2018年8月号掲載 毎日新聞夕刊報道グループ記者(当時)/藤原章生 最近、面白いことに気づいた。自分の脳の中の話だ。 人は瞬時にいろんなことを考えている。そこに脈絡はない。以前、メキシコの作家で、名作「アモーレス・ペロス(犬の愛)」や「バベル」の脚本を担当したギジェルモ・アリアガがこんな話をしていた。 彼の作品の面白さは時間の前後など関係なく物語が断片的に描かれる「シャッフル方式」にある。 例えば「アモーレス・ペロス」の場合、三つの物語で構成されている。闘犬でのし上がる貧しい青年が兄嫁との恋を成就させていく話。安普請ながら新しいマンションで愛人と愛玩犬との新生活を始めたモデルの不幸。さらには…