このたびは 立ち別るとも 藻塩《もしほ》焼く 煙は同じ 方《かた》になびかん と源氏が言うと、 かきつめて 海人《あま》の焼く藻《も》の 思ひにも 今はかひなき 恨みだにせじ とだけ言って、 可憐《かれん》なふうに泣いていて 多くは言わないのであるが、 源氏に時々答える言葉には情のこまやかさが見えた。 源氏が始終聞きたく思っていた琴を 今日まで女の弾こうとしなかったことを言って源氏は恨んだ。 「ではあとであなたに思い出してもらうために 私も弾くことにしよう」 と源氏は、京から持って来た琴を浜の家へ取りにやって、 すぐれたむずかしい曲の一節を弾いた。 🪷🎼正月用のシンプルな琴 written b…