🪻【源氏物語375 13帖 明石37】源氏は代筆の返事は要らないと書いて手紙を書いた。明石の娘は入道に責められて香のにおいの沁んだ紙に返事を書いた。 〜翌日また源氏は書いた。 代筆のお返事などは必要がありません。と書いて、 いぶせくも 心に物を 思ふかな やよやいかにと 問ふ人もなみ 言うことを許されないのですから。 今度のは柔らかい薄様《うすよう》へはなやかに書いてやった。 若い女がこれを不感覚に見てしまったと思われるのは残念であるが、 その人は尊敬してもつりあわぬ女であることを痛切に覚える自分を、 さも相手らしく認めて手紙の送られることに涙ぐまれて 返事を書く気に娘はならないのを、 入道に…