1939年、東京都生まれ。学習院高等科、東京大学文学部国文科卒業。 1962年、東大を卒業し東映に入社。同社で助監督を務める。 1967年に退社し、以後フリー。
百万人署名運動の呼びかけ人に名を連ねる。警察庁は広報誌『焦点』270号で、「中核派は、国内最大のテロ組織であり、百万人署名運動のイニシアチブを取っている」と指摘している。
家に帰らぬ日はたびたびあった。が、家出したことはなかった。 一九六〇年代後半から七〇年代へかけて、演劇界に地殻変動が起った。(伝統芸能としての古典演劇の世界については、私は知らない。)小劇場運動である。 一方では既存の新劇劇団内部において路線対立や世代間抗争があったものか、分裂や分派独立が相次いだ。大劇団も少数観客を目処に実験的作品に挑むアトリエ公演だのスタジオ公演だの、喫茶店やレストランを借り切っての公演などを試みた。 劇団ぶどうの会から飛出した演劇集団変身グループによる、代々木小劇場毎月公演など懐かしい。劇団仮面座による詩の朗読・群読の公演も面白かった。渋谷の喫茶店ジローでの山崎正和潤色に…
一条真也です。東京に来ていますが、今年最初の読書ブログをお届けいたします。最近、天皇制の未来について、いろいろと心配しています。わたしは、「女性天皇の誕生なくしては皇室に未来なし」と考えています。少し前に『これからの天皇制』原武史・菅孝行・磯前順一・島薗進・大澤真幸・片山杜秀共著(春秋社)を読みました。「令和からその先へ」というサブタイトルがついており、2020年(令和2年)11月20日に刊行された本です。 本書の帯 本書の帯には「日本のゆくえ。」と大書され、「これからの世界を、私たちはどう生きるか。日本人のアイデンティティとは何か。そして、“天皇制”なるものとは。六人の論客が、その核心にせま…
映画芸術 春 487号 (発売日2024年4月30日) オッペンハイマー 飯田哲也 科学技術と人類の十字路 山本おさむ 難解という名の詐術 畠山宗明 クリストファー・ノーランとツァーリ・ボム ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ 代島治彦 内ゲバで死んだすべての死者を追悼する…… 「絶望」と隣り合う「希望」を描きたかった 向 千衣子 「ゲバルトの杜」になる前を生きて 鼎談 絓 秀実 亀田 博 花咲政之輔 この映画は事件を抽象化しすぎている 歴史認識と真に向き合うべきだ 左手に気をつけろ 井口奈己 自由に動き続けるこどもたちが 映画を作る初期衝動を甦らせてくれました 違国日記 瀬田なつき 人を受け容…
映画芸術 冬 486号 (発売日2024年1月30日) 2023年 日本映画ベスト&ワースト 相田冬二 石飛徳樹 井上淳一 上野昻志 宇田川幸洋 浦崎浩實 大高宏雄 岡田秀則 緒方伶香 岡本安正 荻野洋一 小薗賀津雄 小薗裕美子 小野 寛 春日信一 上條葉月 川口敦子 木全純治 北村匡平 小嶋千佳 志村秀人 新宿かぼす会 菅原和博 田辺隆史 千浦 僚 寺脇 研 中村賢作 林 久登 桧山許治 ファビアン・カルパントラ 藤原奈緒 細谷隆広 前田耕作 山下絵里 吉田伊知郎 渡辺武信 渡辺葉子 映画芸術 編集部 1月30日発売「映画芸術」486号毎年恒例、2023年「日本映画ベスト&ワースト」作品を発…
毎週日曜日は、この一週間(12/25~1/7)に週刊誌や新聞などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPなどをご覧ください。 今週の書評本 *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者.編者 出版社 税込価格 書評掲載回数(②回以上のもの) ◆サンデー毎日「遠回りの読書」: 1/14・1/21 号 2 冊寄せ場のグルメ 中原一歩 潮出版 1,980 ③青椒肉絲の絲、麻婆豆腐の麻 新井一二三 筑摩書房 1,760 ◆女性自身「今週の本」: 1/16・1/23 号 4 冊パッキパキ北京 綿矢りさ 集英社 1,595グッド・フライト、グッド・ナ…
昨年末、浅田彰の『構造と力』が出版後40年で、初めて文庫化された。それで、年末年始休みには、この本をはじめとする当時の現代思想ブームの本を読み直してみたいと考えて、なんとか『構造と力』だけは三が日で読み終えた。 今では思想書が文庫になるのは珍しくないが、40年間鮮度を保って、文庫化が待望されるというのは異例だ。その手の文庫化の走りだったと思うが、僕の学生時代、吉本隆明の『共同幻想論』が角川文庫になって話題になった(1982年)が、それも原著出版(1968年)の14年後のことだ。 再読して、文章がみずみずしく論理が圧倒的に明晰であることに驚いた。小さな注にいたるまで文章のすべてが記憶に残っている…
ちょうど小劇場の歴史に関連する本を三冊読んだところで、演劇人の従兄と話をすることができた。にわか勉強のおかげで、相手の話を引き出すくらいのことはできたと思う。 視野が狭く引っ込み思案の僕が、かろうじて芝居を観たり、演劇ワークショップに参加したりしたのも従兄の存在のおかげだ。勉強家で優秀な従兄は、若い頃から演劇評論を書いて本を出版するなど、僕の好きな思想や評論のフィールドでもはるか先を歩いている。 従兄は、1970年代には俳優座で芝居を演じたりしていて観に行ったこともあるが、1981年に正式に黒テントに加入している。83年に観た『灰とダイヤモンド』では役者をしていたが、85年に北九州の崇玄寺駐車…
