これまでいったい幾つの山小屋のお世話になったのだろう。泊りの縦走はテントだ、というこだわりがあったせいか自分は山小屋に泊まったことは数えるほどだった。山頂や名もなき鞍部で時には沢沿いで、そして小屋のテント場でテントを張るか、あるいはうす暗い避難小屋の板敷にマットを敷きシュラフを広げるかのいずれかだった。灯りは頭に付けたヘッドランプだった。 北アルプスにせよ南アルプスにせよ奥多摩にせよ丹沢にせよ、山小屋には発電機が置いてあり夜20時の消灯まで蛍光灯がつくのだった。ランプの山小屋はもう自分が山を歩き始めたころはよほどの奥地にしか残っていなかったのだろう。 秩父、そして奥秩父はどうだろうか。当時、清…