ある一生 (新潮クレスト・ブックス)作者:ゼーターラー,ローベルト新潮社Amazon しんと静かな、あるひとりの男の人生の物語。文体も内容に見合った朴訥としてシンプルなもので、派手さはまったくないが、深く沁みいるようなところがある作品だった。 私生児として生まれたエッガーは、アルプスの農場主のもとに引き取られる。幼少時から労働力として酷使され、お仕置として鞭で打たれたために片足を引き摺るようになってしまうが、その肉体は頑強に成長していく。やがて農場を出たエッガーは、干し草小屋付きの小さな土地を借りる。山のロープウェイ工事の会社に就職し、ひたすらに肉体労働を続ける日々のなか、宿屋で働くマリーを愛…