60年代以降の演劇の歴史を振り返るのは、菅孝行の自伝、佐藤信論についで、これで三巡目になる。以前目を通したことのある本だが、背景知識をある程度仕入れたうえで読むと、岩波新書の小著ではあるが、とてもよい本だった。 まず、1940年生まれの著者が、新聞記者(演劇評論家)として同時代の演劇にリアルタイムで立ち会ってきた体験が生々しい息遣いで書き込まれているということ。唐十郎の紅テントや佐藤信の黒テントの旅公演に長期間同行取材したりするなど、様々な演劇人にインタビューした成果がふんだんに取り入れてある。つかこうへいや野田秀樹等の新星の舞台にはじめて触れた時の衝撃の中身もていねいに書き込まれる。 このた…
菅孝行の自伝を読んだら、数年前購入してあったこの本が読みたくなった。菅孝行と佐藤信は、僕より二回り上のいわば先生世代に当たる。演劇関係者で左翼であるという共通点もある。ちなみに当時左翼であることは学生、知識人のデフォルトだった。 三回り上以上の親世代の戦中派が姿を消してしまって、彼ら彼女らの生きた時代についてあらためて考えてみようという問題意識をもってから、いつの間にか時間が過ぎてしまった。今は、先生世代の焼け跡派が姿を消し始めている。それどころか、一回り上の学生運動の世代すら、ずいぶんと発信力を失ってしまった。その世代のカリスマだった吉本隆明の名前を聞くこともなくなってきた。 振り返ってみる…
現代美術家の外田さんと、新しく始める読書会の件で、小倉駅のコメダ珈琲で話をする。話題は多岐にわたったけれど、外田さんの娘さんの話が面白かった。 娘さんもまた美術家だけれども、ある時からアイドルの「押し活」に注力し始めたらしい。今は『遠野物語』の原郷を訪ねる旅に出かけているそうだ。映画を見たり小説を読んだりする場合でも、とにかく「楽しむ」というスタンスが一貫している。 そういう娘さんから見ると、父親である外田さんは、とてもつまらない生き方をしているように見えるらしい。実際にそう言われたそうだ。これは意外で(外田さんには申し訳ないが)ちょっと面白かった。 現代美術家として長く活躍している外田さんは…
◆第26話「消えた香炉 正直三姉弟の災難」(2023年11月20日再放送) 以下の通りネット上の記事を紹介しておきます。 ◆猛虎の伸助 暴れん坊将軍第9シリーズ26話「消えた香炉 正直三姉弟の災難」 第6*1〜7*2シリーズ御庭番・小雪役の #安藤あき子 さん、3姉弟で少々気が短く意地っ張りな姉・お杏役でゲスト出演 紀州藩乗っ取りの陰謀に巻き込まれ、香炉を大坂屋(鶴田忍*3)に売ってしまう。 黒幕はその大坂屋 (ボーガス注:留守居役の)娘婿・北主水(草見潤平)と結託し、(ボーガス注:奪った香炉を取引材料に娘婿を次席家老にすえ)大名家*4乗っ取りを画策 そして2人にはめられる江戸家老・沼田大膳役…
今月の吉田さんとの勉強会は、僕の方は菅孝行の自伝がらみで特に映画会社時代のエピソードを報告したが、吉田さんからは最近参加した読書会についての感想メモの提出があった。読書会については僕はいろいろな経験をこの場で話題にしてきたが、吉田さんからというのは珍しい。 僕以上の怒れる壮年である吉田さんは、その読書会について釈然としないものを感じていたようだ。毎月開催される紹介型の読書会のようだったが、本のラインナップを聞くと、最近の文学賞をとった話題の小説や最新の問題意識のエッセイなど、かなりレベルの高い本が並んでいる。実際に主宰者も、自分たちはそこらへんのベストセラーやビジネス書の読書会とは違うというプ…
仕事で毎月の振り返りをするようになったのは、定年の数年前からだった。それ以来、仕事とプライベートとを合わせた一か月の生活を、月の終わりに振り返る習慣をもっている。これはなかなかいい。 今月、いつものように振り返ると、その活動の豊富さに驚いた。普通の月の3倍から5倍くらいの内容が凝縮されている。以下振り返り。 今年の5月に仕事を辞めた次男に前向きな動きをつくることができた。障害者職業能力開発校の試験を受けて無事合格。その時の担当者の面接でのアドバイスを受けて、地元の自動車教習所に入学手続きをし、スクールバスで通い始めた。副産物としてメガネも作成。先月から失業給付が開始されたので、親の扶養を離れ、…
菅孝行(1939-)は、僕が批評を読みだしたころの憧れの存在だった。演劇畑の出身で、物書きとしては演劇批評で頭角を現したが、僕が熱心に読んだのは『吉本隆明論』(1974年)などの思想論で、80年代に入ると岩波の哲学誌『思想』に身体論を連載するまでになっていた。 吉本隆明批判の論陣を張ったために、吉本本人やそのフォロワーから、僕の好きな岡庭昇とひっくるめて批判されることが多かったが、岡庭よりはるかに端正で正統派の印象だった。 ところが80年代半ばから天皇制批判の政治運動に乗り出して、その後長い間著作の出版もなくなった。今回の自伝で、時代の変化で書く場が減ったこととともに、ソ連の崩壊の衝撃に沈黙を…
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