をちかへり えぞ忍ばれぬ 杜鵑ホトトギス ほの語らひし 宿の垣根《かきね》に ただ一度だけ訪ねたことのある 中川辺の女人に💐 by 源氏の君 〜昔にたちかえって 懐かしく思わずにはいられない、ほととぎすの声だ かつてわずかに契りを交わしたこの家なので 【第11帖 花散里 はなちるさと】 中川辺を通って行くと、 小さいながら庭木の繁りようなどのおもしろく見える家で、 よい音のする琴を和琴《わごん》に合わせて派手に弾く音がした。 源氏はちょっと心が惹かれて、 往来にも近い建物のことであるから、 なおよく聞こうと、 少しからだを車から出してながめて見ると、 その家の大木の桂カツラの葉のにおいが風に送…