『ヴェネツィアの歴史 共和国の残照』(永井三明、刀水書房、2004年)を読んだ。タイトルのとおり、697年の誕生から1797年の滅亡まで、ヴェネツィア共和国の11世紀の歴史を描いた作品だ。 ヴェネツィアの社会相が詳細に描かれている とはいえ、この作品は、時間を追いながら各時代を均等に描いた通常の歴史書ではない。全体は、第一部「草創期より16・17世紀へ」、第二部「夕映えのヴェネツィア共和国――18世紀」の二部構成になっており、18世紀ヴェネツィアの社会相紹介に重点が置かれている。 それはともかく、ヴェネツィアは東地中海の海上貿易に立脚した商業国家であり、長い間、東地中海地域の政治動向に盛衰を左…