先日中国ロウ・イエ監督の「Spring Fever」を観た。映画の前半で、音楽のかかった広場で市民が踊る場面があった。そのゆったりとした音楽を聴いた途端、強制的に過去に連れ戻された。1988年に中国を旅行した過去にである。 あの当時のビビドな感覚がよみがえった。心を持っていかれそうであった。 私が今いるのがどちらなのか、困惑した。61歳で東京にいるのか、26歳で中国南部にいるのか。今が幻なのか、それともあのビビドな日々が幻なのか。この牢獄のような、日々の義務に縛られた毎日は、一体本当に現実なのか。中国旅行をしたあのビビドな日々、日本人旅行者と喋り、笑いあったあの日々は何処に行ったのか。一体今は…