシを殺虫可能。
(3)その他の防除方法
1)接着剤と殺虫剤の樹幹散布による駆除(殺虫率は8割弱) 急傾斜地等でのNCS注入法の補完技術。
2)きのこの植菌によるナラ菌とカシノナガキクイムシの殺虫。(山形県では5割の殺虫率)
3)防カビ剤の樹幹注入による樹木の活性化。(16年度完成)
4)誘引剤(集合フェロモン)によるカシノナガキクイムシの捕殺。(開発中)
http://www.pref.yamagata.jp/regional/syonai_bo/bussiness/farm/7337050naragare.html