ハエトリソウ、モウセンゴケ、サラセニアなどと並ぶ代表的な食虫植物の一つ。学名は"Nepenthes"(ネペンテス)で、この名も一般に広く使われる。
葉っぱの先からつるを伸ばし、そのさらに先に、上を向いたヘチマかヒョウタンのような、変わった形のツボをつけ、虫を誘惑する。ゲテモノ植物と言うイメージがあるが、育ててみるとあたかも愛玩動物のような雰囲気が見出せて、なかなかどうして可愛らしいものである(育てるのは難しいが)。
サラセニアと同様、落とし穴式の捕虫形式をとっている(ちなみにハエトリソウは高速で虫を挟み込むトラップ、モウセンゴケやムシトリスミレはトリモチ式の捕獲様式を持っている)。
その口元に蜜のようなものを分泌することで虫を誘い、足を踏み外した虫を落とし込むのだ。ツボの内部はすべすべした状態になっており、一度落ちると虫は這い上がることができない。そしてそのままツボの下部の酵素液(老化したツボでは、酵素は薄まり、代わりに細菌による消化が行われるようだ)で溶かされ、植物体の養分とされてしまう。なお、酵素液の量は自ら調節できる。仮に全部ツボから流れだしたとしても、あるいは雨が降ってツボからあふれ出したとしても、しばらくすると一定の量(三分目ぐらいだろうか)になるようだ。
育てるには湿気が90%近くと、15℃以上の温度が必要とされているため、普通の植物のような育て方だとすぐに枯れてしまうであろう。冬には日当たりのよい室内に入れてやるなどと言った配慮が必要である。ただ日当たりが強すぎるのもダメで、盛夏期にはやや日光の弱いところにおいておくことが理想とされる。なお、植える鉢土には主にミズゴケを用いる。そのミズゴケは常に湿っている状態が好ましい。ミズゴケはおよそ1年ごとに取り替える。
肥料は与える必要は特にないし、虫を捕まえて入れてやる必要もない。肥料などによって栄養が足りてしまうと、植物体が「栄養があるからツボつけなくていいや」と判断し、ツボがつきにくくなってしまうのだ。ただ、葉が黄変したりと、やや弱ったときに少量の肥料をあげるとよい。
増やすには主に挿し木を用いるようだが、花も咲いたりする(こういう植物にしては珍しく地味な花である)。
なお、ウツボカズラを漢字で書くと「靫葛」と言う。「カズラ」とはつるを意味する。「ウツボ」の名前の由来は、魚ではないようだ。昔の人が狩などで弓矢を用いたとき、矢を入れておくためのさやをウツボ(靫)と言ったそうだ。実際、その「ウツボ」はこのようなひょうきんな形をしていたらしい。
熱帯産だが、種類は非常に多く、この写真のようなオーソドックスなかわいらしいものから、なにやら洋式便所を思わせるような形をしたもの、あるいは赤の縞々が大量に入ったややかわいいとは言いがたいものまである。大きいものでは50センチにもなり、ネズミやカエルがその中に入っていたりすることもあるそうである。
:植物